戦闘シーンも冒険のシーンも無いのにドラクエと言い張るのは無理では? と
『アルゴリザード』と教えられたモンスターは、傍目に端的に簡潔に説明するなら『赤いエリマキトカゲ』で合ってると思う。
色違いの『リザードキッズ』の方が僅かに強い、とも教えられたけど、その生態はどちらも大型の『アルゴングレート』や『リザードファッツ』というデブった同色個体ドラゴンに率いられる『群れ』るタイプの多対仕様。
ちなみに『アルゴ』の方は群れの主である『グレート』が『雄』で多数の『雌』を連れてるハーレムタイプ、『ファッツ』は『母親』で文字通り子供の『キッズ』を矢面に立たせて戦わせる鬼畜仕様なのでこっちが僅かに強いらしい。研究員頑張った。
そんなわけだから、『アルゴリザード』は基本的に遁走するタイプのモンスター。
但し、強い相手には、という注釈が付く。
「ぅおおおおおおおお!!!!」
大地蹴って、風を切って、涙拭って汗を拭いて、虹の彼方まで走った俺!
それを追いかけるは十数体の小柄なエリマキトカゲ!
まひろ走る! 走る走る! 独走トップを譲らない!!!
なおアルゴリザードは【どくが】という明らかに人間害せるスキル持ちなので攻撃喰らうだけで子供は瀕死!
うまぴょいしている場合じゃねぇ!
気分はジェラシックな小柄恐竜に追い立てられるアレだよ! ジッサイ明確な死の予感!
『『『『『ゲキャキャキャキャキャキャキャ!!!!』』』』』
「やぁあああああ!!!?」
目の前に障害物!
岩やら倒木やらででこぼこ道!
スピード勝負より明らかに向いてないコースです!
アクロバティックに縦横無尽に獲物として全方向から狙われる予感在り!!!
「――転べ!」
云われたタイミングで出来る限り敵の少ない方向へ横っ飛び、瞬間、
「
追いかけてきていた群れを、火炎の奔流が呑み込んだ。
ギリ、焼かれませんでした…っ!
いやこれ転んでたとしてその場で俺も諸共では?
「まひろちゃん危ない!」
えっ、打ち洩らし―― ではなく、
クッションにした茂みから皮膜の付いた蛇が、
――ああ、着地間違えるとこういう追加の敵が出てくるから――、
そんな走馬灯の隙間に、――イノリが声掛けしたそのままに水鉄砲――ウォーターカッターな威力のそれでバックアタック決めた筈の『ウイングスネーク』を両断していた。
あのー…、それって威力でなくて困ってるところに、現代知識で俺が調整施して、俺やっちまいましたかー?みたいな展開にできる筈だった下地なのではー…?
■
そんな旅の記憶を思い出した。
つまり、ギルド長のおっさんもエミリオも、イノリの【水芸】を問題視してるってことなのか。
「さっきも話してたが、咄嗟でこれだけの威力が出せるスキルはお目に懸かったことが無いからな。剣士が形無しだ」
「研究はされてるんだが、珍しいスキルに関してはまだ途上なんだ。そういうことに封殺されんのも嫌だろ」
まあそれに真っ当に付き合えば食うには困ることは無いんだが、と続けるエミリオ。
マジかー、威力強めだけど要するに『花鳥風月』なのになー。
やはりアクシズ教こそが至上の教義なのか…。
ちなみに冒頭のアレコレは俺がモンスター相手にどれだけ対処できるのか、を一緒に検証したのが事の始まり。
恰好は旅人の服とか皮の靴とか毛皮のマントとかドラクエ的な理想のスタイルな一方で、走破スタイルは体育の授業と変わらんフォームでえっちらおっちら。
だというのに、俺は命賭けることなく無難に逃走し切って見せれた。
これはスキルの【すばやさアップ3】が働いている、と自覚出来た検証結果であったな。
は? 泣きながら無様に逃げてた? 俺のログにそんなのはないが???
無いったらないんだ(断言。
「困ることは無いんだが、悪いが此処での検証は他言無用にしてくれ。スキルの内容も、イノリは使用するのも控えて欲しい」
心の中の対抗勢力に自己弁護と説得によるねごしえーしょんを繰り返す俺に、エミリオは尚も続けていた。
って、おん?
「ちょい待って。スキルまで使うなってことは、成長するな、って意味だよな」
「ああ。スマンがそうなる」
いや、事も無げに云うけど、それは冒険者稼業諦めろって云うのと同義なのでは!? まひろちゃんはいぶかしむまでもなく抗議するよ!
「いや、怒るのも逆らうのも判るが、落ち着いてくれや嬢ちゃん。そっちの嬢ちゃんの為を思って言ってるんだ、此奴は」
顔に出てたのか、俺のムカ着火激おこ怒髪天をギルド長のおっさんが窘める。
出火以前に差し止めるとは、やるなオヌシ…火元は俺だ!
「理由のひとつとして、『水』を出したところだな」
「はぁ?」
「魔法、呪文にはな、無いんだよ、水を直接取り扱うモノはな」
ん? そうなんだっけ?
「氷の呪文とか、あるじゃん?」
「あっても氷であって『水』じゃない。それがあるだけで、便利になっちまうからな、国が出来る限り発展させないようにしているんだ」
え、なにその不穏さ。
誰かが、じゃなくて『国』そのものの話?
「生活に必須で、開発できれば色々と向上するのは間違いないんだが…、政治で先を見れる奴らは其処は絶対に差し止める。――行軍に便利だからな」
こうぐん…軍備…?
「この【王国】は大陸一強ではあるが、その周囲に【敵】として別の『国』が無いとも限らない。軍備の備えはそりゃ必須だが、其処を押し上げて『進軍』出来る理由まで付けるのは駄目だ。それを始めると前線に戦力を押し固めることになるし、維持するためには国家の形式を変えようとする奴も出てくるだろうし、国内の防備に不備が出る。そうすると真っ先に割を食うのは戦わない奴らで、そのツケは必ず全体へ波及する。勝ち続けられるとも限らないし、其処まで強気で押し進められるとも限らないしな」
「お、おぅ…」
なんかすげぇ一気に詰め込まれたけど…、要するに『戦争したくない!』で合ってる?
「戦力として前線に押し出されるのは戦えるヤツ、つまり冒険者や騎士だが、そいつらが外側へ出払って、内側にあるモンスターや旅の扉の対処は誰がするんだよ、ってハナシだよ」
「あー…」
そうなると隊員募集! みたいな令状出張ったりもするのかな。
赤紙だっけ?
「そりゃ、女子供を前線まで引っ張るほど非情な国じゃ無いとは思いたいが、そうするとやっぱり研究にイノリの身柄は傾くんだ。そのスキルを何処で身に着けた、っつって、出身の総浚いが始まるんじゃないか?」
「えーと、どっかの港町なんだっけ?」
「焦土と化すかもな。港町なら海賊も居座ってるだろ?」
ははは、まさかそんな直情的なわけがw
そんな風に笑い飛ばしたかったのだが、ちらとイノリを見ると「あー…」と察した顔。
…居るの? なるの?
「別に珍しいことじゃない。地方の村や町を守るには戦力が必要で、それにはならず者が適してるってだけの話だしな」
溢れる、世紀末感。
「更にもうひとつ。イノリの水には今回の道中けっこう助けられたが、アレ、回復も出来るよな?」
「あ、はい。そうですね」
切り替えたのか、イノリも即応する。
謂われてみると色々と助かってた。
おーぷんざかいふくのいずみー、ではないけど、雨を降らせてシャワーみたいなことをしてもらえたぜ。
すごい らくな たび でした。
「簡単な回復魔法程度なら、冒険者で身に付けてる奴も珍しくは無い。だが水を出したうえでそこまで出来るとなると、教会も黙っちゃいない」
「く、国側と教会側で仲良く…」
「するわけがない」
っすよねー…。
「国が軍備増強に乗り出せば、確実に教会側はそれを差し止める形に動く。そのうえで重要なスキルを身に付けてる女が居て、研究者は教会側が多い。祀り上げるだろうな、【聖女】とでも銘打って」
プロット建てた時には真面目に思考と動作が入り乱れる芳ばしい文章であったはずなのに合間にうまぴょい伝説挟んだだけで大分文章削る破目に…
長年書いてる奴の戦闘シーンか、コレが?(n敗目