苛立った表情を、憎悪の表情を包み隠す事なく向けてくる3人。
それを見たアウルムは言の葉を交わす事なく無言で自身の個性を用いて捕縛しようと液体状に変化させた黄金を操作し弾雨の様に目の前の3人に向けて集中砲火を行う。
しかし治崎廻の個性で即席の盾を作られ防がれるがアウルムの個性で操作された黄金は即席の盾を侵蝕し更に襲いかかる。
若頭補佐玄野の個性、クロノスタシスが襲いかかるが即座に黄金化で捕縛。
黄金の彫像へと変化させて無力化するとアウルムは治崎廻を指差して告げる。
「治崎廻、貴方の個性は周囲に資材があればある程脅威が増す……けれど私の個性とは相性が悪かったですね……個性を使った戦闘とは言わばジャンケンのようなものです……ただし手数が無数にあり極めて複雑で難解なジャンケンですが」
そう告げた瞬間に治崎廻が凄まじい身体能力と速度で近接戦闘に切り替えてきた。
アウルムも治崎廻も互いにその手で相手に触れれば即座に相手を無力化できる。
地面を侵蝕している黄金を棘や弾丸状に変化させて攻撃するが治崎廻は持ち前の反射神経と身体能力でその悉くを回避しつつ距離を詰めてくる。
効率的に捕縛する為に
しかも治崎廻程の強者ともなれば1秒の隙が何を生むかなんぞ言わずもがな。
アウルムは間断なく繰り出される治崎廻の攻撃を捌きながら思考する。
あまりにも後続の者達が遅すぎると。
それを察したのか音本真がその個性を発揮しつつ語りかけてきた。
『余裕がなくなってきているな? 焦っているのか?』
その問いかけにアウルムの口が勝手に開き言の葉を紡ぐ。
「あぁ……確かに余裕はないね、大技はタメがあって打てないし傷を負わせても壊して治される、黄金で侵蝕させようにもその周辺ごと根こそぎ削り取られた後に修復される、なのにチマチマと削るしかない……そして焦ってるね、余りにも後続が遅すぎる」
アウルムは舌打ちしつつ開いた口を咄嗟に黄金化して物理的にこれ以上喋れない様にすると無言で音本真と治崎廻を睨みつける。
治崎廻はまだギリギリ黄金化が為されていない箇所をその手で触れて新たに武器を作りアウルムの方へと投擲してくる。
アウルムは周囲に漂わせている黄金で投擲してきた物体を侵蝕する。
その刹那、治崎廻の声が響く、泥の様な苛立ちを含ませながら。
「なぁ音本……お前は俺の為に死ねるだろう?」
治崎廻の手が音本真に触れて……治崎廻は音本真という人間を素材にしながら自身の肉体を造り変えていく。
背中より6本の腕を生やした姿になり……おそらく元々あった2本の腕と同様、生えてきた6本の腕でも治崎廻の個性である『オーバーホール』は扱えるのだろう、しかしながら……肉体の大きさまではそのままではいられなかった様で5m程の巨大化をしている。
それを見ながらアウルムは自身の口の黄金化を解除して告げる。
「デカければ勝てるとでも思ったか? 腕が2本から8本になった所で……触れられるものがなければ『オーバーホール』も意味を為さない」
そう告げて自身の個性を用いて周囲にある黄金を人型に成形していく。
「そちらが手の数を増やしたのならばこちらも手数を増やそう……黄金郷のワッケーロ」
そう告げて、黄金で形作られた盗掘者の格好をした骸骨人形を5体操作して治崎廻の周囲の床の黄金化を侵蝕させる。
それを認識した刹那、治崎廻が天井をぶち破り地上へと脱出しようと試みるも既に天井が黄金により侵蝕されており逃げ場が無い。
それを見ながらアウルムは告げる。
「言った筈だよ? 絶対に逃さないと」
その言葉を聞いた治崎廻は黄金化していく肉体を見て……凄まじい憎悪を込めた表情で、悍ましい程の殺意を込めた眼でアウルムを睨みつけながら黄金の彫像へと変化させられていった。
完全に黄金化したのを確認するとアウルムはゆっくりと床に座り込み壁を背もたれにして荒い息を落ち着かせる。
戦闘という極限のストレス行為から解放されてドバドバ出ていたβエンドルフィンの分泌が少しずつ収まってきたのかいつの間にか分解されていた自身の脇の下に意識を集中し分解されたまま千切れっぱなしの血管を把握する。
失血で意識を失う前に脇の下の千切れている血管を黄金化させて簡易的ではあるが
血を流しすぎた為に脱力し動きが取れないアウルムは弱々しく手を振り言の葉を紡ぐ。
「随分と遅かったですね……地下にでも叩き落とされましたか?」
ヒラヒラと力無く手を振りそう告げるとイレイザーヘッドより状況説明を求められて対応する。
そうして……治崎廻や八斎衆達は逮捕されて……死穢八斎會は壊滅した。
イレイザーヘッドより聞いた話しではあるが……私が移動した後に八斎衆の全員が現れて混戦となりそれによりナイトアイが全治4ヶ月の重傷を負い病院へと搬送されていった。
かくいうアウルムも脇の下の千切れている血管の治療の為に一時病院へと搬送される。
病院に着くとアウルムは負傷部位が脇の下の太い血管である為に急いで血管縫合術を行う事となった。
黄金化させて
2日間の入院を経て3日目に退院が許される、病院から出るとパトカーに案内されて調書を取る為に警察署へと向かうアウルム。
それが終わったのは夜8時であり雄英寮に着くとクラスメイト達より心配したというお言葉を頂き軽く会話をした後に部屋へと戻り風呂を済ませると共有スペースでくつろいでいる焦凍へと告げる。
「やっと帰ってこれました……私は非常に疲れています、という訳で焦凍、私は貴方に存分に甘える権利を行使します、今度の日曜日にデートをしましょう……プランニングは貴方にお任せします……焦凍自身が考えたプランを楽しみにしています」
それを聞いた焦凍はその手に持っていたスマホを落としたのにも関わらず数秒フリーズしており芦戸三奈や女性陣は沸き立っている。
そんな焦凍を見ながらアウルムは告げる。
「では、日曜日に……楽しみにしています」