老デウスの旅路~老デウスと龍神が人神を倒すまで~   作:考える僕

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終わりと全ての始まり
プロローグ~人神の策略~


ザノバとの動く人形の研究が一段落し、魔法三大国に売り出し始めた。

国がお得意様というのは案外にもいいものだ。

何せ色々と優遇されるし、個に売るよりも安定感のある商売ができる。

 

ミリス神聖国から神級解毒魔術の詠唱を盗み出してからそれなりにたったが、

今でもミリスの神殿騎士ぽっい奴が俺を襲撃してくる。

ほとんどは泥沼で動きを封じて石砲弾を打ち込んで終わりだ。

もっと対策をしてくるかと思っていたが、

もっとも俺が毎回全滅させてしまっているので何があったか分からないのだろう。

 

神殿騎士の個々に恨みも何も無いが、クリフ先輩を殺した神殿騎士団は許せなかった。

俺からミリス神聖国に乗り込むことは無いが来るなら帰すつもりは無い。

来たら全滅させる。

それを繰り返しているうちに自然と転移事件の時につけた、威力の加減のストッパーが外れてしまった。

たぶん、酒に酔って喧嘩でもしたら相手を殺してしまうかもしれない、それは気をつけよう。

 

今、俺の家には俺、アイシャ、ペットのジローとビートが住んでいる。

いつか家族が増えると思って買った家は今の俺には広い、静かで時々悲しくなる。

 

ロキシーは魔石病で死に、

酒に溺れて自暴自棄になっていた俺を元気づけようとしてくれたシルフィも死んでしまった。

ロキシーは本当に運が悪かっただけなのかもしれない…でもそのせいでクリフ先輩は死んでしまった。ロキシーの魔石病を治すためにミリス神聖国の持つ神級解毒魔術を手に入れるために、無茶をしたせいだ。結局詠唱は手に入ったが、あまりにも時間がかかりすぎてしまった。

家に帰った時、既にロキシーは息を引き取っていた。

クリフ先輩の死を無駄にしてしまった、それに俺が遅くなったせいで、ロキシーも死んでしまった。その事実が俺を苦しめて、俺は酒に溺れた。

俺が酒に溺れてさえいなければ、シルフィも死んでなどいなかったと思う。

 

俺は二ヶ月くらいずっと飲んだくれていた。

それを見かねたシルフィが俺を夜の生活へと誘ってきたが、俺はそれを断った。

何せそんな気分じゃ無かったし、今の俺はシルフィを壊してしまう、そう思ったからだ。

しかし、俺は酔った勢いで娼婦を抱いてしまった、俺はバレないと思っていたが、娼婦の香水の匂いに気づいたシルフィは

 

「なんで……僕じゃダメなんだよ…」

 

と言って部屋に閉じこもってしまった。

俺は今でも、怒りと悲しみと色々混じったそのシルフィの一言が頭から離れない…

その後、しばらくシルフィは自室から出てこなかった、読んでも出て来てくれない。

さすがにアイシャも今回ばかりは俺の味方ではなかった、最低、早く謝れと。

ノルン、リーリャも同じようなことを言っていた、

ゼニスは何も言わなかったけれど、明らかに軽蔑の視線を送ってきていた。

 

俺がさすがに謝ろうと思ってシルフィの部屋に突入した時、シルフィはいなかった。

部屋の机の上に僅かな衣類や装飾品が綺麗に整えてまとめられていた、

その他はほとんどなかった。

衣類や装飾品はいつだったか俺がプレゼントしたものだけだった。

 

「なんで……あ…ああ…ああぁ…」

 

俺はガックリと崩れた。

 

しばらくシルフィの部屋だった部屋で俺は呆然としていた。

 

シルフィに見捨てられた…

 

それは俺にとって耐えられない事実だった。

エリスに見捨てたれた時も俺はしばらく立ち直れなかった、

今回も完全に折れてしまいそうだった、だが、ゼニスが俺の所へ来ておれの頬をペシリと叩いた。

そして俺の手を握って何かを語りかけるような眼差しで俺を真っ直ぐに見つめた、ゼニスは相変わらず何かを喋るということはないが、その眼差しに意志を感じた。

 

『行きなさい』

 

そう言っているように感じた。

 

「母さんありがとうございます」

 

そう言って俺はシルフィを追う事にした。

シルフィが行くところと言えばアリエルのところだろうと思い、魔法大学に向かった。

しかし彼らは既に退学していて、今はもういないとの事だった、妻が行ってしまったと教頭に行き先を教えて欲しいと頼んだところ、どうやらアスラ王国に戻ったらしい、それも秘密裏に。

きっとアリエルが王になるための闘いを始めるのだろう。手遅れになる前にと、俺は急いだ。

 

今は冬の季節、街道もこの北方の凍てつく大地は雪に埋めてしまう。

俺は魔術で雪を溶かしながら進んだが、馬車が使えないので徒歩での移動だ、それなりに時間がかかってしまった。シルフィ達も雪で足止めを食らっていることを願ったが、どうやら雪に引っかかること無く、進んでしまったようだ。

 

アスラ王国に入ろうと関所を通過しようとしたところ、止められてしまった、どうやらミリスでの一件で俺は指名手配されてしまったらしい、危うく捕まりそうになって逃げ出した。

入国できずに悩んでいた時、野宿していた俺を襲ってきた盗賊から密入国の方法について聞いた、その盗賊たちに頼んで俺は何とかアスラ王国に入国できた。

どうやら俺はミリス神聖国の神級解毒魔術の詠唱を盗み出した大盗賊として、盗賊の間でそれなりに有名になっていたらしい。

 

入国後、アリエル達の情報を集めながら王都へと向かったがどうも情報が錯綜している。王都に向かったという情報もあれば、ミルボッツ領に向かったという情報もあったし、その他にも色々とあった。

情報収集を続けていると、王が病気で生死を彷徨っているという事と、何やらアリエルが兵を集めてクーデターを起こそうとしているという噂を聞いた。王の容態に関しては何人からも聞いたので、間違いないだろう。アリエルがクーデターを画作しているとなるとあまり時間が無い、どうやら仮にクーデターを起こしても勝ち目はないとの事だった。なんでも第一王子が水神と北帝を剣客として抱え入れたらしい、俺でも水神と北帝と戦って生きて帰れるとは思えない、だから何としてもクーデターが起きる前に止めなければならない。

 

俺はミルボッツ領に向かうことにした。

ミルボッツ領はパウロの実家、ノトス・グレイラットの領土だ。少し前にルークに聞いた話によると、ミルボッツ領主のピレモン・ノトス・グレイラットはルークの実父で、第二王女派の筆頭貴族だそうだ。つまりアリエルにとって一番有力な味方と言えるだろう。王都で兵を集めるよりも、味方の領主の領土で兵を集めた方が早い。

ならばアリエルはミルボッツ領に向かったはずだ。それにパウロの実家でもあるもしかしたら手助けしてくれるかもしれない、俺はそう考えてミルボッツ領へと向かった。

 

三日かけて俺はミルボッツ領のピレモンの屋敷に着いた、正面からアリエルはいるかと聞いても答えてくれる訳が無いので、俺は誰にもバレないように屋敷に忍び込んだ…はずだった…

忍び込んだ屋敷の庭には見覚えのある人物が二人立っていた。

燃えるような赤い髪、その隣には片目に眼帯をした獣族、二人とも剣を持っている。

 

エリスとギレーヌだ。

 

ロキシーが死んだ直後にエリスは突然俺の前に現れた、冒険に行こうとか言ってきたが、そっちから捨てておいて今更何を言っているんだと、追い返した。その後もしつこく俺に付きまとってくるので、つい、カッとなってエリスをぶっ飛ばしてしまった。

 

「何すんのよ!」

 

とエリスは俺をボコボコにした。

その後も俺が出かける度に襲撃してくる、なんなら神殿騎士よりもエリスの方が脅威だ。

まさかここまで追ってきたのか?それとも偶然なのか?疑問に思うが聞くまもなくエリスが突っ込んできた。

 

「ルーデウス!!!」

 

しまった近すぎる、いくら俺が無詠唱でもエリスの散歩の間合いには間に合わない…ドガッ

俺は魔術で応戦する間もなく気絶させられた。

 

目が覚めると、地下室らしきところに俺はいた、牢の前にはパウロに似た奴がいる。

 

「剣王が二人いる時に来るとは運が悪かったな、元々、無言のフィッツへの対策として呼んだのだが…まぁどの道お前は終わりだ、明日には処刑してやるからせいぜい怯えて待っていろ」

 

そいつは勝ち誇ったように笑いながら出ていった。

剣王が二人?あれ?エリスは剣王なのか?

それより、無言のフィッツ対策とはどういうことだろうか…

確かノトスは第2王女派だったと聞いたが、もしや裏切りか…

しばらく経ってから俺は魔術を使って地下牢を抜け出し、ピレモンの屋敷を捜索したが、アリエル達はいなかった。捜索の途中ピレモンの会話を盗み聞きしたところ、どうやら俺が国王が代替わりするのを狙って、ノトスを乗っ取りに来たと思ったらしい。

 

ピレモンの屋敷にアリエル達が居ないことが分かったため、俺はすぐに王都に向かった、何としても、クーデターの始まる前にシルフィに合わなければ…

しかし、俺が王都まであと一日という時、王都でクーデター発生と鎮圧されたと聞いた。

アリエルは捕らえられ、後日処刑が決まったそうだ。

そしてアリエルの手勢は全滅したと聞いた。それを聞いた時、俺は嫌な予感が確定してしまったように思った。

全滅……?は?シルフィは?

俺は急いで王都に向かった。

 

―――

 

 

王都の中心から少し外れた広場、そこに処刑場があった。

目の前の光景に俺は呆然とするしか無かった…

ルークの死体とその隣にシルフィの死体があった…

 

「シ…シル…シルフィ…」

「ああ…うぁ…あア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」

 

無惨になった二人の死体を前に俺は絶叫した。

処刑場の衛兵が俺に気づいて止めに来た。

俺はそいつをぶっ飛ばす。

その後何人殺したかは覚えていないが、次から次へとやってくる兵士を殺し続けた。

涙が止まらない…もうどうなってしまってもいい、そんな勢いで暴れた。

少し正気を取り戻した俺はさすがに埒が明かないと思い、二人の死体を回収してその場を離れた。

 

王都の城壁の外、草むらで俺は二人を燃やした。その姿が見るに絶えなかったからだ。

ルークの骨はその場に埋め、シルフィの骨は持ち帰ることにした。

シルフィを失った悲しみはいつの間にか底なしの怒りに変わっていた。

 

俺のこの世界での最初の友達シルフィ

俺がブエナ村で助けた日からずっと…

失意のままに魔法大学へ入学した俺の自信を、自らを犠牲にして取り戻してくれた。

結婚して、家を買って、娘も産んでもらって……

俺の大切なシルフィを奪ったこの国を俺は絶対に許さない。

 

「こんな国滅んでしまえ」

 

俺は王都に向けて俺のありったけの魔力を注ぎ込んだ火魔術を打ち込んだ。

遠目にも王都に爆発と火の手が上がったのが見えた。

後にも先にもあの日使った火魔術は再現できなかった、俺の底なしの怒りが、普段制限していた上限か何かを振り切ったのだろう、たぶんあの魔術は帝級、神級、その辺に分類できるのではないだろうか…

後から聞いた話だが、あの魔術は燃え広がり、王都の四分の一を焼失させたらしい、何人死んだかは未だに正確な数は分かっていないようだ。

 

シルフィの骨を壺に入れて俺はシャーリアの家へと帰った、旅先での出来事を家族に報告すると皆泣き始めた。幼いルーシーでも分かるようだ、彼女も泣いていた。もう道中で散々泣いた俺もまた泣いてしまう。

 

後日今家にいる者を集めて会議を開いた、俺はこれ以上大切な人を失いたくなかった。

 

「俺は今ミリス神聖国に命を狙われている。事実ほぼ毎日刺客が俺を狙ってやってくる、今の所問題になるほどでは無いが、今後も続けていけば綻びが出るかもしれない…その時に俺は皆を守り切れる自信はない、だから俺の周りから離れて欲しい、これ以上失いたくないんだ…頼む」

 

俺の切実とも言える頼みに異を唱える者はいなかった。

その後色々と話し合った結果、俺の他は一同アスラ王国のフィットア領に戻ることになった。

 

皆が旅立ってしばらくしてなぜかアイシャが戻ってきた。

 

「アイシャ、お前何しに来たんだ?」

「えっと、お兄ちゃんのお世話に」

「俺の話、聞いてなかったのか?俺の近くにいると危険なんだ、俺はお前を守れないかもしれない…だから皆と一緒にフイットア領に行ってくれ」

「やだよ、お兄ちゃん、私お兄ちゃんと離れて暮らすなんてやだもんね、それにお兄ちゃん、

掃除、洗濯してないでしょ?」

 

えっ、分かるのか…俺は別に気にならなかったけど…

 

「あのねお兄ちゃん、お兄ちゃんが私を心配してくれるのは嬉しいけど、私もお兄ちゃんのことが心配なの」

「お兄ちゃん一人だと、そのうちこのお家がゴミと埃まみれになっちゃうよ、私はお兄ちゃんが仕事に集中できるように、家のことをしたいの!だから、お願い!」

「家にいる時、仕事がない時は極力地下室にいること、あと夜間の外出は絶対に禁止、これを守ってくれ」

「分かった!じゃあ、今日から改めてよろしくね!」

「あぁこっちこそよろしく頼む」

 

 

―――

ある日の夜

俺は白い空間にいた。

目の前には相変わらずモザイクがかった奴がいる

 

「やぁ、久しぶりだね、何年ぶりだい?」

 

 

 

 

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