焦凍とのデートが終わり数日後に開催された雄英文化祭が終わり……ヒーロービルボードチャートJPも発表されて、そうして11月も下旬に差し掛かる頃……いつもの様に壊理ちゃんと寮へと帰ると何故か共有スペースに相澤先生が居た為、会釈をすると相澤先生から衝撃の言葉が放たれる。
「アウルム……お前の部屋で預かっている壊理ちゃんなんだが……今日、現時刻を以て教師寮で預かる事となった」
その言葉を聞いたアウルムはその手に持っていたスマホを床に落とした事にすら気付かずに涙を流し壊理ちゃんを抱きしめながら叫ぶ。
「えぇ⁉︎ 何故⁉︎ ヤダッ‼︎ 愛しい妹と離れ離れになるの寂しい‼︎」
それを聞いた相澤先生はアウルムの頭部を軽く叩いて言の葉を紡ぐ。
「妹じゃないだろ……勝手に血縁関係にするな馬鹿、アウルム、あのときに言ったろ……落ち着くまでの間だけお前と過ごすのを許可すると、もう精神的には落ち着いてきたし訓練の甲斐あって『巻き戻し』の暴発の可能性もなくなった……それに教師寮の空き部屋に移動するだけだ、もう一生会えなくなるって訳じゃない……」
操縛布で締め付けられるアウルム……。
その口からは嗚咽混じりの言葉が流れている。
まぁ……少しすると落ち着いたのか……泣きながら教師寮へと歩いて行く壊理ちゃんを見送ったアウルム。
よよよ……と半泣きになっていたが。
しばらくすると風呂に入って来ますと告げて風呂へと向かい2時間後にようやく出て来たアウルム。
スマホのカレンダーを見たアウルムは何かを思い出したかの様に呟く。
「そう言えば……明日は……あ‼︎ やっば‼︎ 外出許可取ってない‼︎」
突如として教師の寮へと猛ダッシュをして出て行った……それを見た皆はポカンとした表情でアウルムを見送った。
「相澤先生‼︎」
息を切らせて教師寮の扉を乱雑に開け放ちそう叫ぶアウルム……通りがかった先生方が全員こちらを見るが何事かと壊理ちゃんを連れたまま出てきた相澤先生が教師陣全員の声を代弁する。
「もっと静かに扉を開けろ、そして静かにしろ……で? 用事は何だ……」
それを問われて喋ろうとしたアウルムだが……隣に立つ壊理ちゃんを見て言葉を濁す。
「あー……あまり壊理ちゃんを前にしては言えない事でして……出来たらすこーしだけ……他の部屋に……」
そう告げると相澤先生はその意図を汲んだのか13号先生に壊理ちゃんを別室へと送ってもらう様に頼み再度アウルムの方へと向いて言葉を紡ぐ。
「で? 何の用事だ……言っとくが壊理ちゃんを部屋に戻して下さいなんて事を言いに来たのならば……普通に怒るし反省文書かせるからな」
目をギラッと光らせて操縛布を持ちながらそう告げて来た相澤先生へとアウルムは小声で告げる。
「え……とですね……明日ですけれど外出許可を取り忘れていたので許可を取りに……」
そう告げると相澤先生は髪を掻きながらアウルムへと告げる。
「理由は?」
そう問いかけられたアウルムはおずおずと俯きながら答える。
「……明日は両親の祥月命日なので……近況報告と墓参りに」
それを告げた瞬間に教師寮の空気が一瞬で氷点下まで下がり場が凍った……そして相澤先生は心底思った、聞かずに許可を出すべきだったと……ため息を吐きながらアウルムへと告げる。
「そういうのはもっと早く言え……そう言われて許可を出さない訳ないだろう……で、出発時間と帰寮時間は?」
許可をいただいてアウルムは時間を告げる。
「8時に出発して……16時には帰ってきます」
そう告げると相澤先生から分かったと告げられ、次からはもっと早く告げる様にと告げられる。
そして翌日……朝食を食べた後に黒ワイシャツと黒のジーンズ、そして黒のコートといったいつもの服装に着替えて外へと出る。
そして電車を乗り継ぎとある墓地へと到着して……途中にある花屋で購入した献花と墓地に置いてある桶と柄杓を持って桶に水を張った後に墓前に向かい墓の周りを綺麗に掃除する事1時間30分……掃除を終えるとゆっくりと墓前に向かい手を合わせる。
「お母さん、お父さん……私もお母さんとお父さんと同じヒーローになる為に毎日雄英高校で厳しい修練を重ねています、授業はキツイですがクラスメイト達とも楽しくやっていますよ……可愛い義妹もできました、そして……報告が遅くなりましたが私にも彼氏ができました……見て下さいこのブレスレット……彼氏とお揃いなんです……どうか天国から見守っていて下さい……また来ますね」
そう手を合わせながら近況報告をして帰ろうとした刹那、上から何かが襲来してきた……地面とナニカが激突し土煙が舞い散る。
アウルムは咄嗟に墓地が破壊されない様に黄金化し土煙が晴れて襲来してきたナニカの姿が視認できた。
それを視認したアウルムは眼前の生物が口を開き意味のある発語をしたのを確認して絶句したのちに呟く。
「脳無……何故ここに……というよりコイツッ‼︎ 意味のある発語を……
脳無、
人外の膂力、拳打の速度、痛覚が無いのかどれだけ攻撃しても怯む事が無い頑強な肉体、複数個性持ちである事、諸々を踏まえて脅威である。
ポケットに入れているスマホが振動しメッセージアプリの着信と共に通話のメロディが鳴り響くが正直そんな事に気を回している余裕はない。
手袋を外しスマホへと触れると黄金化させ浮遊させながら声紋認証でロックを外し通話を起動すると相手は相澤先生であった、切羽詰まった声音で相澤先生が叫ぶ。
『もしもしアウルムか? 今何処にいる⁉︎』
迫り来る殴打をギリギリの所で避けながらアウルムはスマホに向けて現況を叫ぶ。
『脳無とエンゲージ‼︎ この脳無‼︎ 喋ります‼︎ 現在位置は墓地です‼︎ 交戦中‼︎』
そう叫ぶと脳無が地面を殴った事により生じた暴風にてスマホが遥か彼方まで吹き飛ばされる。
しかし、アウルムのその手は暴風に触れた。
刹那、風が黄金へと変わり……脳無を反応すらさせずに黄金の彫像へと変化させる。
完全に黄金へと変わったのを視認してから飛ばされたスマホを黄金の遠隔操作の応用で手元に戻していまだに繋がっている通話に声をかける。
完全に彫刻とかした脳無に背を向けて。
『もしもし、相澤先生……えぇ詳しい事は後ほど警察の人と共に……えぇ、福岡にも脳無が? そちらはエンデヴァーが倒した……えぇ、了解です墓参も終わりましたので……今から帰寮します、えぇ……はい……』
通話を続けているとアウルムは違和感を感じて自身の足元を見る。
黄金に煌めく両脚が自身の視界に入った刹那、黄金の彫像へと変化させ一切動く事の無かった脳無が自身の背後より、その人外の膂力を以ってして殴打を行い無防備なアウルムを数100メートル先の竹林まで殴り飛ばす。
落雷の様な轟音と凄まじい土煙が起こり一瞬何が起きたか分からなかったアウルムだが自身の腹部を貫通している竹により墓地からここまで殴り飛ばされたのだと理解した。
そして腹部に竹が貫通し直径10センチ程の大穴が空いている為に数秒遅れて咳と共に地面に血溜まりが出来るほど大量に血を吐く。
「ゲェホ……ゴッホ……アレで何故……相澤先生? まだ通話できてますか?」
手元にあるスマホを力無く見ながら電話が繋がってるのを確認するアウルム。
『何だ今の轟音は‼︎ 何があった⁉︎』
スマホから聞こえる相澤先生の声に少しだけ安堵し現況を報告するアウルム。
「黄金の彫像へと変化させた筈の脳無が何故だか私の個性を解除して私を殴打……数100メートル先まで殴り飛ばされて竹林に激突した私は竹が腹部に貫通してお腹に直径10センチ程の穴空きドーナツ状態です……生命維持に必要不可欠な内臓は咄嗟に黄金でコーティングして損壊を免れましたがそれ以外はちょっとキツイですね……腹部に空いた穴から血はドバドバ流れて止まらないですし、血を失いすぎたのか寒すぎて凍えそうです……何よりあの脳無、私の個性と同一なのでしょう……私の黄金へと干渉出来ます……なるほど、私から、私の細胞を使って複製でもしたのでしょう……私と同じ個性持ち、私と同じ呪いを使う存在……って事です……最悪です、私の写し鏡は私しか倒せません……私以外は全て黄金の彫像へと変化させられます……近くにいるプロヒーロー達には相澤先生から絶対に近付かないように強く言って下さい……控えめに言って戦力になりません避難誘導に徹して頂いた方が1000兆倍マシです、あの脳無が操る黄金の人形にでもされたらそれこそまずいので」
そう告げた刹那、脳無が先程の墓地近くから跳躍して遥か上空より蹴りをする為に体制を整えてジェット機が如き速度で襲いかかって来た。
アウルムは千切れた血管部分の
1つ・『肩部のジェット機構』による飛行。
2つ・『変容する腕』による飛行の補助及び伸縮、分裂攻撃、そして無数の手を生やす。
3つ・伸びた腕を補強する『筋力増強』
4つ・どんなに深い傷であろうと、脳さえ無事ならチリになろうと与えた傷をコンマ秒単位で治す程の『超再生』。
5つ・アウルムと同じく『手』で触れる事による『黄金』及び『黄金操作』。
6つ・多数の個性を使う為に思考する隙を無くして並列処理する為にあると思われる超高性能スパコンを凌駕する程の『超高速演算』
7つ・恐らくは……元々人外の膂力を更に増幅させているであろう個性、30階建てのビルすら軽々と1000m先まで投擲できる程の人外の膂力を生み出す『剛力』。
8つ・肉体の変容を可能にする個性である『肉体操作』。
黄金化させた際に脳内に流れてきた情報を整理して眼前の存在があまりにも荒唐無稽な存在である事を理解して苦笑いを浮かべるアウルムだが……ここで仕留めなければ確実に私は死ぬのだ、静かに目を閉じて自身に言い聞かせる。
覚悟を決めろアウルム、ここで逃げても応援は来ない、道は2つのみ……
それに……眼前の生物は私がなり得たであろう存在なのだから……ボタンを1つでも掛け違えていたら、ほんの少しでも道が違っていたら、僅かに逸れた違う未来に居たであろう自分なのだから。
「だから……私の写し鏡は私が倒します」