都市の3分の1が崩壊したのと時を同じくして……ブリーフィングルームで気絶から目覚めたアウルムはズキズキと痛む頭を押さえながら現況を確認する。
ふらふらと立ち上がりながら……窓の外を視認した瞬間に理解した、死柄木弔が目覚めたと。
死柄木弔の崩壊が伝播したのだと。
アウルムは空に浮かぶ死柄木弔を見ながらゆっくりと口を開く。
「……随分と酷い格好ですね……あの時出会った時とは大違い……
そう言うと
そして極細の黄金の糸を用いて捕縛しようとするが異変に気づく。
黄金の侵蝕が発生しない……より正確に言うならば侵蝕がある一定の範囲以降で停止する、黄金の糸による捕縛はできるがそれも死柄木弔に付与された膨大な数ある個性のどれかにより刹那の一瞬で抜け出される。
しかし……それは死柄木弔の崩壊も同様であった様で数秒して互いに同時に呟く。
「崩壊ですか……」
「黄金か……」
恐らく……絶対に壊れない『黄金』と触れるモノ全てをチリに返す『崩壊』が互いに拮抗して……それ以上進まないのではないだろうか。
ならば……次に取る手段は互いにたった一つであった。
死柄木弔は改造によって獲得した身体能力にて、アウルムは黄金による時速145kmという速度補助にて、超スピードを利用した近接格闘戦、互いに触れたら勝利なのだ。
アウルムはその手で触れるか黄金を操作して。
死柄木弔はその手で触れるか崩壊を伝播させて。
ハイエンド脳無とニア・ハイエンド脳無が急襲してくるが即座に黄金化させて彫像にする。
しかし、どのハイエンドかは不明だが明らかにアウルムの黄金に干渉してきた。
あの時よりもずっと高度に干渉してきている……それを理解したアウルムだが眼前の死柄木弔に加えてハイエンド脳無10体とニア・ハイエンド脳無9体を対処までするのは文字通り骨が折れる。
黄金郷のコンキスタドール、黄金郷のワッケーロ、黄金郷のガーディアンを生み出して対処に当てる。
脳無のほぼ全てを黄金の彫像へと変える。
そして、ワッケーロ、コンキスタドール、ガーディアンを死柄木弔の方へと呼び戻し応戦させる。
侵蝕はできずとも純粋に、永久に継続戦闘可能なオートマタとしての扱いは可能である。
それに……ほんの刹那の一瞬だけでも隙が出来たならば一気に優勢になる。
エンデヴァーや爆豪勝己、緑谷出久も各々の個性で死柄木弔を追い詰めていく。
そして……死柄木弔との戦闘の最中……突如として落雷の様な轟音と地響きの様な声音が響き渡り蒼炎が辺り一面を焼き焦がした。
突如として蒼炎で身を焼かれ意識をそちらへと取られたアウルムは……眼前の死柄木弔に胸を貫かれてビクンビクンと不随意で筋肉が動いて、大量に吐血する。
「煩わしい……やっとだ、黄金もこれでチリになる」
完全に殺す前にその個性を奪おうと、そう呟いた死柄木弔であったがナニカが可笑しい。
10秒経とうと黄金化を操る眼前の少女はいまだに肉体が残っている。
そして……死柄木弔としてのかオール・フォー・ワンとしてのか……それは不明だが直感が強く叫んだ。
それに従い貫通していた腕を無造作に引き抜いて眼前の少女を投げ捨てようとしたが黄金の糸で束縛され一瞬身動きが取れずに動きが止まる。
そして……束縛から逃れようとした一瞬の隙を突いてアウルムは顔と顔がくっ付くほどの至近距離で死柄木弔の肩を強く掴み絶え絶えに血を吐きなりながら言の葉を紡ぐ。
「惜しい……前に風穴を開けられた際に学んだんですよ……臓器どころか血管や神経に至るまでその全てを黄金でコーティング、又は置換しておこうとね」
しかし激痛が消える訳では無い、崩壊と黄金が拮抗しているのか、今まで味わった事の無い激痛がアウルムの身体を、全身を余す事なく走り回り、痛みという警鐘が最高レベルでアウルムの意識を刈り取ろうとするが今この永遠に続く刹那の時間、この永久に感じる須臾の時間……永遠に思える程に長く涅槃寂静の如き短い時間の中で……もう2度と無いであろう、このワンチャンスを無に帰してなるものかと……全身の力を、在らん限りの力をフルに発揮して死柄木弔の両肩を掴み黄金化させようとするが遅々として進まない。
死柄木弔に付与された数多ある個性の影響からか……黄金に変換されるのは足先からであり2分経っても1〜2mmしか黄金化しない、挙句に黄金化した先から切り離されて無意味となる。
しかし、それは死柄木弔も同じであった、アウルムの両肩をしっかりとその両手で掴んでいるというのに……崩壊が始まらない所か伝播すらしない。
正確に言うならば……アウルムの肉が崩れ落ちた瞬間に黄金で置換されている為に両者共に千日手となる。
アウルムの頑張りによって死柄木弔が動きを止めているのを好機と捉えた爆豪勝己や緑谷出久、エンデヴァー、焦凍が攻撃を仕掛けようとするも数多ある個性をフル活用して対応し死柄木弔のその双眸は眼前のアウルムのみを捉えていた。
「良い加減……くたばれよ……あの世でパパとママが待ってるぜ⁉︎ ヒーロー‼︎」
爆豪勝己、エンデヴァー、緑谷出久、グラントリノ、そして……黄金郷のワッケーロ、ガーディアン、コンキスタドールの対処をしながらアウルムにそう叫ぶ死柄木弔。
それに対してアウルムも大量に血を吐きながら言の葉を紡ぐ。
「それはこちらのセリフです……死柄木弔……とっととお縄につきなさい‼︎」
その刹那……死柄木弔の身体、右腕から胸にかけて深い亀裂が入る。
そして……死柄木弔の素っ頓狂な声が聞こえた刹那……一瞬で生まれた隙を見逃す事なく亀裂に自身の手を差し込んで内から黄金化させていく。
内側から侵蝕している黄金は先ほどよりも遥かに速い速度で黄金化が進行していく。
しかし……死柄木弔は慣れた手つきで既に黄金化した部位を周辺の肉や組織、或いは四肢を丸ごと削り取って……超再生で無理やり回復していく。
視界の端に映る巨人は既に麻酔か何かが効いているのか動きが止まったままであった。
ベストジーニストが巨人を拘束し、巨人の上に乗っていたスピナーやMs.コンプレスを拘束しているのが見えたが……荼毘を見てエンデヴァーと焦凍が困惑しているのが見えたが正直今そちらに意識を割いている余裕など無い。
胸に空いた穴をどうにかする余裕すらない。
荼毘の声音が響き渡るが眼前の死柄木弔の対応で聞いている余裕など無い。
アウルム自身……意識を保っていられるのが信じられない程であった……胸に空いた穴と……崩壊によって齎される激痛が意識を蝕む。
しかしそれは死柄木弔も同様であった。
直接触れられて黄金で侵蝕される度に周囲の肉を根こそぎ抉り取って対処するが如何に超再生といえど中途半端に覚醒しているこの身体では何れ限界が来る。
刹那……ベストジーニストによるアラミド繊維を複合させた太さ5cmはあるワイヤーで死柄木弔が拘束されて瞬時にスピナー、Mr.コンプレス、死柄木弔が束縛され頸動脈を締める事で意識を奪おうとする。
「ゴホッガッ……ゲホッ」
死柄木弔が離れた事により一瞬の猶予が生まれたのか即座に胸に空いた穴と崩壊の影響を受けた部位の黄金化を行うアウルム。
エンデヴァーや焦凍の方へと振り向くと荼毘により焦凍が燃やされている所であった。
刹那……込み上がってくる大量の血を吐きながら……大量の血を吐き捨てながら……荼毘へと接近して怨嗟を滲ませた声音で呟きつつ拳打を放つ。
「誰の彼氏に手を出している……‼︎」
濃密な怒りを込めた声音に荼毘は拳打を避けながら言葉を返す。
「黙れよ、家族問題に部外者が入るなよ」
途轍もない憎しみを込めた眼でアウルムを睨む荼毘であった。
そして……Mr.コンプレスが自身の臀部を抉り取り無理やり拘束から逃れるとスピナーと死柄木弔を圧縮して5秒後。
起動せずに残っていた脳無、ニア・ハイエンド30体、ハイエンド25体が全てアウルムと緑谷、手負いのヒーローを狙って……ニア・ハイエンド15体、ハイエンド10体をアウルムが纏めて黄金化させて対処するがそれがアウルムの限界であった……。
限界を迎えて……アウルムはゆっくりと膝から崩れ落ちて倒れ伏した。
ニア・ハイエンド15体とハイエンド15体は……仕留める事なく死柄木一行と姿を消した。
ギガントマキア、Mr.コンプレス、リ・デストロ、外典、トランペット、超常解放戦線構成員達は確保できたが……死柄木弔、荼毘、スピナー、トガヒミコは取り逃した……それを薄れゆく意識の中で……アウルムは聞いていた。