年明け……新学期が始まり皆が成長した。
インターン先で各々が見つけた物を、得た物を、見せる時間が来た。
アウルムが得たのは『繊細な技術と精度』と『黄金の操作範囲の拡大』と『思考を必要としないレベルまで肉体に染み付かせた黄金操作』であった、詰まるところ……全体の底上げである。
呼吸と同等のレベルで、黄金操作に無駄な思考を必要としない様に削ぎ落とした……。
結果、今まで以上に熟達した扱いが可能となった。
糸自体は前から操作していたがインターンで得た知見により糸そのものの太さが変わった、蜘蛛の糸の如き細さと繊細さを併せ持ったアウルム以外には極端に見えづらい糸へと変わったのだ。
他にも侵蝕の速度も範囲も今までよりも1.5倍程、広く、速くなり、与えた命令を忠実に熟して自動戦闘が可能なワッケーロやガーディアン、コンキスタドールの場合戦闘がメインであった為に黄金の侵蝕速度は遅々としたモノであったがそれがある程度改善された。
そして今まで以上に熟達した扱いが可能となったが故に……更なる技術が可能となった、ワッケーロには数を、動物をモチーフにしたガーディアンには猛獣の王であるライオンの驚異的な戦闘能力を、コンキスタドールにはワッケーロとガーディアンに対する命令権を、創り出す際にアウルムはそれぞれに与えている為にもはや自動戦闘人形と言っても過言ではない。
またその性質上、アウルムの黄金で形作られた人工物である為に対人を想定した武術や個性等は一切効かずに逆に黄金化されるリスクのみがあるという相手からしたらどうしようもない程の存在となった。
そうして……インターンで得た成果を発揮する場は終わり、寮で鍋パをする事となったのだが……。
「このニラ……切ったのはどなた?」
切れ目だけ入って全体がつながったままの謎のニラを見ながらヒクヒクと頬を引き攣らせて告げるアウルム。
それに対して隣に居た彼氏が告げる。
「俺だ」
その言葉に対して……合宿のカレー作る時からジャガイモの芽を取らずに仕込みを完了させようとしていたり危うく包丁で野菜を切る時に基礎的な持ち方ができていなかったのか自身の指を切断する寸前だったり……そんな感じであったが焦凍の料理スキルには何の進展も無かったとため息を吐いて天を見上げるアウルム。
アウルムは隣に居る彼氏に対してゆっくりと言葉を紡ぐ。
「焦凍……今度、私と料理の基礎をお勉強しましょう……流石にお姉さんが泣きますよこれは……何も『ドルチェを作れる様になりましょう』とは言いません……ですが最低限の技術は持っておかないと……」
そうこうしているうちに仕込みが終わる、牡蠣鍋、痛風鍋、豆乳鍋、キムチ鍋、あご出汁鍋、寄せ鍋、野菜オンリー鍋、魚介オンリー鍋、肉オンリー鍋が完成した。
ジュース類やお茶類も用意されており、食後のドルチェには砂藤とアウルムお手製のケーキや女子陣が作ったクッキーなどが用意されていた。
そして皆の要望、特にB組の要望が強く……鍋の後に食べる氷菓やドルチェ類も用意し前回よりも種類を充実させている。
アウルムの作るドルチェは凄まじい程の人気があったらしく前回のクリスマスパーティーの際には食べれなかったB組の面々は今度こそ、と意気込んでいた。
「さて……とではインターン意見交換会兼鍋パを始めます‼︎」
アウルムの言葉で始まる鍋パ……皆でワイワイと囲んで食べる物も楽しいと感じ笑みが溢れるアウルムであった。
そして、鍋もあらかた食い尽くして……鍋の片付けが終わり……一休みしたのちにアウルムが冷蔵庫と冷凍庫から取り出してきたのは食後のドルチェであった。
ショートケーキ
ロールケーキ
シフォンケーキ
モンブラン
マドレーヌ
マフィン
パウンドケーキ
チーズケーキ
シュークリーム
ティラミス
エクレア
クロカンブッシュ
スフォリアテッレ
ベニエ
デニッシュペストリー
サヴァラン
ラング・ド・シャ
アップルパイ
ミルフィーユ
タルト・タタン
メイズ・オヴ・オナー・タルト
ムース
シュトーレン
クラフティ
フルーツタルト
タルトレット
オランジェット
ブッシュドノエル
フロランタン
ケイジャーダ
プロフィテロール
プラリネ
クール・ド・フランス
フォンダンショコラ
ファーブルトン
マロングラッセ
ベイクウェルタルト
ガレット・ブルトンヌ
パンドーロ
マドレーヌ
カッサータ
グーゲルフップフ
カヴァルッチ
カヌレ
カリソン
バクラヴァ
フィナンシェ
スノーボール
アイスクリーム
ソフトクリーム
シャーベット
ソルベ
ジェラート
グラニテ
世界各国の焼き菓子やケーキ類が手際良く並べられる。
かなりの種類であるが今回制作したドルチェはその殆どが一口サイズ程度か食べ易くカットされたサイズである為に皆、特に女性陣は『甘い物は別腹』とでも言う様に大量に食べていた。
特に八百万百からは絶賛され紅茶と合わせて振る舞われる。
アウルムはドルチェを提供しながら疲れた頭を癒す為に糖分補給も兼ねてドルチェの1つを手に取る。
あの種類のドルチェを作るのは本当に骨が折れた、黄金郷のワッケーロと黄金郷のコンキスタドールによる人海戦術で何とか作れたと言ったところである。
しかも重要な部分になればなる程アウルム自身が手作業で行っており……かなりの疲労を齎した、これを毎日毎日使っているパティシエやケーキ職人達の苦労が垣間見えると言った物だ。
まぁ……嬉しそうに食べている皆の顔を見ると報われるし、何より……良い練習にもなる、あれ程の量や種類のドルチェを作る事なんてそうそう出来やしない。
ドルチェ自体の冷蔵や冷凍といった扱いもその種類によって大きく異なる為に本当に良い練習にもなった。
「さて……私が言うのも何ですけれど……あれだけあったドルチェ、良く食べましたね……鍋を食べ終わった後で……一口サイズやカットされたサイズだったとは言え……」
今回のドルチェ……アウルムを除いた39名だと言う事でかなり多めに作った筈なのだが……改めて食べ盛りの人間の胃袋の凄さを思い知らされたアウルムであった。
その後、砂藤力道からタルト・タタンに使用した林檎の種類を問いかけられスイーツ談義、主に作る側視点の談義となり……何かを思ったのか八百万百や女性陣はもとより男子達も必死にメモを取っていた。
……何なのだろうか。
「まぁ……タルト・タタン自体偶発的に出来たデザートだと言うのが面白いですよね、失敗の産物から生まれたとか」