「死柄木弔ァァァァァァ‼︎」
死柄木弔が黄金と化した為に切り離した下半身が『超再生』により完全に再生されるがそんなのはどうでも良い。
アウルムは黄金色でもはやどの程度の血反吐に塗れたかも不明瞭な自身の腕を見ながら気管に血が纏わりついている為、上手く呼吸が行われないがそれを黙らせて告げる。
「死柄木弔、その憎しみも憎悪も、救ってくれなかった悲しみも私には分かる……私はお前だ、あの日私は救われたが……お前は『救われなかったが故にあり得たかも知れない私』の姿だ……だからこそ、なればこそ……私が止める、私が断ち切る」
死柄木弔の怨嗟に塗れた絶叫を聴きながらそう呟くアウルム。
それに対して死柄木弔は絶叫でもはや返答にすらなっていない死柄木弔自身の思いの丈を、心の奥底から思っている言の葉を返す。
「誰がァァァァァァ断ち切るってエェェ‼︎ 止めるだって⁉︎ 巫山戯るな‼︎ これからなんだよ‼︎ 壊れたモノは助けて‼︎ あの日‼︎ 道行く人は『いつかヒーローが』『ヒーローが助けてくれる』そう言って壊れていない僕を助けてくれなかった世界なんて……見て見ぬ振りをして‼︎ 腐りかけたまま蓋をして‼︎ 結果、中から蛆が湧き腐り切ったこの世界なんて‼︎ ぶっ壊してやる‼︎ それだけが‼︎ それだけが俺を救う‼︎ それのみなんだよ、俺を救えるのは‼︎」
死柄木弔の絶叫を耳にしてアウルムの表情が暗雲としたものへと微細に変化する。
アウルムにもそれは痛い程に理解できて、痛い程に思い当たる節はあるからだ……監禁されていたあの地獄の日々の中で、あの無限に続く止まった時間の中で、世界から色が消えていき、最後に残った灰色に染まった世界と虚無で空虚な時間の中……あの時思ったのは両親を殺された深い絶望と犯人へ対する収まることの無いマグマの如く煮えたぎる殺意……ベクトルは違えど、もしも助けられなかったら自分も絶対に今の死柄木弔の様に、そうなっていたのは確実なのだろうから。
この様な『個性』を持った自分を憎み、自分を助けてくれない世界を憎み、助けてくれなかったヒーローを憎み、両親の仇である犯人を憎み……そうして何もかもを憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで……そうして止まらない連鎖の果て、終わりの無い終着の果てに、連なるモノ全てを憎み続けた後に……果てはこの世の全てを憎んで己が個性を『憎しみを晴らす』という深い深い深い深い深い深い深い深い深い『呪い』の如く収まることの無いたった1つの欲を満たす為に使ったであろう事は想像に難くない。
しかし、アウルムは、自分はそうはならなかった……ならなかったが、結局の所、アウルムのそれはほんの少しだけ、ほんのちょっぴりだけ、ほんの僅かだけ、運が良かっただけなのだろう。
だから……死柄木弔の絶叫は痛い程に分かる。
「今更……今更、話し合おうとしても遅いのだろう、だがな……これだけは言えるぞ死柄木弔‼︎ あぁその憎しみの原点は、そのベクトルは私と違うのだろうな‼︎ だけれど‼︎ ……私とお前の個性、拮抗してるのは鏡写しだからだろうな……鏡に写った私だ……だからこそ‼︎ 何度でも、幾千幾万でも叫んでやる‼︎ 私がお前を止めて見せると‼︎」
互いに譲ることの出来ない心の奥底にある原点……。
それを全部、思いの丈を吐き出す。
永遠にも思える数分を、互いの個性を以て相手を戦闘不能に追い込もうとする数分を最後の最後まで諦める事なくお互いに全身全霊を賭ける。
そして……アウルムは思い出す。
あの時、病院から抜け出したあの日あの時……。自分の心は『愛する人の為に』と叫び願った。
そう叫び願った『愛する人の最善』と、そう思った、だから世界から狙われても尚……それを信じて……願って……行動していた。
その言葉で、その理想で、その願いで、その心の赴くままに行動した。
そうして、思う。
あぁそうだ、願いなんて、たいてい都合のいいものだ。
けれど、そんな、とても都合の良いものが見たくて、ここまで積み重ねてきたんだ。
あの地獄から解放された瞬間から、あの地獄から救われた瞬間から。
どうしてそう思うのかを知るために、どうしてそう願うのかを知る為に、これからもがむしゃらに、走り続けるんだ。
それを今更、私では敵わないだとか……私には止められないとかで……。
そんな
アウルムは絶え間なく続く激痛を、今にも気絶したくなる程の痛みを、死柄木弔の個性により今にも砕け散ってしまいそうな
「死柄木弔ァァァァァァァァァァァァ‼︎」
刺し込んだ自身の手を、死柄木弔の拡張し換装された体内へと突っ込んでいる手を更に更に更に深く捻じ込む。
黄金化した部分を切り捨てて『超再生』をフル活用しながら死柄木弔は叫ぶ。
「鏡写しだぁ⁉︎ ハッ‼︎ なら俺が割ってやるよ‼︎ テメェという鏡を‼︎ テメェの恋人とやらも‼︎ 荼毘が相手してるんだろう? そろそろテメェの恋人も荼毘に焼かれて諦めた頃合いだろうさ‼︎」
死柄木弔のその言葉を聞いてアウルムは大量の血反吐を吐きながら言の葉を返す。
「ハッ‼︎ おまえが舐めているのは、私の恋人だ‼︎ 覚えておくといい、死柄木弔‼︎ 私の恋人は、立ち上がる事と諦めない事に関しては定評があるんだ‼︎」
そう叫んで、最後の最後まで諦める事なく、アウルムは家族を止める為に立ち上がり続けた愛しい彼氏を思い……自身も最後の余力を全てを出し切って、自身の全てを注ぎ込んで眼前の死柄木弔の全身を黄金化させる事にようやく成功する。
完全に黄金化して微動だにしなくなった死柄木弔を見ながらアウルムは痛む身体を、崩壊により激痛を鳴らし続ける身体を、空間を収縮させていた黄金化を解除して、地面に戻した雄英高校へ向けて仰向けになりながら上空1万5千フィートの高度から落ちていった。
落ちる感覚を感じながらアウルムは1人呟く。
「任務……完了」