これからも頑張ります
「これで治療は終わりだね……そこのチョコでも食べてから戻りな」
「ありがとうございました、リカバリーガール……凄いですねあれだけの痣や内出血がまるで無かったかの様に治りかけている」
そう呟いたリカバリーガールにアウルム・ミダスティアはお辞儀をしてお礼の言葉を告げながら観戦席へと向かい歩いて行った。
1回戦が終わりアウルム・ミダスティアはリカバリーガールの下に行き治療をしていた。
アウルム・ミダスティアに撃ち込まれたのが如何に低致死性のゴム弾とはいえ怪我をしない訳ではない、あくまでも低致死性でありショットガンやハンドガンで身体中を撃たれたのには変わりなくゴム弾自体、至近距離で命中すれば増強系個性持ちのプロヒーローのパンチに匹敵する程の威力である。
その為アウルム・ミダスティアの身体には痛々しい大小様々な打撲痕と内出血の痕があったがリカバリーガールの治療によりほぼ完治した為、自身の2回戦目が始まるまで他の試合をクラスメイトと共に観戦していた。
緑谷出久VS心操人使の戦いは最序盤からとても冷や冷やした……緑谷出久……君は尾白君から心操人使の個性を教えて貰っていただろうに……ま、何にせよ勝ててよかった。
続く戦いは瀬呂範太VS轟焦凍、始まった瞬間に焦凍が観客席に届こうかという程の大氷壁を創り出し開始宣言の僅か2秒後に瀬呂を行動不能に陥らせると会場から静かなドンマイコールが響いていた……。
……瀬呂どころか審判のミッドナイト先生も少し攻撃に巻き込まれて震えてないか? アレ……寒そうだな。
「さて……もう2回戦か……なんだかんだで早いもんだ、次は上鳴さんとですか」
控え室で準備をしてフィールドへと向かいながら考える。
対面するは上鳴電気……八百万百の時とは違う意味で短期決戦で終わらせなければならない。
明確にルールで決められた絶対の勝利条件と敗北条件がある故に気絶と行動不能は絶対に避けなければならない。
その時点で私と上鳴電気の相性差はどちらかと言えば上鳴に優位があると言える……無差別放電で私が何かしらに触れる前に気絶させる事が出来たら上鳴電気の勝ちで……そうでなければ私の勝ちなのだ。
詰まるところ……八百万百の時とは違う意味で勝負は一瞬で決着する。
どちらが自分の個性を如何にして相手よりも速く相手に押し付けるかだ……しかも上鳴電気の個性は『帯電』であるが故に接近戦も行える、そして4〜5メートル程度の中距離であるならば放電して制圧する事が可能である為、どこまで近づきどこまで近づかないかの判断を即座に下さなければならない……まさに一瞬の迷いが命取りとなりうる。
深呼吸を繰り返しながらフィールドへと進むと実況のプレゼントマイクがハイテンションで実況を開始した。
「さぁさぁ‼︎ お待ちかねの2回戦‼︎ 2回戦第1試合は上鳴電気VSアウルム・ミダスティア‼︎ 黄金を司るアウルム・ミダスティアに対して上鳴電気は何か策があるのか!? そして雷を放つ上鳴電気に対しそれを超える手段はアウルム・ミダスティアにはあるのか!? 注目の第2回戦‼︎ 3.2.1……スタート‼︎」
開始宣言と共にアウルム・ミダスティアも上鳴電気も互いに速攻で接近して己が個性で相手を行動不能に陥れようとする。
上鳴電気は『帯電』による無差別放電250万Vにてアウルム・ミダスティアを感電させて気絶及び行動不能狙いで。
アウルム・ミダスティアは自身の『個性』でありその手に発現した『呪い』である『黄金』にて。
接近する最中、アウルム・ミダスティアは自身の眼前へと手を振るい黄金を生成しその黄金を操作して上鳴電気の身体へと触れようとしたがそれよりも速く上鳴電気の無差別放電をその身に受けてしまう。
250万Vという電撃により筋肉が電気刺激で痙攣し身体が痺れ黄金の操作が一気に覚束なくなる。
250万Vという電撃を喰らっている時間が5秒経ったか10秒経ったかはアウルム・ミダスティアには分からないが一つだけ言える事がある、このまま電撃を喰らっていれば確実に気絶して負けるという事。
そうなる前に何とか脚を動かして電撃の範囲から脱出しようにも痙攣により肉体の動きが上手く取れずにいた。
アウルム・ミダスティアはこの無差別電撃の範囲内ではもはや……脱出するのを不可能と判断して痙攣している自身の腕を無理やり動かして自分のジャージに触れジャージを黄金化させてそのまま形状を変化させる。
黄金化したジャージの形状を変化させて自身を覆う様に円形の黄金の盾とし一瞬ではあるが電撃を遮断、電撃から解放された刹那の一瞬を見逃さずに盾の一部の形状を変化させて上鳴電気から4m程度の距離を取ると電撃による火傷が酷く上手く動かす事が出来ない自身の手を無理やり動かしてフィールドに置き一瞬にしてコンクリートのフィールド全体と上鳴電気の首から下を全て黄金化させ行動不能に陥らせる。
アウルム・ミダスティアは全身に電撃による火傷を負って電撃と火傷による痛みが自身を気絶に追いやってしまう前に黄金と化したフィールドを操り上鳴電気を場外へと吹っ飛ばして勝利条件の1つであるフィールドから追い出すというのを達成する。
一見余裕で勝利したかの様に見えるアウルム・ミダスティアであるが電撃による火傷や打撃による負傷が酷く気絶しかけるが何とか堪える。
アウルム・ミダスティアは息も絶え絶えになりながら審判であるミッドナイト先生より勝ち名乗りを受ける。
アウルム・ミダスティアは悠々と歩き黄金になったジャージを元に戻しつつ控え室へと向かう道のりで壁に倒れ込むようにもたれかかり荒い息を整えながら言の葉を呟く。
「ぜぇ……はぁ……あ、危なかった、あと1秒でも指がジャージに触れるのが遅かったら……負けていたのは私の方だった、流石に……キツかったな」
身体の痛みを無視して立ち上がって歩き出す、とりあえずはリカバリーガールの下に行って治療してもらわなければ……。