2024年 7月7日
第61層 迷宮区
今日はとうとう来た
各々プレゼントを持ち寄り、ダンジョンに潜って(主にオレが)酷い目に遭いながらもゲットした共同プレゼントもある。事前準備に抜かりは無い。
あと残るのは……
「よっ、ほっ、せいっと」
ミコトが刀を2振りした後、バク宙してその勢いのまま剣を上に振り上げる。その変則的な3連撃により、鎧のモンスターはたたらを踏む。その隙を逃がさず、着地したミコトは渾身の一閃を放ち、モンスターは倒された。
オレはオレでモンスターを倒し終え、2人で一息ついた。
「ふぅ。やっぱり上層は経験値ウマウマだね」
「だな、モンスターの固さもあんまり気にならなくなってきた」
「そろそろ上がろっか。大分上がってきたでしょ」
「う、うーん……もうちょっといないか?あと1レベだけ」
「えー、仕方ないなあ」
不承不承にも頷いてくれたミコトは、リポップした鎧達を蹂躙しに行った。それを後ろから穏やかに見ながら、オレは内心冷や汗ダラダラであった。
(……あぶねー!まだ準備完了のメッセージ来ないがそろそろ限界だぞ!何してんだアイツらは!つーかミコトは気付いてんの?今日自分の誕生日だって気付いてんの?気付いてないよなこの感じ、去年も当日言ってようやく気付いてたしな。大丈夫だよな!)
そう、この層にあるアスナ宅で催される予定のミコトバースデーパーティの準備まで、ミコトを引き付けていなくてはならない。適当に理由をつけてミコトを迷宮区まで連れていき、レベリングと称して時間を潰す。そんなことをしてかれこれ3時間程経った。なのに未だ完了の合図はない。何なのマジで、何が起こってるのあっちで。
(ミコトは自分に無頓着とはいえ、勘が鈍い訳じゃない。オレの様子を見て何やら気付くのも時間のもんだ……今オレの方チラッと見たな。ヤバいぞマジでヘルプリズシリカアスナァ!)
努めてミコトに異変を悟らせないように、平常心を顔に貼り付けてモンスターを倒すが、心の中で女性陣に助けを求めて叫んでいた。キリトはこういう時役に立たないので。
──────一方その頃アスナ宅では、
「ちょっとキリト君!飾り付けまだ終わんないの!?」
「あ、あとちょっと……うぉわ!?」
「だ、大丈夫ですかキリトさん!?」
「アンタ今日何回目よ!高いところの飾りはアンタしかやれないんだから、頑張んなさい!」
「うぐ……何で今日に限ってエギルとクラインは夜しか来れないんだよ……。というか!身長ならナギの方が高いだろ!何でアイツが陽動なんだ!?」
「誕生日くらい彼氏に花持たせてやりなさいっての!」
「文句言わないでキリト君!私の方も料理終わっちゃったし、手伝うから!」
「こういう時手伝えなくてすみません……」
「シリカちゃんは気にしないで!食器の配膳お願いしていい?」
「は、はい!」
「ほらアンタも立って仕事しなさい!」
「リズもだろそれは!?」
「二人とも!喧嘩しない!!」
『キュイィッ!』
……オレがこの様子を後に知ってキレるのは、まだ先の事……。
◇◇◇
あれから少しして、流石にこれ以上迷宮区に留めるのが厳しくなったオレは主街区のセルムブルグに戻ってきていた。アスナ宅の近くに行かなきゃ問題ないだろう。オレたちは純白の花崗岩で造られた広場の椅子に座っていた。日が少し傾いていた。
「この街キレイだよねー、ヨーロッパに似たような場所なかったっけ?」
「ここみたく岩じゃないけど、スペインに全部真っ白な家しかない街があったな。ここは城塞だから、余計荘厳に見える」
「カヤバーンも凝った事するよねー、こんな綺麗な街を100個も作るなんて」
「大体はシステム頼りな気もするけどな。あとカヤバーンって呼び方何よ」
「少しでも親しみを込めようと」
「要らねえだろあんな狂人に」
冗談を言い合いながら、そんな他愛の無い会話をする。最初っからコレで良かったんじゃないか。楽しさで言えばどっこいどっこいだが。
居心地の良さを感じながら話していると、不意に後ろから声をかけられた。
「やあ、ナギ君、ミコト君」
「……何でアンタがいるんだ?」
「久しぶりでーす、団長様」
「ああ、久しぶり、ミコト君。ナギ君もね」
温和な笑みを浮かべているのは、白い長髪を後ろで束ねた男、ヒースクリフだった。最近は攻略をアスナに任せきりなので、最後に見たのはもう1ヶ月くらい前か。今日はいつもの赤い鎧ではなく、血盟騎士団のギルドマークが入った赤いシャツであった。
「何でいるんだ、だったね。私だってたまの休日には散歩くらいするさ。今日はたまたま、それがこの層だっただけで」
「今日アスナも非番でしょ?No.1、2が揃っていなくて平気なの?」
「問題ないよ。現在64層の攻略は視察中の過程だからね。少し厄介なギミックがあるから、糸口が見つかるまでは私たち本攻略組は訓練とレベル上げさ。私たちが休暇を取るのも、そう難しくはない」
「つってもアンタ、攻略来ねえじゃん」
「ハハハ、これは手厳しいね」
そう笑いながら、ミコトの方に1人分の間を空けて座った。オレがそれに対し露骨に嫌な顔をすると、ヒースクリフは一瞥して気にせずフッと笑った。少しは気にしろよ、ハラスメントコードで訴えるぞ。
「時に、君たちは結婚したそうじゃないか。遅ればせながら、私から祝福を。おめでとう」
「もう半年も前だぞ」
「ありがとうございまーす!団長様も良い人見つかるといいですね!」
ナチュラルに毒吐いたなミコト。オレの言うことには眉1つ動かさないヒースクリフが、一瞬だけ表情変えたぞ。気のせいか、少しだけ寂しそうな感じがしたが。
そう思ったのも束の間、いつも通り何考えてるのか分からない微笑に戻り、再び口を開いた。
「君たちは、この世界の結婚システムについてどう思う?」
「どうって?」
「所詮はゲームの中とするのか、その想いは現実とも変わらないとするのか、ということさ」
「そんな事かよ。変わらねえよ、オレにとっちゃな」
オレの即答に、ヒースクリフは興味深そうに眉を上げた。
「ほう、それは何故?」
「……なんつーかな。オレにとってはもう、この世界は1つの現実なんだよ。この世界で見たものも、触れたものも、関わった人も、全部本物だ。ゲームじゃないとは思ってないが、現実ではないとも思ってない。だからこの気持ちも、結婚てシステムも、現実と何ら変わらない」
「……なるほど、君の意見が聞けて良かったよ」
「そりゃどーも」
何やら小っ恥ずかしい事を言った気がするが、これはオレの本心だ。この世界に来たからと言って、現実との乖離が起きることも無い。グリセルダさんとグリムロックの件もあったから、一概に皆がそうとも言えないがな。
「ミコト君はどうかな?君のナギ君への気持ちは現実と変わらないかい?」
「おいうちのミコトに変な事聞くんじゃねえよおっさん。ハラスメントコードで訴えるぞ」
「ハラスメントコードは近づきさえしなければ発動しないよ。あと本人しか操作出来ない」
「そういう事言ってんじゃねーよ!」
「ハハハ、君はやはり揶揄い甲斐があるね」
こんにゃろう、人を弄びやがって。
そこでふと、ミコトが少し俯いてる事に気づいた。
「ミコト?」
「……え、ああ!ごめん、ボーッとしてた……。えっと、結婚がどうとかだっけ?」
「ああ、君の貴賎ない意見を聞きたい」
「……わたしは、変わらないと思う、けど……ナギほどしっかりした理由は見つからないかな」
そう少し自信なさげに答えたミコトに、ヒースクリフは満足そうに頷いた。
「ふむ。総合して君たちの気持ちは現実とは変わらないという事だね。ありがとう、良い意見を聞けたよ。いやぁ、熱いね」
「何なのお前、何がしたくて聞いたんだよ」
「? ただ揶揄いたかっただけさ」
「たたっ斬るぞマジで!」
「そんな君たちに、私からプレゼントだ」
オレの憤慨を無視し、ヒースクリフは立ち上がってストレージを操作した。取り出したのは、六本前後の青い花が刺さった小さい花束だった。
「私からの結婚祝いだ。それとアスナ君から聞いたのだが、今日は確かミコト君の……」
「───っ!っ!っ!」
「……いや、何でもない。仲が良くて結構だよ」
「?」
オレが慌てて「だ・ま・れ!!」のジェスチャーをした事で察したヒースクリフは、言葉を引っ込めた。
何口走ろうとしてくれてんだ、この真っ赤っか団長は。危うく計画がご破算するところだったぞ。幸いミコトはキョトンとしてたから、気付いてはいないようだけど。
「キキョウ、によく似た花だ。フローリアに咲いていたのを見つけてね。部屋にでも飾ってくれたまえ」
「……ありがとうございます」
「ありがたく受け取るけど、アンタが打算無しに何かをするの怖いんだけど……」
「私だって大人だからね。そういう事だってあるさ。それに、君たちにギルドに入ってもらうのを諦めていないからね」
「やっぱり打算じゃねえか!!」
「覚えておくといい、大人とはこういうものだよ」
そう笑いながら手渡された花を、ミコトは少し見つめていた。どうしたんだろうか、結婚の話題振られてからなんか変だぞ。やはりこのおっさん訴えようか。
「それと、ミコト君」
「? はい」
「君にアドバイス、というより忠告だね。君の行動はボス戦でしか見ていないが、少し気になった事がある。君の動きは勇敢とも取れるが、時にそれが蛮勇となることもある」
「蛮勇……」
「もう少し、自分を大切にした方がいい。君は皆から好かれる質をしているからね。ああ、どうしても悩みがあるなら騎士団に来ると良い。うちにはカウンセラーもいるからね」
「いい話したんだから最後まで貫けよお前は!しつこいセールスマンみたいになってるぞ!」
オレの文句をやはり笑顔で受け流し、ヒースクリフは立ち去って行った。本当に何がしたかったんだあのおっさん。
「…………」
ミコトは先程から、ヒースクリフから貰ったキキョウっぽい花を見つめている。考え事をしていたようなので少し黙っていると、アスナからメッセージが来た。
「ミコト、ちょっと歩こうぜ」
「……うん」
花をストレージにしまい、オレたちは並んで歩き出した。
「さっきヒースクリフから言われた事、気にしてんのか?」
「……少しね。ナギはさ、わたしが無茶してると思う?」
「ああ思う。たまにやめろって言っても突っ込む事あるしな」
ミコトの行動は、ヒースクリフの言った通り蛮勇に片足を入れている。勇気がある事は結構だが、自棄を含んだ勇気は果たして良いことだと言えるのか?
それは、否だろう。
「オレもキリトも、お前みたく無茶する事はあるけどな。ミコトのはなんか、『どうにでもなれ』みたいなヤケクソな感じがするんだよ」
「そんな事は……ない、と思う」
「言い淀んでるだろうが。実際、ミコトがどう思おうと、オレやアスナやキリトは心配してる。いつか、ホントに死んじまうんじゃないかって」
「……」
アスナが本気で怒ってくれるのは、本気で心配してくれるからだ。キリトが前に突っ込むのは、オレやミコトに無茶させない為だ。シリカはミコトを姉のように慕っている。リズはミコトを親友の1人として支えてくれている。アルゴやエギル、次いでにクライン等々、ミコトを思ってくれている人は少なくない。
もちろん、オレも。
「な、ミコト」
「なに?」
「オレはミコトが好きだ」
「知ってる」
「お、おう。で、他にもお前の事が好きな……あ、友達的な意味でな。まあ思ってくれてる奴は沢山いる」
「……」
オレたちは道を進み、ある路地に入っていく。
「お前自身がそうじゃなくても、お前を大切に思ってくれてる人は沢山いる。オレも、自分のことよりミコトの事を大切に思ってる」
人通りの少ない住宅街を進む。
「けど、オレは別に自分の事を考えてない訳じゃない。オレの事を思ってくれてる奴も、少なからずいることは分かってるからな。自分で言うのもなんだけど」
夕焼けにより、オレンジ色に染まった道を歩く。
「だからさ。ミコトも自分の事をもっと大切にしてくれ。ミコトの為にも、ミコトを思ってくれてる人の為にも」
「……わたしは、そんな……」
「そんなもクソもねえよ。現にオレがそう思ってるって言ってんだろうが。それに……」
そこで立ち止まる。
オレたちはいつの間にか、目的地に着いていた。
「ここって……」
「実際に見た方が早いだろ」
オレに促され、ミコトが扉に手をかける。そして、恐る恐るそれを開けた。
──────パンッ!!
『ミコト(さん)、誕生日おめでとう!!!』
「………………」
盛大なクラッカーと祝いの声に、茫然とするミコト。目をパチクリと瞬かせ、頭に乗ったクラッカーのテープにも気付いていない。
「ほら!いつまで玄関いるのよ!主役は入った入った!」
「えっ、ちょ、リズ……」
「ほれほれ、早く入れよ」
「な、ナギ、これ……」
「さ、ミコトさん!中入りましょう!」
リズとシリカに引っ張られ強引に室内へ押される。
「色々あるでしょうけど、まずはプレゼントね!各々からのは後にして……キリト君、お願い」
「OK。じゃあナギ。お前が渡してやれ」
「リョーカイ」
キリトがストレージから取り出した小袋をオレに手渡した。それを貰い、ミコトへと歩み寄る。
「忘れてただろうけど、皆からの誕生日プレゼントだ。ほれ、開けてみ」
ミコトが手に取った袋の包装を解く。
「……簪?」
中から現れたのは、真っ白な簪。その先にミコトのイメージカラーである深い蒼の花の飾りが付いている。
先週行ったダンジョンでボスがドロップしたのは、この簪の本体部分だ。それをリズが加工し、キリトやアスナ、シリカが選んだ飾りを付けた、この世界に一つしかない品だ。完成品が想像以上に綺麗に出来上がったので、完成時には皆して「おおっ!」と声が漏れた程だ。
「…………」
「ナギが言ったんだよ、簪にしようって」
「絶対ミコトさんに似合いますよ!」
「ステータスにもそれなりに良い効果がある、一石二鳥仕様だ。凄いだろ」
「キリトは飾り選んだだけでしょ。あとこういうのはステータスとかどうでもいいのよ」
「色々迷ったんだけどな。髪飾りなら、毎日付ければ毎日思い出してくれるだろって思ってな」
「少し理由が重いけどね」
「うるせえやい」
「………………」
ミコトはオレ達の力作を、ただ無言で見つめている。ヒースクリフから花を貰った時よりも、ジッと。その様子に少し後ろの女性陣が不安そうになるが、それは直ぐに解消された。
「───っ…………」
「えっ」
……泣いたのだ、ミコトが。黙ったまま、水槽の仕切りを外したように、ミコトの目からボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。普段から基本笑顔なだけに、その異常事態にオレ以外の皆が慌てふためいた。
「どうしたの!?ミコト!」
「何かありました!?プレゼント嫌でした!?」
「キリトがステータスがどうこうとか言うからでしょ!?」
「俺のせいなのか!?」
「……ミコト?」
オレが顔を覗き込むと、ミコトはハッとしたように涙を拭い、すぐにこちらを向いた。
「ご、ゴメンゴメン。急なことでビックリしちゃって……。えーと、んーと……良い感じの言葉が見つからないけど……」
まだ少し涙が滲んでいる瞳のまま、ミコトは精一杯の笑顔を向けた。
「───ありがとね、皆。絶対、大事にするから」
そう言ったミコトの笑顔を見て、慌てていた4人はホッとしたように息を着いた。
ミコトが涙を拭っていると、アスナがミコトに声をかけた。
「ねえミコト、着けてみてよ」
「あ、いいですね!ミコトさん、普段は髪に何も着けてませんから」
「付け方教えてあげるわ!」
「装備メニュー開けば……イッタ!?」
「効率厨は黙ってなさい」
リズに付け方を教わり、ミコトは頭の左に簪を刺した。慣れない感触に驚きつつ、こちらに振り返った。
「どう、かな?似合ってる?」
「「「似合ってる!!!」」」
「良いんじゃないか?イッタァ!?」
「疑問形にするな!」
「な、ナギは?」
「……ああ。これ以上なく似合ってるよ」
顔を少し赤くしながらの問いかけに、オレは微笑んで答えた。本当に、頑張って良かった。
(……すっごい穏やかな顔してますね、ナギさん)
(これ以上なく幸せって顔してるわね)
(ミコトといるとたまに見せるんだよねあの顔。心の底から嬉しいんだろうね)
(((愛されてるんだなー)))
「ほら、そこのコソコソしてるガールズ。次は個人プレゼントだろ?」
そして、各々持ち寄ったプレゼントを渡した。オレのは少し訳ありなので後回しにしてもらった。この場では渡し辛いから。
その後はもうパーティならぬどんちゃん騒ぎだ。アスナが作った料理を食べながら、何故かオレとミコトの馴れ初めを言わされたり、途中で参戦したクラインが場を引っ掻き回したり回されたり、その更に後から来たエギルが惨状を見て説教されたり、それに便乗してアスナから普段の行いをオレとキリトも纏めて説教されたり、色々あった。
総じて、ミコトは楽しそうにしていた。最初の涙も忘れたように、いつもと変わらぬ明るい笑顔を浮かべていた。気付けばもう日は沈んでおり、今日までの準備で疲れたのか、皆眠ってしまっていた。
◇◇◇
皆が疲れ果て眠ってしまった中、椅子に座っていたわたしは身を起こした。
「皆、寝てるよね?」
周りを見渡すと、アスナとナギが隣でテーブルに突っ伏しており、キリトはクラインに絡まれて隅で丸まってる。エギルさんは帰ったのかな。皆に毛布が掛かってるのを見ると、彼が掛けてくれたんだろう。リズとシリカは……椅子の上で抱き合ってる。いつの間に仲良くなったんだろこの2人。このパーティの準備で仲良くなったのかな。少し妬けちゃうな。
「……外、行こ」
なんのなしに、外に出た。この層は湖に浮かぶ小島が集まったような構造をしているので、この季節は夜は風が涼しくて気持ちが良い。
「誕生日、すっかり忘れてたな」
思えば、去年もそうだった。当日の朝にナギに言われてなきゃ、ずっと気づかず過ごしていた。今日もそうだった。現実世界でも、毎年忘れてたっけ。
「その度に、ナギかお義母さんが教えてくれるんだよねー。成長しないなーわたし」
独り言を呟きながら、歩を進める。どこに向かっているのかは、わたしにも分からない。ただ何となく、進む方向に進んでいる。
「……わたし、愛されてるんだなー。この簪も、あのパーティも、めちゃくちゃ準備大変だったろうに。コレはわたしも、皆の誕生日気合い入れないとなー」
皆からプレゼントを貰った。ナギからは「後で楽しみにしといてくれ」って言われたけど、もうそろそろ日付変わるんじゃないかな。間に合うかな。
……本当に、楽しかったな。
「アスナの料理も美味しかったし、シリカとピナは終始可愛かったし、リズがくれた鞘も綺麗だったし、エギルさんのプレゼントもザ・大人って感じだったし、クラインのは……まあ良いかな?」
あんな微妙なデザインの人形、どこで売ってたんだろ。
「ナギは、何くれるのかな。今から期待しちゃうぞ?」
クラインがポロッと吐いてくれたが、こんな大掛かりなお祝いはナギ発案らしい。わたしは大切にされてるんだぞーって分からせる為だって。
「ナギらしいな。ナギだって無茶するくせに、わたしの心配してくれて。まあ、嬉しいけどさ」
わたしはいつの間にか、迷宮区に来ていた。なんだって、こんな所に来ちゃったんだろう。
「───ナギ。わたし、皆から大切にされてるって、愛されてるって、知ってたんだよ?ナルシストみたいになるけどさ、流石にわたしもそこまで鈍感じゃないよ」
コツコツと、足音だけが響く。偶にポップするモンスターを、半ば無意識に倒す。
そっか。1人になりたかったのか、わたし。
「……でもね、だからこそ。だからこそだよ。わたしが愛されてるって分かる度、思い知る度……
モンスターがポップしない洞窟を見つけ、そこにフラフラと入る。傍から見れば、夢遊病のようだろう。壁にもたれて、ズルズルと腰を下ろす。
「ごめんね、皆。応えられなくて。ごめんね、ナギ。こんなわたしを愛してくれたのに、わたしが、その気持ちに応えられなくて、
─────
膝を抱え込み、顔を伏せながら。何かに、誰かに謝るように頭を下げて、わたしはその言葉を繰り返した。隠した顔に、涙を浮かべて。
「 み い つ け た 」