【完結】黄金郷のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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死の淵で

 オール・フォー・ワンは細胞の1つ残らず完全に黄金化された。

 それに沸き立つヒーローやクラスメイト達を見ながらアウルムはその手に持ったマクミランTAC-50を素体とした電磁砲(レールガン)がゆっくりと手から滑り落ちる。

 地面に落ち鈍い音を立てる電磁砲(レールガン)を見ながら意識を手放して膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れ込む。

 

 1番早くそれに気付いたのはベストジーニストであった。

 

「数人こっちに‼︎ 拍動が無い‼︎ 心肺蘇生を交代で‼︎」

 

 アウルムが黄金化したのは腹部と全身の臓器、それに主要な血管……。

 そして黄金化したものはどれだけの衝撃を加えても壊れない。

 故に本来なら既に肋骨が何本か折れていてもおかしくない程の力で心臓マッサージを継続する。

 心臓マッサージを行う際に絶対に必要な事。

 それは心臓マッサージ中に骨を何本折ろうがそんなの無視して心臓マッサージを続ける事。

 骨なんぞ1本や2本折れた所で死に至る事はないのだから。

 100〜120回/分の速さで継続出来る範囲で強く、強く圧迫を繰り返す。

 しかしおおよそ100〜120回をワンセットとして心肺蘇生を繰り返すも未だアウルムの意識は戻らない。

 

 4セット目ともなると心肺蘇生をしている者の感触そのものが変わる、変わってくる。

 人間だったモノ、骨や臓器やその他諸々のせいで弾力のある肉塊を押しているような感触になってくるのだ。

 

 交代しつつ5セット目の胸骨圧迫を繰り返す。

 アウルムは自発呼吸をしておらず脈が触れない。

 

 しかし、その場にいる誰も諦めたりはしていない。

 

 アウルムの心停止及び呼吸停止から4分後に物間寧人経由のワープで八百万百が文字通り飛んできて生体情報モニタと吸引機とカテーテル、そして輸血の為の器具とアウルムと同じ血液型の輸血パックを大量に創造して輸血を開始する。

 そして生体情報モニタ、吸引機、カテーテル、それらを動かす為の大型バッテリーを創造、上鳴電気がバッテリーに急速チャージを行い10秒で起動できる様にすると吸引機の電源を入れて肺に溜まった血を吸いだす為にカテーテルを準備して気道にカテーテルを挿入する。

 

 そして、肺に溜まった血を吸い出すと300㎖の血が引けた為に即座にSPO2測定機器をアウルムの人差し指に装着するもなかなか数値が出てこない。

 その間にも胸骨圧迫を交代で繰り返し続けて2分が経過、ようやく数値が計測されて78%*1と言う余りにも低すぎる値が計測される。

 自身の個性にて創り出した酸素マスクをアウルムに装着させて高濃度酸素濃縮機器で酸素を送り続ける。

 10L/分という高濃度で送り続けてようやく80%まで回復する。

 しかしまだ足りない、まだまだ依然として危険域であり其処は安全圏ではない。

 酸素機器の調節をしながらAEDを創造しアウルムのコスチュームを切り裂くとアウルムの胸へ適切にAEDのパッドを装着し操作しながら八百万百は涙を流しながらアウルムへ向けて叫ぶ。

 

「アウルム・ミダスティア‼︎ 貴女は死んではダメです‼︎ 絶対ダメです、このまま死んでしまうなんて絶対に‼︎ アウルムさん‼︎ 貴女はようやく‼︎ 轟さんとのヨリを戻したばかりでしょう⁉︎ ようやく‼︎ クラスメイトが皆揃ったというのに‼︎ それなのに‼︎ また貴女が居なくなるなんて絶対ダメです‼︎ 轟さんを……またも悲しませる気ですか⁉︎ 轟さんに今度は何の別れも告げずに居なくなる気ですか⁉︎ 知ってまして⁉︎ 貴女が居なかった1ヶ月半、轟さん凄い泣いてたのですよ‼︎ また繰り返させる気ですか⁉︎ そんなの絶対にダメですわよ‼︎ そんなの、例え神が許したって‼︎ 例え閻魔大王が許したってこの私が許しません‼︎ 地獄に居ても天国に居ても煉獄に居ようと虚無の世界に居ようと私が必ず無理矢理にでも連れ戻します‼︎ だから‼︎ 戻ってきて下さい‼︎ アウルム・ミダスティア‼︎」

 

 異常を感知したAEDが電気ショックを与えて心室細動を停止させる。

 しかしアウルムの心臓の鼓動は戻らない。

 AEDの人工音声が告げる、心臓マッサージを継続して下さいと。

 

 八百万百は注射器とアドレナリンを創造しアウルムに適量を注射する。

 本来ならば医療行為に当たる為に違法となるが八百万百はその『個性』故にヒーロー仮免とは別の免許を取得していた。

 薬剤投与限定医療行為許可免許、詰まるところ……薬剤投与限定の医師免許。

 生体情報モニタを見るも波形は微動だにする事なく直線を示しており急変を告げるアラームが停まる事なく鳴り響いていた。

 

 アウルム・ミダスティアが心停止を起こしてから8分が経過していた。

 

 未だ戻らない意識、動かない生体情報モニタの波形、上がらない酸素飽和度……。

 カウンターショックを2回行い心臓マッサージを継続するが状況は一切変わらない、好転しない。

 誰しもが諦めかけたその時……生体情報モニタを見ていた者が叫ぶ。

 

「アウルム・ミダスティアの心臓の拍動と自発呼吸確認‼︎ SPO2も93%まで上昇‼︎」

 

 その直後、アウルムが薄く目を開けて大きく咳き込む。

 そしてSPO2の値がようやく97%にまで戻り酸素マスクを外し自発呼吸を確認、拍動も確認できた為にAEDのパッドを外して裸体を隠す為に毛布を創造してアウルムに被せる。

 

「ゴホッゴホッ‼︎ ゲホッ‼︎」

 

 大きく咳き込んでアウルムはゆっくりと上体を起こして自分の状態を確認する。

 そして、ゆっくりと言葉を語りだす。

 

「………………………………夢を見てました、死んだ父と母の…………死んだ父と母と一緒に真っ暗闇の中を歩いていて……両親に着いて行っていたら……唐突に聞かれたんです、どこに行きたい? って……死んだ母と父と同じ所へと一緒に着いて行きたい気持ちがありましたが……それ以上に……声が聞こえたんです、八百万さん……貴女の声が……そして、皆の……皆の場所に行きたいと告げたら……光が差し込んで……目が覚めました……ありがとうございます、八百万百……貴女に命を救われました、あの時に貴女の声が聞こえてきたから……私は皆の場所に行きたいと願えたのです……皆様もありがとうございました」

*1
SPO2の正常値は96〜99%である、なお一般に医師はパルスオキシメーターの測定値で酸素飽和度が80%から85%に低下した場合には生命の危機状況と判断する……それを踏まえると78%という数値がどういうモノかは言わずもがな




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