緑谷出久は
2日間気絶と悶絶を繰り返して更には高熱にうなされていたらしく……その間リカバリーガールが治癒を施してくれたり警察の人が来てくれたりしたらしいけど……何一つ覚えていなかった。
扉を開く音がしたために、覚醒した緑谷出久がゆっくりと首を動かすとドアが開き上鳴や皆が緑谷のお見舞いに来た。
「おっ、緑谷目ぇ覚めてんじゃん……テレビ見たか? 学校今マスコミやべーぞ」
そう言いながら入ってきたのは上鳴だけでなく……クラスの皆であった。
緑谷は覚醒したての重い頭で問いかける。
「A組皆で来てくれたの?」
その問いかけに対して暗い表情をしながら飯田君が答える。
「いいや、耳郎君と葉隠君は
そこまで告げて飯田君の言葉が詰まる。
それを察した麗日お茶子が悲痛な声音で代わりに語り出した。
「
麗日お茶子のその呟きに轟焦凍が悲しげな声音で呟く。
「アウルム居ないからな……」
それを聞いた皆が……無言で黙りこくって俯いていた……。
それを聞いた緑谷出久はツゥッと一筋の涙を流しながら呟く。
「オールマイトがさ……言ってたんだ、手の届かない場所には助けに行けないってだから手の届く範囲は必ず助け出すって……僕は……手の届く所に居たのに、必ず助けないといけなかったのに……相澤先生に言われた通りになった……1人助けて木偶の坊になるだけって……身体……動かなかった」
そう悲痛な声音と面持ちで呟く緑谷出久。
その言葉に対して切島鋭児郎が言の葉を紡ぐ。
「じゃあさ……今度は救けよう」
そう呟いた切島……。
「さっき……八百万が目覚めたって飯田が言ったろ? 八百万の病室通った時に警察とオールマイトが八百万と話してるのが聞こえたんだ……」
切島が八百万百と警察、オールマイトとの話しを語る。
それを見て……助けに行こうと、助けに行きたいと切に願っている事。
しかし飯田が叫ぶ。
「オールマイトの仰る通りだ‼︎ プロに任せるべき案件だ‼︎ 俺たち生徒の出る幕では無いんだ馬鹿者‼︎」
そう切島へ感情のままに怒鳴りつける飯田天哉に対し切島も怒鳴り返す。
「んなこたぁ分かってるよ‼︎ でもさ‼︎ 俺は何もできなかった‼︎ あの時‼︎ 何一つ出来ず守られてるだけだった‼︎ ダチが狙われてるって聞いたのに‼︎ なんっも出来なかった‼︎ しなかった‼︎ ここで動かなかったら俺は何の為にヒーロー志したのか分からなくなっちまう‼︎」
溢れ出てくる感情のままに叫ぶ切島に対して上鳴が口元に指を当てて呟く。
「ちょっ……落ち着けよ切島、ここ病院だぞ……」
そう上鳴に言われるが切島は叫ぶ。
「飯田が‼︎ 皆が正しいよ‼︎ でも‼︎」
そう告げた時……轟焦凍が身体を震わせ唇を噛み、拳を血が出る程に握りしめながら言の葉を紡ぐ。
「俺だってアウルムを助けに行きたい……俺や緑谷や障子の前で攫われたんだ……そして何より伸ばした俺のこの手はアウルムに届かなかった……切島の気持ちも痛い程分かるさ……だけど……」
そこで一旦言葉を区切り、あの時、攫われる瞬間にアウルムから視線のみで交わされた会話を、告げられた言葉を思い返す轟焦凍。
あの視線のみの会話はこの先何があっても忘れる事はないだろう、そう思い返しながら皆に告げる轟焦凍。
「あいつは……アウルムは俺たちが助けに来る事を一欠片も望んじゃいない」
それを呟いた直後……切島が溢れる感情のままに轟焦凍の襟を掴んで壁際に突き飛ばしながら叫ぶ。
「何で……何でだよ‼︎ 助けに行くのを望んでないって何でそう言い切れるんだよ轟ィッ‼︎」
そう叫ばれた轟焦凍は襟を掴んでいる切島の手を払い退けながら叫ぶ。
「あの時‼︎ 攫われたアウルム自身の視線がそう物語っていたからだ‼︎ 言葉は無くともな‼︎ 視線でそう告げていたんだよ‼︎ 絶対に助けに来るなと‼︎ ……何があっても‼︎ 万が一攫われた場所が判明してもなッ‼︎ そう告げてたんだよ‼︎ 本人が強くそう望んでいたからだ‼︎ そう言われてこれ以上俺達に何が出来る‼︎ あぁ行きたいよ‼︎ 俺だってアウルムを助けに行きたいさ‼︎ 眼の前で攫われたんだ、助けに行きたくない訳がないだろうが‼︎」
そう叫ぶ轟焦凍。
そう言われては何も言い返せずに沈黙するクラスメイト達。
その時、扉をノックされて病院のドクターが入ってくる。
「はいお見舞い中ごめんね〜、診察の時間だから……」
そう告げられた為に退出するクラスメイト。
その後、Dr.よりつげられたのはこれ以上無茶無謀を繰り返せば2度と腕を動かせなくなるという事であった。
ひとまずの退院を許可されて……家に帰りTVを付けるとちょうど雄英の事件のニュースで持ちきりであった。
あの後……結局は何も出来ずに沈んだ面持ちで家路に着いたクラスメイト達。
焦凍はトークアプリのグループトークで雄英の会見がある事を知り皆が自身の家でそれを観ていた……。
そして、皆が皆、クラスメイトが全員、アウルム・ミダスティアが語っていない、いや……隠していたというべきだろう、アウルム・ミダスティアの過去を知ってしまった。
「この度は我々の不備からヒーロー科1年生、34名に被害が及んでしまった事、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます……まことに申し訳ありませんでした」
たっぷり20秒程、頭を下げる根津校長、相澤先生、ブラドキング先生。
その後、質疑応答となり記者が質問を紡ぐ。
「週刊アザミです‼︎ 雄英高校は今年に入って4回も
それを聞いた根津校長は真剣な声音で告げる。
「周辺地域の警備強化、校内の防犯システムの強化、そして『強い姿勢』で生徒の安全を保障すると説明しておりました」
その答えに対して別の記者が手を挙げて質問を告げる。
「サイエンTVです、生徒の安全……と仰いましたがイレイザーヘッドさん……事件の最中に生徒に戦う様に指示を出したそうですね? その意図をお聞かせください」
その質問を聞いた相澤先生は重い表情で口を開く。
「私共が状況を把握できなかった為に最悪の事態を避けるべくそう判断しました」
その答えを聞いた記者は再度質問を行う。
「最悪の事態とは? 33名の被害者と1名の拉致は最悪ではないと?」
その質問に対して相澤先生は告げる。
「……あの場で私が想定した最悪とは生徒が成す術なく殺害される事でした」
それを告げた後に根津校長が語る。
「被害の大半を占めたガス攻撃は敵の『個性』から催眠ガスの類と判明しております……拳藤君、鉄哲君の迅速な対応のお陰で全員命には別状なく、また生徒らのメンタルケアも行っておりますが深刻な心的外傷は見受けられてありません」
根津校長の言葉に対してサイエンTVの記者は無遠慮に告げる。
「不幸中の幸いとでも言うおつもりでしょうか? ならば攫われた生徒であるアウルム・ミダスティアさんについても同じ事が言えますか? 雄英高校の入学試験の結果は平凡な成績でしたが……体育祭優勝、個性の扱い方、豊富な近接格闘術、職場体験での功績などの実力はヒーロー性を感じられますが……」
記者は一度言葉を切って咳払いし……一瞬だけ沈黙すると、とんでもない言葉を口にした。
「反面、彼女の過去から起因する精神の不安定さも散見されています……彼女の両親はヒーローでしたが彼女が幼い時に、アウルム・ミダスティアさん本人の個性である『黄金』による金銭が目当ての
それを聞いた相澤先生はマイクを握り潰す程強く握りしめながら質問に対して答えを返す。
「……生徒にもプライバシーがありますので……今の質問に関しては一切お答えできかねます……他に質問のある方は挙手をお願いします、どなたか挙手を‼︎ 無ければこれで会見を終わらせて頂きます‼︎」
相澤先生がそう言葉を紡ぐが誰も挙手しない……無理矢理に会見を打ち切った。
その瞬間、焦凍がスマホに目を落とすとクラスメイト達とのグループトークの画面が慌ただしく動いていた。
主に……アウルム・ミダスティアの凄惨な過去について。