【完結】黄金郷のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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終わりの始まり、始まりの終わり

 一夜明けて……被害の甚大さに世間は打ちひしがれていた。

 平和の象徴、オールマイトの引退に騒然とし……警察やヒーローは新たな改革が必要であると強く迫られる事となった。

 

 そして……アウルム・ミダスティアはというと、あの直後、救急搬送され雄英高校付近にある病院へと緊急入院。

 現在ICUへ入っており予断を許さない状況下で24時間治療が続けられている。

 複数の毒物が主な原因による高熱から肺炎を併発し急激な血圧低下やSPO2の低下、その他影響により現在は人工呼吸器を装着した状態である……。

 その状態のアウルムをクラスメイト達が順番に見舞いに来ておりその面持ちは悲痛に染まっている。

 そして……予断を許さない状態のまま4日間が経過した。

 

 5日目の早朝、アウルム・ミダスティアは目を覚ましたがまだ上手く身体が動かせない……横目で状況を確認するとナースコールがあった為にソレを弱々しい力で押す。

 その瞬間ナースステーションから数名のナースが駆けつけてきており状況を確認後、Dr.が診察を行いひとまずは人工呼吸器を外す許可と10時を回り次第ICUから一般病棟へと移る許可が出された、

 のちに聞いた話しであるが40秒ほど心臓が止まった時が6回程ありその時は本当にやばかったと担当医から告げられた。

 その後アウルム・ミダスティアには身寄りが居ない為に雄英高校へと連絡がなされてその日の夕方に相澤先生やA組のクラスメイト達が駆けつけてきた。

 まだ歩行は許可されていない為に車椅子に座りながらの面会となった。

 

「大変ご心配をおかけしました……」

 

 病衣のまま車椅子を操作しながら面会室でクラスメイト達へそう告げるアウルム。

 芦戸三奈は大泣きしながらアウルムに抱きついておりアウルムは芦戸三奈の頭を撫でながら告げる。

 他の女子陣も泣き顔を浮かべながら口々に状態が快方に向かって良かったと告げられる。

 男子陣からもお言葉をいただいて担任である相澤先生からも快方に向かって良かったと告げられ色々と話していると面会時間が終わりクラスメイト達と別れて病室に戻ると流石にまだ本調子ではない為、睡魔が襲いかかって直ぐ様寝てしまった。

 そして翌日から少しずつリハビリが始まりその合間にリカバリーガールに『治癒』を施してもらい入院してから7日目、ようやく退院が許可されたがアウルム・ミダスティアの顔は憂鬱であった。

 その手には病院からの封筒が握られておりアウルムはため息を吐きながら呟く。

 

「入院費と治療費見るのが怖いなぁ……ICUに入ってたから差額ベッド代は無いのが唯一の救いだけど……はぁ」

 

 アウルムは呟きながら戦々恐々としつつ封筒を開封し中に入っている請求書の額を確認する。

 

「……ッ‼︎ 58万7700円か……今月と来月と再来月の雑費や諸々限界まで切り詰めればなんとか……いけるか?」

 

 そうアウルムがウンウンと唸っていると背後より兎の個性だろうか帽子で隠れてはいるが兎の耳をピョコンと生やしたノースリーブにジーンズ姿の女性がアウルムの請求書をまるで自身のであるかの如く取って行きそのまま精算をして戻ってきた。

 余りの出来事にポカンと間抜けな表情を浮かべているアウルムにその『兎』の個性持ちの女性は爽やかな笑みを浮かべて喋りかけてきた。

 

「退院おめでとう‼︎ 後遺症が無くて何よりだよ、君の諸々の請求書は私が代理人として全て支払っておいたから何一つ心配する事は無い‼︎ さぁさぁ何を惚けている」

 

 怒涛の捲し立てにしどろもどろになりながらも言の葉を紡ぐアウルム。

 

「た……大変恐縮ですがお名前をお伺いしても?」

 

 そう告げると、ん? 自身の服装を確認してから帽子で隠している兎耳を立ててアウルムを見る。

 

「あぁ私服姿の私を見るのは初めてか、ミルコだよミルコ」

 

 そう言われて兎耳を見る……そう言われて思い出した。

 

「ミルコさん⁉︎ どうしてここに⁉︎ て……ていうか今……諸々の請求書(・・・・・・)って言いました⁉︎ もしかして他にも⁉︎」

 

 諸々のという意味を察しそう小声で叫ぶアウルム。

 

「まぁ瑣末な事さ、気にするな気にするな……クラスメイト達が外で待ってるからとっとと会ってこい」

 

 アウルムはミルコに背中を押されて病院の外へと出て少し行った道にクラスメイト達が居た。

 芦戸三奈が真っ先に気づき泣き叫びながら激突してきた。

 

「心配したよおおおおお‼︎」

 

 そう叫びながら抱きついてきた芦戸三奈……それに対してアウルムはポンポンと優しく頭を撫でながら芦戸三奈に対して言の葉を紡ぐ。

 

「この前の面会の時も言いましたが……みなさま本当に心配させて申し訳なかったです……」

 

 そう頭を下げるとクラスメイト達が口々に私のせいではないと言ってくれるが……それは確かに嬉しい……嬉しいのだが……オールマイトが引退してしまった原因は元を正せば私が全ての原因でありそんな私に生きている価値などあるのだろうか……そもそもあの時……10年前のあの地獄にいる時に私なんぞ朽ち果てているべきであったのではないか? 死んでしまっていたほうが良かったのではないか? ……様々な絶望がゆっくりと身体を包み込むのを感じた。

 クラスメイトと別れ家へと着き玄関を通り廊下を歩こうとした時ですらもその事だけが無限に思い起こされる。

 そもそも私が攫われなければオールマイトの引退は起こらなかった出来事ではないのか? 何故あの時……意味のない……たらればが頭の中を回り続けて、何一つとして出来なかった悔恨と絶望が消える事なく脳内を支配する。

 もはやその事だけがぐるぐると脳内を駆け巡りアウルムの双眸から自然と涙が零れ落ち廊下で座り込んで零れ落ちる大粒の涙を拭う事なく泣いていた。

 アウルムの脳裏にはあの時の事が強く強く鮮明に焼き付いている、ミルコさんに抱えられながら、霞む視界と淀む意識の中で聞こえてきたあの神野の被害者の呻きながら死んでいく人達の声音が脳裏から離れない……体をギュッと丸めながら両手で顔を覆い自身の膝下に顔を埋めながら何度も何度も思い返す……。

 何も出来なかった。何も救えなかった。

 精一杯訓練や授業をやってきたけど、結局あの時、あの場所では助けられるだけでずっと足手まといの役立たずのままだった。

 あの時、ミルコさんに助けられているあの時……刹那の間だけで何度思った? 「あぁ、生き残ったのが自分以外の誰かならば良かったのに」と。

 罪悪感に苛まれる……何十分経過したか分からない程泣いていると不意にインターホンが鳴った為にカメラ機能付きインターホンのモニターから相手を確認し呟く。

 

「……焦凍?」

 

 何故家に来たのか? そもそも何故家を知っているのか? そんな瑣末な疑問が湧き出てくるがこの際置いておこう……涙を拭い、いつもの凛とした声音を意識する。

 待たせるのも悪い為インターホン越しに言葉をかけてドアを開け言葉を交わす。

 

「どうしたのですか? 焦凍……私が心配で家まで来ちゃいましたか?」

 

 自身の顔は見れないが屈託のない笑みを浮かべる様に極限まで意識しながら焦凍にそう語りかけた。




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