一次試験がスタートして30分後。
続々とクラスメイト達が合格していき……ギリギリの所で皆が控え室に集まってきた。
アウルムはサムズアップして皆に告げる。
「おめでとう……信じてましたよ、皆」
そう告げると二次試験のスタートが告知される。
それの同時に1次試験で使用されたフィールド全体を爆破して災害現場を再現する……。
演習のシナリオは「ヴィランによる大規模テロが発生、建物倒壊により傷病者多数、道路の損壊が激しいため救急の到着に著しい遅れが生じ、到着するまでの救助活動は現場のヒーローたちが行う」というものと説明があった、受験者は仮免を取得済みのバイスタンダーとして救助を行うとも。
そして、試験開始のアナウンスと共に一次試験で使用した市街地を模した演習場が爆破される。
『○○市で
それを聞いたアウルムは顎に手を当てて呟く。
「なるほど……これは中々……」
おそらく神野の惨劇を模したもの……そういう事か。
隣に立っている焦凍に向けて呟くアウルム。
「なかなか……大変な試験になりそうですね」
そう告げると二次試験がスタートした。
アウルムは黄金を地面に垂らして800m以内で感知した心音や声などから要救助者が居る場所を即座に確認し周囲の他学生達に伝達、また瓦礫が奇跡的な形でバランスが保たれて救助に時間がかかる場所に生き埋めになっている要救助者に対しては瓦礫全体を黄金化して操作、迅速に救護出来るようにサポートを行う。
そして、地面を黄金化させ周囲の瓦礫を排除しヘリの離発着場を形成、その後暫定的ではあるが救護所を制定し担ぎ込まれた傷病者のトリアージを行い慎重に、しかしスムーズに救護を行なっていく。
そうして救護を行なっていると救護所の僅か数十メートル先で爆発音が響き渡り……ギャングオルカとそのサイドキック達がゾロゾロと現れた。
アウルムは隣にいた他学生に手話で
要救助者の対応をしている最中で言の葉を交わす余裕はない上に要救助者の前で口頭で告げるとパニックが起き伝播して現状以上の更なる混乱と不安を招いてしまう。
ただでさえ怯えている所に更なる不安を煽る訳には行かない。
隣に居た真堂さんが個性を発動して自身の個性で揺らそうとした刹那、アウルムが叫ぶ。
「ギャングオルカ……とそのサイドキック全員ですか……ざっと60名程……真堂さん‼︎ 私に合わせてください‼︎ 可能な限り
真堂さんの『揺らす』個性と液体化させた黄金を合わせ地面を砕いた瞬間に黄金化させて半分程の
液体にして浸透させていた黄金の形状を変化、触手状にして更に何人かは絡めとる事が出来たがギャングオルカには悉く避けられ超音波で反撃を喰らう。
凄まじい音波を喰らい黄金の操作が覚束なくなり、意識が飛びかけるがそんなモノは何度も何度も繰り返し対策してきた。
上鳴や耳郎さんに頼み込み広範囲電撃や大爆音による音波攻撃などを受け続けて意識が飛び掛けても黄金の操作だけは決して覚束ない様に修練を積んできた。
だが……やはりきつい。
地面に倒れ伏しギャングオルカに頭部を踏み抜かれる刹那、なんとか回避してギャングオルカに攻撃を繰り出そうとしたがセメントガンで脚を固められ動きを一瞬封じられる。
私が動けなくなった一瞬を狙って私に絡んできた士傑高校の1年が……傍目にはギャングオルカに向けて、実際には私へと向けて高々度から風を纏って威力と速度を上げながら蹴りを繰り出そうとしたがギャングオルカは蹴りの軌道上にアウルムを重ねて蹴りの衝撃の全てをアウルムに肩代わりさせる。
顎を蹴られ脳を揺さぶられたアウルムは一瞬視界が歪む。
その一瞬の後、氷壁でギャングオルカやサイドキック達の攻撃が阻まれる。
「大丈夫か‼︎ アウルム‼︎」
焦凍がアウルムのフォローに入りギャングオルカ達の攻撃を防ぐが防戦一方にされてしまう。
焦凍は先程の蹴りの真意を理解していたのか士傑高校の1年に向けて怒鳴ろうとしたが他ならぬアウルムによって止められ焦凍にしか聞こえない声量で怒鳴られる。
「今やる事を思い出すのです‼︎ 馬鹿が私怨を晴らしにきただけです‼︎ 放っときなさい‼︎ 焦凍‼︎ 壊されても常に氷壁を張り続けて遅滞戦闘‼︎ 10秒後に私がギャングオルカとそのサイドキックを完全に封じます‼︎」
傍目から見れば誤爆だが試験官達は全員察していた……先程の士傑高校の1年による蹴りの真意を……。
故に担当の試験官による減点が為される。
焦凍はアウルムに言われ今が何なのかを思い返し氷壁を用いて遅滞戦闘を行う。
そして10秒後、揺れた視界が収まったアウルムは地面に垂らしていた黄金から相手の位置を完全に掌握すると氷壁を音波を用いた攻撃で余裕でぶち割っているギャングオルカとそのサイドキック達全てを黄金化させて彫像とし完全に無力化する。
それを見たアウルムはゆっくりと呟く。
「全
そう焦凍に告げると即座に残った要救助者の救護を行い……10数分後に二次試験は終了となった。
この場での合否判定となる為10分程時間を置くとのこと。
ギャングオルカとサイドキック達の黄金化を解除するとギャングオルカより告げられる。
「蹴られた顎……大丈夫か? 少女よ」
やや歪む視界だが特に問題はない……。
「えぇ大丈夫ですよ、ご心配どうも」
そう告げるアウルム、戻ってきた焦凍が肩を貸してくれゆっくりと歩き医務室へと向かう。
そして10分後……合否判定が為される。
その前に、採点方式についての説明が為される。
「皆さん長い事お疲れ様でした……これより発表を行いますが……採点方式についてです我々ヒーロー公安委員会とHUCによる二重の減点方式であなた方を見させてもらいました……つまり危機的状況下でどれだけ間違いの無い行動を取れたのか審査しています、とりあえず合格点の方はこちらのモニターに五十音順で名前が載っています、今の言葉を踏まえた上でご確認下さい」
モニターに名前が表示される。
その中にアウルム・ミダスティアと轟焦凍の名前がしっかり表示されており……またクラスメイト達の名前もあったが……爆豪勝己の名前だけが無い。
一緒に行動していた上鳴や切島のかけた言葉で何となく察した……あの言葉遣いではさもありなんと言った感じである。
それを見ながらモニターの名前を観ていると先程わざと蹴りを繰り出してきた士傑高校の1年が必死にモニター上の自身の名前を探していたが落胆の表情を見ると彼は落ちていた様である。
アウルムは何か言おうとしていた焦凍の服の袖口を引っ張って止める。
「焦凍、私は終わった事を蒸し返す程暇じゃ無い……まぁ落ちたという事はそういう事ですよ……試験官達はあの蹴りの真意を理解してたという事です、まぁ他にも減点の理由がありそうですが」
そう言っているとプリントが配られると告げられる。
詳しく記載してあるらしい。
それを確認すると93点……初動で立ち止まってしまったりしたのが減点理由でありそれ以外には特に減点はない。
「焦凍は何点でした?」
そう言いながら隣にいる彼氏の点を見る。
「おぉ、89点……よかったですね」
屈託のない笑顔を向けてそう呟く。
そして……委員長が最後に締め括りの言葉を述べて……仮免試験は終わった。