魔法少女育成計画DonutHole   作:皇緋那

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第68話『探偵チーム再結成』

 ◇ディティック・ベル

 

 トーチカたちレジスタンス勢力と、それを追う広報部門が交戦。その結果、脱獄囚1名が確保され、複数名の人死にが出た。そう知らされたのは、約束の日付に差し掛かってからだった。間に合わなかったことに胸を痛め、胸元に手を当て、ぐっと強く握った。ついに人死にが出てしまった。つまり、トーチカはもう、十字架を背負っている。どうしても、魔王に選ばれてしまったペチカを思い出す。

 

「……だからここに来たんだけど」

 

 トーチカの素性を探り、辿り着いたのはこの地域だ。出来ることなら目立たぬよう、魔法少女のままだが変装しながら行動する。深く被ったフードで顔を隠した4人組が、人目につきすぎないように待ち合わせの場所まで急ぐ。

 4人──そう、4人組だ。ラズベリー探偵事務所は本来、探偵であるディティック・ベルと、その助手ラピス・ラズリーヌの2人だけだ。あとは外部協力者のスノーホワイトと……。

 

「……」

 

 今のところ黙ってついてきている、残り1名。本来なら監査部門の本部に突き出し、刑務所に移送されるべき人物。元魔王塾、元クラムベリーの模倣犯、元封印囚、そして現脱獄囚。炎の湖フレイム・フレイミィだ。戦力に期待している……というのは言い訳だ。主に、単純に護送する暇がなかった。プフレからは一方的な連絡しかない。広報部門とは直接の線はないし、刑務所本体はてんてこ舞い。スノーホワイト曰く、監査部門もこちらに人員を回してくれないそう。

 一度レジスタンスとの接触があり、彼女らも本格的に動き出している。我々にとってスノーホワイトの離脱は痛いと思い、ディティック・ベルが提案した。彼女が監査部門に戻れば、しばらく戻っては来られないだろうという一言と、スノーホワイトさえいれば邪心が芽生えたとしても察知してくれる事実が前提だ。

 まあ客人に会うのに罪人を連れていくというのも変な話だが、なんて思ってフレイミィを見ていると、睨み返された。驚いて冷や汗をかき、その時フレイミィが何を考えたのやら、スノーホワイトがすっと手を差し込み、彼女を止めた。フレイミィはビクッとして、大人しく従う。散々の折檻で懲りたらしい。スノーホワイト自体がトラウマになっているようにも見える。

 

「ベルっちー、これから会うのはどんな子なんすか?」

「トーチカの知人で、私たちと同じ『子供達』だよ」

 

 ディティック・ベルもスノーホワイトもクラムベリー試験の被害者である。これから会う彼女もそうだ。だからといって、何かが変わるわけでもない。ただしフレイミィは、今までにも増して居心地が悪そうにしていた。

 

 そして歩くこと十数分。予定していた公園の真ん中に、彼女はいた。変装もなにもせず、ベンチで足をぶらぶらさせている。着ぐるみのようなふわふわした格好は街の噂に聞こえていた話と相違ない。ディティック・ベルは周囲を確認し、誰もいないと認識してから、変装用のフードを脱ぎ、彼女の前に出ていく。

 

「初めまして。貴方がチェルナー・マウスだね。私は探偵、ディティック・ベル」

「! おまえ、トモキの居場所知ってるって言ってた……」

「あ、あ、あぁ、居場所は知らないんだ。何をしているかは知っている」

「……! トモキ……」

「彼女は……そうだね、とても危険なことをしている。私たちはそれを止めたいんだ」

「大丈夫っす! ベルっちは名探偵だし、あたしはその助手! スノっちもすっごく強いっす!」

「その人は?」

「えーっと……まあ、強いは……強いんじゃないかな? うん」

 

 チェルナーに指を差されても、フレイミィは無反応だ。ふーん、とそちらにはチェルナーの興味もいかず受け入れてくれた。彼女にとっての問題はやはり、『トモキ』……建原智樹、つまりトーチカが危ないことをしているということの方だ。

 

「トモキ……トットと一緒じゃないのかな」

「トット?」

「え、それ、トットっちっすよね? トットポップ」

「……? ラズリーヌ、知ってるの?」

「知ってるも何も友達なんすよ、ほら、MINE(マイン)も持ってるっす」

「……ちなみに連絡は取れる? 一応状況確認のためにやっておいてほしい」

「はいっす」

 

 まさか、これで居場所がわかったりすることはないだろう。相手はテロリスト。いや、どうしてそんな相手がラズリーヌと連絡先を交換していたのかも謎だが、まあさすがにここで電話に出てくるわけ。

 

『はいはいなのねー』

「あっ、トットっち!」

『コメットちゃーん! お久しぶりなのね!』

「出るの!?」

 

 他の魔法少女にも聞こえるくらいの大きく元気な声が聞こえて、思わず叫んだ。

 こちらが発信元を辿れでもしたらアウトだと思うのだが、そういったところへの警戒がないのか、わからないように細工してあるのか……こんなことなら追える手立てを用意しておけばよかった。ディティック・ベルはここで、あまり長くならないようにねとラズリーヌにジェスチャー。返ってきたのはサムズアップだ。挨拶をほどほどに切り上げ、本題に切り込んでいく。

 

「トットっち、今日はちょっと違くて! トーチカ……って子と一緒っすよね。元気かだけ聞かせてほしいっす」

『あれ。コメットちゃん、そっち側なのね? んー、まあいっか! トーチカちゃん、刺されたけど元気! トットも元気なのねー』

「……そっすか! チェルっちが心配してたっすよ! それじゃ!」

『チェルナーがいるの? もー、それなら代わってくれても、あっ、リップルちゃん? トットまだお話して──』

 

 ぶつんと途中で電話が切れる。ラズリーヌはこちらに向き直ると、トットポップから聞いたことをそのまま伝えてくれる。チェルナーはトーチカが刺されたと聞くと目を丸くし、ラズリーヌに手を伸ばし、彼女を揺さぶった。

 

「ねえ! トモキ、怪我したって!」

「そぉうみたいっすねぇっ、ぇえっ」

「揺れてる、揺れてるから! うちの助手の脳が!」

 

 チェルナーに落ち着いてもらい、脳震盪は回避する。

 

「……そうだ。スノーホワイトさん、ファルに逆探知してもらうことは?」

「やってみます。頼める?」

『了解ぽん』

 

 スノーホワイトが魔法の端末を取り出し、そこから立体映像が展開。電子妖精であるファルが出現し、それをラズリーヌの端末に近づけた。ファルが何かし始めたようで、その目の部分が明滅している。

 

「チェルナー、その白黒のやつ嫌い」

 

 待っている間、チェルナーはファルをやたら威嚇していた。たぶん妖精違いだ。ディティック・ベルも、あちらの妖精は好きになれそうもない。やがてファルの明滅が終わると、彼(?)の動きが止まる。冷や汗などかくはずもない電子妖精だが、かいているように見えた。

 

『これは……』

「何かわかりそうっすか」

『場所の特定は無理そうぽん。セキュリティと偽造が強固すぎるぽん。元マスターが噛んでるっぽいぽん』

「元マスターってことは……」

「……キーク」

 

 スノーホワイトがその名を呟く。あの忌々しくも、転機となったゲームを起こした張本人だ。その姿もなにも知らないが、元凶として憎む気持ちが大半、ラズベリー探偵事務所を開くことができた感謝がほんの少しだけ。

 ──待て、ということは、トーチカはキークといることを許容しているのか? 何か……理由があるのか。

 

「フレイミィさんは何か?」

 

 フレイミィは無言で首を振った。毎度違うゲートの設定を変更して移動していた、というのはフレイミィを捕縛した際のスノーホワイトが突き止めている。つまり彼女からアジトは辿れない。手がかりはここで途絶える、か。

 

「……あっ!」

「チェルっち?」

「チェルナーとトモキがトットに連れて行ってもらったところ! そこにレジスタンスって人達がいたの! この間いったらもういなかったけど……」

「……! いや、探偵には重要な情報源だよ。ありがとう、場所を教えてくれるかな」

「うん」

 

 遠い手がかりであったとしても、一刻でも早く、トーチカを見つけるためには縋らなければ。トーチカ自身のためにも、勝手ながら、その身でゲームから救ってくれたペチカのためにも、ディティック・ベルは走ることを決めていた。

 

「じゃあチェルっちと……フレイっち? フレっち? も加えて! 捜査本部、再結成っすね!」

 

 高く掲げられた拳に、チェルナーが勢いよく追従し、ディティック・ベルが続き、スノーホワイトもやってくれ、フレイミィがラズリーヌの熱視線に負けて、全員の手が揃う。

 ……この感覚。あのゲームの中と似ている。ここにメルヴィルもカプ・チーノもいないことに、悲しくなった。

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