生えてたていどのJcを連れ歩くだけのDQ   作:おーり

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※この作品は全年齢です


第6話

 

M4R1M1(メラミ)

 

 

 エミリオの呪文で火球が出現し、溜めてあった水に着水する。

 水蒸気が勢い良く噴き出すが全て蒸発するほどではなく、くつくつと適度に煮える温水が残った。

 本人が手を入れて、

 

 

「――よし。適温だが、熱かったら水で埋めろ。俺は見張っとく」

「いっしょに入れば?」

「街中の浴場じゃねーんだからモンスターに対処する奴は必要なんだよ。ついでに天幕張っといてやる」

 

 

 そう言ってカーテンの向こうへ。

 

 ――うむ。この対応からして、完全に女と見做されてねぇな。

 良いのやら悪いのやら、それとも子供扱いなんかなー。

 

 ちなみにこのカーテン作るのに『デンデンりゅう』なる丸い腹の壺を抱えた二足歩行ドラゴンの頭だけを2、3匹メラゾマって皮を鞣したのもエミリオだし、水を溜める石組み穴をイオって開けたのもエミリオさん。

 ソロキャンパーの腕前どころか完全に野営の本領発揮、てな感じで…いや手伝いとか無理。手順いっさいわかんねぇ。ハイ、子供扱いありがとうございまーす…。

 出発前にひとりで異世界ふらつける、って受付のねーちゃん相手に豪語してたのガチだったんだなー…。

 

 なお鞣した皮でカーテン擬きと天幕擬き、森から拾ってきた長めの『木の棒』で支え替わり。

 多分『ひのき』製。

 俺は棒を舐めてた。

 ドラゴン鞣す為に吊るしたのも棒だ。

 棒の本質は多様性…ッ! 武器じゃないんだ…! ひのきの棒…!

 

 

「いやひのきは良いんだよ。これでイイところも役立ちも無かったら単なるお荷物だよな、俺たち…」

「? だからごほうしをかってでたのではないのですか…?」

「イノリさん???」

 

 

 風呂に誘った意味を完全に把握してるよこの幼女…!

 でも俺にそんな意図ないんすよイノリさん…!

 

 なおこうして作成したドラゴン素材からの道具類は、こっち世界の近隣の村へ売ったりして身軽に歩くのが冒険者流だとか。

 アイテムボックスとか無限に入る道具袋とかが無いらしいので、冒険者は身軽さが重視される。

 冒険に行くときの準備は最低限。

 魔法の道具や武器の類が冒険者間で嫌がられる理由は其処もあるらしい。

 

 

「ちがうんすよイノリさん…、せっかくのご本人の沸かしたてのお湯じゃないっすか…、おれらの入浴で濁らせたのに浸からせるのはしつれいじゃないっすか…、ただでさえ汚れてんだから…、きづかいなんすよ…」

 

「よくわかりませんけど…、そんなすみっこにうずくまらなくともいいですよ、せまいんですから、いっしょにつかいましょー」

 

「ひゃわぁー…!」

 

 

 うひゃっ、ぺたんこ族…っ。

 お湯の量の問題で広い風呂を作るには必要以上の労力が要るから狭さは適切だけど幼女が非力に身体全体で引っ張ってくるのでお背中にぷにぷにと女児特有のやわこいモノが触れてしまいますわ!(錯乱中。

 まあでもワタクシも小娘ですので! コレは不可抗力ですわん!(錯乱中。

 

 

 

  ■

 

 

 

 というか溜まった水じんわりと体力回復効果もあったし、『聖女』として祀られるってことはアレ【せいすい】になるの?

 

 

「――あっ。イノリの【水芸】使えないってことは、野営の風呂もこれからは無理、ってコト!?」

 

「そこかよ」

 

 

 聖女様ァ! 焼きそばパン買って来やしょうかァ!

 なので風呂だけは! 野営の風呂は死活問題!

 

 

「ヤキソバパンが何かは知らんが。…まあ他人の居ない場所でなら良いだろ。ジッサイ、汚れや怪我を解消できるなら、女子供でなくても在れば有難いのは確かだし」

「「ヤッター!」」

 

 

 勝訴! 勝訴です!

 イノリも嬉しいのかハイタッチを交わす俺たち。

 旅の手助けを自分から買って出る良い子なんだよ! 小声で「ゴホウシチャンス…」とか呟いてはいない! 俺は聴こえなかった!!!

 

 

「俺は聴こえなかった!!!」

「ふふっ、声でか」

 

 

 はしゃぐ俺たちに微笑み向けるブルスさん。

 微笑ましい光景ですよね。

 

 

「まあそんなわけで、だ。お前らは暫く情報留めて、通じるヤツだけで固めて面倒見てもらうことになる。その辺りの詰めが集まりの趣旨だな」

 

 

 ギルド長のおっさんの言葉で、ひとまず引き締まる俺たち。

 多分、この場に居る全員に言ってるのだろう。

 受付のおねーさんと同じ恰好したひとが「!?」って顔でおっさん見てるけど。

 

 

「ユーナに関しては、スマンが緘口令だ。証拠品見ちまってるからなぁ…」

 

「そ、そんなぁ…」

 

 

 ああうん、普通は巻き込まれたくはないよね。

 あの間延びした喋り方のおねーさんは上手い事回避したなぁ、受付でエミリオに対処したのが運の付きか…。

 

 

「おいこら俺を疫病神みたいな目で見るな。俺だってお前ら初心者にこれから拘束されるんだぞ」

「えっ。そこは当初の予定じゃないの…?」

「実力と実績が違うんだから、あんまり良い目じゃ見られねぇんだよなぁ…」

 

 

 そうなんすか!? 見捨てないで、コーチ!

 

 

「コーチってなんだ…。だからまぁ、その辺はギルドに色々と腕前振るってもらわにゃならんわけだ。気張って俺らを助けてくれ。上げ膳据え膳でイイモン食わせて、せいぜい小遣い振る舞ってくれ。俺が、俺たちが、見限って余計なことを他所へ漏らさないように、キチンと働いて貰えるように、よぉく上手いこと持て成してくれ」

 

「そんな悪い顔して言わなくても判ってらぁ。普通に考えても厄介だが、元凶だからと言って斬り捨ててたら『ギルド(互助組合)』じゃねーんだよ。斬り捨てだけで組織運営できると思ってたら大間違いだッ」

 

「わかってりゃ、いいのさ」

 

 

 と、エミリオとおっさんが言葉を交わす。

 なんつーか、嗤い合ってる、って感じの顔付き。

 エミリオが偽悪的なのは知ってるけど、おっさんの方は顔付きも相俟ってスゴク、コワイ。

 また泣くぞ、俺が。

 

 

「あ、あのっ」

 

 

 と、其処に声を張るは、えーと、ユーナさん?

 

 

「い、今の科白っ、有名な歴史のいち幕ですよねっ!? 間原争乱サルサデカダン! ミッチー・シーダーとイェイツ・クーガーの天下分け目の大決戦! 2大貴族が多方面に声掛けした際に、後に軍事顧問として宮廷へ招かれるノブノブ・ローゼンがイェイツに己を売るために――!」

 

「キミって歴史の話になると早口になるよね」

 

「「グフゥッッッ!!?」」

 

 

 止めてくれエミリオさん、その科白は俺にも効く…っ!

 

 

 

  ■

 

 

 

「うぅぅ…、同好の士だと思ったのに…」

 

 

 そんなわけで『小遣い』を渡して、一団(パーティ)が退出した後に残されたのは消沈した受付嬢とギルド長だけだった。

 ギルド長の方は別段消沈もしてないが、エミリオの科白は何かしらの痛恨(クリティカル)を齎す一撃だったらしい。

 

 そこまで辛辣な対処が出来たのも理由は判る。

 判るギルド長はポツリと漏らした。

 

 

「まあ、自分の先祖の話なんぞ聴きたくも無いだろ」

 

「…え?」

 

「さっき言ってた軍事顧問、宮廷魔導士の【閃光の魔女】シャリオ・ロゼンタールがそれの子孫でな。アイツはその息子で一番弟子だそうだ」

 

「…は?」

 

 

 ギルドは互助組織であって、構成員は諜報員ではない。

 なのでいちいち世話する奴らの事情までは把握したりはしない。

 しかし、明らかに不向きな人間を『冒険者(バリエンテ)』として使い潰すことは避けたいのは事実なので、彼に関しては本人が許可する限り色々と情報を査定しておいた過去がある。

 そのうえで、本人のスキル構成や経歴、追放された理由まで明らかとされていた。

 

 魔法使い(ソーサラー)とは、根本的な役処は固定砲台になる。

 一般にスキルを備える冒険者とは学び方が異なって、血筋で生えて研磨されるのが彼らの生態だ、とギルド長は、常識的には捉えられている。

 その認識は正しく、彼らは基本として『もやし』だ。

 日陰で研究に勤しんで体力が無いもので、近距離戦闘などには根本的に向いていない。

 彼らがよく採用されているのも、修道士(カンタンテ)などの研究職や喧伝師などが多い。

 

 だから魔法を取り扱うモノは『砲台』なのだ。

 遠距離から強大な術理を生み出して、多数を薙ぎ払う。

 それは冒険などで採用されるよりも、戦争にこそ真価を発揮する職である。

 

 なんでエミリオは冒険者やってんだ。

 

 『それ』が彼の経歴を把握した者たちの一様の感想であり、稀に商人ギルドなどに連れ出されるのもその辺が理由であった。

 護衛役としては、向いている。魔法使いならば。

 

 

「アイツはなんでも、スキル構成を修め間違えたみたいでなぁ。身に付けられるスキル3枠を3つ、重複した形で【ハイエンド(最上級)】まで備えちまったらしい。で、魔女様は後継者として見限って、此処まで流れ着いたんだそうな」

 

 

 16ならば構成(ビルド)の再編も可能なはずだが、スキルに関しては未だ判っていないことの方が多い。

 しかも魔法に関わると其処は血統が重視される。

 スキル(才能)に頼らない技能(スキル)まで身に付けておきながら王都や王宮で重視されなかったのは、先を見限られたというたった一点の失点だけであった。

 

 

「………………あの、なんでそれを私に…」

 

「……密約交わすなら下手に明かせない王都のスキャンダルも抱え込ませれば裏切れないよな、と」

 

 

 一蓮托生の特攻精神だった。

 受付嬢その2は頭を抱えた。

 

 数分後、「悪ぃ! 接待枠追加ァ!」と別の一団(パーティ)を引き連れ舞い戻ってきてギルド長も頭を抱え直すことを、未だ彼は知らない。

 




サルサデカダン言いたかっただけ
大河も佳境だったし
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