理由は、単純に探究心。スライムの里で人語が分かる奴から数年の時を掛けて自分も分かるようになった。
魔術については変化魔術、他の言い方をするなら属性魔術を使えるようになった。俺はオールラウンダーだったらしい。スライム達が知ってる魔術は出来るということだ。といっても、火の属性魔術ならば灯火を出したりする程度しか使えない。
「成雪ぃどうしてぇ人里に行くのぉ」
「クルル。俺は世界を知りたくなったんだ。幸い人里は近くにあるから人に擬態してそこから学んでいくんだ」
「おいおい、一緒に新しい魔術を考えてたじゃあないか」
「………ピピピか。君は鑑定の技巧を得て長老になろうとしているんだ。勉強していた方が良いんじゃないか?」
「俺だけ扱いひでぇぞ」
まだ出発するまで数日くらいあるのになぁ。他のスライムとも交流があるけど、ここまでしつこいなんて。
「そういえばぁ、長老のところにはもう行ったか?」
「あぁ、確か、出ていく時に言わなきゃいけないんだっけ」
「そうよぉ」
「ちょっくら行ってくる」
長老の元まで行くが、家は閉まっている。理由は分からないが時々、こういう事がおきる。最長でも一時間かそこらなので、最新式の魔力運用を試してみることにした。その方法というのが器官が無いスライム専用のもので魔力を体に馴染ませて、即使える魔力タンクにすることだ。
「うぐ、ぐっ……」
ちなみに完全な才能の世界だった頃の人間はこの方法に近いものを使用しており、才能が無いものは内臓が焼けて腐ったそうだ。
「ふぅ、高位の魔術を使えるようになる足掛かりになればいいんだけどな……」
「終わったかい?」
「どっ、わ。長老じゃないですか。出てこられたんですね」
「うん、そうだけどどうしたんだい?ずっと外で待ってただけじゃないか」
「えっと、村から離れようと思ってまして」
「―――それじゃあ、中に入って」
「あ、分かりました」
村のスライム達は人の物や動物の頭とか革で飾ったりしていたが、長老の家の中には何の装飾品も無かった。ただ、長老が奥へ進んでいくと空間が歪んでいった。
「は?」
あるのは赤黒い月と枯れたように見える樹と池だけだった。
突如として吐き気を催し消化液をぶちまいてしまった。違和感に気が付き、自分の体を見ると人間になっていた。長老の姿も人間に近かったが半身に角が生えて髪の色々もそこから黒と赤で分かれていた。
「ここで何を?どうして人間に?」
「最初ね質問に対しての答えは契約。そして、二つ目の質問の答えは心に深く残っている者に変身をするから、かな」
一旦、あの樹を見つめて、口を開いたかと思えば意味の分からない言語を喋り始めた。
「さ、中に―――」
池に入っていくので、成雪もついていった。ピリピリと痛みがあり体が溶けていくのを感じるが、魔力が馴染んでいく感覚が心地よくて抜けだそうとは思わなくなった。
「外に出る契約をしよっか。手を出して、樹に触ってここの事は口外しないと考えるんだ。そして―――」
(ここは口外しない。ただ、力を―――)
下半身が溶けていくが快感でそれどころでは無かった。
「そういえば、ここの池ってスライムの液体ですか?」
「正解。こいつも吸収したくないだろうが、本能というものが邪魔なようだ。さ〜て」
長老の体も下半身が溶けきって上半身も巻き込まれる。
「な、何を?!」
「食料、大変でしょ。信頼するものにこの樹の液体を渡すといいよ。そのかわりこれにはそいつの細胞を入れてね」
◇◆
村を離れる当日となり、人の住む町を探すのだった。