雪国に伝える執行官   作:ほがみ(Hogami)⛩

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一枚目 雪国の話

この世界は様々な組織で成り立っている。

1本は細いが、沢山集まって立派な柱になっていることで世界は回る

それを可能にしているのは、七神という強大な力のおかげでもある。人は誰しも強い力に縋ることで、自分は強くなったのだと錯覚することが多い

ーこの俺もそれは実感している。執行官になって新たな力を手に入れた時でさえそれは思ったことだ

 

「…はぁ…相変わらず寒いな。ここ(スネージナヤ)は」

 

そう言って俺は雪の積もった重苦しい門を開ける

ここは神に愛されぬ雪国【スネージナヤ】。氷神が統治するテイワットでもっとも寒い国

氷神を慕い、氷神の目的を達するために設立されたファデュイという組織が政治を行っている

 

―ファデュイは目的を達成するためなら手段を選ばない。そのため各地で嫌われている

そしてあらゆる問題をファデュイのせいにされることも多々ある

『俺のせいじゃないっ!悪いのはあいつだ!』

そう言われて消えていったエージェントは数多い

 

「仕方ないことだな…日頃の行いさ」

 

俺は街を散策しながら目的地へと急ぐ

にぎやかとは言えない町並み。だがこの街には暖かさがある

人々の暮らしから得られる暖かさ――これは何にも代えがたいものだ

そんな暖かさを得ながら歩いていると、目的の場所へとついた

―石造りの質素な家。扉はいい色の木が使われており、丸い窓が明るい光をともしている。俺は、そこへと足を踏み入れた

 

中は温かい光が灯っており、数人の子供たちが机を囲み、美味しそうなご飯を眼の前にしている

 

「ノ、ノヴァルム様!」

 

丁度向かいに当たる少年が勢いよく立って名前を叫ぶ

すると他の子供達も立って次第に俺の方へと向かってきた

 

「みんな久しぶりだな。元気にしてたか?」

「はいっ元気にしてました!」

 

ここにいる子どもたちはみんな訳ありな子だ。親に虐げられたり、売られたりと過酷な過去を持っている子もいる

そんな子を俺は保護し、健やかに育てるために【晴天の海(スカイ・オブ・シー)】を設立した

フォンテーヌに【壁炉の家(ハウス・オブ・ハース)】という孤児院があるが、こことは違う。あそこはファデュイの一員として育てるが、ここはただの家だ

 

―将来は自由。どのように生きていくかなんてのは、個人の自由に任せている

名前にもある通り、空は迷いがなく晴れ渡っており、自由な海が広がっている。その中をどう行くかなんてのは自由だろう?

 

「…今日はなにを…」

「今日は珍しいものだよオリヴィア。ほら、これ」

 

俺は懐から白色の百合のような花を小さな少女(オリヴィア)に差し出す

それは自由の国モンドの特産品で、清涼かつ風が強いところにしか生息しないものだ。ここスネージナヤでは寒すぎるからこのような花はとても貴重で売られることも少ない

 

「セシリアの花…?」

「そう。前から見てみたいって言ってただろ?」

「約束…覚えててくれたんだ」

 

オリヴィアはすこし微笑む

ここに初めてきた時は、もっと感情がなくて楽しそうにしていなかったが、こうやってみんなと過ごすことによってだんだんと感情が豊かになってきているようだ

俺は当たり前だろとオリヴィアの頭をポンポンと撫でる

すると、規律正しくする少女と少年は、自分たちも撫でられたさそうにムズムズしている

 

「なんだ?お前らも撫でられたいか?」

「い、いえ!大丈夫です!」

 

そういう少年に俺は構わずに頭を撫でる

すると少年は驚きを隠せずに感情をあわらにした

 

「んな?!」

「あははっ!お前たちはまだ子供でいいんだよ。ほら零、こっちに来な?」

「はい」

 

少女もこちらに寄ってきて頭をあずける。そして頭を撫でると嬉しそうな顔をする

ここの子達はみんな俺を慕ってくれている。俺を親として、家族として接してくれるのは俺としても嬉しいことだ

 

―ま、撫でるのは一旦終わりにして、食事を楽しもう

こうやって温かい食事を取るのも久しぶりだ。スメールに行った時なんか、そこら辺に生えてるなんか木の実みたいなものを食べてたし、フォンテーヌ行った時は武器を飛ばして魚を取って食べてたから

 

「俺がいない間変なことはなかったか?」

「…なかった…でも――」

「――でも?」

「――涼斗がパンの食べすぎて倒れた」

「ちょっ?!?!?!」

 

少年こと涼斗は慌てたように立ち上がってオリヴィアに口封じしようとする

それほど彼にとって恥ずかしいことなのだろう。だが、その様すら微笑ましい

同い年の涼斗と零。そしてオリヴィアは最年少で妹らしい子だ。こういう扱いがされることは、彼女にとっても彼らにとってもいいことだろう

 

すると突如窓が開き、そこに白い鷹が文を加えて窓際に止まっていた

俺は席を立ち、その文を鷹から預かり、その内容に目を通す

 

「………」

 

その内容は吉報とは言えないものだった

任務の報告書であり、とある事件の犯人の居場所が判明したとのことだ

 

「ノヴァルム様?」

「…すまん。任務が入っちまった」

 

子どもたちは不安そうな顔をする

やっと帰ってきたと思ったら叉どこかに行ってしまうのだから、その感情は分からなくない

だからこそ俺は、すぐに帰ってくる旨を伝えると、子どもたちは悲しいという表情をすぐに消し、嬉しそうな顔に変わった

―ま、任務の話は一旦置いておいて、今はこの子達との時間を楽しもう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

俺は早くに晴天の家を出た

早く行かなくては任務に間に合わないから

 

―先日、晴天の家に盗みが入ったとの報を受けた。丁度その時、彼らはいなかったものの、食料やちょっとしたものが盗まれた。俺はそれを許すことはできない。管理者として・親としてそれを許すことは、自分の脇の甘さを見せつける愚行になるから

洞窟の入り口にて俺は人を待つ。

 

「――布達様」

 

黒いローブをまとったデットエージェントが俺に耳打ちをする

彼は俺の優秀な部下で、対象の監視役を務めてもらっている

 

「状況は?」

「依然変わりないかと。彼らは油断しているどころか宴会を始めています」

「やるなら今だな。よしっ、お前は出口の封鎖を頼む。逃げようとするやつは始末していい。俺は殴り込んでくる」

「…了解しました」

 

そう行って彼は消えた

俺は一度深呼吸して仮面をつける

 

―正義はこちらにあり

 

――奴らは悪であり、排除すべき汚点

 

―――俺の手で滅ぼす

 

 

 

 

 

 

 

 

コツコツと洞窟内に響き渡る靴の音

 

奥から聞こえるのは、宝盗団の笑い声

 

「ん?誰かいたような…うっ―――」

 

見張りと思われる男は地に伏す

気づいたとしてももう遅い。俺の元素は鋭い氷の針となり、急所にすっと入る。痛みなど感じないだろう

その音に気づいたのか他の人が更に出てくると、倒れている人を見るなり叫び声を上げる

 

「?!敵襲だ!!!!ボスの報こ…く…???」

 

男は振り向いてもとの場所に行こうとしたが、足が動かない

よく見て見ればその足は凍っており、動こうとするものならその足の肉は剥がれるだろう

俺は静かにその男に向かって歩いていく。すると男は怯えて顔が真っ青になる

さて…この男をどうしようか

 

「あ、あんたは―――!!!!」

 

怯えた顔は未だ解けることはなく、また怯え始める

 

「………」

「や、やめてくれ!あ、あんたにはもう刃を向けない!絶対だ!」

「―状況判断ができる男だな。刃を向けないのは正解だ。その名誉を称えていいことを教えよう」

「な、なんだ…?」

「お前の唯一の間違いだ。それはこの宝盗団に入ったことだな。ファデュイならば、俺が面倒見たというのにな」

 

俺はそう言ってその隣をすり抜け、奥にいる宝盗団の刃を向ける者に対してそれ相応の対応をする

阿鼻叫喚の声。仲間と思っていた者の悲鳴は答えるだろう。だがなんだか人数が少ないような…

 

「なぁ」

「ひっ!な、何でしょう?!」

「全員で何人だ?」

「え、えっと…仲間は…このくらいです」

 

男は手で人数を表す

おかしい。倒した人数より格段に多い。別に行動しているのかあるいは…

俺は男の目を見る。嘘はついていない。それに嘘をついていいことはないだろう。主導権はこちらにあって、あっちは俺の行動次第でどうにでもなる存在だ

 

―俺は男の足元の氷を溶かす。男は一瞬、わけがわからないような顔をするが、俺がついてこいというと素直についてきた。謀反(?)するような素振りもなく、なにかを企てている様もない

 

「こいつらで全員か?」

「…いえ…少ない…宴会の時はもっとたくさんいたはずです…」

「そうか。じゃ、ついてこい」

 

そういって俺は出口に近づく

すると、そこには武器を持って立ち尽くすデットエージェントの姿と無造作に床に伏した宝盗団の姿があった

男は、あっあ…という言葉にならない声を漏らす

 

「布達様。命令通りに始末しておきました。彼らが口に出した言葉から、犯人で間違いないかと」

「よくやった。さて…お前はどうする?」

 

俺は膝をついて不安そうな顔をする男に問いかける

 

「お前は捨てられたってことだ。仲間と言っていたが所詮、お前は捨て駒だったってわけだ」

「っ……俺はどうすればいいんだ…」

「お前がどうするかは俺たちが決めることじゃない。お前自身が決めることだ」

「………」

 

男は黙る。静かに。どうするかを考えるようにただ黙る

俺たちはその男を背に去ろうとすると、男は叫ぶ。「なぜ俺を助けたのか」と。くだらない質問だった。だから俺は言い放ってやった――どうすればいいかわかった時に教えてやると

すると少し黙った後、男は俺の名を問うた

―名を聞かれたら言わなくてはならない。その名は仮名か。それとも役職か。どちらにせよ、俺にたどり着くことはできない名前だ。任務外だし教えてやってもいいだろう

 

「…ファデュイ執行官第10位【布達】だ」

「布達…覚えました!今度自分がすべきことがわかったらあなたに会いに行きますね!!!!」

 

声は遠くなり、やがて積雪に隠れて消えてしまう

彼はどのように生きるのか。それは彼しか知らない。俺たちには知る意味すらない

 

「…良かったのですか?自らの名を話しても」

「別に周りにその名を出したって馬鹿にされるだけさ。10位の座は俺の隠蔽(とくぎ)で隠されてるしな。事実を知っているのは、女皇と他の執行官。そしてお前だけだ」

「その中に入っているのは恐縮です。ですが…なぜ彼を生き残らせたのです?」

「俺が無抵抗の人間を殺すとでも?」

 

そう言い放つとデットエージェントは少しビシッと姿勢を正す

別に怒ってるわけじゃないのにな。俺だったから少しの失言も許すものの、淑女とか散兵とかだったら洒落にならないぞとすこしアドバイスをしておく

―俺が始末するのは、罪を犯した人間と敵意がある者。彼にはどちらもないと推察したから殺さない。それだけの話。

 

「ふぅ…流石に冷えるな」

「そうですね…こういう時は―――」

 

『温かい家にでも行こう(きましょう)』

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