「君はハンターを目指す有望な若者だ。
商人の出である君は、それを生かした剥ぎ取り、採取が得意。
モンスターを解体して得た素材を使って街で装備作成を依頼したり換金したりする。
ハンターズギルドのアリアハン支部、通称ルイーダの酒場で登録を済ませた君は支給品を受け取るとアイルーの斡旋人、ネコバァからオトモの紹介を受ける。
勇者とまで呼ばれた偉大なハンター、オルテガに仕えたアイルーの仔で、子供の居ないオルテガ夫妻から息子のように可愛がられ育てられた(だがメスである)のだというオトモを引き連れ、君のハンター生活は始まるのだった」
「わっ、ホントに最初からアイルーを連れてる。どうやったのこれ?」
私、深山シオン(14歳女子中学生)はスマホに映し出されたドラゴンクエスト3のプレイ画面に見入る。
アイルーと採取が好きだけどアクションゲームが絶望的に苦手な私。
ターン制の『モンスターハンター ストーリーズ』もあるけど肝心のオトモアイルーが可愛くないし(個人の感想です)、自由で気楽なハンター生活がしたいのであって、個性のある主人公やストーリーを押し付けられるのも好みじゃないし……
というわけで義兄の、としあき兄さんに相談したんだけれど、
「二週間後にもう一度来てください。本当のターン制モンスターハンター生活をプレイさせてあげますよ」
とキメ顔で言うので待っていたら、二週間後に義兄さんが昔使っていたお古のスマホを渡されて。
その画面上に表示されたのがドラゴンクエスト3のプレイ画面で二足歩行をするネコ、オトモアイルーを引き連れたプレイヤーキャラの姿だった。
「ドラクエ3のキャラに最初から最後までネコのぬいぐるみを着せっぱなしにすることでオトモアイルーを再現することにしたんだ。今時のゲーマーからするとドラクエ3はストーリーやキャラが薄い、弱いって話だけれど、逆にそれはプレイヤーが自由に想像できる余地が多いってことだから」
だからさっき義兄さんが語ってくれた「君はハンターを目指す有望な若者だ……」というストーリーが成り立つわけね。
「説明すると主人公であるハンターは女商人。モンスターを倒した場合に1/4の確率で約1/8の追加収入が得られるという、モンハンで言う劣化『剥ぎ取り名人』なスキルが素で付いてるし、レベル12以降で覚えられる『あなほり』はフィールド上で採取ができるようになるスキルだ」
「なるほどぉ、モンハンの剥ぎ取り、採取生活を再現するのに商人はうってつけってわけね」
「呪文を覚えず武器とアイテムだけで戦う、というのもモンハンのハンターらしくていいよね。あと商人は武器が左手持ちっていうのも、右腕に盾、左手に片手剣やランスを構えるモンスターハンターっぽくていいし」
「あっ、ホントだ。左手に片手剣持ってる」
画面を確かめると、確かに商人のキャラはそうなっていた。
「途中で戦士に転職してモンハンらしく上級の武器、防具を揃えて戦っていくのもいいかもしれないけどね。『あなほり』は覚えたら転職しても使えるし」
うーん、迷うなぁ。
そして義兄さんは、
「オトモの方は、ずっとぬいぐるみを着せっぱなしになるんだけれど……」
とオトモアイルーの方に言及するんだけど、そうすると、
「呪文やブレス耐性が盾頼りに?」
ということでは?
「そう。それができるのは魔法に耐性を持つ魔法の盾の他に、ブレスに耐性を持つドラゴンシールドが使える戦士、盗賊、そして勇者だけれど」
義兄さんはうなずいて、
「勇者はさらに強力なブレス耐性を持っている勇者の盾を装備できるし、どうせ勇者はゾーマを倒すまでパーティから外せない。そして二人パーティでクリアするなら勇者を入れるのが一番楽、ということでオトモ役にしたんだ」
そういうことみたいだった。
「勇者の呪文もオトモアイルーの回復笛や『環境生物発射の技』みたいなサポート行動と見ればいいし」
確かに、モンハンには魔法なんて無いから、そういうオトモの技と考えればいいわけね。
それはそれとして、このオトモなんだけど、
「ところでぬいぐるみって結構後にならないと手に入らないよね。どうやって最初から装備させたの? セーブデータいじったの?」
という疑問が生じるんだけれど、スマホ版ってそういうのできたっけ?
「アリアハン大陸のレーベ南の草原には、最後のカギで開けられる鉄格子の扉を開くと使える、ポルトガの灯台へと繋がる旅の扉がある」
「うん?」
「魔法使いはすべての扉を開けられる呪文アバカムをレベル35で覚えることができて」
「まさか……」
「そう、ストーリーをまったく進めずとも魔法使いをレベル35まで育ててポルトガの灯台へ行けば、そこでポルトガ、そしてイシス周辺のモンスターと戦い、ドロップアイテムを狙うことができる。イシス周辺にはぬいぐるみを1/256の確率でドロップするキャットフライが出るから」
ぬいぐるみが得られる?
「でも1/256って凄い低確率……」
「この準備のために別に商人をレベル12まで育てて『あなほり』で狙ったから25分程度で終わったよ。あなほりって1/4の確率でその場で出現するモンスターのリストを上から下までチェックするんだけれど、イシス周辺だとこのリストにキャットフライが2回載っていて結果として1/128程度の確率になるから」
実際には足し算にはならないけど、低確率帯では足し算の値に近くなる、と理系で高専卒の義兄さんは説明してくれる。
「いや、それよりアリアハンのモンスターで魔法使いをレベル35まで上げるのが大変だった。実際、2週間かかってるしね」
ストーリーをまったく進めないということはアリアハンの、ごく少ない経験値しか持っていないモンスターたちと延々と戦い続けてレベル上げをしないといけないってことよね。
なにそれ拷問?
「だ、大丈夫だったの、おにーちゃん」
動揺して、つい小さかった頃の口調で呼んでしまう。
「魔法使い一人なら4倍速でレベルが上がるし、スマホ版は『作戦』、賢い戦闘AIが付いているから楽だったよ。最初に『戦う』を選んだらAIが最適な集団攻撃魔法を選んでワンターンキルしてくれる。別のことをしながらでもレベル上げができるし」
そうやっていると5分で1000ポイント程度の経験値が稼げるから、絶望的とまではいかなかったらしい。
それでも魔法使いをレベル35まで上げるには329495ポイントの経験値が必要で、計算では27時間かかる。
二週間なら毎日2時間ずつ。
別のことをしながらできるのなら何とかなる、のかな?
「でも飽きなかった?」
「途中からは飽きて眠くなるのを逆に利用してたよ。寝る準備をして布団に潜り込んで、ナイトモードで柔らかな光を放つようになったスマホ画面でプレイし続けていると、すうっと眠くなって、とっても気持ちよく寝られるんだ」
最近、寝つきが悪くて困ってたから逆に助かったんだよね、って笑って見せる。
普通の人なら相手に負担に思わせないポーズかな、って考えられるんだけれど、義兄さんはそういうことしない、素で言ってるんだって分かるから少しは安心できるかな?
「まぁ、スーパーファミコン版のROMを吸い出してエミュレーターでチートを使うとか、Wii版でセーブデータいじるとか、キメラバグやリレミトバグのあるゲームボーイカラー版でお手軽に『ぬいぐるみ』を出しても良かったんだけれど」
「そういえば、そういう手段もあったのよね?」
どうしてそうしなかったの?
「採取生活を満喫するならフィールド採取、つまり商人の『あなほり』が輝くスマホ版じゃないと」
「それは?」
「まず、スマホ版はスーパーファミコン版に比べてフィールド切り替えにかかる時間が短く、メッセージ表示速度も早く、1回のあなほりに必要な操作もスーファミの最少7回のボタン入力に対し、4回の画面タップで済む。これにより時間も手間も2/3で同じ回数だけ掘れるんだよね」
「つまり、スーファミで30分連続で掘るのと同じ結果を20分で済ますことができるってわけ?」
「そうそう、モンハンで言う採集、採掘のお供『高速収集』や『採集の達人』のスキルが付いているようなものだから、当然チョイスするよね」
確かに、それはかなり大きいかも。
「そして、すごろく場が無くなったスマホ版では、すごろく券をドロップしていたモンスターのドロップアイテムがファミコン版と同じものに差し戻されたんだけれど、ドロップ率の方を戻し忘れてるっていう修正漏れがあって」
「はい?」
「すごろく券のドロップ率って1/16か1/32でゆるゆるなんだよね。そういった確率で元々のドロップアイテムが得られるのはかなり美味しい。ホロゴーストなんて1/16の確率で死の呪文の効果を身代わりに受けてくれる命の石が得られるものだから、ネクロゴンドの洞窟の道中、フロアが切り替わるたびについでに5回掘るだけで消費を上回るペースで命の石が集まる。だから即死呪文のザキもザラキも無視できるようになるって言う」
「そ、それは……」
ゲームバランス崩壊してない?
「あと追加された中断セーブ機能でゲーム終了、再開すると連続5回までという『あなほり』のカウントがリセットされる仕様なのもいい」
『あなほり』は一か所で連続5回まで採掘、採取できるスキル。
それ以上はモンハンの採集で言う【これ以上は何もないようだ】という風に取れなくなるので場所を変える、街に出入りしたり、ダンジョン内でフロアを切り替えるなどといった行為で5回のカウントをリセットする必要があるが、中断セーブでそれが補えるとすると……
「あれっ、それを使えばもしかして?」
「出入りすることであなほりのカウントをリセットする街やダンジョンが近くに無いフィールド上でも連続してあなほりができるってことだね。例えばゾーマの居る魔の島南側のフィールドのモンスターエリアが1マスだけラダトームの南、突き出た半島部分にはみ出てるんだけど、アレフガルドに降りてすぐ行けるここであなほりができれば、トロルキングが落とす雷神の剣が得られるから」
「雷神の剣!? アレフガルドに降りた直後で?」
「モンハンで発掘される『さびた塊』や『太古の塊』。いや、モンスターハンター4の発掘武器みたいだよね」
確かにかなりそれっぽい!
「最後にスーパーファミコン版、ゲームボーイカラー版と違って、すごろく場が無い分、得られるお金が少なくなるので、金策で商人が特に役立つっていうこともあるね。1/512の確率で掘れる所持金の半額も大きいけれど、高額アイテムを掘り当ててもいい。さっき言ったすごろく券ドロップモンスターのドロップ率戻し忘れで、ヘルコンドルが2175ゴールドで売れるみかわしの服を1/16の確率で落とすようになってるから狙い目かな?」
「おおー」
なるほどねぇ……
「他に、スマホ版ではアイテムが隠されている場所に行くとエクスクラメーションマーク、俗に言うビックリマークが出て知らせてくれる親切仕様になってるんだけれど」
「あ、ホントだ」
アリアハンの街中、ゴールドが隠されたタルに近づくと『!』マークが出た。
「これもモンハンの狩猟フィールドに置かれている支給品BOX、つまりハンターズギルドからの支給品と考えて……」
バラモスからの報復を避けるため街やダンジョンの各所に分散して支給品BOXが置かれている。
タンスやツボを利用し偽装している場合が多いが、これらには印が付いていて依頼を受けたハンターにはその場に行けば分かるようになっているため探して見ると良い。
民間協力者からの供出も有り。
なお、一部には『環境生物利用罠』として人食い箱やミミックが混ぜられているので素人は手が出せないようになっている。
「……みたいに自分設定でプレイすれば」
「ああ、ドラクエの勇者は、よその家に押し入ってツボやタンスを勝手にあさる犯罪者…… っていう汚名を負わなくて済むから罪悪感が無くなっていいねっ!」
「それにダンジョンに宝箱が置いてあるのも、モンハンで狩猟をするフィールドに支給品BOXがあるようにハンターズギルドからの支給品が現地に置かれてるって考えれば、ある程度は説明がつくし」
と、二人で語り合って盛り上がるんだけれども、
「でも義兄さん、私の悩みごとからここまでしてもらえて、とっても……」
そう、義兄さんはいつもどおり何でもないように話すけど、27時間かけて準備してくれたことには報いないといけないと思う。
だから……
「お礼に、なにか私にでもできることあるかなぁ? な、なんでもするよっ?」
「ん? 今なんでもするって言った……」
「え? ああ、うん。私にできることなら…… って、ああっ!?」
そ、そうだ、としあき義兄さんだって、男の人……!
なんでもするなんて言ったら、えっちな……!?
だ、ダメだよぉ。
義兄さん優しいし、私のこと理解してくれるから話しやすいし、一緒に居て楽しいけど、でもでも、それとこれとはぁ――
「それじゃあ……」
き、キターーーーーーっ!!
「これでゲーム実況動画配信やってみない?」
「へ?」
「シオンなら人気出ると思うし」
「えええ!?」
「シオン、声も綺麗で聞いてて心地良いし」
「ぴゃーっ!」
に、義兄さん、私のこと、そんな風に思ってたのぉ!?
「リアクションも面白いし…… って、聞いてる?」
ううう、今までまったく意識してなかったのに、いや意識していなかったからこそ逆に。
恥ずかしくて義兄さんの顔、見れないよぅ……
TO BE CONTINUED?
モンスターハンターはポータブル2ndGが一番好きでした。
故郷が雪国で、祖母の家が田舎の元鉱山町にあって、山に入って山菜やキノコを採取したり、綺麗な鉱石を拾ったりという子供時代を過ごしたおかげで、ポッケ村と最初の雪山フィールドにとってもノスタルジーな原風景を感じてしまうんです。
雪山フィールドのエリア1に広がる湖面なんて、距離スキーの大会で訪れた冬の十和田湖畔を思い出しますし。
(めちゃくちゃ風が冷たくて難儀した覚えもありますけど。あの時マフモフシリーズがあれば……)
心のどこかに、あの頃のように田舎で採取しながらのスローライフを満喫するのもいいかなぁ、なんて想いがあるんでしょうね。
そんな想いを満たしてくれそうなモンハンシリーズですが、難易度高めのアクションゲームで苦手な人間には敷居が高く。
かといってターン制RPGになった『モンスターハンター ストーリーズ』はコレジャナイ感が強く(あくまで個人の感想です)。
だったらプレイし慣れたドラクエ3で気楽で自由なハンター生活が再現できないかな、とチャレンジしてみたお話でした。
まぁ、準備が大変でしたが。
なお、本当に『TO BE CONTINUED』するかは……
ドラクエ世界でモンハン的に解釈した採取と狩猟を満喫するプレイをゲーム実況動画配信風に書いてみるのも面白いかなぁ、と個人的には思います。
今回のお話の反響次第ではありますが。
それではみなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後の作品の参考にさせていただきますので。
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