ソードアート・オンライン ~双角の鬼人~   作:句読仮名丸

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戦闘、最近やらなくてごめんなさい。


第11話 罪の茨は罰の証

 アインクラッドにおいて、プレイヤーが準備、休憩するための圏内では、絶対にプレイヤーを傷つける事はできない。

さらに、毒アイテムの類も無効。徹底的にHPが減る事を良しとしていない。

 

 しかしそれはあくまで()()()()()()()

プレイヤーを圏内で殺害する方法は、ただ1つだけある。

それは、デュエルでHPを全損させることだ。

 

「デュエルのウィナー表示を探せ!どこかにあるはずだ!」

 

 キリトが周囲に集まっていた人に言ったように、今のがデュエルによる物ならば、必ず勝者の名前が空中に表示される。

けれど、見渡せどもその表示は出てこない。

 

(デュエルの相手が遠くに行った?でもそれだとデュエル自体が無効になる……)

 

 表示が出るのは30秒だけ。

もうとっくにその時間は過ぎていた。

オレとキリトは諦めて、男が吊られていた場所、宿の一室に来ていた。

 

「……どういう事?コレは……」

「普通に考えるなら、デュエルをした相手が被害者の胸にその剣を突き刺して、首に縄を括り付けて窓から落とした、ってことになるのかしら」

「でも、ウィナー表示はどこにも出なかったぞ」

「それがおかしいんだ。圏内でダメージを与えるには、デュエル以外に無いはずだ。……もし、圏内PK技みたいな物を、誰かが発見したんだとすれば……」

 

 キリトの言う通り、そんなことが起これば混乱どころの騒ぎじゃなくなる。

ただでさえ、最近レッドギルドなんて胸糞悪い連中も出てきたのに、さらに外だけじゃなく街の中まで危険ということになるのだ。

だから今言えるのは、これを野放しには出来ないってことだ。

 

「ひとまず、このまま放置って訳にもいかないな」

「そうね。前線を離れる事になっちゃうけど、仕方ないか。……なら、解決までちゃんと協力して貰うわよ?」

「言われずとも、そのつもりだよ」

「うん、危険過ぎるからね」

「ええ、ありがとうミコト。……言っとくけど、男性2人、昼寝の時間はありませんからね」

「「昼寝してたのお前じゃん……」」

 

 ……余談だけど、圏内ではHPは減らないけど、ノックバックは発生する。

つまりは、アスナの鉄拳も、しっかり食らうししっかり吹っ飛ぶって事だな。

ったく、暴力系ヒロインは古いっての。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後、オレ達は宿の外に出て、事を最初から見ていた人を探した。

そして、ヨルコという名前の女性プレイヤーが話を聞かせてくれた。

 

 殺された鎧の男はカインズという名前で、昔彼女と同じパーティだったらしい。

今日は一緒にご飯を食べる約束だったらしいが、広場で見失い、探しているとこの宿の窓からカインズが突き落とされるのを見たそうだ。

 

 さらに、カインズが落ちる直前、窓の中に人影が見えたらしい。

嗚咽を漏らしながら言うヨルコを、アスナが背中を擦って慰める。

 

「ごめんね、嫌な事聞くかもしれないけど、心当たりはある?カインズさんが狙われる理由に」

 

 ミコトの問に、ヨルコは首を横に振った。

ヨルコの状態もあまり良いとは言えないし、オレ達は聴取をそこまでにして、彼女を宿まで送った。

明日また話を聞くことを約束して、オレ達は日もすっかり暮れた街を歩いていた。

 

「さて、どうする?」

「オレらが持ってる情報を検証しとこう。あの棘のついた剣の出処が分かれば、そこから犯人が分かるかもしれない」

「となると、鑑定スキルがいるな。ナギとミコトは……」

「「ないね。ないない」」

「ですよね。お前は上げて……る訳ないか」

「当然、君もね」

 

 そこで、アスナがいきなり立ち止まり、キリトの方を見た。

 

「ていうか、その『お前』とか『アンタ』って呼び方、やめてくれる?」

「あ、それわたしも思ってた。なんか他人行儀だよ、キリト」

「いや、実際そうだし……」

「1層で1回組んでたろが。事件解決までは一緒に行動すんだし、良い機会だろ」

「んん……じゃあ……」

 

 キリトは少し考え、アスナを呼んだ。

 

「あなた?」

「……」

「副団長様?」

「……」

「閃光様?」

「……」

「……攻略の鬼様?」

「普通に!アスナでいいわよ!それと最後のやつ、ちょっと言い淀んだなら、言わなければいいじゃない!」

「りょ、了解しました……」

 

 キリト、お前シリカとかには普通に接せるのに、なんでアスナとはこうなのだ。てか1層の時は呼んでたろ。

 

「んで、鑑定スキルだけど、フレンドとかに当てがある奴は?」

「んー、友達に武器屋やってる子がいるけど……」

「今は1番忙しい時間帯だし、厳しいかな」

「ミコトとアスナの友達はないと」

「それじゃあ、俺達の知り合いの雑貨屋にでも行くか」

「あー、そういや持ってたなあの人も」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 第50層 主街区 アルゲード

アインクラッドの分岐点、ぴったり真ん中にあるこの層には、多くの店が立ち並んでいる。

中華の下町的なこの街はとにかく入り組んでおり、よく利用するオレやキリトも全貌は把握出来てない。

そのある路地の目的の場所まで着くと、中からため息を吐くプレイヤーが出てきた。

 

「ようエギル、相変わらずあくどい商売してんのか?」

「訴えられても庇ってやらないからな?」

「おお、ナギ。それにキリトもか。人聞きの悪いこと言うんじゃねえよ。『安く売って安く仕入れる』それがうちのモットーだからな」

 

 前半はともかく、後半はどうだかな、このぼったくり店主。

エギルが経営する店は基本オレとキリトが使ってる。ミコトは比較的留守番の時のが多いから、数えるくらいしか来たことがない。

 

「やっほーエギルさん、こんばんは」

「おう、今日はミコトも一緒とは珍し……」

「……どうも」

「お、おいナギ。どういうことだ?何で仲の悪いキリトとアスナが一緒に?そういや、お前ら1層で一緒にいたことあったけど、まだ関係続いてたのか?」

「色々あったんだよ。それでここに来たんだ」

 

 アスナもいることにびっくりしているエギルに、事情を説明した。

 

「圏内でHPがゼロに?デュエルではなく?」

「ああ。ウィナー表示は発見できなかった」

「直前までヨルコさんと歩いてたから、睡眠PKの可能性も無くしてOKだよ」

「ただのデュエルにしてはやり口が複雑過ぎるから、計画的なPKと見て間違いないわ」

「そこで……こいつだ。鑑定を頼みたい」

 

 オレはストレージから、カインズの胸に刺さっていた棘付きの剣を取り出した。

エギルはそれを手に取り、鑑定を開始する。

 

「プレイヤーメイドだな」

「作成者は?」

「グリムロックって奴だ。聞いた事ねえな。少なくとも一線級の刀匠じゃない。武器自体も、特段変なことはないから、ただの自分用にでも作った剣だろうな」

「でも手がかりにはなるはずよ」

「ああ。エギル、固有名はどうなってる?」

「《ギルティ・ソーン》って名前だ。『罪の茨』ってとこだな」

 

 罪の茨、ね。

棘付きといい、趣味の悪い剣だな。返し付きの刀身といい……イヤな奴を思い出す。

キリトはそれを取り、少し見つめた。そして何やらよし、と呟いた後、剣先を自分の手のひらに突き刺そうと……はあっ!?

 

「ちょっ、待ちなさい!」

「何やってんだお前!?」

「危ないでしょ!?」

「い、いや……確かめてみないことには分かんないだろ?」

「だからってバカなの!?その武器で実際に死んだ人がいるのよ!?」

「やるにしても何か言え!びっくりするわ!」

「キリト、それ没収!エギルさんが持ってて!」

「お、おう、分かった」

 

 剣はエギルさんに預け、オレ達は店を後にした。

キリトは3人がかりで説教した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 翌日、オレ達は昨日のレストランでヨルコさんに事情を聞いた。

 

「ヨルコさん、いきなりで悪いんだが、グリムロックって名前に聞き覚えはあるか?」

「……はい。グリムロックさんは、昔私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」

「実は、カインズさんの胸に刺さってた赤い剣、鑑定したらそのグリムロックさんが作った物だったんだ」

 

 キリトの言葉に、ヨルコさんは目を見開き口を覆う。

 

「詳しく、聞かせてもらえる?」

 

 アスナに促され、ヨルコさんはぽつぽつと語り出した。

 

 元々、ヨルコさん達は《黄金林檎》という8人のギルドに所属していた。

半年前、たまたま倒したモンスターがステータスを大幅に上昇させる、レアアイテムの指輪をドロップした。

その指輪の処遇で、少し揉めたらしい。

ギルドで使うか、売って金にするか……結局最後は、多数決で決め、5対3で売ることに決めたそうだ。

リーダーのグリセルダという女性が、前線でそれを売るために、1泊の予定で出かけた。

 

 しかし、グリセルダさんは戻って来なかった。

ヨルコさん達は、後になって彼女が死んだ事を知ったらしい。どうして死んだのか、未だに分からない。

圏外に行くとも考えづらい。しかし、半年前というと、睡眠PKの手口が広まるより前だ。

 

「誰かに殺されたのは確実だよな。となると、やったのは指輪の事を知っていたプレイヤー」

「……黄金林檎の、残り7人の誰かだろうな」

「その中なら、売却に反対した3人が怪しいんじゃない?」

「そうね。指輪が売られる前に、奪い取ろうとしたのかも」

「一応、グリムロックさんについても聞かせてもらえるか?」

 

 聞くと、グリムロックさんはグリセルダさんの夫らしい。もちろん、このゲーム内での、だが。

もし、この事件の犯人がグリムロックならば、彼は指輪の売却に反対した3人を恨んでいるのかもしれない。

 

「……指輪の売却に反対した3人のうち、2人は私とカインズなんです」

「! じゃあ、もう1人は?」

「シュミットというタンクです。今は攻略組の《聖龍連合》に所属していたはずです」

 

 シュミット?どっかで聞いた事……

ああっ!DDA(聖龍連合)のディフェンダー隊のリーダーのアイツか。会議で何度か顔合わせてたな。

いまいちピンときてないキリトとミコトに、アスナが説明した。

 

「シュミットを知っているんですか?」

「ああ、ボス攻略で顔を見る程度だけどな」

「シュミットさんにも、連絡を取った方が良さそうね。DDAに知り合いがいるから、本部に行けば会えると思う」

 

 シュミットはキリトとアスナが呼んでくることとなり、オレとミコトはヨルコさんの護衛で待機することになった。

部屋の外にいると、ミコトが話しかけてきた。

 

「ナギ、今回の事件の手口どうなってるのかな?」

「だいたい、思いつくのは3つ。1つは、ただのデュエルによるもの。2つ目は、システム上の抜け道を突いた裏技」

「ふむふむ、3つ目は?」

「これは正直ほぼないと思ってるんだけど、『圏内で殺人を可能にするスキル、またはアイテムの存在』だな」

「ほぼないの?結構ありえそうじゃない?」

 

 首を傾げるミコトに、こめかみを掻きながら説明する。

 

「……ムカつくけど、SAOのルールは基本公平に作られてる」

「公平?」

「どれか1つの武器を優遇したり、あるスキルだけ強くしたりとか、そんなとこ。で、圏内ってのは絶対安全のエリアってのを、全プレイヤーに確約してる。『圏内殺人』なんてものがまかり通って良いわけないんだ」

「なるほどね。犯人については?」

「今の時点では、グリムロックさん一択だけど……シュミットによっちゃ、何か変わるかもな」

 

 そうして待つこと数時間、ようやくシュミットを連れた2人が帰ってきた。もう日は傾いていた。

貧乏揺すりをしながら、落ち着かない様子のシュミットはヨルコに聞いた。

 

「グリムロックの作った武器で、カインズが死んだというのは、本当なのか?」

「……本当よ」

「な、何で今更!?アイツが指輪を奪ったのか?グリセルダを殺したのはアイツだったのか!?……グリムロックは、売却に反対した俺達全員を殺す気なのか……!?」

 

 頭を抱え狼狽するシュミットに、ヨルコさんは俯いたまま言った。

 

「……もしかしたら、グリセルダさん自身の復讐なのかもしれない」

「ど、どういう事だ?」

「だって、圏内で人を殺すなんてこと、幽霊でもないと不可能でしょう?」

 

 そう言って、ヨルコさんはゆっくりイスから立ち上がった。

 

「……私、昨日寝ないで考えたのよ。グリセルダさんを殺したのは、ギルドのメンバー全員でもあるのよ!?あの指輪がドロップした時点で、グリセルダさんに全部まかせれば良かったんだわ!!」

 

 半ば狂乱したように叫んだヨルコさんは、窓際にもたれかかった。

 

「あの日、グリムロックさんだけは、グリセルダさんに任せると言った。あの人には私達に復讐する権利があるんだわ」

「……冗談じゃない、冗談じゃないぞ!半年にもなって何を今更……!お前はそれでいいのかよ!?こんな訳の分からない方法で、殺されていいのか!?」

 

 立ち上がってヨルコさんに詰めよろうとしたシュミットの肩を押さえる。

だいぶ錯乱した2人をどう収めようかと思っていたところで、何やら鈍い音が響いた。

 

 

────ドスッ────

 

 

 オレ達は目を見開き、よろめいて窓の縁に手をついたヨルコさんの背を見た。

そこには、赤いダメージエフェクトを零しながら、赤い茨のような短剣が突き刺さっていた。

ヨルコさんは体勢を崩し、そのまま窓から転落した。

 

「ヨルコさん!」

 

 ミコトは慌てて窓に走ったが、外に見えたのはヨルコさんだったガラス片と赤い短剣だけだった。

 

「クッソ!」

 

 窓からプレイヤーの影を探す。

投剣スキルがいかに高かろうと、目視出来ないほどの遠距離から狙うことは出来ない。

まだ近くにいるはずだ。

そこで、近くの建物の屋根の上にいる、黒いローブを被った人影を見つけた。

 

「キリト!」

「ああ!アスナ、ミコト!後は頼む!」

 

 オレとキリトは窓から飛び出し、黒ローブを追った。

相手はかなり敏捷にステータスを振っているようで、かなり高レベルなはずのオレ達でも追いつけない。

黒ローブは懐に手を伸ばし、攻撃を予想したオレ達は剣に手をかけた。

が、黒ローブが取り出したのは転移結晶だった。

 

「なっ!?させるかよ!」

「ふっ!」

 

 オレ達は即座にピックを投げて牽制するが、オレのは当たらないし、キリトのは《アンチクリミナルコード》に阻まれ、足止めにもならない。

転移結晶で逃げられれば、後は追えない。しかし、転移の際には必ず、行き先を口に出さなければならない。

何とかしてそれを聞こうと、耳をすませていたのだが……

 

 

カ───ン……カ───ン……

 

 

 この層にのみ、夕方6時に鳴る鐘。

それに気を取られ、どこに転移するのかを聞き取れなかった。

黒ローブは転移され、後には鐘の音だけが残った。

 

「逃がしちまったか……」

「けど、あれが犯人で間違いなさそうだな」

「ああ。キリト、顔見えたか?」

「いいや、口元しか」

「そうか……」

 

 オレ達は2人に報告するため、元いた宿に戻った。




~ハロウィン~

キリ「本編関係なしかよ」
ナギ「この小話自体、どんな時間軸か明記してないし問題ねえだろ」
アス「そんな適当でいいの?」
ミコ「いいのいいの!ほら、皆コスプレ似合ってるよ!」
アス「私は……ゾンビ風看護師?スカート短いんだけど……」
ミコ「コスプレだしねぇ。わたしのくノ一も似たようなもんだから、大丈夫!」
キリ「何が大丈夫なんだ……。俺は、神父服か?変なデザインだけど、まあ無難だな」
ミコ「脳震わしてそう」
ナギ「ミコト、シャラップ。それとな、オレのやつに異議を申し立てたい」
キリ「似合ってるぞ?」
アス「落ち武者って、実質侍みたいなものじゃない?」
ナギ「フォローはいいんだよ!これすっげえ重いしすっげえ動きにくいんだよ!さっきから直立不動なんだよ!」
ミコ「リアルな重量を再現した鎧だから、インドアなナギにはキツかったか」
ナギ「いらんこだわり!」


季節ネタはたまにぶち込みたい。本編では出来ないような時……あ、本編でもやるけどね。2度楽しめれていいね。
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