アウルム・ミダスティアはBARの椅子に雁字搦めに拘束されて猿轡を嵌められ特にアウルムの個性を象徴するその『手』は一切何処にも触れられぬ様に重点的に拘束されながら観ていた。
アウルムはTVの画面を観ながら虚な表情で考える。
自身の隠し通していた過去を記者によって暴露された……最悪だ、最悪すぎる。
一体何処から情報を得たのか、そもそも医師や医療従事者には守秘義務が課せられている、精神病院に勤務している者からしたらなおさら理解している事である……。
この記者会見をクラスメイト達が観ていない訳がない……絶対にバレてる。
猿轡を噛まされながらくぐもった声音でため息を吐く。
それを見た死柄木弔は嬉しそうな声音でアウルムへ告げる。
「なぁ? 何故
そう告げると荼毘はトゥワイスに命令しトゥワイスは嫌がりながらアウルムの猿轡を外す、外しながらトゥワイスはアウルムへと語りかける。
「強引な手段になってしまったのは謝るよ……だけどな、我々は悪事と呼ばれる行為に勤しむ単なる暴徒じゃねえってのをわかって欲しい……君を狙って攫ったのはたまたまじゃない……ここにいる者は事情は違えど人に、過去に、ルールに、ヒーローに縛られて苦しんだ……君ならそれを分かってくれると信じている」
ようやく自由になった口を開くアウルム。
「そうですね……私も過去が過去なので、決して貴方達の気持ちが分からない訳では無いです……いまだにあの事を夢に見ますよ……あの地獄を……いまだに苛まれますよ……寝ている時にうなされてそれで飛び起きる事もあります……私の人生を滅茶苦茶に壊したあの
それを聞いた死柄木弔はため息混じりに呟く。
「まぁ……何となく分かってたよ、そうだよな……でも言ったよな? こちら側に時間が無いんだって……黒霧、コンプレス、圧縮して攫え、移動するぞ……警察やヒーローも馬鹿じゃない、調査中って事は遅かれ早かれここがバレる、もしかしたらあの謝罪会見がブラフでもうここがバレているかもしれない、アジトとしてはここはもう価値がない、捨てる、別の所でまた説得を繰り返そう」
そう告げるとそれを聞いたアウルムは自身の手枷と拘束具を見て
「性急ですねぇ、短気な男は嫌われますよ? そう言えば私、1つだけ言い忘れてました……Mr.コンプレスの分身体と会敵した時にですね、ナイフで指を切られたんです、当然ですが切られた指先からはうっすらと血が滲みましてね……その血を舐めとったんですよ……
そう告げた刹那……死柄木弔が何かを察してアウルムの背後に立ったままのトゥワイスに叫ぶ。
「トゥワイス‼︎ その小娘から離れろ‼︎ 今すぐに‼︎」
トゥワイスの耳にその言葉が届いた刹那……アウルムが
唾液がかかった拘束具は黄金へと変換され全体の拘束具を黄金にすると背後に立っていたトゥワイスを黄金化させようと襲いかかるがトゥワイス自身の身体能力で回避される。
それを見ながら拘束から解放されたアウルムはゆっくりと立ち上がるとアウルムは最後に自身の手をガチガチに拘束している手枷を黄金と変えて自身の周囲に盾の様に展開すると伸びをしながら呟く。
「さて……と戦闘許可ですが……私にかけられた戦闘許可はまだ解除されていません、という事で個性使いたい放題やりたい放題です、合法的に」
柔和な笑みを浮かべ、空中に槍の様な黄金と盾の様に展開した黄金をふわふわと浮遊させながらそう告げたアウルム・ミダスティア……。
しかしながらアウルム・ミダスティアは脳裏で考える。
実際の所……虚勢である、ブラフである、いまだに身体に回った毒は抜けきれておらず体温は39℃を超えてるのか呼吸が浅く、高熱で浮かされている様な感覚が消えず視界もほぼ全体が霞んで上手く見えてはいない。
数メートル先にある物すらも視認が難しい状態だ。
周囲の黄金化した物の操作も盾や槍状にして自身の周囲に展開するのが限界でありいつもなら息を吸う事と同列の様に出来ている、液体状にして飛ばしたり豪雨の如く分裂させる事も、質量を変化させ大質量で押し潰したり個数を変化させたりといった複雑な操作は一切出来ない。
更に言うのであれば……高熱の影響で足元がふらついてすぐさま床に倒れ込んでも全くおかしくない。
唾液を口から垂らしながら、もはや霞んで歪む視界で死柄木弔を見るが流石にこの膠着状態でアチラも違和感に気づいた。
死柄木弔が顎に手を当ててしばし考え仲間に指示を出した。
「……おい、このまま距離をとって威嚇しつつ機を見て制圧だ……そいつが張ってるのは虚勢だ……ブラフだよ、よく見れば頬がかなり赤い、どの位かは解らないが……おそらく発熱している、頬の火照りや額の汗から推察するに38℃を超えてるだろう、かなりの高熱だ、それに周囲に浮遊している黄金……体育祭の時の様なコントロールが出来ていない、黄金の動きに精彩が欠いている……視点も定まっていないし唾液が溢れてるのに拭おうともしない、と言うより出来ない程にまだ本調子ではないな」
そう告げた死柄木弔、それを聞いた
「どうもー、ピザのお届けでーす」
その言葉と共にアウルムの隣の壁が破砕されてオールマイトが現れ扉からはエッジショットと重装備に身を包んだ警察の機動隊が現れた。
そして、それを霞んだ視界で見たアウルムは高熱による限界から床に倒れ込んでしまった。