オールマイトがオール・フォー・ワンを、ミルコが
アウルムを連れ去ろうとしていた
Mr.コンプレスがアウルムに触れようとするがそれを許すミルコではない。
蹴りを1発繰り出すだけでコンプレスを風圧のみで4〜5m程吹き飛ばすと青筋を立てながら苛立ち混じりに言葉を紡ぐ。
「なぁ……
そう怨嗟混じりの声音でミルコは襲いかかってきたスピナーの腕を掴み背負い投げの要領で地面に叩きつけると即座に『兎』の脚力でスピナーの腹部を踏みつける。
数センチ入った地面のヒビがスピナーの腹部にかかった衝撃の強さを物語っていた。
スピナーは腹部を踏みつけられた衝撃で胃の内容物を吐き出して仰け反ったが腰に差しているナイフを抜いてミルコの脚を刺そうとする。
しかしナイフを持った腕を即座に踏み砕かれ顔面をサッカボールの如く蹴られて拳銃から発射された弾丸の如く凄まじい勢いで吹き飛びビルの瓦礫に身体を強く打ちつけて意識を失い戦闘不能となる。
「近づいてくるんじゃねえよ……今の私の最優先事項はアウルムの救出だ……余計な手間かけさせるんじゃねえよ」
ミルコは倒れ伏しているアウルムを抱き抱え自身の兎耳をアウルムの胸に当ててアウルムの状態を『兎』の個性を応用して確認する……。
「KT39.9℃、BP197/104、P126、SPO2の数値は80〜82%、意識レベルは混濁状態と言った所か……救急搬送だな……」
そう呟いたミルコは黒霧を見ながら告げる。
「逃がさないって表情してるな? だけどな……ここにきたのは私だけじゃない」
そう呟いた刹那、背後よりエッジショットの薄く細い肉体の糸が黒霧の実体部分を貫いて体内組織をいじくり回して気絶させる。
唐突な黒霧の気絶に一瞬隙ができた
それを見たミルコはエッジショットとオールマイトに聞こえるように叫ぶ。
「パッケージは無事に確保した‼︎ このまま警官に引き渡して救急搬送をかける‼︎ という訳だ‼︎ 私は少し離れるぜ‼︎」
ミルコは自身の個性である『兎』で跳躍し即座に戦線離脱する、当然それを許す筈がないオール・フォー・ワン、己が個性を使いミルコを殺そうとしたオール・フォー・ワンであるがオール・フォー・ワンが隙を見せれば当然、対峙しているオールマイトがその隙を突いてオール・フォー・ワンへと殴打を見舞い吹き飛ばす。
それを見たマグネが個性『磁力』でコンプレスを空中へと弾き飛ばしてミルコを追おうとしたが空中へとコンプレスが飛んだ瞬間にマウントレディの声音が響いた
「タイタンクリフ‼︎」
巨大化したマウントレディの顔面にコンプレスが激突しマウントレディの巨体が地面へと倒れ伏し衝撃と爆風に近い風圧が
それ故にマグネは叫ぶ。
「まだまだ‼︎ アンタらくっついて‼︎」
そう叫んだ瞬間にエッジショットとグラントリノによる攻撃でトガヒミコと死柄木弔を除いた
それを見たオール・フォー・ワンはやれやれと言った声音で呟く。
「やられたな……一手で綺麗に形成逆転だ……仕方がない……個性強制発動『磁力』……行け弔、君は戦い続けろ」
自身の個性の1つを用いて気絶しているマグネの個性を強制発動させる……そして、唯一その近くにいたトガヒミコに吸われる様な形で
完全に
「僕はただ弔を助けに来ただけなんだが……戦うというなら受けて立つよ? 何せ僕はお前が憎い……かつてその拳で僕の仲間達を次々と潰してお前は『平和の象徴』と謳われた……僕ら犠牲の上に立つその景色……さぞや眺めが良い事だろう?」
そう告げながらオール・フォー・ワンは『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12の個性を組み合わせてわざとオールマイトを狙わずにその背後や周囲で倒壊したビルの瓦礫で潰されても軽傷ですみ生きている被害者を狙って……空気を強烈に押し出した……。
やっている事は非常に単純である、玩具や工作で作る空気砲と大差ない……大差ないがその威力は空気砲なんて軽いものとは比にならない、このまま直撃すれば数キロ先のビル群まで粉々に破砕する程の威力である、直線上には繁華街や住宅密集地、高層マンション群の方面にも空気砲が届く為に最小で見積もっても900人以上の死者が一瞬で生まれ街にも当然ながら甚大な被害が出る……ただでさえ、今この時でさえ周囲のビルが倒壊した為に一般市民に甚大な被害が出ている、これ以上の被害が拡大するのはどうあっても防がなければならない。
「と、そう考えるよなぁ……ヒーローは守るものが多いもんなぁ?」
オール・フォー・ワンの狙いを即座に察知したオールマイトはその空気砲を強引に打ち消す為に同様の威力の殴打を利用した空気砲を撃たざるを得ない。
ただでさえ毎日の活動により日に日に活動限界が少なくなっている中……余りにも大きすぎる一撃であった……。
オールマイトは一撃で余力が全て持っていかれ……マッスルフォームの維持が困難になる。
その状態を確認したオール・フォー・ワンは泥の様に纏わり付く様な声音で語りかけてきた。
「考えてしまうよ、弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼……その決定打を僕が打ってしまって良いものか? でもねオールマイト、君が僕を憎む様に……僕も君が憎いんだぜ? 僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを奪っただろう? だから……君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えてほしいんだ、だから……君が守ってきたモノを奪う、怪我を押して隠し通し続けたその矜持、惨めな姿を世間に晒せ、オールマイト……平和の象徴」
そう告げながら先程の攻撃を、『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12の個性を用いた空気の圧縮による砲撃を再度繰り出そうとしてきた。
それを見たグラントリノが回避を叫ぶが避けれるわけがない……オールマイトの背後には倒壊したビルに生き埋めとなっている大量の人が居る……。
避けたらその人達は間違いなく、確実に死ぬ、故にオールマイトにはたった一つの行動しか許されなかった。
すなわち、同等の威力を有した攻撃にて颶風を生み出しての相殺……相殺し無理矢理に微風にまで威力を消失させる。
しかしながら、その代償は余りにも大きかった。
空を飛ぶTV中継のヘリコプターよりオールマイトが隠し通していた本来の姿が曝け出されてしまう。
それを見たオール・フォー・ワンは笑みを浮かべ告げる。
「恥じるなよ? オールマイト……それがトゥルーフォーム、本当の君だろう?」
そう告げるがオールマイトはいつもの様に笑みを浮かべながら言の葉を紡ぎ出す。
「身体が朽ち果てようとも……その姿を世間に晒されようとも……依然として私の心は平和の象徴、一欠片とて奪えるモノじゃない」
それを聞いたオール・フォー・ワンは仰々しい身振りと手振りを交えながら言葉を語る。
「素晴らしい‼︎ 素晴らしいなオールマイト‼︎ 参ったよ、君が強情で聞かん坊な事をすっかり忘れていた……じゃあ
その言葉を聞いてオールマイトの動きが止まる……表情も浮かべていた笑顔から一転、真顔になり呟く。
「嘘だ……」
そう呟いたオールマイトを見てオール・フォー・ワンが言の葉を紡ぐ。
「事実さ……分かってるだろう? 僕のやりそうな事だ、あれ? オールマイト……どうした? 笑顔はどうした? 笑顔は?」
オールマイトが後悔と悔恨に苛まれる最中……オールマイトの背後、倒壊したビルの隙間から這い出た女性が小さくか細い声音で叫ぶ。
「助け……助けて……オールマイト……」
それを聞いてオールマイトは再度笑顔をその顔に浮かべ右腕のみマッスルフォームを展開しながら叫ぶ。
「もちろんさ、お嬢さん……あぁ、多いよ……ヒーローは守るものが多いんだよオール・フォー・ワン‼︎ だから負けないんだよ」
そう叫ぶオールマイトであるがオールマイト自身既に察している。
何度も大規模攻撃を相殺した……とうに活動限界を超えていると。
しかし……それらは戦う事を諦める理由にはならない、目の前の敵に負けて良い理由にはならない。
オールマイトの背後の被害者達はシンリンカムイやエッジショット、などが救護に当たっている。
そして……オールマイトには聞こえていた、雄英の生徒達が、この映像を見ている者達が……アウルム・ミダスティアが、強い思いで自身の勝利を願っている声が聞こえていた。
それを見たオール・フォー・ワンは溜息を吐いて言の葉を呟く。
「煩わしい……精神の話しはやめて現実の話しをしよう、先程の一撃を相殺するだけで精一杯だった様だね? ならば……もう一撃はどうあっても相殺できないだろう?」
空中に浮かぶオール・フォー・ワンが繰り出そうとしてるのは人外の膂力を用いて空気を押し出し空気砲とする一撃。
オール・フォー・ワンは考える、別に1発でオールマイトに当てる必要はない、数発はわざと外して一般市民の被害を拡大させオールマイトが守りたかったモノを全部奪い去って途轍もない絶望と無力感を与えてから殺そう、一瞬だけ、ほんの1〜2秒だけそう考えた、絶望に呻くオールマイトを、絶望に打ちひしがれるオールマイトの姿を幻視して微笑む。
腕の筋骨を発条にし圧縮して人外の膂力を用いて空気砲をあらぬ方向へと撃ち込もうとした刹那オール・フォー・ワンの脚に
刺さったソレを見てオール・フォー・ワンは投擲された方角を見ると140m程の離れた場所で倒壊しかけているビルの屋上から投げナイフを投擲したラビットヒーローミルコとミルコに支えられながら虚な目でこちらを睨みつけるアウルム・ミダスティアが居た。
時はアウルム・ミダスティアがミルコに抱えられて救急搬送される時に戻る。
ミルコが戦線離脱した直後にオールマイトの本来の姿が曝け出されていた。
それを霞む視界で、纏まらない思考の中でTV中継で確認したアウルム。
ミルコに抱えられたアウルムはか細い声音で呟く。
「ミルコ……さん、私に……許可を……
アウルム・ミダスティアに出されていた戦闘許可はBARで救出された時点で解かれている、故にもう一度個性を
あのままでは先程ギリギリで打ち消す事が出来た空気砲の2撃目が撃たれる、撃たれた場合もう余力が尽きたオールマイトには打ち消す事ができない、甚大な被害と膨大な死傷者が出る事は想像に難くない。
しかし、アウルムの状態を確認していたミルコは当然許可を出すわけが無い。
拒否されるが……アウルムはミルコの肩を掴んでむせこみながら叫ぶ。
「今の……あの状態のオー……ルマイト……が……2撃目の空気砲を打ち消すのは不可能です……私なら止めれ……ます‼︎ お願いし……ます許可を‼︎ ミルコ……さん‼︎ 許可を‼︎」
ミルコは逡巡したのちに自身の腰に常備しているナイフを取り出しながら告げる。
「ナイフを投擲するのは私だ……一瞬黄金化するだけでその後直ぐに戦線を離脱するからな‼︎ アウルム‼︎」
そうして、場面はオール・フォー・ワンにナイフが刺さった場面へと戻る。
オール・フォー・ワンは忌々しい表情で呟く。
「何故……あの状態で動ける訳が……小癪なマネを……そんな事をしてもオールマイトやオールマイトが守っている者の寿命が数秒間伸びただけだというのに」
オール・フォー・ワンがそう呟きながらアウルム・ミダスティアの手を見るとその手には解熱剤の錠剤と急激に薬剤の効能を浸透させる薬剤の袋が見えた。
舌打ちしながら邪魔をしてきた小蝿の2匹を排除する為にそちらへと攻撃をしようとしたがオール・フォー・ワンは失念していた。
アウルム・ミダスティアは『黄金』を自由自在に操作できアウルム・ミダスティアの手に触れたモノに触れても黄金化による侵蝕が始まる、そして……黄金化した瞬間に、ソレはもうアウルム・ミダスティアの領域である。
アウルム・ミダスティアの黄金操作には例え神だろうと逆らえない。
攻撃が放たれる刹那、黄金化が脚から侵蝕して首から下が全て黄金化し個性の発動が維持できなくなり浮遊が出来ずに地面に落下する。
地面に激突した瞬間に黄金化は解除されるが眼前に、オールマイトの範囲に入った。
入ってしまった、ズタボロのオールマイトとはいえ手負いのヒーローが最も恐ろしいのをオール・フォー・ワンはその身に染みている、ハラワタを撒き散らしながら迫り来るオールマイトと戦った5年前が昨日のように思い起こされる。
「抜かったな……」
その瞬間、オールマイトの最後の、正真正銘最後の一撃が、全力の一撃がオール・フォー・ワンへと放たれ……ここに決戦は幕を閉じた。
ヒーロー社会の基盤にこれ以上ない程の深い深い傷跡と爪痕を残して。