老デウスの旅路~老デウスと龍神が人神を倒すまで~ 作:考える僕
「ワン!」
元気に俺の方に向かって嬉しそうに吠える白い生物…
ライオン?違う、犬だ。
「これが、守護魔獣…?その随分と可愛い見た目をしてますね…」
ロキシーさんやこいつは確かに可愛いかもしれないけど、こいつのバックについてる人達が怖い人達なのよ…
そう、俺はこいつを知っている。
オルステッドのくれた召喚魔法陣のスクロールから出てきたのはまさかの聖獣様だった…
聖獣様と言えば、昔転移事件の時に一度あったことがある。前は誘拐犯と間違えられて無料アパート(牢獄)で生活するはめになった。
前回は俺が悪くなかったとはいえ、今回に関して言えば、勝手に俺が呼び出したようなもんだ。というかそうだ。
この街にも少なからず獣族はいる。彼らに誘拐犯だと誤解されれば、簡単には誤解を解けない…最悪指名手配でとんでもないことになる…それはまずい。
これは送り返した方が良いだろうなぁ…えっと獣人語…
『聖獣様…ですよね?』
「ワン!」
聖獣様は元気に返事をした。間違いないらしい。うん、これは送り返そう。
『えっとですね、龍神様より頂いた我が家を守る守護魔獣を召喚するための魔法陣で、何かの手違いで聖獣様を呼び出してしまったようでして…その遠くまで御足労いただき申し訳ないのですが、決して私は獣族の皆様と事を構えたい訳ではありません…つきましてはおかえり頂きたいと…』
「クーン…」
俺が帰ってくださいと言いかけた時、聖獣様は残念な感じで喉を鳴らした。
なんでだろう…?でも、よく考えてみれば、簡単に帰るとか言ったけど、俺は召喚用の魔法陣を書けない…作者のオルステッドはどこにいるか連絡がつかないし、ペルギウスに頼みに行くにしても、我が家のことで偉大な英雄を便利屋みたいに使うのは気が引けるし…
聖獣様が何を考えてるかは知らないが、ここにいたいと言うならいいんじゃないか…
いや、でもなあ…そうだ!知らなかったことにしよう!これは聖獣様じゃない、うん、別の生き物だ。というか、大森林とここは地球の反対側みたいな感じだ。感覚的には日本とブラジル。飛行機のない世界で、ここまで簡単には来れない。しばらくは知らないフリをしておこう…そうしよう。
『あなたは聖獣様では無い、今日から我が家の守護魔獣…えっと名前は…レオ、前のところでは好き放題にちやほやされていたかもしれませんが、これからはワガママは許しませんよ、我が家の家族を守るためにしっかりと働いてください。良いですねレオ?』
「ワン!」
俺の問いかけに対してレオは元気に返事をした。
『それと、もしも家族に害を加えようとするようなことが…』
「クーン……」
俺がそう言いかけると、レオは心外だとでも言いたげにした。
『悪かった。今日からよろしく頼む!』
「ワン!」
我らのグレイラット家にペットが増えた。
―――
翌日、再び俺は空中城塞へと向かった。
アリエルのペルギウスの説得を手助けするためだ、説得…果たしてどう説得するんだろうか…
そういえば、ペルギウスって『甲龍王』だったよな…
ならオルステッドは『龍神』なんだから、命令できたりしないんだろうか…
いや、できないから俺がやるのか。
とりあえず、アリエルのところに行こう。
空中城塞に着くと、心配そうな表情をしたシルフィが俺の方に走ってきた。
「ルディ!大丈夫なの!?僕たちと別れた後倒れたって聞いて心配しんたんだよ!その後どっか行っちゃうし、
ペルギ ウス様は行っちゃダメだってこの城から出してくれないし…」
どうやら彼女は俺の事を心配してくれていたらしい…
確かに言われてみれば、倒れた後一言も言わずに城から消えたなあ…声くらいかけておけば良かったかな…
それにしてもペルギウスの判断には助けられたな。
もしもあのまま俺をおってきてたらシルフィはオルステッドに会うわけだったし、その時にオルステッドの呪いを体感してしまっていたら、俺がオルステッドの配下になったことに反対するに違いない。俺はオルステッドの呪いが効かないから実際どれだけの影響があるのかは分からないが、少なくともルイジェルドが震え出すんだから、相当なんだろう。
「シルフィ、心配かけてごめん。俺は大丈夫だよ」
「そっか、それならいいんだけど…もう、心配したんだからね!」
「すんません…」
「あ、別に怒ってないからね」
「それはいいとして、ルディ、何してたの?」
「え?」
「ペルギウス様が行くなって言ってたんだよ。もしかして危ないことしたんじゃないの?」
うーん…これは誤魔化した方がいいだろうか…でもなあ、いつかは話すんだし話しておこう。
「実はこの俺の髪の色について知ってるかもしれない人と話してきたんだ」
「えっと、急に変わったことについてだよね…?」
「うん。それでその人の配下になって仕事をすることになったんだ」
「配下?誰の?」
「『龍神』オルステッドだ。」
「え!?」
シルフィがびっくりして口を開けている。ポカーンと効果音をつけるのが良いだろう。
「何も相談せずにごめん」
「いやいや、別にいいけど…『龍神』って…本物なんだよね?」
「ああ、ナナホシの知り合いでそう名乗ってるから、確実だよ。それに昔あったことがあるんだ」
「そっか…でも、ルディの髪と『龍神』にどんな関係があるの?」
ふとここで俺は気づく。よく考えるとこの話結構大事だな…ロキシーには何も聞かれなかったから話してないけど、話すなら二人同時に話した方がいい気がする。
「実はまだロキシーにも話してないんだ、だから二人が一緒にいる時に話したい。それまで待って欲しいんだ」
「うん、ルディがそういうんならいいよ」
「ありがとう」
そう言ってシルフィにギュと抱きつく。うーん体勝手に…
「ルディ、ちょっと今は…」
シルフィに抗議の目を向けられ、視線を感じることに気づいた。
「あ」
アリエルとルークがこちらを気まづそうに見ている。いやアリエルはなんか嬉しそうだ。
まあ、これで探す手間が省けた。
「アリエル様これは見苦しいところをお見せしてしまいました」
「いえいえ、愛し合う男女、いいものを見せていただきました、むしろシルフィに礼を言わなくてはなりませんね」
アリエルがフフフフと微笑んだ。隣でシルフィがもう!と困っている…どうやら日常茶飯事のようだ。
やっぱりアスラ貴族ってちょっとおかしいんだよなあ…
「アリエル様お聞きしたいことがあるのですが…」
「はい、なんでしょう?」
「ペルギウス様の説得はできそうですか…?」
「それが…どうやらここよく思われて居ないようで、王として最も重要な要素について聞かれたのですが、それっきりでして…」
「そうですか…」
やっぱり難航しているようだ…うーん、これは俺がなんとかできる問題じゃないと思うんだけどなあ。仕事だし何とかしよう。
「それはそうと、なぜこのようなことを?」
アリエルが不思議そうな顔をで俺に聞いた。俺としては、ここでオルステッドの命令だと言ってしまうのが一番簡単だ。だが『龍神』がなぜ?という疑問が生まれるのは間違いないし、怪しまれる可能性も極めて高いと言えよう。乗り気はしないが、ここはシルフィを言い訳にするしかない。
「実はですね、俺もシルフィのためになにか手伝いをしようと思いまして、そのためにアリエル様に協力しようかと…」
「そうでしたか…ありがたいお話ですが、あいにく今は特にお手伝いしていただくことは思いつきません...」
「その、ペルギウス様の仰った王としての最も重要な要素について、なにか案を出すことはできないでしょうか…?」
「きっとその答えは誰かに聞いて出したものではペルギウス様は認めて下さらないでしょう…」
「そうですか…」
参ったな…たぶん前回のアリエルもここで答えが出せずに、国に戻って失敗したんだ…だとすると誰にも相談しないとなると前回と変わらない…これじゃあ何も変わらないじゃないか…考えろ、考えろ…
俺が困ってキョロキョロしていると、シルヴァリルと目が合った、正確には気がした。
何かを感じ取ったのかシルヴァリルがこちらに来て口を開いた。
「ペルギウス様はその答えがどのような方法で出されたとしても、望むものであれば、お力を貸してくださいます」
「シルヴァリル様、それは本当なのですか!?」
シルヴァリルの言葉にアリエルが食いついた。
「ああ、我は嘘はつかん」
後ろから声がした。ペルギウスだ。いつの間に来ていたんだ。だが、ナイスフォローだ。都合がいい。
「アリエル様、ペルギウス様もこう仰っていることですし、私も協力させていただきます。」
「はい、私は少々勘違いをしていたようです。周りの者の意見を聞けぬ者が王になるなど、おかしな話ですね…ルーデウス様よろしく頼みます」
そう言ってアリエルは少し頭を下げた。
―――
約二時間後………
俺、アリエル、シルフィ、ルーク、シルヴァリルは庭園のテーブルに移動し考えている。だが、一行に結論が出る気がしない。シルヴァリルはずっと直立不動で、俺達のティーカップから茶が無くなる度に入れに来る。ご苦労様です…
「はぁ…それにしても何も思い浮かびませんね……」
最初に集中力が切れたのは俺だ。というか、他三名の集中力が異様に高い…
「アリエル様が王になろうと思ったきっかけみたいな出来事とかって思い出せたりしないものですか…?」
「きっかけですか…元々私は王女として、好きなことをして、貴族に嫁いで、静かに生きていくのだと思っていたのですが、何故でしょうか…いつ王になろうと思ったのか、全く分からないのです…」
「では、アリエル様に王になれと言っていた人物なんかはいませんでしたか…?」
「そうですね…確かピレモン卿がそんな事を言っていた気がしますが…ですがそれは関係がないように思えます」
「そうですか…」
ダメだ…このままじゃ何も進まないじゃないか…せめて、ヒントになるようなものが欲しい…
「あ!」
何かを思い出したのかルークが声を出した。
「アリエル様、一人いたではないですか、アリエル様に口うるさく王になれと言っていた輩が」
「あ!」
アリエルもなにか思い出したらしい。
「デリック…デリック・レッドバッド…」
「なぜ私は今まで彼のことを忘れていたのでしょう。私が王になろうと決意したきっかけを作った彼のことを」
アリエルの中で何かがカチリとハマった。
「皆さんありがとうございました。答えが分かりました」
―――
謁見の間
そこには12の精霊とその真ん中の最奥に座る、彼らの主人。
『甲龍王』ペルギウス・ドーラ。
対するはアスラ王国第二王女。
アリエル・アネモイ・アスラ。
その後ろには二人の護衛と、魔術師こと俺が居る。
「………」
「ペルギウス様、答えをお伝えに参りました」
静寂に包まれた謁見の間で最初に言葉を発したのはアリエルだった。
威圧的とも言える態度のペルギウスを前に、その瞳はまっすぐにぺルギウスへと向けられ、強い意志を持っていた。
「随分と早かったな…では改めて問おう。王の最も重要な要素とは何か?」
「それは『意志を継ぐ』ことです」
「『意志を継ぐ』か、なぜだ?」
「私が王になろうと志したきっかけは、守護術師デリック・レッドバッドの死です。彼は私に王になれと言い、魔物から私を庇って死にました。彼の他にもアリステア、カラム、ドミニク、セドリック、ケヴィン、ヨハン、バベット、ヴィクトル、マルスラン、ベルナデット、エドウィーナ、フロランス、コリーヌ」
「皆私が王となることを望んで死んで行った者たちです。私は彼らの意志をついで王となり、その意志に恥じない王となる。それが私が王の最も重要な要素として『意志を次ぐ』を挙げる理由です」
アリエルは自らの意志を述べた。それがペルギウスの求める答えかは分からない。けれども確かに力のこもった。アリエルの強い意志が伝わってきた。
「そうか…」
それに対して、ペルギウスはつまらなそうに頬ずえをついた。アリエルを興味深く観察するように見ている。
「仮にだ。我がそれは違うと言ったら貴様はどうする?考え直す機会をやっても良い」
「いいえ、結構です。私とペルギウス様の理想とする王の姿が違うのなら、私は無理にその答えを出しません。そして、ペルギウス様のお力もお借りはしません。無理やりにでも合わせれば、私が王になってもいずれ立ち行かなくなるでしょう」
アリエルがそう言い放った。謁見の間が少しざわついた雰囲気になる。精霊、ルーク、シルフィ、俺その場にいたほぼ全員が驚きの視線をアリエルに向ける。
だが、アリエルとペルギウスは静かに互いに視線を向けている。
「フッ…」
ペルギウスが少し笑みをこぼした。
「よく言ったアリエル・アネモイ・アスラよ!ここまでの王族を我は久しぶりに見たぞ。」
「我の望む答えではなかったが、それもまたよし。よかろう、望み通り力を貸してやろう。」
「この甲龍王ペルギウス・ドーラは、貴様の力添えとなることを、今は亡き盟友ガウニス・フリーアン・アスラに誓う!」
「今後の手順はまた時を改めて考えよう、今は下がれ」
「ありがとうありがとうございます」
アリエルは礼を述べ、シルフィとルークも、頭を下げたので、俺も頭を下げ、謁見の間から退室する。
「ルーデウスよ、貴様はここに残れ渡すものと話がある」
俺も退場しようと思ったが、呼び止められたので残る。話ってなんだろう…
―――
再び謁見の間…
12の精霊とペルギウス
それに対するは無名の魔術師ルーデウス・グレイラット
あれ?なんか俺やばいことしたっけ…?