【完結】黄金郷のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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72時間・その①

 焦凍とアウルムの結婚式から2年が経過して中学3年となった壊理。

 学校帰り……壊理は酷く思い詰めていた。

 朝、学校に向かう前に……些細な……ほんの些細な、今思い返せば本当にくだらない事が発端となり母であるアウルムに酷い事を言ってしまった。

 

『どうせ本当のお母さんじゃないんだから私の事なんてどうでもいいでしょ⁉︎ 関係ないでしょ⁉︎ もう放っておいてよ‼︎ 私の事なんて‼︎』

 

 つい……そう言ってしまった……そう叫んだ時……母であるアウルムの悲痛に染まった表情は鮮明に思い返す事ができる。

 今日一日、授業は精彩を欠き友人との会話すらも碌に行えずに部活も休んで公園のベンチで1人塞ぎ込んでいた轟壊理。

 

 家に帰ったら母に謝ろう……酷い事を言ってごめんなさいと。

 

 そう決心してベンチを立とうとした刹那、身体に電流が走り壊理の意識が遠のいて2秒も立たずに意識を失った。

 

 そして夜……アウルムは一抹の不安を覚えていた。

 真冬のこの時期、既に真っ暗でもうすぐ20時を回るというのに壊理が帰ってこない……本来なら帰ってくる筈の時間帯になっても帰ってこない壊理を心配してアウルムは夫である焦凍へと何か聞いてないかと連絡を入れるも何も連絡は来ていないという。

 

 自身の事務所に所属するサイドキックに頼み付近を捜索してもらうも壊理は見当たらず学校に電話しても部活を休んで帰ったのを担任と部活の顧問が確認しておりその後の足取りは分からないとの事であった。

 

「そうですか……すいません、こんな時間帯に……えぇはい、はい」

 

 アウルムは壊理の友人宅へと電話を掛けてもしかしたら泊まってるのかと思い電話をするが誰も壊理の事を泊めては居ないという。

 

 アウルムは居ても立っても居られないと……トレンチコートを引っ掴んで事務所へと移動する。

 

 事務所へと到着しサイドキックや事務員の言葉を聞く余裕も無く焦凍の元へと向かう。

 

「あの子からの連絡は私の方にはない……焦凍の方には?」

 

 アウルムの言葉に対して焦凍は無言で首を振って答える。

 焦凍の方も四方八方に手を尽くして行方を探したらしいが見つからない、そして30分が経過する。

 

 アウルムは募る苛立ちから机を殴りつけようとするが最古参のサイドキックがアウルムの腕を掴み止めてから告げられる。

 

「苛立って物に当たるならどうぞ家に帰って下さい、家に帰ってからご自由に物に当たって下さい……どうぞ家で遠慮なくぶっ壊してください、壊理ちゃんが心配なのは貴女だけじゃない、この事務所の全員が心配なんです、貴女が冷静さを欠いてどうするんです‼︎」

 

 そう告げられて精神(こころ)を落ち着かせるアウルム。

 そして、その直後焦凍のスマホの着信が鳴り響き焦凍が確認すると壊理からの電話であった。

 それを見た焦凍は即座にスピーカーに切り替えてから叫ぶ。

 

『壊理? 壊理か? いま何処にいるんだお前? 皆心配してるぞ? 壊理?』

 

 そう叫ぶが向こうから壊理の応答はない。

 直後、聞こえて来たのは機械的な音声を継ぎ接ぎにした様な声。

 

『やぁ、私の事を憶えているかな? 3年前の今日、君達に煮え湯を飲まされた(ヴィラン)だ、君達の娘は私が攫った……おっと『何の為に』なんてセリフは聞き飽きてるぜ? 察してるだろ? 復讐だよ、お前のせいで俺は逮捕されて3年も豚箱だ……この怨みは尽きる事がない』

 

 焦凍は近くに居たサイドキックへ指でサインを送り即座に逆探知の指示を出す。

 その言葉を聞いたアウルムは焦凍に電話を変わる様にハンドサインを送り電話を受け取ると電話の相手に語りかける。

 

『憶えているよ、忘れるわけ無いだろう? 私が捕まえたんだから……(ヴィラン)名は『コントラクト』……個性は『隷属下』だったか? 個性発動中1人だけ自分の言う通り、思うがままにできる、条件は声を聞かせる事、しかし君の個性は弱点があったな、発動中は対象となる人物から3m以上離れると個性が解除される……で? 今更何の用だ? 恨み言を言いたいなら、尽きない怨みを晴らしたいなら、殺したい程に恨んでるなら直接私の下に来ればいいだろう? 何故壊理を……私達の娘を攫った? なぁコントラクト……最後の警告だ、一度しか言わない……かすり傷1つなく娘を返したなら『私は』お前に手出しをしない……しかし、万が一にも、大切な娘に指1本でも触れてみろ? 私はお前を殺す、八つ裂きにしてやる』

 

 そう告げるアウルム。

 

『ハッハッハ、流石に殺されたくはねぇな……良いニュースと悪いニュースがあるから良いニュースの方を教えてやるよ、あのガキはもう俺の所には居ない、悪いニュースは3時間前に『レーベティラス』に娘を売り払った、アウルム・ミダスティアと轟焦凍の娘だと言ったら……奴らいくら出したと思う? なんと』

 

 レーベティラス、その言葉を聞いた刹那……アウルムは自分の娘を攫った(ヴィラン)の話しを終わりまで聞く事なく通話を切る。

 そして、焦凍にスマホを返したのちに渾身の力を込めて事務机を蹴り飛ばす。

 

 ガンッ‼︎ と鈍い音が響く。

 アウルムは苛立ちながら呟く。

 

「レーベティラスだと……まだ動いてたのか、あの組織……主だったメンバーは全員捕まる前に自殺して……残りのメンバーは全員刑務所にぶち込んで終身刑と無期懲役を喰らって刑務所に居る筈だぞ⁉︎ クソッ‼︎」

 

 レーベティラス……完全に壊滅した組織の筈であった。

 レーベティラスの主な収入源は人身売買。

 そのルートと組織を完全に潰したのは2年前に焦凍、アウルム、爆豪とデクのチームアップ時だ。

 人身売買を行っている闇組織の調査から壊滅まで綿密に行いもはや全て滅んだモノと思っていた。

 

 レーベティラスが最悪の人身売買組織となったのはその所業にある。

 攫われた対象を72時間以内に救出しなければ2度と戻って来ない。

 現に被害者達は無事に救出できたのは全体の0.5%程であった。

 既に70時間を切っている。

 

「壊理をそこに売り払っただと……」

 

 アウルムは苛立ちのままに逆探知をしていた事務員のPCを確認後、トレンチコートを引っ掴んで事務所を出て行く。

 

「焦凍、私は少し出掛けて来ます……爆豪と緑谷出久、心操人使にチームアップの要請と……ラブラバに緊急召集、頼みます」

 

 そう告げて事務所の扉を乱雑に苛立ちをそのままぶつけて壊れる程の勢いでドアを閉めるアウルム。

 焦凍もやるべき事をやる為にチームアップ要請とラブラバに召集を掛ける。

 

 

 残り・69時間と59分54秒、それまでに壊理を救い出さなければならない。




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