アウルムが目を覚ますと其処は雄英の医療室であった。
「……? ッ‼︎」
包帯でぐるぐる巻きにされている身体は少し動かすだけで激痛が走る。
その激痛に顔を歪めるが……雄英に居るという事実を理解してアウルムは即座に退避しようとベッドから移動する。
ここに居てはいけない、ここに居たら、私は元より皆がどうなるかなどこの身をもって痛い程思い知っている。
痛む肉体を無視してベッドから降りようとした瞬間にセンサーが鳴り響く。
ナースコールではない、恐らくはベッドに設置された離床センサー、枕とベッドシーツをめくり察知する。
ご丁寧にベッドセンサーとピローセンサーを二重に設置されていた。
それを理解したアウルムは痛む腕を伸ばして即座にセンサーの停止ボタンを押すが既に遅かった。
焦凍が息を切らして飛んできて……起き上がっているアウルムを見て涙を流しながら抱きついて来た。
「アウルム……良かった、生きてた……」
抱きついて来た焦凍の頭を優しく撫でつつアウルムは言の葉を紡ぐ。
「……焦凍、助けてくれた事は本当に感謝しています……貴方にもう一度会えて、もう一度貴方の声を聞けて……それだけで私は救われました、でも、もう行かなければ、私がここに留まるわけには行かないんです」
涙を滲ませてそう告げて焦凍の手を引き剥がそうとするも何故か力が込められない、頭では分かってるのに……身体が拒否していた、引き剥がしてでも此処から退避するという事を。
焦凍はアウルムに抱きついたまま言葉を紡ぐ。
「なぁアウルム……確かに自己犠牲は尊いものだ、アラモに立てこもったデイヴィッド・クロケットの精神さ……だがなアウルム、ならば、絶対の死地から帰還し、皆の所へと戻る事こそ、さらなる偉業なんだよ‼︎ 英雄は死んだから英雄なんじゃない‼︎ 最後まで諦める事なく、希望を追い求めたから英雄なんだよアウルム‼︎」
そう叫ぶと焦凍は抱きついたままアウルムへと言の葉を紡ぐ。
「なぁアウルム……デートの時の命令権……覚えてるか? 2つ残っていてまだ決まってないからと保留にしたやつだ」
そう、もう6ヶ月前に告げた懐かしい事を告げられてアウルムは涙を溢しながら、嗚咽混じりに、言葉を詰まらせながら焦凍へと告げる。
「憶えていますよ、忘れる訳……忘れ……忘れられるわけが無いじゃないですか……」
そう嗚咽混じりに呟くアウルム、それに対して焦凍が告げる。
「あの時の命令権……今使うぞ‼︎ アウルム‼︎ 1つ目は『もう一度俺と付き合ってくれ』そして……2つ目は『皆で雄英で一緒にいよう』だ」
それを聞いて……アウルムは涙を滲ませて泣き笑いの表情を浮かべて呟く。
「ふふっなんですか……その命令は……ほんとずるい人……でもしょうがありませんね……私はそんな貴方を好きになったのですから……」
そして……焦凍とアウルムはキスを交わして……再び付き合う事となった。
そしてリカバリーガールの『治癒』で怪我を治し現況を語られる。
それを把握して……その夜、クラスメイト達からお説教を喰らっていた。
それほどに心配されていたのが痛いほどわかる……。
そして1時間後に説教が終わり解放されるアウルム。
そして……焦凍とアウルムは夜11時、寮の外へ出て2人して星を見る。
寝転びながら星を見て、横に並んでいる2人がどちらともなく言葉を語りだす。
「なぁアウルム、覚えているか? あの時お前に渡された手紙……あれを読んで引き裂かれそうに、張り裂けそうになったんだ」
そう語る焦凍。
アウルムもゆっくりと言の葉を紡ぐ。
「えぇ……私もあれを書いていて心が張り裂けそうでした……あの時はもう……あぁするしかなかった、あの選択肢を取るしかなかった……今更遅いかもしれませんが……ごめんなさい焦凍、また、私の浅慮で、私が至らないばっかりにまたも貴方を苦しめてしまった……」
世界から狙われて……あぁするしかなった。
取るべき選択肢が、取れる選択肢があれしかなかった。
今になって、冷静になって、状況を思い返してみるとオール・フォー・ワンの掌の上で踊っていたのだろう。
悪意ある者が相手に選択を強いるとき──
必ずしも用意された選択肢に現況を打破する正解があるとは限らない──
絶望して、苦悩して、とことん考え抜いた選択の果てに喪失の後悔と罪禍の意識だけが残る……そんな選択肢しかなかったのならば、それはもう負けと同義なのだから。
あの選択肢がそういう、どれを選んでも負けの勝ち目のないゲームだとしたら……。
あの時に本当に取るべき選択肢は、本当に必要だったのは、勝つ為の手札を切る事などではなく負けない為の手札を切る事だったのだ。
そういう意味ではアウルムは負けたと言えるだろう。
アウルムは隣に居る恋人を見てゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……焦凍、もう一度キスをしましょう」
そう告げるとアウルムは焦凍の唇に自身の唇を重ね合わせて……1分。
唇を離すとアウルムは泣き笑いの表情を浮かべて告げる。
「焦凍……私は貴方が大好きですよ……この気持ちはずっと変わらないモノです」
そう告げてもう一度深く深く唇を重ね合わせた。
そして翌朝、最後の猶予期間である1ヶ月半をフルに使いアウルム含め皆が個性の底上げを行っていた。
文字通り残された最後のチャンス、此処をフル活用し最後の個性伸ばしを行う。
そして、アウルムの出来る事が拡張された。
黄金の展開速度精度範囲、全てが底上げされ……それに伴い黄金郷のワッケーロ、コンキスタドール、ガーディアンらも大幅に強化される。
そしてアウルムは寮の自室の棚に設置してあるガンケースからマクミランTAC-50を取り出して動作確認を行い問題ない事を確認する。
「さて……と」
最終決戦と言っても過言ではない、それを踏まえてアウルムはスマホである人物へと電話を行い呼び出す。
そして、とある場所でアウルムはその人と落ち合った。
当然その相手からは殺意が籠った眼で見られ苛立ちを含んだ声音で言葉が紡がれる。
「お前……ふざけてるのか? なぁ、アウルム・ミダスティア」
そう告げて来た相手はレディ・ナガンであった。
離島に飛ばした後私を追って来たのだろう、見るからにボロボロであった。
それを踏まえてアウルムは言の葉を紡ぐ。
「レディ・ナガン、私は貴方以上の狙撃の名手を知らない……私に教えてくれ、狙撃の全てを……」
そう告げるが当然拒絶される。
「ハッ‼︎ くだらない与太話だったな‼︎ じゃあな」
そう告げてエアウォークで跳躍し消えようとするがアウルムの一言で動きが止まる。
「じゃあ貴方……一体どこに逃げるんですか? 結果がどうあれ貴女はオール・フォー・ワンとの契約を履行できていない、あの魔王がソレを許すと思いますか? 此処でもし逃げれたとしても、もしも魔王が世界を支配すれば待っているのは絶望と悪意が渦巻く世の中で……其処に貴女の寄る辺はない、貴女は魔王から永遠に拷問されるリストのトップに居る、魔王が世に君臨した世界で……暴力と無秩序が支配する世界になって、世界から狙われて無限に逃げれるとお思いですか? 断言します、そんなのは不可能です、私も無理だった」
そう告げるとレディ・ナガンは頭を掻きむしり無言で叫ぶ。
そして覚悟を決めたかのように己が個性を用いて、スナイパーライフルを展開してきた。