冒険者ギルドは互助組織である。
この大陸全土を配する【セティーモステーラ王国】略して【王国】において、人々は幾つかの分類に分かれてそれぞれの立場に就いている。
jobは生まれを継いだりすることで成長の適性が備わる補正なわけだが、実のところは他の大陸にあるとされる『ダーマ』という神殿に於いて『転職』できるとも謂う話なので人々はあんまり気にしてない部分も幾つか云々。
stanceとは要するに、
―服飾に料理に石工に木工と、町や村での内職に従する
―街から街へ街中の人々へ、様々にモノを運ぶ
―ヒトの安寧を守る、警邏と従軍の
―政治の差配、呼びかけて民を宥める
―教会に属し、学士と語り部を兼ねた
―未だ何者でも無い、消費と安寧の
―旅の扉の先へ征く、世界を跨いで宝櫃を持ち帰る
大まかに分けて、この七つがこの王国で生きる人々の役割だ。
農奴が居ないのは生産者が国内に居ない為、医療者も居ないのは
実のところは、冒険者の持ち帰るアイテムの数々で回り始めたのが王国の始まりとされており、それがずっと滞ることなく続いてしまったことがこの国の在り様のこの様で…。
結局のところ、海賊山賊が国という群れを真似ているに過ぎなかった。
この国は実質的に、狩猟文化を基盤として形成されてしまった国家である。
そもそもがヒトを脅かすモンスターに対する手段が個人の戦闘力に重点を置いており、規律や法制もまた隅々までは安定していない。
脅威への対抗手段を維持することに腐心して、農地開拓や大量生産などの発展にまでは追い付いていないのが現状なわけである。
それでも問題なく動かすために、『ギルド』という互助組織が働いているのであった。
【ブリアレスタ山峡街】の冒険者ギルドは、王国内に於いては結構な上客に値する。
国内における重要性とは、要するに生産力や利便性の潤沢さが重視される。
【山峡街】にある【旅の扉】はひとつだけだが、その先の『世界』は深くて広い。
高価に取引されるアイテムがドロップするダンジョンの全てを攻略し切れてはおらず、『世界』に点在する町や村では旅用にとも買い取れる食料や消耗品が何故か豊富で、住人らとの関係性も意外と良好なモノを結べている。
そんな【街】だからこそ、そこの冒険者ギルドは中々に良い意味での注目を集めているわけである。
その分、出現し棲息しているモンスターの種類や脅威は中々に危機感を煽るほど高いのだが、対抗するための上位の冒険者はそういう『世界』にこそ奨んで探索の足を延ばしに来る。
もちろん中には質の悪いモノも混じっていることもあるだろうが、狩猟文化であるからこそ彼らは人目を惹く。
身ひとつ、装備ひとつで未知へと突き進む、そんな彼らは自ずから高潔さを抱いて生きているのである。
そんな冒険者ギルドの長が、――泣いていた。
「(うぉおおおお! エミリオあの野郎ぉぉぉ! 毎回毎回禄でもねぇ案件ばっっっかり持って来やがってぇええええ!!!)」
心で泣いていた。
大号泣であった。
強面のポーカーフェイスを保ったスカーフェイスで眼帯の筋肉質なおっさんは、今だこの場に現れない青年へ瀕死のヘイトを向けていた。
今この場に居るのは、あとふたり。
エミリオ率いる初心者らの『おみやげ』を引き取った受付嬢と、青年本人に関りの在る青年と同い年くらいの少女だ。
受付嬢の方はおみやげの『精査』を把握して口止め込みでこの場に留めて、少女の方は元より預かり案件に抵触していたので序でに待機してもらっている。
受付嬢の方は『なんでぇ…?』という顔つきで待機しており、某初心者の初日に立ち会ったビール妻もどきの嬢はエミリオらを呼び出しているところ。
少女本人はというと何かしら察しているのか、申し訳なさそうなもにょった口元で『ぉあらー』と佇んでいる。
そんな彼女の頭頂部にはアクセサリーと呼んでも過言では無い『角』が――、ふた対ふた種の歪曲した山羊か鹿のモノに酷似した青い『角』が生えている――。
「(――うん、こっちは、まあ見慣れたし、今は良いとして――、問題は――、問題をそうそう早くに幾つも持ってくるか普通――!?)」
そもそも。
彼女に関しては別件で、『査定』が長続きしたこともあるのだが、その合間にエミリオが収監されたことが事態が重なった要因ではある。
本来ならば解放されたところへ迎えに行って、その足で彼女に合わせることが『先』であったのだ。
そのタイミングで初心者が現れてチュートリアルに見送るって、何の不都合が重なってそうなるのかコレガワカラナイ。
しかも本日待機の『議題』がその『初心者』なのだ。
何らかの運命に翻弄されているのでは??? と本人の出自も含めて思考は渦を巻き、ギルド長はいっそ憐れみすら覚え始めていた。
「ギルド長、エミリオくんたち、来ましたよー」
「――おう、入って貰え」
待機の果てに思考の坩堝に陥り始めていたギルド長バレットジェラルディン(45)は努めて平静な声で、迎えに行ってた受付嬢の平坦な室外からの声に応えた。
――漏れ出た殺気でまひろちゃんに怯えられ泣かれるまであと5秒。
■
「――で、だ。コレは、明らかにヤバイよな。剣術系、持ってないもんな? いや、持ってても、この切り口って」
「まあ、
はい。査定部屋に入って早々、泣き喚いたjcです。いやjcやぞ。泣くわ、あんな殺気振り撒かれたら。いや、泣くにしても泣きすぎたな。謝られたしな。ごめんな、おっさん。
で、そっちはもう良いとして、話し合って割と長いこと放置気味です。
ご紹介されたお姉さんに懐かれて、ぬいぐるみみたいに抱かれておりますので、空き手でも無いのですが…。
…こそこそ話、長いよね?
もしかして主人公そっちのけでメインストーリー進んでるの?
お姉さんが、これからどうもお仲間として同行するっぽいのだけど、例のBGMは掠りもせんかったしなぁ…。
ちなみにこのお姉さんは【旅の扉】の先で、ずいぶん前にエミリオとイベント起こしたおキャラらしい。
あっちの世界の、湖の在る城のほとりに棲んでる現地人であらせられたのだが、件のお城に住み着いた別部族のおヒトらとのいざこざで住処を追われたヒトらしい。
ツノ、生えてるんだけど…
お名前はブルスさん。良いお乳の紅い髪に吊り目の美少女さんだ。
スキルはマヌーサとかを使える『さいみん』とブレスガード系なんかの耐性を持つ『VSドラゴン』という、前衛も補助も出来る途中参戦すると高レベルはお馴染みなサブキャラって感じ。
前衛兼遊撃系居てもらえると助かる~、ってエミリオも言ってたけど、お前単騎で戦える魔法使いじゃん。ほんとに要る?
「お? マヒロちゃんはお姉さんに居て欲しくないカンジ?」
おっと、疑問が顔に出てたか。
うーん、水棲系ドラゴンJKって感じ。
「いや、俺は良いんだけど、イノリは良いの?」
年頃でまさにヒロインって感じのがこれから混じると、パーティ壊れない~?
――などと、若干軽めな表現で問うておりますが、内心はヒヤッヒヤです。
知らんところで救出系ヒロイン加えてたんやぞ。
上条さんかお前は、って感じだ。
ここ1週間連れられていた俺的メインヒロイン、そこんところどうよ?
「――(にっこり」
……………………………………えぇ、なにその笑顔ぉ…怖ぁ…。
菩薩も斯くやというスマイルで、イノリたんは俺へ意味深な笑顔を向けて、ああもう重複表現。
「だいじょうぶですよ、マヒロちゃん。エミリオさまがそういうおひとだということは、はじめからしっておりますから。わたしは、だいじょうぶです」
…ほんとにぃ?
「することは、おかわりありませんから(にっこり」
なにをするんですか。
むしろナニのおはなしですか…?
おぉい主人公さぁん! おっさんと内緒話してる暇あったらこっちのヒロインなんとかしてよぉ!
早くしろォ! 間に合わなくなっても知らんぞォ!
おにまいの面白い部分が出てないな、と思ったので嵩上げの為に急遽新キャラをぶっこみました
ドラクエでお馴染みグレンデルちゃん(伝承系)です。ヨロシコ