「いつも探索ばかりしてるが、そろそろ飽きたな」
「そういう考えは負債を返してからすべきだにゃ」
不幸の種を落としたモンスターの死骸を睨みながら、男はため息をついた。
「仕方ないだろ。祝福無ぇ、武器も出ねぇ、毎日5層をぐーるぐる……。一体俺たちは何体サンダービーを倒したよ?」
「そんなん知らないにゃ。ご主人の運が悪いのがいけないんだにゃ」
「落ちないんだから仕方ないだろ! 落とさないモンスターが悪い! ……まあ、それは置いといてさ、闘技場行ってみようぜ」
「闘技場? 戦うのにゃ?」
にゃん太郎は尻尾を揺らしながら首を傾げた。
男は地面に大きな塔を描いて説明を始めた。
「何度も何度も戦って、上を目指すんだよ。目指せ最上階! まあ、最上階は無理でも気分転換ぐらいにはなるだろうしな」
「にゃるほど……。行ってみるのもいいんじゃないかにゃ?」
「珍しく理解が速いな」
「いつも理解がないみたいな言い方しないでほしいにゃ! 大体それはご主人がいつも……」
「あーはいはい。不幸の種あげるから」
男とにゃん太郎は天空闘技場へ向かった。
首を痛めるほどに上を見上げても見えない頂点に、2人は呆然としながら立ち尽くした。
「こんなに高いにゃ……」
「いや、こんなに高くなかったと……そういえばついこの前、高くされたんだっけ」
「誰がこんな高い建物建てられるんだにゃ?」
「神」
「納得だにゃぁ」
入り口に入ると受付に人が並んでおり、さらにその奥には上に向かう階段があった。
男は列の後ろに並び、暫くして呼ばれた。
「次の方〜」
「あ、はい。初めの方に少しやったので10階ぐらいは登ったんですけど」
「はい、ただいま調べますね。……12階まで登られてますのでそちらからスタートして下さい。こちらが証明書です」
「そういえば俺、昔入ったっきりでここに来てなくって、多分初心者の邪魔になっちゃうと思うんですけど……」
「構いません。12階からどうぞ。あ、そうだ。レイドボスにお気をつけて下さい」
「あっはい」
レイドボス……? と、男が首を捻っていると、にゃん太郎がズボンを噛んで引っ張りながら急かした。
数分後、男は天空闘技場12階にいた。
「ぜぇ、ぜぇ……」
「階段登るだけで息上がりすぎだにゃ」
「ぜぇ、じゅにかい、って、ぜぇ、相当、だぞ……。しかも、階が上がるごとに、段数増えてるし」
「それぐらいの体力がなきゃ上の階層には来るなってことだにゃ」
「俺の頭の上に乗って自分で登らないからって偉そうに……」
闘技場を待つ人の列は、ほとんどが装備の強化が中途半端な新人たちだ。
俺もこんな頃があったなぁと、男はしみじみとした気持ちで彼らを見ながら列に並んだ。
「登下校中の子どもを見るおじいちゃんの目線だにゃ」
「人がノスタルジーに浸ってるんだから余計な茶々を入れるなよ」
「というか、そもそもご主人様の装備だって中途半端だにゃ」
「仕方ないだろ。装備落ちないしマーもないんだから」
そんなこんなで男は勝ち上がり、16階まできた。
「なかなか順調……っと、この階は人多いな」
「しかも入った人がすぐに負けてまた並び直してるのにゃ」
「どういうことだ? 不具合?」
「とりあえず並んでみるにゃ」
長蛇の列だったはずのものは一瞬で捌けられ、すぐに男の番になった。
「ええっと……52連勝?」
「52……何言ってるのにゃ? ここってまだ初心者から中級者向けの階層で……52連勝だにゃ?」
「とりあえず入ってみるか」
そこにいたのは、『伝説の英雄たち』の1人。第3世代でありながらも転生回数は既に第1世代最上位と同等。
転生速度はおそらく最速であろう、1日3.3転生。
──いわゆる、大怪獣の1人である。
まさしくレイドボス。そんな存在が男の目の前にいた。
何故こんなところに彼が? そんな考えがようやく浮かんだ頃に、レイドボスは挨拶をした。
「よろしくお願いします」
「ヨロシク……オネガイシマス……」
「既に逃げ腰だにゃ」
「しょうがないだろ! 勝てるわけない!
なんでこんなところに大怪獣がいるんだよ!」
「当たって砕けるにゃ」
「砕けるぐらいで済んだらいいね!」
数秒後、一撃で男は倒され、そそくさと階段を降り始めた。
「もう帰るんだにゃ?」
「ムリ。レイドボスには勝てない。5層、戻ろっか。サンダービーくんが俺たちを待ってるよ」
後日聞いたところによると、レイドボスは75連勝をしたらしい。
男はもう2度と闘技場に行かないと誓うのであった。
「はらまき」さんに星空ブーツと大魔導師のローブを送ると、もしかしたらレイドボスが減るかもしれないですね……