アウルムが焦凍に別れを告げて2週間が経過した。
九州地方の都市部から極端に離れた山の舗装すらされていない獣道を息も絶え絶えに撃ち抜かれた右脚を引き摺り、軍用の超大型バックパックを背負いながら歩くアウルムがそこにはいた。
斜面に座り仰向けになりながら呼吸を整える為に336時間ぶりにピンッと張り詰めていた警戒を弛緩させる。
「はぁ……はぁ……四六時中休む暇無く命を狙われるってのは……あまり良い気分では無いですね……日本中に散っていた刑務所からの脱獄囚の7割は捕えましたし……脳無も21体は潰しましたが……残るは
そう呟いて仰向けになっていたが即座に起き上がり空中へと飛び退いて臨戦態勢を取る。
アウルムが飛び退いた2秒後、先程まで仰向けに寝転んでいた場所に銃弾が撃ち込まれ地面が抉れる。
「休めたのは5秒程ですか……しかし……レディ・ナガンが追撃者とは」
撃ち抜かれた脚は黄金化しており既に治している……しかし、骨や肉は黄金による応用で再生できても失った血が補充される訳でも溜まりに溜まった疲労が消え失せる訳では無い。
疲労が溜まり続ける、まともな睡眠や休息が取れなければどうなるか……思考が鈍り、鈍った思考が原因で些細なミスをし……その些細なミスで今の様に追い込まれる。
両肘と両脚膝、そして股関節に弾丸を撃ち込まれ肉が抉れて少しの間動けなくなる。
「……痛いですね」
黄金の範囲である2.5kmには近づいて来ずに3.5kmの超遠距離から淡々と狙撃して来る。
アウルムに近づかれたらレディ・ナガンはその分離れて……極めて、極めて相性が悪い。
アウルムは既に内臓や骨など身体の内部は黄金に置換している為に砕け壊れる事はない……しかし……ナガンの狙撃兵としての卓越した技量がアウルムを追い詰めていた。
撃たれた箇所を黄金で無理矢理に補修しながらアウルムは呟く。
「……
荒い息を押し殺しながらバックパックの中から黄金に輝くライフルケースを取り出して黄金に輝くマクミランTAC-50を構え狙う。
黄金化させて絶対に壊れなくなったマクミランTAC-50、そして、黄金を弾薬とする事で尽きることの無い弾丸。
それを察したナガンが躊躇いなくアウルムの眉間を斜め45°の角度で撃ち抜いてきた。
しかし脳は元より骨は全て黄金化している……故に壊れない、しかし激痛には襲われる。
気絶しそうな痛みに、意識を飛ばしてしまいたい程の重圧に……しかし、それでも、恐怖も後悔も悲しみも、全て抱えてここにいる。
死なない為、死なせない為、全てを終わらせる為、ここに居る。
スコープを覗きながらアウルムは叫ぶ。
「やってやるよ‼︎ ナガン‼︎ 狙撃勝負だ‼︎ あぁ狙撃に関してはテメェに一日の長がある‼︎ だけれどな‼︎ 超えれない壁なんてないんだぜ⁉︎」
そう叫んで……マクミランTAC-50の引き金を引く。
轟音が響いて銃弾が撃発されてナガンの足下の地面を吹き飛ばす。
それを見たナガンは即座に私を撃ち抜こうとしたきたが一手遅かった。
「マクミランTAC-50が撃ち込んだのは黄金……そして黄金操作は私の領域だ」
そう言の葉を溢した刹那、ナガンの足先から頭まで黄金化してナガンの記憶が情報としてアウルムに流れ込んでくる。
「2ヶ月以内に灰掘の森林にある洋館……そこにパッケージを輸送してくる……か」
ナガンに付与された個性……保険として掛けられていた爆弾の個性を消失させてから黄金操作を繰り返して離島に飛ばした後に黄金化を解除する。
折角九州の誰も居ない場所まで来たっていうのに……今雄英の付近に戻るのは……余りにも難しい。
しかし、行かない訳にも……情報が掴めるならば地雷だって踏み抜いていこう、脚を1本失おうとも死ぬ訳じゃない……それに……全てが終わってもしも私が生き残っていたら……。
自然と溢れる涙を拭いながらアウルムは余りにも重すぎる重圧に耐えきれず……地面にへたり込んで泣きじゃくって嗚咽混じりの声音で1人呟く。
「それに……そんな資格はもう無いのかも知れないけれど……謝りたいよ……焦凍……私は貴方に対して酷い別れ方を、最低の別れ方をしてしまったと……しっかり顔を見て……謝りたいよ……私を許してくれなくてもいい、私と2度と言葉を交わさなくても良い……最低の女だと罵られても良い……もう元の関係に戻れなくたって良い……それでも……」
首から下げた桔梗のブレスレットを握りしめて覚悟を決める。
マクミランTAC-50をガンケースに仕舞い込み軍用の超大型バックパックを背負って
パックパックから黄金に輝くグロック18Cを取り出して構え警戒しつつ中へと入るとそこには誰も何も無かった。
あったのは1つの投影機のみ……人感センサーで反応して映像を映し出すタイプの物でありそこにオール・フォー・ワンが投影される。
そしてオール・フォー・ワンの記録映像は嬉しそうに語り出す。
『ここに到着したのは……緑谷出久では無いな、恐らく君だろう? アウルム・ミダスティア……僕はワン・フォー・オール継承者の緑谷出久、彼の個性も当然欲しい、が……あの病院跡地で君の個性を見てから俄然、君の個性が欲しくなった……だから……当然考えてあるさ、この後のプランも……アウルム・ミダスティア、この言葉を刻んでおきたまえ……必ず君の個性を奪う』
その言葉を聞いた刹那……洋館が吹き飛ばされ、その爆風で木々に叩きつけられ血反吐を吐くアウルムであったが痛む肉体を無視して、休めとアラームを鳴らし続ける精神を無視して身体を動かす。
「ようやく一欠片でも掴めた
爆破の一瞬ではあったが……ギリギリの所で黄金化を完了させチリとなる前に
それはか細い情報ではあったが値千金の情報であった……無論、これが偽情報であった場合……などと考えるのは当然。
故に……バックパックからPCを取り出して精査する。
そして何とか掴んだ情報は……驚愕の情報だった。
「38日後に……完全に完成? これの記録から逆算して……あと……ッ‼︎」
アウルムは乱雑にPCを仕舞い込んである場所へと急いで