これからも拙作をよろしくお願いします
騎馬戦での勝利が確定し第3種目へと駒を進めたのは上位4チーム。
試合会場が出来るまで昼休憩を1時間挟んでから午後から最終種目が始まる。
アウルム・ミダスティアは手製の弁当を持ちながら食堂へ向かおうとしたが轟焦凍に声をかけられる。
「アウルム……少し良いか?」
そう問いかけられたアウルム・ミダスティアは何もない空間に向けて手を払って自身の近くに黄金を錬成し仮の置き場を創り出すとそこに弁当箱を置いて笑顔で告げる。
「えぇ良いですよ、それで何のお話しでしょうか?」
そう言の葉を紡ぐと焦凍から……自身の過去を語られる、何故左側を使わなかったのか……いや、使わないのかを……そして何故私を目の敵にしたのか、何故1番に固執するのかを。
アウルム・ミダスティアは焦凍の話しを聞いている最中……相槌も、いつもの様に不敵な笑みを浮かべる事も無く……ただ終わるまで終始無言で傍聴に徹していた。
5分程経ったろうか焦凍が過去を語り終わると無言で焦凍の事を抱きしめて頭を優しく撫でながら言の葉を紡ぐ。
「焦凍……残念ながら私には君の複雑な家庭事情までは察する事が出来ない……だけれど……君の抱えている呪いの如き重圧はほんの僅かながら分かるつもりです……左側を……炎を使わないのにはそんな理由があったのですね……それでも受け継いだそれは……焦凍、貴方の個性です……過去に思った理想があったのでしょう? 過去に願った未来があったのでしょう? 過去に語った夢があったのでしょう? どうかそれを思い出してください……では決勝で会いましょう」
アウルム・ミダスティアはそう告げて食堂へと歩いて行った。
そして始まるガチバトルトーナメント第1回戦、アウルム・ミダスティアVS八百万百。
両者がフィールドに移動すると観客から大歓声が沸き起こる。
そして実況席にはプレゼントマイク先生が、解説席には相澤先生が座っておりプレゼントマイク先生による実況が開始される。
「さぁさぁ注目の第1回戦‼︎ 個性は万能‼︎ 何でも創り出す『創造』‼︎ 八百万百‼︎ 対するは‼︎ その手に触れる物は何でも煌めく黄金に変わる‼︎ 個性は『黄金』‼︎ アウルム・ミダスティア‼︎ ルールは簡単‼︎ 相手を場外に落とすか行動不能にする‼︎ あとは相手に『参った』とか言わせても勝ちのガチンコ勝負だ‼︎ ケガ上等‼︎ リカバリーガールが待機してるから道徳倫理は一旦捨ておけ‼︎ さぁさ長い説明はここら辺にして‼︎ 第1回戦‼︎ スタート‼︎」
スタートの合図が発せられるがアウルム・ミダスティアも八百万百も睨み合ったまま互いに距離を詰める事なく30秒近くが経過する。
実況のプレゼントマイクが場を繋ぐ為に何かと喋るがアウルム・ミダスティアも八百万百も互いに見据えてるのは相手のみ。
互いに相手の出方次第で敗北まで一直線というのが有り得る故に下手な一手を打つ事は互いにできない。
解説担当の相澤先生がマイクを取り解説を行う。
「恐らく……互いに隙を見逃さずに時間かけずに一撃で決め切る気でいるんだろう、八百万もアウルムも何かを創り出してからが本番の個性だ」
相澤先生の解説の通り……八百万百はアウルム・ミダスティアから見えない背中となる位置からショットガンであるレミントンM870を創造しゴム弾を装填すると即座に構えてアウルム・ミダスティアを気絶させる為に引き金を引いて弾丸を放つ。
2発の銃声が響き渡りゴム弾はアウルム・ミダスティアの頭部に直撃するがアウルム・ミダスティアは一切効いていないとでも言う様に、全く意にも介さないで……お構いなしに八百万百の方へとダッシュで近づいてきており効いている様子が微塵も感じられない。
しかし八百万百はそんな事は織り込み済みであると言わんばかりに続け様にアウルム・ミダスティアの腹部、両腕両脚、頭部に連射するが一切止まらずに接近してくる。
既にアウルム・ミダスティアと八百万百との距離は3mにまで近づいてきており接近されれば後がない八百万百は再度アウルム・ミダスティアの頭部に狙いを定めて引き金を引くがカチリという機械の作動音のみが感じられた……その瞬間……八百万百は苦虫を噛み潰したような表情を一瞬浮かべてその手に持っていたショットガン、レミントンM870の装弾数を思い出したが既に自身とアウルム・ミダスティアとの距離は2m弱と無いに等しい。
故に弾丸の再装填などしている余裕はない、そう判断した八百万百はその手に持ったレミントンM870を上段に大きく振りかぶってアウルム・ミダスティアへ向けて思いきり投げつける。
ダッシュ中であったアウルム・ミダスティアは投げつけられた総重量3.6kgのソレを跳躍し身体を捻ってギリギリ避ける。
八百万百はこの距離でそれを避けるのかと……どういう反射神経をしているんだ、と……そう思ったが一瞬でもアウルム・ミダスティアに生まれた隙は絶大な隙であった、それを見逃さずに即座に創造にて次なる一手を繰り出す。
そしてアウルム・ミダスティアがフィールドに着地した刹那、マガジンエクステンションを施したカスタム状態の、装弾数33発のゴム弾を装填したグロック18Cを創造して構えると引き金を引く。
マシンピストル故に反動が大きく八百万百の細腕では狙いがブレてしまい細かな狙いを点けるのが難しい上に僅か3〜4秒で弾丸を撃ち尽くすがアウルム・ミダスティアとの距離はもはや1mもない。
全弾撃ち尽くしたがアウルム・ミダスティアの身体の何処かへと着弾しておりこの距離で当たらないわけが無い……そして、気絶しない筈はない八百万百はそう思案し一瞬気を抜いてしまった。
そう思った刹那、八百万百には確かにアウルム・ミダスティアの声が聞こえた。
「ッ‼︎ やっぱりゴム弾とはいえ痛いな……だけれどこれでチェックですよ、八百万さん」
その言葉が八百万百の耳に聞こえた刹那、八百万百は己が失策を悟りグロック18C創造の際に創造していたスモークグレネードを足元へと投げるとすぐさまグロック18Cの再装填を行おうとするが何故か手も足も動かない。
八百万百はハッとして自身の足元のフィールドを見るとほんの一筋、ほんの少し、目を凝らさないと見えない様な、極小の黄金に煌めくコンクリートの地面がその目に映る。
そしてその黄金は八百万百の両脚と両手を侵蝕していた。
顔を上げ真正面を見ると眼前にはゴム弾を撃たれた為にボロボロのジャージ姿で、いつもの様に、不敵な笑みを浮かべつつその手を八百万百の首元に添えるアウルム・ミダスティアが居た。
「これでチェックメイトです、八百万さん」
そうアウルム・ミダスティアが告げると諦観と悔しさを滲ませた笑みが混ざった表情を浮かべた八百万百から降参の言葉が発せられた。