爆風で吹き飛ばされて中間圏90kmから堕ちて行く上半身裸のアウルムと荼毘……。
爆発の刹那、コンキスタドールが形状を変えて盾となった為にほんの僅か、ほんの一瞬ではあるが爆風と熱線から守られたらしいがほんの僅かである。
しかし、その一瞬で作れた時間を使い黄金で身体中の皮膜を覆っていた事が幸いして何とかほぼ無傷で留まっていた。
しかし、あくまでも今受けた傷はほぼ無いというだけで……オール・フォー・ワンから受けた黄金化出来ていない傷の一部が開きかけていた。
しかし『治癒』か自身の『黄金』を用いなければもはや身体を動かす事など叶わない。
荼毘も同様であろう、爆発の刹那で−100℃という極寒の世界故に叩き込まれたが故に直前でその身体は冷却されたが故に爆発しても死ぬ事はなくギリギリで意識が保たれているがもはや戦闘が出来る様相ではない。
落下して行く感覚を味わいつつ傷が開いた激痛を感じていたアウルムは不思議と次第に激痛を感じなくなりながら微睡む様な感覚に陥りそのまま意識を手放した。
その後、なんの命令も与えていない筈のコンキスタドールが自身で思考して盾から形状を戻した後でコンキスタドールがアウルムと荼毘を担ぐ。
そして2人を担いだコンキスタドールは重力に逆らいながら空中を闊歩して黄金で侵蝕すると黄金に輝く道を形成して意識を失った己が主人と同じく意識を失った荼毘を担いで地上へと戻っていった。
そうしてなんの命令も与えていない筈のコンキスタドールは意思を持っているかの様に戻った。
皆の所へと。
それを見た者達は即座に救護活動を開始する。
しかしアウルムも荼毘も瀕死であり2人の肉体は爆発による熱傷と中間圏に留まった事とそこから20秒程堕ちた事による凍傷で酷い有様となっていた。
しかし、超常異能解放軍の残党はヒーロー側が全員捕縛して、しオール・フォー・ワンも死柄木弔もトガヒミコも、全てを捕縛してもう戦闘は終わった。
故に全てのリソースを要救助者に注ぎ込む事ができる。
今為すべきは治療である。
八百万百が在らん限りの脂質を輸液と輸血用製剤に変換し、またも低下している酸素飽和度を保つ為に酸素を送り続け、停まっている心臓を動かす為に心肺蘇生を繰り返し行う。
アドレナリンを投与して生体情報モニタを確認するも戻らず、カウンターショックを3回行ってもいまだに戻らない。
辿り着いた焦凍や飯田天哉も交代で胸骨圧迫を繰り返すが戻らない。
八百万百は酸素機器を調節しながら叫ぶ。
「アウルムさん‼︎ さっきは‼︎ 戻ってきたと言ったじゃありませんか‼︎ 私の声が聞こえて戻ったと‼︎ 轟さんもいらっしゃるのですよ‼︎ 貴女には戻ってきて私達に怒られる責任と義務があるんです‼︎ こんな巫山戯た別れで納得できる訳ないでしょう‼︎」
そう泣きながら叫ぶ八百万。
心肺蘇生を繰り返しながら焦凍も叫ぶ。
「なぁアウルム‼︎ 燈矢兄を停めてくれたのは嬉しいさ‼︎ だがな‼︎ だがな‼︎ クラスの誰1人‼︎ お前と引き換えだなんて望んじゃいないんだよ‼︎ 当然俺も夏兄も冬姉だって母さんだって望んじゃいない‼︎ お前が居てくれたからもう一度俺達家族はきちんと向き合えたんだぞ‼︎まだちゃんとお礼の一つも言えてないんだぞ‼︎ このまま永遠にさよならですなんて俺は絶対許さねぇぞ‼︎ 戻って来い‼︎ 帰って来い‼︎ アウルム・ミダスティア‼︎」
八百万百がライトでアウルムの眼に光を当てて瞳孔散大・対光反射の消失を確認するも八百万百は厳密に言えば医師ではない。
この場で死亡判断を下せるのは誰1人としていない、その判断は医師のみが行える事*1である。
故に未だ生きていると断定して*2蘇生を試みる。
しかし、意識が未だ戻らない。
呼吸が戻らずに心臓の鼓動も戻らない。
ずっと胸骨圧迫を続けるがその肉体が動く事は無かった。
焦凍は諦める事なくずっと、1時間に渡りアウルムに心肺蘇生法を繰り返す。
しかし、現実は非情である。
生体情報モニタからは止まる事なくアラームが鳴り響いて……サチュレーションも40%という異常な程に低い数値を示しており呼吸をしていない。
酸素機器を使用しても全然数値が上がらない。
完全に死んだと焦凍以外の誰もが諦める。
心肺蘇生法を繰り返している焦凍すらも諦めかけたその時。
アウルムの眼に薄く、とても薄く光が戻りとても微弱な心臓の鼓動が胸に手を当てて胸骨圧迫をしている焦凍の手を通して伝わる
それを確認した焦凍は八百万百へと叫ぶ。
強心剤を打てと。
即座に強心剤と注射器を創造してアウルムへの打ち込む八百万百。
その数分後……呼吸が安定し拍動も戻って……サチュレーションの数値も80%を超え95%を継続して計測。
ようやく意識を取り戻して咳き込みながら眩しい程の笑顔で焦凍と八百万を見るアウルムを抱きしめながら八百万百がサチュレーション測定機器と血圧計、体温測定機器にて正常値と戻ったバイタルを確認し飛んできたドクターヘリへと後を託す。
応急処置や諸々のやれる事は全てやった。
あとは本職の仕事である。
セントラル病院へとヘリで搬送されて行くアウルムを見送ると八百万百も轟焦凍も飯田天哉も残りの要救助者を救護しに奔走する。
そして……戦いは終わりを告げた。
そして……3日後、轟焦凍は病院へアウルムの見舞いに来ていた。