魔法少女育成計画DonutHole   作:皇緋那

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第23話『デイジーフラストレーション』

 ◇マジカルデイジー

 

 デイジーチームは、迷宮エリアの時と同じように、謎解きを放置してボス部屋を探して直でボスを狙うと決めていた。先を越される前に倒してしまう。ジェノサイ子と@娘々のサポートがあれば、デイジーならなんとでもなる。なんて楽観的だったのは事実で、そして今回、それが裏目に出たのも事実だった。

 

「やっば!? ちょ、髪の毛絡まってるって! ぬわーっ!?」

 

 つい先刻、ボス部屋に突入し、ジェノサイ子を前衛に踏み込んだ。現れたボスは真っ黒な不思議の国のアリスのような姿の『不死の令嬢』だった。部屋の奥に立ち込める暗闇そのものであるかのように蠢き、長く伸びた黒髪が不用意に先行したジェノサイ子に絡みつき捕縛してくる。その名に恥じぬ不死性は、デイジービームで頭部を吹き飛ばしてもあっさりと再生したことで証明されている。

 

「さすがにまずくないアルか!?」

「ごめんね、ちょっと狙いが……当たったらどうなるかわからないし」

「無敵のスーツと無敵のビームなんて、どうなっちゃうんだ〜!? あっ、ちょ待って、関節はやばいって! デイジーさん! お願いします!」

「うん……デイジービーム!」

 

 なるべくジェノサイ子には直撃しないように気をつけ、小指だけを立てることで細めのビームを照射。ジェノサイ子の脚に絡みついた令嬢の髪を、ビームで梳かす。髪は魔法の力で分解されてほどなく解けるが、狙いの問題で全て掃除できるわけではない。除去作業にはなかなか時間がかかるが、慎重にクリアしていく。最終的に根本を絶ち、切り離されても動く髪は娘々の御札に封印という方法で、なんとかジェノサイ子を救出。ボス部屋から退却した。重い扉を全力で押して飛び出したら、今度は逆向きに押して開かないようにする。不死の令嬢は外までは追ってこないらしい。

 

「デイジービームでも倒せないって、どうすればいいってこと?」

「うーん、先に解くべきギミックがあったとか……」

 

 それとも、エリアボスを一撃で消し飛ばしてきたせいで、対策されてしまったのだろうか。どちらにしたって、ゲームマスターは余計なことをしてくれたものだ。

 

「全部無視してきたアルもんね」

 

 そういえば道中に、意味深な本棚があった。一旦そこまで戻ってみるしかなさそうだ。それを提案すると、2人とも同じ意見。揃って引き返し、途中でプフレ一行に出会う。

 

「あら、奇遇ね! マジカルデイジー!」

「あっ、マスクド・ワンダーさん。お疲れ様です」

「先日は世話になったね」

「あの時のことアルか? あぁ、止めなかったら死んでたアルよ」

 

 デイジーが挨拶をすると同時に別の挨拶も交わされる。密林エリアでは娘々とジェノサイ子がプフレに同行していたんだったか。祝勝会ではデイジーが狂鳥たちの話を翻訳アプリ越しに聞いて接待に徹していたため、他の魔法少女とはあまり話せなかった。ワンダーたちと一緒に捕まっていたし、密林エリアで何があったか、実の所そこまで詳しくないのだ。

 ただ、その話に混ざらず、後方でうずくまる少女と、その付き添いがいる。付き添いはシャドウゲール。うずくまっている方はたま。心配になってそちらに行こうとしたが、たまの顔を見る限り、そっとしておくほかないかと感じた。デイジーで元気づけられる類の状態ではない。

 

「えっと……そ、そうだ! これ。謎解きだと思うだけど」

 

 無理に気を使うくらいなら、話を逸らしてしまうしかない。デイジーが指した先には小さな空の本棚がひとつあり、隣の本棚にある本には、表紙に色の英単語が、背表紙にタイトルが数字1文字だけが書かれている。これを並べるのだろう。本はそれぞれ色が違い、表紙の単語と対応している。赤い本には『RED』という具合だ。そのおかげで、ここだけやたらとカラフルになっている。

 

「本棚の上に何かあるね。太陽の形と……三角形か」

 

 プフレが呟いた通り、縦に二段、上から太陽のマークと三角のマークが並んでいる。これが何を意味するかはよくわからない。さらに本棚の下部には1から7の数字が割り当てられており、入れるのは全部で7冊といったところか。左から1、2、7、4、5、3、6……バラバラだ。

 とりあえず背表紙の数字と一致するものを入れようとしたが、背表紙に7の数字が見当たらなかった。この作戦は失敗し、そそくさと先に並べた二冊を元に戻した。

 

「本の色も関係あるのかしら?」

「意味のない要素ではないだろうね」

「太陽の下の三角……ピラミッド? ピラミッドだとして何?」

 

 生憎ここに探偵はいない。謎解きは頭脳担当のプフレと、なんとなく頭脳派な雰囲気のシャドウゲールだろうか。と思い、たまについているシャドウゲールを見る。首を傾げていた。

 

「太陽……光……三角。7つ、7色……虹色?」

 

 ぽつり、ぽつりと呟きながら思考が整理されていく。確かに、このカラフルな本たちは7色、ちょうど虹色と同じような。

 

「虹色の7冊、だとしたらこの数字は……?」

 

 虹色を構成するべく、赤の1、橙の1、と試しに背表紙の文字が『1』だけを選んでセットしてみる。7冊収まり、何も起きない。こうではないらしい。また全部抜き取り、やり直しだ。

 

「どっちの数字にも意味はあるはずだ。それが何を示しているのか……」

「虹、虹色、レインボー……?」

 

 皆が首を傾げ、戦闘要員のマスクド・ワンダーなんかは、キャンディを回収しに行くと言って離れた。確かに溜まっていてもしょうがないかもしれない。そうしてデイジーチームもあとはプフレに任せようと思った。彼女はまだ独り言で思考を整理しており、虹、と繰り返していた。

 

「レインボー……RAINBOW。アール、エー、アイ、エヌ……7文字、だ」

 

 7。それがなにかの手がかりとなったらしく、プフレは顎に手を当てながら、もう片手で本を配置し始めた。デイジーはそれを呆然と見守り、赤の1、橙の3、藍の1……何度か置くものを修正しつつ、結論が出た。

 

「……最後に、黄色の枠に6を」

「これは……どういうことですか?」

「太陽は光源。三角はピラミッドではなく、プリズムだったんだろう。そして背表紙の意味は、表紙の単語のN文字目を取るということだ。それを、本棚にある指示の通りに並べ替える」

「……例えば?」

「レッドの1文字目は『R』、オレンジの3文字目は『A』、といった具合だね。これを並べ替えた時、ある言葉になるようにする」

 

 レッドのR。オレンジのA。インディゴのI。グリーンのN。ブルーのB。バイオレットのO。そして、イエローのW。それらを並べ、英単語『RAINBOW』が完成した。プフレが揃った虹色をぐっと押し込むと、それらは七色の輝きを放ち、その末に何かが現れた。宝箱だ。プフレは車椅子を二度ほど漕いで、ゆっくりと開く。中から出てきたのも、本だった。

 

「『図書館エリア攻略本』……ねえ」

 

 プフレは自身の端末に攻略本をインストールすると、デイジーチームにも伝わるよう、内容を音読してくれる。『3つある謎を解くことがエリアミッションである』、『不死の令嬢は倒せないが、彼女が守る宝箱にはレアアイテムがある』といった役に立つ情報とともに、その残る謎に関するヒントも書いてあるらしい。

 

「ヒントはディティック・ベルにも送っておこう。謎解きだからね」

 

 ポチポチと操作が行われ、転送が完了する。

 しかし、謎解きだけが解放条件となると、本格的にデイジーたちには出番が来ない。精々が、このエリアの片翼天使のモンスター『デビル』『デーモン』を倒してキャンディ稼ぎをするくらいだ。この間のキャンディ没収イベントがあったせいで、図書館エリアでアイテムの更新はできていない。それも惹かれる作業ではないけれど。

 

「私達は次の謎を探すよ。魔王城が解放されたらまた合流しよう」

「そうしましょう」

 

 デイジーは頷き、プフレたちとは離れた。広報部門の魔法少女になって色々な魔法少女に会ってきたが、プフレは話したくない魔法少女の部類に入る。デイジーの立ちたい土俵とは違う次元にいようとするタイプだ。別れた後で、大きなため息をつき、ジェノサイ子と@娘々の視線を集める。

 

「マスクド・ワンダーさんの方に行ってくるね」

 

 気晴らしがてら、派手に名乗り、目立てる舞台に行こう。雑魚狩りでも、らしくを忘れないなら、彼女の隣がいい。そうしてデイジーは、図書館エリア3つの謎がすべて解かれるまで、謎解きに関わることはなかった。

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