試験が終わって……土曜日の訓練後。
アウルムは1人で相澤先生の下を訪れていた。
「この前出した夜間の外出許可証の話しだ、それも轟の分も代筆で……どうした?」
そう問いかけてきた相澤先生。
理由を問いかけてくるのは担任である以前に全寮制と相成っているこの時期、外出許可証を提出するのは珍しくもないが夜間の外出許可証を求めてくるのはほぼ無い。
故に問いかけてきた。
それに対してアウルムが語る。
「ちょっと……焦凍にサプライズをしたくてですね……時間帯と場所で先生なら大体察すると思うのですが……つまりそういう事です」
そう言われた相澤先生は出された書類を見ながら呟く。
「まぁ……理解した……許可は出すよ……分かっていると思うがくれぐれも気をつけていく様に」
そう言われてアウルムはゆっくりと頭を下げてお礼を言って職員室を後にする。
そして夜間外出当日。
防寒の為、少し厚着をしている焦凍はアウルムへと問いかける。
「なぁ……どこに行くんだ? 夜間外出って……」
そう問いかけられるがアウルムは口元に指を当てて笑顔を浮かべながら焦凍へと告げる。
「それは秘密です」
そう告げるとこの日の為にお願いしていた運転手によろしくお願いしますと告げる。
運転手は事前にアウルムから行き先を聞いていたのか軽い会釈のみで車を走らせる。
車を走らせている最中……焦凍が語りかけてきた。
「なぁアウルム……そういえばお前は俺の何処が好きになったんだ?」
そう問いかけるとアウルムは即座に、迷いなく、一切恥ずかしがる事なく答える。
「優しい所、可愛い所、私が困っている時にはいつだって助けに駆け付けてくれる王子様みたいな所……焦凍は? 私のどういう所が好き?」
それを聞いた焦凍は気恥ずかしさから顔を赤らめて俯いて言葉を返した。
「好きじゃない所はハッキリしているよ……」
そうこうしているうちに1時間ほどで目的地へと到着しアウルムのみが車から降りて焦凍に告げる。
「少々お待ちくださいね、焦凍……2〜3分で戻って参りますので」
そう言われ焦凍は車内に取り残される。
会話を行おうにも運転手と出来る会話は食べ物の好みや飲み物と言った所で即座に話題が尽きる……。
話題のタネを思案しているとアウルムが戻ってきて焦凍に告げる。
「お待たせしました焦凍……準備ができました、あぁそれと決して、私が良いと言うまで上を向かない様に」
そう言われ焦凍は素直に従う。
歩く事3分程……広げられたレジャーシートに目を閉じて横になる様に言われてその通りにすると、5秒ほど経ったろうか、アウルムより目を開けていいと告げられゆっくりと目を開ける。
焦凍がゆっくりと眼を開くと……そこに飛び込んできたのは満天の星々であった……。
満天の星々を観て焦凍は自然と言葉を溢す。
「とても……とても綺麗だ……正直言ってそれ以外の言葉が思い浮かばない」
それを聞いたアウルムは苦笑しながら焦凍へと告げる。
「語彙力がなくなってしまったのですね……あれがデネブ、アルタイル、ベガ……有名な夏の大三角……そこから横にスーッとそれてあの辺りが蛇遣い座なんです……だからあの辺りの星が蛇座になります……あそこの一際明るい星がスピカです……あの辺りに乙女座がありますね……今日は珍しく天の川も見えますね」
焦凍は隣で星座について解説している彼女を見ながら解説を聞く。
そして……寝転んでいる彼女は言葉を一度区切り……寝転んでいる焦凍の顔を見ながら言の葉を紡ぐ。
「これで……これで全部です」
そう告げてくるアウルム。
焦凍は聞き返す、何がだ? と。
アウルムは自身の胸に手を当ててゆっくりと言葉を語る。
「私が持っているもの全部──残す所はこの星空だけでした……私が持っているのはもう、これくらいのもの……私が焦凍にあげられるのは、これくらいのもの、これで……全部です、私が持ってるもの全部」
そう告げられて焦凍は自然と静かにゆっくりと言葉を溢す。
「全部」
それを聞いてアウルムはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「えぇ……全部、厳密には毒舌や暴言もありますが」
それに対して焦凍はツッコむ様な形で言の葉を紡ぐ。
「それは要らない」
それを聞いたアウルムはクスリと笑いながら悪戯っぽく笑みを浮かべ言葉を続ける。
「それに、私自身の肉体というのもあるけれど……それも要らない?」
それを聞いた焦凍は顔を赤らめながら言の葉を語ろうとしたが上手く言葉が出せない。
アウルムはそのまま言葉を紡ぐ。
「けれど知っているでしょう? 私はその昔、
そう告げるとどちらともなく手を握り合い言葉を交わす。
「ねぇ焦凍……私のどういう所が好き?」
そう問いかけられた焦凍は迷う事なく口を開く。
「全部好きだ……好きじゃない所は無い」
「そう……嬉しいわ」
焦凍からも問いかけられる。
「アウルムは? 俺のどういったところが好きなんだ?」
そう問いかける焦凍、アウルムは即座に告げてきた。
「優しい所、可愛い所、私が困っている時にはいつだって助けに駆け付けてくれる王子様みたいな所……」
そう言葉を交わしながら……アウルムは思い出したかのように呟く。
「そう言えばあの
言い淀んでいたアウルムだが少し落ち着いてからアウルムは焦凍の顔をしっかりと見ながら告げてきた。
「キスをしましょう、焦凍」
こうして、今日は記念すべき日になった。
俺とアウルムにとって。