THE・MARGARET (ザ・マーガレット) 作:しゅみタロス
アメリカ ワシントン州
七海「ここがM社の本社ビル」
マーガレット「何気に来るのは2度目ですね」
社長の命でM社のプロジェクトストリングスについて企業取引を行う為、本社へとやってきた私達、息を飲むと会社の入口へと向かって行く。
顔認証システムによって扉が開くとそこにはタブレットを手にヘンテコな和服に身を包んだ小太りの役員が現れた。
???「やあ、親愛なる名倉エンタープライズのお客様方。ようこそいらっしゃいました、あ、わたくし、コンピューターゲーム部門のジェームズ・ライト。ジェムと呼んでくれたまえ」
七海「名倉エンタープライズの藤原フレデリカ七海です、今日はお話に応じてくれて感謝します」
マーガレット「名倉エンタープライズ社長秘書のマーガレット・ナスタ―シャです、今回の取引について語るのを楽しみにしていました」
ジェム「まあ、とりあえず、肩の力を抜いてくれて結構だよ。プレジデント名倉から取引の事は概ね理解している。何しろ大手電機企業とは色々とお世話になってるからね。まあ、ついておいでよ」
案内された私たちは会社の奥へと向かって行く、行く先々にはいくつもの開発室が点在し、多種多様なデザインの扉があったが私達の辿り着いた部屋は何故かコンピューター企業らしくない襖の部屋だった。
ジェム「入り給え、ここはわたくしの部屋だ」
ピッ、ガー
マーガレット(ふ、襖なのに自動ドア!!どんな組み合わせよ……)
七海(一見古風に見えて結構現代的な部分もあるんだ……)
外見に騙されつつ足を踏み入れると……
ビルの中に無いはずの日本庭園、香りの良い純日本製の畳、中心に置かれた茶釜と囲炉裏、茶道の道具、小鳥の鳴き声など随所に日本が感じられるが……
七海「何故、ビルの45階に日本庭園が……」
ジェムさんはニヤリとする。
ジェム「驚いただろう?一見本物の様に見え、奥行きや小鳥の声も全てリアルに感じられる。
素晴らしいだろう、わが社の映像と音響の技術は」
マーガレット「ええ!!じゃあこれ全て、映像……」
ジェム「ハハハハハ、今の時代、幾らなんでも出来てもビルの45階に本物の庭が作れるわけないよ、まあ、座りなされ、ゆっくり話をしよう」
七海「はい」(目的忘れる所だった……なんて滅茶苦茶な和室だ。これ……)
私達は目の前に敷かれた座布団に座るとジェムさんは囲炉裏の樹の枠を外す。
ジェム「では、お湯を沸かします」
マーガレット(囲炉裏の下にコンロのボタンが!!)
七海(しかもタイマー付きの最新型)
最早日本の様式の意味がない。
ジェム「近頃の日本のお茶は静岡の玉露にハマっておりまして、お口に合えばいいのですが、それと、日本の京都からあずきを詰めた最中を取り寄せました。是非楽しんでください」
出されたお茶を飲めばわかる、しっかりと渋みがあり、飲みやすくも香りの良いお茶、最中も軽く、気持ちのいい食感だ。この人の日本への情熱が伝わって来る。少し色々間違っているが良しとしよう。
七海・マーガレット「良いお手前で」
ジェム「喜んでくれてありがとう、では、仕事の話をしようか」
空気感が一瞬で変わり、フレディは真っ直ぐな視線で話を切り出した。
七海「ジェムさん、先日アンリアルエンジン公式にて発表されたプロジェクトストリングス、BN社に作らせているそのゲームには、一体どんな意図があるんですか?日本市場での展開は、どのようなお考えですか?」
カラン(竹の音)
ジェム「プロジェクトストリングスについては、ゲームの内容こそまだ明かせないが、わたくしは日本市場にゲームを売るにはそれに匹敵するジャパンタイトルが必要だと感じた、だが、それ以前にN社と大手電機企業からユーザーを奪うなど、愚の骨頂。ゲーマーにはゲームハードを選ぶ権利がある。そこは理解しているんだ。それでもこの先、私が起こさなくとも、ゲーム開発競争は避けられない。だからこそ、今の内にXボックスにジャパンゲームを幾つか取り込むことで、日本にもXボックスを買うメリットを増やす、それだけだ」
ジェムさんの言葉を聞いた私達は、ホッと胸を撫で下ろした。
マーガレット「少なくとも、あなた達は敵になるつもりは無いようですね」
ジャム「N社も大手電機企業も私にとっては良きライバルであり、企業として仲間だ。彼ら無しでは日本のゲーム業界は発展していなかったし、私達がゲーム事業をやるきっかけをくれたからね。尊敬しているよ」
そう言うとジェムさんは引き出しからPS1を取り出した。
ジェム「せっかくだ、少し遊んでいかないか?」
七海「是非」
マーガレット「お相手願います」
M社への不安は結局杞憂に終わり、この先のゲーム情勢への不安は解消された。その後、プロジェクトストリングス自体については大手電機企業とも協議がなされるため、PSでも本作が出るかもしれない。未だ発展途上の新型ゲーム機、そして……
そのベールに包まれた新型機は、意外と早く私達に知られる事となる。