その後……轟家に招待されお夕飯をいただく運びとなった。
そして轟家へと到着するとエプロン姿の冬美さんが出迎えて来た。
「忙しい中お越しくださってありがとうございます、初めまして……焦凍の姉の冬美です、中学校で教師をしています」
自己紹介をされた後、居間に案内されて食事となった。テーブルに並ぶ四川麻婆や竜田揚げ、野菜炒め、餃子、回鍋肉や青椒肉絲などが並ぶ。
どれもこれも丁寧に下拵えや下処理がなされておりとても美味しい……素晴らしい料理を味合わせて頂いた。
食事を終えて後片付けの手伝いを行いながらアウルムは思案する。
まぁ……食事の最中に轟家の家族問題が垣間見える所はあった……あったのだが……私にはもう、それすら無い……故にそう言ったいざこざですらとても羨ましいと思う、私は2度と叶わないから……家族皆で一緒の食卓に揃うというのは……やっぱりとても……狂おしい程に羨ましい。
緑谷と爆豪と共に残りの食器類を台所へと運ぼうとした時……焦凍と冬美の会話が筒抜けになり爆豪がキレながら残りの洗い物を持っていく為に入室する。
アウルムも残りの食器を手早く積み重ねて持って行こうとした際にアウルムは焦凍と冬美に告げる。
「焦凍……冬美さん、部外者の、余所者の私から言われても何なんだと、そう思うかも知れませんが……一言、貴方の『家族』は……まだ修復できますよ……少なくともその余地はあります、本当に……もう完全に修復不可能なら、夏雄さんはそもそも食卓を囲む事が無い筈ですし……」
アウルムはそこで一旦言葉を切って、再度言の葉を紡ぎなおす。
「何よりも……冬美さんの『家族』に対する強い憧れを……しっかりと汲んでくれている、あとは何かの切っ掛けが……すみません、差し出がましい真似をして……出過ぎた真似を……無理解も甚だしいですね……でも、まだ『やり直せる』というのは私から見た、私が先程感じた……私の偽らざる気持ちです」
そう告げて残りの食器を纏めて洗い場へと持って行くアウルムであった。
その後に緑谷も何かを告げていた。
そしてしばし居間でお茶を飲みながら休息していると、昔に亡くなった轟燈矢という長男の話しが出てきた。
そして……過去を乗り越えてまた家族になれそうと、しかし夏雄さんだけが振り上げた拳を下ろせずにいるという事を聞いた。
その話しがちょうど終わった所で……エンデヴァーより送迎の準備が出来た事を告げられ帰寮する為に車に乗り込もうとしたが……後部座席3人、助手席にはプロヒーローの護衛としてエンデヴァーが乗る為……アウルムは轟家にてしばし待つ事となった。
その間、冬美さんから恋仲になって進展があったのか聞かれた為……待ち時間を潰すのも兼ねて家の中へと戻り話しをする、主に焦凍との関係について。
「それでそれで、アウルムは焦凍と付き合ってもう5ヶ月近く経つけどどうなの? 告白はどっちからしたの? 焦凍のどんな所が好きなの? 何か進展あった?」
中学時代の恩師からそう問いかけられてアウルムは恥ずかしさを隠す為か頬を掻きながら冬美さんへと語る。
「告白は焦凍からでした、焦凍の好きな所は優しい所、可愛い所、私が困っている時にはいつだって助けに駆け付けてくれる王子様みたいな所です……私の幼い頃の思い出の場所の景色を焦凍にプレゼントしたり……焦凍のデートプランでデートしたり……ですね、お揃いのアクセサリーも購入したので今度お見せいたします……桔梗のブレスレットですが」
そう語るアウルム、冬美さんはそれを聞きながら言葉を紡ぐ。
「桔梗かぁ……花言葉通りになる事を願ってるよ、焦凍……あの子は昔っからそういう気持ちにはとことん鈍いからねぇ……そう言えばさアウルムはもう焦凍と……キスはしたの?」
冬美さんから悪戯っぽく、唐突にそう聞かれて気恥ずかしさから少し顔を赤くするアウルム、5秒ほど経って口を開く。
「私の幼い頃の思い出の景色をプレゼントした時に……ファーストキスを、後は焦凍の組んだデートプランでデートした時、後はクリスマスの時に……それはさて置き……焦凍は私との関係をエンデヴァーに告げていなかったのですね……冬美さんからの通話で初めて知ったと仰っていましたよ」
そう語ると冬美さんはあらら……と頬を掻きながら告げる。
「焦凍は……お父さんとそういう会話をする関係じゃなかったからね……ま、幸せそうなら良かった良かった、これから先も……焦凍をお願いね、アウルム・ミダスティア」
そう言われて気恥ずかしさがまだ残っているのか耳まで紅潮させたままアウルムは短く言の葉を返す。
「えぇ……こちらこそ宜しくお願いします」
その後、恋愛に関する話しや焦凍がで花を咲かせていると一足先に帰った筈の夏雄さんとエンデヴァーが玄関の扉を開けて入ってきた。
状況を伺うと
エンデヴァーは緑谷達を送り届けてから戻ってきたらしく、アウルムに車へと乗る様に告げる。
アウルムはそれに従い冬美さんへとお礼を告げて車へと乗り込んだ。
ハイヤーのドライバーは先程の事があっても日常茶飯事らしく慣れたものだと告げていた。
車が走り出して2分後。
助手席に座っているエンデヴァーより言の葉が告げられる。
「そう言えば……色々あって聞いていなかったな……何故焦凍と恋仲に?」
そう問いかけられたアウルムは顎に手を当ててしばし考え込んだのちにゆっくりと語り出す。
「神野の事件……神野の悪夢を覚えておいでですか?」
そう問いかける、それを聞いてエンデヴァーは少し黙ったのちに答える。
「……忘れるわけがない」
それを聞いたアウルムは一呼吸置いてから、言の葉をゆっくりと紡ぎ出す。
「私はあの時攫われて……私は文字通り死にかけた……その後にですね、退院した当日に死のうと……自ら生命を絶とうと思ってたんですよ……それを止めてくれたのが焦凍で……その時に告白されました……」
そう告げるとエンデヴァーはその後ずっと黙りこくったまま……重苦しい空気の中一言も喋ることなく……何の問題もなく雄英へと到着した。