【完結】黄金郷のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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残された者の慟哭

 時は少し巻き戻りアウルムが病院から抜け出した日から4日が経過した。

 結局……あの後、病院内全てと周辺地域をくまなく捜索するもアウルムは見つからず……焦凍は病室の布団にくるまりながら既に影も形もない彼女へと向けて左腕に着けた桔梗のブレスレットを見ながら嗚咽混じりに呟く。

 

「俺は……俺はお前が残る理由になれなかったのか……なぁアウルム……俺はお前が居てくれたから……ここまで来れたんだぞ……」

 

 布団にくるまりながら泣いているといつの間にか泣き疲れて寝てしまっていた様で病室のドアが開いて白衣を纏ったナースが入ってきた音で眼が覚めるが……様子がおかしい……チラリと卓上の時計を確認するとAM3時を指し示しており……少なくとも巡視の時間ではないし、仮に巡視だとしても起こさない様に気を遣って入室してくる為にこんな雑音を響かせて入室しては来ない。

 寝たフリをして薄目を開けていると刃物を取り出すのが見えた為に布団の中で氷結を作り出して身構える……そして、そのナースは焦凍が寝ているベッドへと思い切り突き刺した……しかし事前に作っていた氷結で防ぎ脚を払い退けてCQBで制圧し、ドタバタと暴れるナースの身体を動かない様に布団で抑え付けながら足元に転がっているナースコールのスイッチを何とか押し込む。

 数秒後……数人のナースが飛んで来た。

 警察も呼ばれ……家族も呼ばれて事情聴取となり、聴取の結果……焦凍を刺そうとしたナースはオール・フォー・ワンのシンパであり……焦凍を襲った理由も判明した。

 オール・フォー・ワンの狂信的なシンパ曰く……アウルムの彼氏であった為だという事。

 取調室で聴取を受けているオール・フォー・ワンの狂信的なシンパは歌でも歌うかの様に楽しげに語る。

 

「アウルムを連れてくれば何でも望む物をくれる、世界各国の裏社会の者も続々と集結している……だけれどね、私はアウルム・ミダスティアと、その彼氏が入院している最高レベルの警備網を敷いている病院のスタッフ……裏社会の人でもそう簡単には掴みきれない極めて正確な現在の情報が毎日じゃぶじゃぶと次から次へと入ってくるわ、それも言い値で(・・・・)売れる程(・・・・)入ってくる、お陰で随分と稼がせて貰ったわよ? その点だけは惨めなあの女(アウルム・ミダスティア)に感謝してるわ……そして轟焦凍とあの女が恋仲だって知った……轟焦凍を人質にすればあの惨めな女が釣れると思ったのに……あのお方から褒賞を受け取れると思ったのに……あーぁ、残念上手くいかなかったわねぇ」

 

 そして……それを聞いた焦凍はアウルムが……最愛の彼女が突如として別れを切り出した事……その理由すら一切明かさずに、その日にセントラル病院を抜け出した理由を理解した。

 誰にも話せる訳が無い……ただでさえ情勢が混迷し被害が拡大し、不安が浸透し様々な状況がただでさえ悪化した状況で『世界中から狙われている自分が居るのでこの病院はもう安全ではなくなります』なんて……。

 

 ……そして何より……あの手紙の内容を何度も読み込んで理解した事が一つだけあった、恐らくアウルムはこの状況になるから、病院すら安全圏になり得ないというのを理解したが故にその日のうちに即居なくなったのだと……。

 だから、生きて(・・・)帰る事を(・・・・)……前提にしていない、生きる事を完全に諦めた文面であったのだと、あの日の約束も、未来も何もかもを捨てて……自分の事を忘れてくれなんて、新しい彼女を見つけてくれなんて書いたのだ……。

 焦凍はその一文を思い返して涙ながらに呟く。

 

「俺は……誰よりもアウルム、お前が好きなんだ、お前を愛しているんだ……他の誰かなんて……お前の代わりは誰も居ないんだぞ……アウルム・ミダスティア」

 

 あの後、封筒や手紙をよく確認した時、封筒の裏面には凄い小さい文字でHasta la vistaと……筆記体で尚且つ達筆な文字で書いてあり……最初は読めなかった。

 しかし八百万百や耳郎響香からスペイン語だと聞き及んでその意味を調べると方言によりニュアンスはやや異なってくるが、専ら、しばらくの間会えないのが決まっているか、今度いつ会えるか判らない、そして……もう二度と(・・・・・)会えない(・・・・)かもしれない、といった状況で使われる表現であると……。

 

 それを聞いて……焦凍は乱暴に警察署の壁を殴る。

 塚内さんから視線で諌められるが……塚内さんすらも焦凍の今の行動は正直言ってしょうがないと感じていた。

 そんな中、警察署の出入り口にて……焦凍は膝から崩れ落ちて床を何度も何度も握った拳で叩きながら……嗚咽混じりに呟く。

 

「俺は……俺は……気づかなかった……気付けなかった……アウルムが……最愛の彼女があんなに辛い目に遭っているのに……遭っていたのに……何で……」

 

 その言葉を聞いて姉である冬美がゆっくりと抱きしめて来た。

 

「焦凍……貴方の気持ちは痛い程わかる……だから彼女を探し出して会った時に言ってあげて、貴女は1人じゃないんだよって……守ってくれる人が居るんだよって」

 

 冬美からそう声をかけられ……この事件の事はエンデヴァーやホークス、ベストジーニスト、オールマイト……そしてA組とB組にも周知となった。

 Drからの診察後に退院となり寮へと戻り……クラスメイト達に起きた事を説明する、それを聞いて……クラスメイト達の面持ちが暗く陰鬱とした表情となり……少しの間、誰も口を開かなかった。

 切島が悔しそうにテーブルを叩きながら叫ぶ。

 

「自分が狙われるから……それを承知でどっかに消えたってのか⁉︎ 何で俺達に一言言ってくれなかったんだ‼︎」

 

 そして……A組の皆は……テーブルにそれぞれの部屋のドアに挟んであった緑谷からの手紙を置いて爆豪が今の現状を言葉にして確認する。

 

「黄金女に続いてデクも消えた……デクからのこの手紙……雄英に近づく事すらビビってる……今ヒーロー科生徒は基本的に寮待機と周辺警備の手伝い、授業は停止して進級も留め置かれてる……細かい情報を得難い環境だ……」

 

 そう爆豪が言葉を切ると切島が言の葉を紡ぐ。

 

「じゃあ‼︎ 連絡手段をどうするか‼︎ だな‼︎」

 

 それに乗じて麗日お茶子も言の葉を紡ぐ。

 

「エンデヴァーってさ……雄英卒だよね? 強引に行こう」




感想・ブクマ・特に評価。飢えております。  低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)!  なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ‼︎

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