老デウスの旅路~老デウスと龍神が人神を倒すまで~ 作:考える僕
目の前にいる銀髪の怖い顔の男。
『龍神』オルステッド
ずっと前に一度あったことがある。あまり良い思い出ではない。
転移事件で魔大陸に飛ばされた後、あと少しでアスラ王国だと、内心で歓喜していた頃だった。
赤龍の下顎、そこで俺は初めてナナホシとオルステッドに会った。
いつ、赤龍に会うかもしれないそんな危険なところで、
特に防具や荷物を持たずにただ歩いていた二人組。
彼らを見てガクガクと震えだし、怯え、威嚇するルイジェルドとエリス。
彼らを見て名前を言い、まだ知り合っていないと不思議なことを言ったオルステッド。
俺も馬鹿だったと思う、エリスが怯えているだけならまだしろ、ルイジェルドまでもが怯えていたのだ。相当ヤバいやつだと、普通に考えれば分かったはずだ。
「お前『ヒトガミ』という名に聞き覚えはあるか?」
「はい、あります!よく夢に…」
俺がそう言いかけた時、オルステッドは閃光の如き速さで、俺を殺しに来た。
初撃はルイジェルドが俺を投げ飛ばしてくれたお陰で何とかなったが、
歴戦錬磨のルイジェルドの槍の腕は相当なものだったが、オルステッドは全て素手で受け流し、一撃、一撃ごとにルイジェルドを追い詰めていった。
ルイジェルドが俺に、
「逃げろ!ルーデウス!!!」
彼がそう叫んだ時には、時すでに遅しだった。
次の一撃でルイジェルドをぶっ飛ばして気絶させた。二人の撃ち合いは感覚にして一瞬だった。
オルステッドの動きはなんというか、流れるように完成された動きだった、時が時なら美しいと思わず見入ってしまっただろう。
次にエリスがオルステッド目掛けて突っ込んで行ったが、彼女の太刀を軽く受け止めると、
そのままエリスをぶん投げて戦闘不能にした、こちらは文字通り瞬殺だった。
最後に俺の所へゆっくりと歩いてきた。
彼の一歩一歩が俺に死が近ずいて来る一歩に感じて、俺は色々と最後の抵抗をしたが無駄だった。
最後にはオルステッドの腕が俺の胸を貫き、俺は死んだ。
あの時ナナホシがたまたま俺の違和感に気づいていなかったら、今の俺は居ない。
ナナホシのおかげで生きている、そう言っても過言では無い。
―――
俺とオルステッドの出会いはだいたいそんな感じだ。
オルステッドとはその後一度もあっていなかったが、向こうから尋ねてきた。
何が目的なんだろう…まさか『ヒトガミ』の件で始末しに来たのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「お前、いつから龍族になった?」
「実は自分もよく分かっていないのですが、不思議な夢を見たあと、目覚めたらこうなっていました。」
「不思議な夢?その夢には『ヒトガミ』と名乗る奴は出てきたか?」
オルステッドの視線がが俺の眼球を貫く、さっきよりも威圧感が増した。
「いえ、『ヒトガミ』ではなく『龍神』と名乗る方がいらっしゃいました。そういえば、オルステッド様のことを息子だと仰っていたと思います」
「俺の父…『龍神』…我が父は既に殺されたはずだ…にわかには信じ難いな…」
「とりあえず聞かせてもらうぞ」
「はい…ですがここで大丈夫なんですか…?」
「なぜだ?」
「ここでの会話は全てペルギウス様に筒抜けです…もしかしたら聞かれてまずいような事があるかもしれないので…例えば龍神の秘術とか…」
俺がそういうとオルステッドはしまった!という顔をした。
「そうだな…場所を変えよう」
この人意外と完璧そうに見えて実は色々と抜けているんだろうか…だったら可愛いな…
―――
俺たちは空中城塞を後にし、適当に話のできそうな廃屋を見つけてそこに入った。
俺が土魔術で椅子を作りそこに向かい合って座る。
「実は俺は二週目なんです、一度目は『ヒトガミ』に騙されて愛する者を失いました。そのあと、しばらくして奴が俺を散々バカにして消えたあと、急に夢の視界が真っ白から真っ黒に変わって、そこに『龍神』がいました。」
「二週目…お前もか…だが、前に赤龍の下顎出会った時は何も覚えていなかったようだが…それに龍族の気配もカケラも感じなかった」
「えっと…その時オルステッド様は俺になにかしたんですか…?」
「無論、ズレるとまた覚え直さなくてはならないからな。一度殺しかけたあと、
治癒した」
ズレると覚え直し…?よく分からんが、どうやらまた殺されかけたんだと…
「覚え直すとはどういうことですか…?」
「ああ、俺もお前のように何度もループしている。百からは数えていないが、二百辺りだったか…それだけループしているうちに、だいたい起きることは頭に入れているのでな」
「もっとも、前回は既にナナホシにお前に転移事件にと、ズレにズレていたから、俺の覚えていた物も、あまり役には立たんかったがな」
オルステッドも繰り返している!そういえば『龍神』も同じことを言っていた気がする…
「お前、『龍神』に会った時、なにか術を施された覚えはあるか?」
「確か、龍族の血を与えて、転生術をかけると…」
「そうか…」
オルステッドはそう言って顎に手を当てて何かを考え始めた。
しばらくして、オルステッドが口を開いた。
「俺は転生する時にいくつか情報を与えられる。
『ヒトガミ』が親の仇であり、殺さなくてはならないということ。
産まれたら、近くにいるウルペンを頼り、一人で生きれるまで鍛錬を積むこと。
ラプラスは味方であること。
古代龍族の遺跡を探せということ。」
「いつもはこれだけなのだが、今回はもう一つ増えていた。
繰り返すものはお前だけでは無い、もう一人ルーデウスと名乗る人族の血の濃い者、その者と協力すること」
「赤龍の下顎で会った時、お前は何も覚えていなかった、それに純粋な人族だった。だから同名の別人かと思っていたが、あの後もどれだけ探しても、ルーデウスはいたが、お前のように俺に恐怖しなかった者は一人もいなかった」
「それで、一番可能性の高いお前のところに来た」
そしたら、ちょい龍族化した俺がいたというわけか…
「今まで、俺は孤独に戦いをしてきた。俺の父のかけた秘術は強力なものだったが、それ故に代償として、俺は自分と龍族以外の全ての生物に敵意を持たれる呪いを持ったからだ」
「だが、お前と初めて会ったそのループはナナホシとお前、俺の呪いが効かない存在に初めて会った。そして、協力しろという者の名前、ルーデウス。お前と同じだ。」
「今まで俺は孤独に何周も『ヒトガミ』と戦ってきた、だが、何をしてもやつを殺すには至らなかった、世話になった奴はいたが。皆俺の事を仲間とは思ってはいなかった」
「頼む、俺と共に『ヒトガミ』と戦ってくれ!俺には協力者が必要だ!」
そういうとオルステッドは俺に頭を下げた、
世界最強の力を持つ『龍神』が、仲間になってくれと、頭を下げたのだ。
その姿からは誠意、それ以外に何も感じなかった。
「オルステッド様、やめてください、仲間が必要なのは俺も同じです。ですからこちらこそ、よろしくお願いします」
そういうとオルステッドは俺の方を向いた。
本当にいいのか?そう言いたげな視線だ。
きっと今まで呪いのせいで、誰にも受け入れられなかったんだろう。そう思うとオルステッドが不憫に思えてくる。復讐のために、ありとあらゆる生物から常に敵だと認識され続けるのだ。
俺なら心がもたない。
「ルーデウス…よろしく頼む」
オルステッドは安心したような声でそう言った。
―――
オルステッドと仲間になった。
これから俺はオルステッドのできない仲間集めを主にやることになる。オルステッドから龍神の加護を受けられるという腕輪を貰った。これがあれば、『ヒトガミ』から直接干渉を受けることは無いそうだ。
オルステッドによると『ヒトガミ』がいるのは無の世界、そこに行くためには『五龍将の秘宝』
が必要なのだそうだ。だが、ラプラスの持っている秘宝はラプラスが復活するまで回収出来ないそうなので、それまでは待たなければならない。
オルステッドは『ヒトガミ』のように未来を見る力はないが、ループをし続ける中で、人物の生きた軌跡、歴史を知っているらしい。それを元に『ヒトガミ』を倒すために布石をするのがしばらくの仕事になる。
大まかなやる事は分かったが、俺はふと思った。
あれ?俺がオルステッドとの仕事だけしてたらグレイラット家の財政ヤバくないか…
今はシルフィがアリエル様から、ロキシーが教師として貰っているお給料が我が家の収入であり、俺は大黒柱でありながら、学生、稼ぎがない。
一応迷宮の稼ぎとパウロの遺産があるが、それに頼っていてはいずれ破産してしまう。
そうなれば起こることは目に見えている、シルフィとロキシーがもう無理ですって言って出ていってしまう!それはダメだ!
「オルステッド様…その申し訳にくいのですが…」
「なんだ…?」
「俺も一応家庭を持つ身でして…」
「別に家に何年も帰れんほど忙しいわけではないぞ」
「いえ、そうではなくて…一家の稼ぎ頭が何も稼げないと…その…
我が家の財政に不安がありましてですね…」
「む、確かにそうだな…経験が無いとはいえ、配慮が足らんかったな」
そう言ってオルステッドが俺に剣を一本差し出す…
この剣…なんか力を感じるんだけど…
「これは魔大陸の迷宮で見つけたものだ、
魔剣と呼ばれるものが
スラ金貨百万枚は行くだろう」
「あの…これここら辺じゃ換金できないです…」
「む、確かにそうだな…すまない」
「少額でも良いので、生活に困らない程度に定期的に給金をいただければよろしい
のですが…」
「そうか…なにか良いものを探しておく、次に会った時に渡そう」
「ありがとうございます」
ふぅ、これで破産は免れそうだ。
だが、これで俺はオルステッドから給料を貰うことになる、となると…俺はサラリーマンになったのか!ニートから進歩したものだ!と冗談はさておき、俺はオルステッドの部下となるのが正しい。対等の立場の人間が給料を支払うなんておかしな話だ。俺が部下でオルステッドが上司。我社の経営体制の基盤ができたぞ。
「オルステッド様、俺はオルステッド様から給料を貰います。なので対等の立場ではなく、オルステッド様が上で俺が下、そういう風にしていただけませんか?」
「別に我は対等な立場で構わんが…それに協力の例に何かをやるというのは普通だろう?」
「いいえ、オルステッド様が良くても俺がダメなんです!こういうのはしっかり上下をつけておかなくてはなりません!」
「お前がそれが良いのならいいが…」
「はい!社長何なりとお仕事をお命じになってください!」
本日この時を持ってオルステッドコーポレーションが設立された。
―――
オルステッドからまず任された俺の仕事はペルギウスの説得に難航しているアリエルの手助けをすることだ。なんでも、今から約80年後、復活した『魔神』ラプラスが再び戦争を起こし、その時に、アスラ王国はアリエルが王になるかならないかで、存亡が分かれるそうだ。オルステッドとしてはアスラ王国が残ることで、有用な人物が生まれるらしく、何としてもアリエルを王にしたいらしい。
それに加えて、ラプラスはオルステッドでも骨の折れるくらい強いそうで、その後に『ヒトガミ』との戦いに備えて力を温存しておかなくてはならいらしいが、どうやら秘術の代償でオルステッドは魔力の回復速度が通常よりもエグいくらいに遅いらしい。
そのため全力でラプラスと戦うと『ヒトガミ』に勝てない可能性があるらしく、オルステッドの代わりにラプラスにダメージを与える人物を集めることも俺の仕事だ。
あと、俺が留守の時に我が家を守る守護魔獣を召喚して守らせるといいと、オルステッドが召喚用の魔法陣を書いてくれた。何から何まで、本当に社員の福利厚生に厚くて助かる。
オルステッドとは今後のしばらくの仕事を確認して別れた。
そろそろナナホシのドライン病の頃かと思っていたが、どうやらオルステッドが前回のナナホシにドライン病について聞いていたため、今回は早めからソーカスの葉を持ってきたそうだ。
アトーフェには正直会いたくなかったから嬉しい。
守護魔獣を呼び出すため、俺は一度家に帰ることにした。
―――
夕暮れ時、我が家の庭で集会が開かれた。
「これから我が家を守る守護魔獣召喚の儀式を始めますー!拍手ー!」
パチパチパチ
参加者は少ないが皆興味深そうに見ている。シルフィはアリエルの護衛でここにはいない…見せたかったな…
「それでは始めます!出てよ!守護魔獣!」
俺が魔法陣のスクロールに魔力を込めると、魔法陣は光出した。えっと…こういうのって魔力の量で、魔獣の力が変わったりするのかな…まあこの際、全力で行くぞ!フン!来い、強そうな奴!
魔法陣の光が止まり、俺の魔力も止まる、何かが召喚された。
白い毛、フサフサの体、大型の中でも大型な犬…
「ワオオオオオオン!」
俺、こいつ知ってるぞ…
俺が守護魔獣として呼び出してしまったのは…なんと
聖獣様だった…