Punching of Rubicon 作:子々ヶ奈 目九次郎
『AH12 HC HELICOPTER』、型番上の名前はそんな名前であるが実際にそう呼ばれている場面は少ない。
普通にヘリコだとか惑星封鎖機構大型武装ヘリだとかわかりやすい名称で呼ばれている。
大型ヘリと言ってしまえばそれまでだが実際のところめちゃくちゃでかい。
人の背丈の10倍は大きいMTの10倍はあるんじゃないかという大きさ、人間と比べたら果てしなく大きい乗り物であると言うことは理解できるだろう。
そんな超大型ヘリであるがなんと運転席は1つだけだ。
細かいことはわからないが惑星封鎖機構の技術力によって1人でも運転できるように機械がサポートしてくれているらしい。
でもってその大型武装ヘリのパイロットが何を隠そう俺である。
そして今回は上層部からの任務で汚染市街を飛行している。
名前の通り汚染が進み市街としての運用はできなくなった価値のない場所であり、今では惑星封鎖機構と長年争っている原住民の解放戦線だとかいうテロリストが蔓延っている。
「コード23。解放戦線のMTを発見、処理を行う」
汚染市街に到着し辺りを見回すとやはりテロリストのMT達が蔓延っていた。
対象ではないが見つけた以上は無視するわけにもいかない。
MT達は咄嗟に攻撃を加えてくるが気にせずロケット砲でまとめて吹き飛ばす。
蹂躙や虐殺と言うべき光景が周囲に広がる。
まあ別にテロリストを何人殺したところで罪悪感はわかないが。
ロケット砲を撃ちながらぐるりと汚染市街を回り汚染市街の中でも高台に位置する廃墟を目指す。
開けた土地になっているその場所に今では大きなクレーターができているのが確認できる。
クレーターには一体のACが黒焦げで鎮座していた。
『レイヴン』。コーラルの情報を外部にリークし企業の奴らをルビコンに呼び込んだ害鳥、その成れの果てらしい。
俺は本人と関わったことがないのでその『レイヴン』というのがどういった奴だったか知らないが上司達は散々煮え湯を飲まされていたようで親の仇のように『レイヴン』を憎んでいる。
今回の具体的な任務としては
・あの憎き『レイヴン』を奇襲で倒したぞ!
・でもいくら奇襲といってもあの『レイヴン』にしてはあっさりとやられ過ぎでは?
・何か裏があるかもしれない!監視しろ!!
ということらしい。
俺としては警戒しすぎだと思うが上の意向である以上出撃しなければいけない。
バカでかいヘリコプターの癖に廃墟の裏に隠れるようにして残骸にアクセスする不明機体がないかレーダーで監視する。
どうせ無駄骨に終わるだろう。
«システムより通達。所属不明機体によるアクセスを確認»
えっマジ?
現場に急行し目視で確認してみると確かにそこには『レイヴン』の残骸にアクセスしているACが確かにいた。
「コード44!あれは『レイヴン』か!?」
«データ情報不明。機体データによる一致率63%。捕縛しデータの精査してください。»
「了解!」
此方で目視した限りでは確かにそのACは資料で確認していた『レイヴン』の機体によく似ていた。
頭部パーツがデータとは違うように見えるが元々ACというのはパーツを付け替えることができることが売りの汎用機体だった筈だ。
あれが『レイヴン』である可能性は捨てきれない。
俺は出会ってしまった以上は気を引き締め、AC一体には過剰すぎる武装を携えたヘリコプターの照準を不明機体に合わせた。
後はボタン1つで不明機体を鉄屑に変える事ができる。
「食らいやがれ!」
搭載された武装の中で最も火力の高いロケット砲を発射する。
発射されたロケットは不明機体に対して致命的なダメージを与える筈だ。
例え回避行動を取ったとしても爆風からは逃れることができない。
『……』
不明機体は避けなかった。
不明機体はロケットなんて眼中に無いとでもいうように此方に高速で突っ込んできた。
「アサルトブーストか!」
ACの機能の一つ、小回りは効かないが素早く長距離の移動や距離を詰める時に使用する機能。
そんな機能を使い攻撃に対するカウンターのように多少のダメージをもろともせず一直線に突き進んでくる。
咄嗟に機銃を発射するが対応に遅れてしまった為に機銃が不明機体を捉える前に肉薄を許してしまった。
そこで不明機体は更に予想外の行動に出た。
右手に持っていたアサルトライフルをまるで剣のように振り下ろし叩きつけてきた。
バギン!というライフルが粉砕する音と共に運転席に衝撃がはしる
「ぐっ!?」
«ACS負荷値急上昇»
瞬間的な衝撃に姿勢制御システムが悲鳴をあげる。
武装ヘリは瞬発力は乏しい分装甲の厚さのダメージを抑えている。
回避でなく防御を選択している以上姿勢制御システムに負荷がかかりやすく衝撃力が大きい攻撃を連続して受け続けるといずれ制御限界が来てしまうと整備班からも言われていた。
アサルトライフルの銃弾に比べれば銃本体で殴ったほうが衝撃は大きいだろう。
しかしたった一回の攻撃のために銃を使い捨てにするなんて狂人のやることだ。
「驚かせやがって…!蜂の巣にしてやるよ!!」
狂人の一撃も制御限界に達する事はなかった。
このまま落下していくであろう不明機体に機銃をぶちこんで無謀に突っ込んできた事を後悔させてやろう。
だが不明機体はまだ諦めていなかった。
武器がなくなり素手になった右手のブースターが炎を吹き出し再び此方に接近する。
ドゴ!
衝突音と強い衝撃、武器の次は拳で絶えず攻撃を加えてくる。
「はっ……離れろコイツ…!!」
右、左、右、左、まるで太鼓でも叩くようにリズミカルに殴打を繰り返す不明機体。
後方に移動して不明機体を引き剥がそうとしても不明機体はブースターを使い吸い付くように殴り続ける。
«ACS制御限界»
ついにシステムの限界を迎え運転席にアラートが鳴り響き一瞬ヘリの動きが止まる。
その僅かな隙さえあれば不明機体には十分だったようだ。
運転席に影が落ちる。
不明機体がヘリの上に立っていた。
「うわあああああああああ!!?」
俺は思わず本気で叫んでしまっていた。
静かに振り上げられる腕、その直後響く打撃音と衝撃。
「動けっ!糞が!!」
姿勢制御が効かないためか先程よりも強く感じる衝撃を受けながらガチャガチャと操縦桿を動かし不明機体を振り落とそうとする。
«警告 乱雑な操作入力を検知»
「うるせぇ!わかってんだよクソ!クソ!!」
実のところ機体へのダメージは少ない。
ACという大型機械から繰り出される質量攻撃であるため瞬間的な火力は想像以上にあるが継続的な火力という点ではミサイルやバズーカ等の重火器に劣る。
そして殴るには何より浮いているヘリに直接殴りに行かないといけない。
だから焦る必要はない。
機体からひっぺがした後で取りつかれないように動き回りながら撃ち下ろし続ければきっと倒せる筈。
だがそれ以上に不明機体が恐ろしい。
不明機体を振りほどいて逃げられる未来が想像できない。
不明機体の意図がわからない。
アサルトライフルは壊れたものの不明機体の肩にも兵装は付いているし左腕の機械も恐らく武器の筈だ。
つまり素手で殴る事に拘り続ける意味はない。
「コード31!コード31!」
«驚異レベルA。敵性機体は武装を使用していません。冷静に対処してください»
システムは不明機体の事を驚異に値しない存在と認識している。
機械にはこの不明機体の不気味さがわからないのだろう。
システムに警告されながらもなんとか不明機体を振りほどいて地面に落下させることに成功した。
地面に降りても相変わらず不明機体は肩武装を使う気配はなく此方の様子を観察している。
試しに機銃を発射すればブースターを細かく噴かせて逃げ回りミサイルを撃てば建物の影に隠れて回避する。
先程の猛攻が嘘のような慎重な行動、それがむしろ恐怖を増幅させた。
不明機体は正気だ。
決してイカれて特攻したわけでなく、勝てると思って特攻して殴りかかってきた。
「できるわけがない…!独立傭兵のACごときがよぉ!!」
不明機体が倒れるか俺が倒されるか、決着がつくまで俺は不明機体から殴られ続ける恐怖に耐えなくてはいけない。
その事実を忘れたいが故に思わずロケット砲を構えて発射する。
«警告 不明機体の急加速を検知»
「あ」
不用意な攻撃によって生じた隙を逃すような相手ではないことを思い出した瞬間、目の前には再び不明機体が迫ってきていた。
衝撃
【戦闘データ:撃墜された武装ヘリの戦闘ログ】
汚染市街で発見された弾痕の存在しない惑星封鎖機構大型武装ヘリの奇妙な残骸からサルベージされた戦闘ログ
データにはこのヘリコプターが所属不明のACによる殴打のみで撃墜されたと記録されている
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はやく 殺してくれ…
その武器を使えばもっとはやく殺せるだろ
なんで使ってくれねぇんだよ…
システム!降参だ!武装を放棄させろ!
勝手に操作するな! 俺はもう戦いたくないんだ!
やめてくれ 誰か…
«以降の音声はノイズとして削除されている»