ソードアート・オンライン ~双角の鬼人~   作:句読仮名丸

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 はい、ここに「次回更新遅れるかも」などと宣い、新年から4ヶ月も更新をサボっていたクソ野郎がいますね。

 スゥ───……

 お久しぶりです皆様、クソ野郎です、はい。
 いや、あの。サボってた訳ではなくて。ただあの、受験とか、引越しとか、一人暮らしのストレスとか、諸々があってぇ……。あの断じて、ブルアカにハマってSAO熱が下がってたとか、そんな事なくてぇ……。

 ……ごめんなさぁい!!! これからもクソ鈍足更新にはなるんですがァ!!見捨てないでくださぁい!!!


 ……今謝ったので、更新なかったにしては少し短いけど、22話、始まりマース。


第22話 就職先はよく考えろ

 2024年 10月19日

 第55層 主街区グランザム

 

 この街グランザムは、別名鉄の都と呼ばれている。街の外壁やれ、尖塔やれが全て鋼鉄でできていることに由来している。他の街にあるような街路樹や噴水もない。この季節じゃ寒々しさは嫌でも感じてしまう。

 

 そこから少し歩いた場所にある、一際高く目立った塔。巨大な鋼鉄の扉から突き出た、これまた鋼鉄の槍には赤い十字架がデザインされた旗がはためいている。血盟騎士団の本部である。

 

 街以上に冷たい雰囲気を醸し出す建物の中、またまた鋼鉄の大扉の先にある円形の部屋に、オレたち4人はいた。半円形のテーブルに座る5人の姿が、全面ガラス張りとなった壁から差し込む灰色の光で逆光となっている。さながら怪しい組織の幹部とボスみたいだ。「怪しい」以外はその通りなのだが。

 

 前置きはさておき、そのテーブルの中央に座る、オレの髪をもう少し白に寄せたような灰白色の髪の男、血盟騎士団団長ヒースクリフは口を開いた。今日は前見たようなラフな恰好ではなく、ちゃんとした制服然とした恰好だ。

 

「こうして君たちのパーティ全員と話すのは、初めてだったかな?」

「そうだな、前話した時はオレとミコトだけだったし」

「そうかい。あの時送った花はまだ元気だろう。少し特殊な加工をしたからあと1ヶ月はもつはずだよ」

「全然耐久値が減る気配しないと思ってたけど、あれそういう事だったんだ……」

 

 オレとミコトのタメ口に、明らかにサイド4人が眉間に皺を寄せた。オレ達は敬語使う必要無いだろうに、なんか文句でもあるんだろうか。

 ついでにキリトも「え、お前たちそんな仲だったの?」って目で見てきた。別にそんな仲良くないぞ。なんか一方的に好かれてるみたいだけど。

 

「キリト君とは、こうしてボス攻略の場以外で話すのは初めてだったかな?」

「いえ、前に67層の攻略会議で、少し話しました。ヒースクリフ団長」

「あれは辛い戦いだったね。危うく我々も死者を出すところだった。最強ギルドと持て囃されていても、戦力はいつもギリギリだよ」

 

 伏し目がちにそういうヒースクリフ。多分本心から言ってるんだろうが、こういう時は大体別の思惑がある。この雑談も、そこまでの繋ぎだ。

 

「……なのに君たちは、我がギルドの貴重な主力プレイヤーを引き抜こうとしている訳だ」

 

 鋭い目付きでそう言うヒースクリフに、何か言おうとしたアスナをキリトが手で制した。

 

「貴重なら、護衛の人選にはもっと気を使った方がいいですよ。少なくとも、暴走するような奴には任せない方がいい」

「クラディールの件はこちらに非があるからね。そちらは謝罪しよう。だが我々としても、副団長を引き抜かれて『はい、そうですか』と言う訳にはいかないのだよ」

 

 そこで一度区切り、ヒースクリフはこちらを見据えた。この街のどの鋼鉄よりも鋼鉄らしい硬い意志をもって。

 

「欲しければ、君たちの剣で奪いたまえ。私と戦い勝てば、アスナ君を連れていくといい。だが負ければ……君たちが血盟騎士団に入って貰おう」

 

 少し口角をあげてそう言ったその男に対し、オレは少しだけ印象を改めた。

 こいつでも、こういう事は言うのだと。未知の力、《二刀流》と《鬼神刀》。自分の腕に確かな自信があるからこそ、その力を見せてみろと言うこの男も、団長などと言われてもオレたちと同じゲーマーなんだと思った。

 

 多分キリトもそれを感じたのだろう。一歩前へ踏み出て、真っ直ぐとヒースクリフに啖呵をきった。

 

「いいでしょう。剣で語れと言うのなら望むところです。デュエルで決着をつけましょう」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 10月20日

 第75層 主街区コリニア

 

 一昨日アクティベートされたばかりにも関わらず、その層には溢れんばかりのプレイヤーがひしめき合っていた。SAOでも稀に見る大イベントともあって、告知は昨日されたばかりなのに、転移門からはひっきりなしに人がやってくる。

 

 その転移門のすぐ真ん前、古代ローマ風のコロシアムの周りには金の匂いを嗅ぎつけた商人プレイヤーの露店で賑わっている。見覚えのある色黒もその中にいた。

 

 そして最も列が並ぶ露店、チケット売り場の看板には、この謳い文句である。

 

 

 

生ける伝説  VS  二刀流の悪魔

  ヒースクリフ     キリト

 

 

 一体いつの間に作ったんだろうなーという仕事の速さである。選手オーダーを伝えたの昨日の夕方だろう。徹夜したのか?

 

 それはさておき、オレたちは闘技場がすぐ側に見える選手控え室的な場所にいた。そこでオレたち3人はアスナに詰め寄られていた。

 

「もぉ〜〜バカバカバカバカ!何であんな事言ったのよ!」

「悪かったって!つい売り言葉に買い言葉で、っていうか……」

「キリトが言わなくてもオレが言ってたぞ」

「わたしも言ってたね」

「2人は正座!!」

 

 全く悪びれてないオレたちにアスナが怒鳴った。流石に今日はこれ以上が怖いので、は甘んじて受けとこう。

 そうしていると、時間になったようだ。向こう側からヒースクリフが闘技場に入って来るのが見える。

 

「……初撃決着モードでも、団長の強攻撃をクリティカルで貰ったら危ないんだからね。危険だと思ったらすぐリザインしてよ。……前みたいのは許さないから」

「俺より、ヒースクリフの心配をしてやれよ」

「その意気だよ!ぶっ飛ばしちゃってねキリト!」

「あの腹黒団長の盾叩き割って吠え面かかせてやれ!写真撮ってやらあ!」

「ああ。任せとけ」

「もう!二人とも!」

 

 得意げな笑みを浮かべて闘技場へ向かうキリトを見送ると、すぐに割れんばかりの歓声が聞こえてくる。とんでもない人の数だ。キリトも少し苦笑いしている。

 未だ不安そうにキリトを見つめるアスナが、オレたちに聞いてきた。

 

「ねえ、何で誰が戦うか決める時、キリト君で即決だったの?一対一なら、3人ともほぼ変わらないでしょ」

「ユニークスキルを使わなければ、な。使ったらキリトが全勝するよ」

「そんなになの?確かにキリト君の二刀流を見た時は、別次元の強さだと思ったけど、2人のだってとんでもないボスを二人で倒せるくらいじゃない」

「わたし達の場合、二人じゃないと完全じゃないんだよ」

 

 オレは、《鬼神刀》は二身一対のスキルだと考えている。一人だけでも戦えるが、《二刀流》や《神聖剣》程のチートっぷりは引き出すにはオレやミコトの一人だけでは無理だろう。

 

「それに戦闘スタイル的にも、ヒースクリフにはオレ達よりキリトの方が相性がいい」

 

 タイマンの場合、オレは重い攻撃を数発ぶち込むタイプ。ミコトは動き回って多重攻撃で削り殺すタイプだ。

 それに対し、ヒースクリフは徹底的に待ちの姿勢を解かない。攻撃を受けて受けて受け続けて、隙を見逃さず的確にそこを突いてくる。相当な高威力か連撃数でないとその姿勢は崩せない。

 その条件ならば、

 

「キリトなら、ヒースクリフの防御を突破できる。というかこの条件じゃ、キリトしか可能性がない」

 

 キリトの《二刀流》の強みは、連撃数とそこから繰り出される圧倒的な単騎攻撃力だ。70層代のボスのHPをほぼ一人で削り切れる程の攻撃性能をもってすれば、《神聖剣》の絶対防御さえ突破できる……と思う。

 

 ……一応《鬼神刀》でも手段は無くは無いのだが、ここでの条件だと使うの無理に等しいからな。

 

「ま、信じようぜ。オレ達の黒の剣士を」

「……そうだね」

 

 手を胸に置いたまま、アスナは視線を闘技場へ移した。ちょうど二人が剣を抜いたところだ。

 カウントがゼロになり、勝負が始まった。

 

 先に仕掛けたのはキリトだ。真正面から二刀流ソードスキル《ダブルサーキュラー》を見舞い、続けて攻撃の連打を浴びせる。が、どれも的確に盾により防御される。盾を少し前に突き出しひるんだところで、今度は攻撃に移る。剣で防ぎ、後退したキリトにさらに追撃を加えようとする。

 キリトは相手の右手に持つ剣を警戒するが、予想外のところから攻撃が飛んできた。

 

「えぇっ!?」

「盾にも攻撃判定があるのかよ……」

 

 ヒースクリフは左手に持つ十字盾で、キリトを吹き飛ばした。成程、それも《神聖剣》の能力の一つって事か。実質二刀流じゃねえか。

 ヒースクリフは立ち直す隙は与えないと、盾を構え半身でキリトに迫る。盾捌きだけじゃなく、剣技の方も二刀のキリトとタメを張れるとか、あの団長化け物かよ。

 

 キリトは一度距離を取り、黒剣の方を構える。真紅に色付いた切っ先を向け、流星の如く突っ込む。片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》。恐らくキリトが出せる単発火力ならば、最強の技。

 しかし、それも盾で上手いこと受け流される。

 そこで二人は1度距離を取り、少しの会話の後、戦いは再開される。

 

「は、速っ!?」

「キリトの調子、上がってるね。さっきより速い」

「ギアは上がったが......まだヒースクリフも着いてこれてる。けどこのままスピードが上がれば......」

 

 恐らく、攻略組でも補足できる人数は限られるのではないか、という程の高速戦闘が始まった。異次元の反応速度を持つキリトもそうだが、その攻撃を的確に防御するあの団長はマジでなんなんだ。

 そう考えたすぐ後、キリトの剣がヒースクリフの頬を掠めた。

 

(抜ける……!)

 

 キリトの攻撃が、ヒースクリフの反応速度を上回った。キリトがそれを見逃す筈もなく、畳み掛けるように16連撃ソードスキル《スターバースト・ストリーム》を放つ。

 使い勝手の良さから、キリトが練習でよく使っている。絡繰蜘蛛を倒した時も、この技で瞬殺した。

 本来プレイヤーに使う技ではない。オレでも全部受けきるのは骨が折れる。それでも、ヒースクリフの防御を破るには、これが最適解。

 

 流星群のような剣閃がヒースクリフを襲う。そしてスキルの15撃目、始めてヒースクリフの十字盾が弾かれ、防御が剥がれた。

 

 (取った!)

 

 最後の一撃が、ヒースクリフの脳天へと吸い込まれていき......

 

 

 キリトの最後の一撃は、弾かれたはずの盾によって逸らされた。

 大技を出し切ったキリトはソードスキル発動後の硬直を強いられ、ヒースクリフの単発突きを避けられなかった。そこでキリトは地面に倒れ、デュエル決着を告げるシステム音と歓声が響いた。

 

 茫然とするキリトに、アスナが駆け寄る。

 オレ達も行こうと思ったが、出来なかった。

 最後の『あれ』が、どうしても消化できなかった。

 同じく、険しい顔をしたミコトがヒースクリフの方を見たまま口を開いた。

 

「......ナギ、見えた?最後の」

「……しっかりとは、見えなかった。オレはお前らほど目が良くねえし。けど、吹っ飛ばされたはずの盾がいつの間にか戻ってた」

「うん。わたしも全部見えた訳じゃないけど、あれは……」

 

 その先をミコトは言わなかった。可能性の話にしては、相手を貶め過ぎるから。言い掛かりにしかならないから。

 

 ただ、あの光景は、オレ達とキリトの胸に、確かな引っ掛かりを作り出した。

 ヒースクリフは金属質な目をキリトに向けた後、黙って控え室に消えていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 時は少し過ぎ、10月22日。

 

「……白いキリトってなんか違和感があるな」

「うん。なんか変」

「んな事俺が1番よく分かってるよ!はぁ〜、だから言っただろアスナ。これ派手なんだって」

「え〜、似合ってると思うけどなー」

 

 50層で見つけた新たなねぐらにて、オレ達は明日から着るギルドユニフォームを装備していた。

 ちなみに、さっきまでオレとミコトは別部屋で着替えており、キリトとアスナにも見せようとしたら、何やら2人の世界を作っていたので廊下で待たされた。特に気にしてないけど。マジ早くくっつけよ。

 

「というか、違和感ならミコトだって同じだろ寒色仲間」

「年中無彩色野郎に言われたくありませーん。わたしはナギとおそろだからいいんですー」

「……なあアスナ、この装備急造なのに、デザインがオレたちが元々装備してたのとほぼ同じなんだけど、どうやって用意したんだ?」

「ギルドの保管庫にあったのを引っ張り出してきたんじゃない?」

「HAHA、さすけつー(流石血盟騎士団)」

 

 アインクラッドNo.1ギルドの名は伊達じゃねーや。

 

「明日から出勤かー。は〜、社会人1日目って感じだわ」

「ま、いいんじゃないか? 3人攻略を続けるより、こっちの方が生存率は上がるだろ」

「そーそ。というかギルド入ってもする事は変わらないでしょ」

「まあ確かにな」

「巻き込んじゃった身としては申し訳ないけど、お願いだから変なことしないでね?」

「「……はーい」」

「悪い顔してるぞ、2人とも」

「本当にやめてよね!?」

 

 オレとミコトの空返事にアスナが叫ぶが、もう遅いさ。つーか元はと言えばお宅の団長様が言ったことだ。

 大丈夫さ。アスナの胃に穴が開く前に、白髪団長の胃にヴォーパル・ストライクしてやるよ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 翌日、10月23日。

 

 オレたち4人は、グランザムにある血盟騎士団本部のロビーにて、椅子に腰掛けていた。

 基本血盟騎士団は5人で1パーティ組むとこを、アスナが副団長の権利を濫y…行使して、いつもの4人でのパーティにしてくれたので、これからの活動でもする事はそんなに変わらないそうな。

 自分で言うのもなんだが、オレ達に着いていけるくらいの実力を持ってる奴は、もう既に他パーティに入っている、ってのもあるんだろうけど。

 

 ということで、特に何事もなく一日目は終了───となる事は、残念ながらなかった。

 

「……訓練?」

「そうだ。私を含む団員3人のパーティを組み、ここ55層の迷宮区を突破して56層主街区まで到達してもらう」

 

 そう突拍子もなく言ってきたのは、両手斧を背負ったオレンジ色の髭もじゃ男。確かヒースクリフとの圧迫面接の時にもいたっけか。

 

「3人て、誰とだよ」

「今日は黒の剣士殿とだな。心配せんでも、双角の鬼人殿らとも、後日取り行うから安心するといい!」

「いや、誰も心配はしてないけど……」

「ちょっとゴドフリー! 何勝手に決めてるのよ!」

 

 食ってかかるアスナに、ゴドフリーというらしい男は不遜気に言い返した。

 

「いくら副団長と言えど、規律をないがしろにして戴いては困りますな。実戦指揮を預かる身として、個々人の能力を把握するのは当然のことでしょう。私にも見れる人数には限りがありますから、本日は1人だけですがな!」

「そんなの問題にならないくらい、キリト君は強いわよ!」

「チーム戦はどっちかと言うと不得意だけどな」

「まあ3人なら慣れてるんじゃない?」

「2人ともお座り!」

 

 もう座ってますけど。

 茶々を入れるオレ達に怒鳴るアスナを気に止めることなく、ゴドフリーは「30分後に街の西門に集合!」と言って部屋を去っていった。

 

「もう、せっかくゆっくりしてたのに……」

 

 がっくり項垂れるアスナの頭に、キリトはポンと手を置いて言った。撫でポカウンターがまた回ったな。

 

「すぐに帰ってくるさ。ここで待っててくれ」

「うん……気をつけてね?」

 

 そうしてキリトが部屋を去った後、アスナはまた項垂れてつむじを見せた。

 

「はあ〜、大丈夫かなぁ……」

「んな心配することか?ゴドフリーの言ってた通り、ただの訓練だろ?」

「そうなんだけどさぁ〜」

「そういえば、キリトと、ゴドフリーさんと、あともう1人って誰?」

「多分、クラディールよ。元々ゴドフリーの部下だし、大方仲直りさせてやろうとか、そんな魂胆でしょ……」

 

 あー、確かにそんな事しそうなキャラだもんなぁ、あの人。陽の気が漏れ出していた。

 にしてもクラディールか。件の日から何日か経ってるし、頭が冷えてれば何も起きないと思うが。

 そんな事を考えていると、おもむろにアスナがウィンドウを立ち上げた。

 

「どうしたのアスナ?」

「キリト君の位置情報よ。妙な事が起きてないか見とかないと……」

「ストーカーかよ」

「違うわよ! 私は心配だから見守ってるの!」

「それストーカーの言い訳だからな?」

 

 『アスナメモ : 愛が重い』っと。あーあ、マジ付き合えよ。何回目だこれ言うの。実際に言ったことはねえけど。心の中でならもう3桁回言ってるぞ。

 

 そこから数十分、特に何も起きず、オレとミコトはココア(っぽい飲み物)を飲みながらリラックスしていた。その間アスナは位置情報に齧り付いていたが。

 

「……休憩するみたいね」

「アスナそれ飽きないの?」

「愛の力ってやつだろ」

「違う!心配なだ…け……」

 

 茶化しに怒りかけ、アスナの語尾が尻すぼみになっていった。

 

「アスナ?」

「……ゴドフリーの反応が、消えた……」

「「!!?」」

 

 

 オレ達3人の判断は早かった。

 ドアから出ることも無く、迷わず最短距離である窓から外に飛び出した。持てる全速力、敏捷値を底上げするアイテムも使い、コンマ1秒でも早くキリトの元へ走る。

 

 55層のフィールドから迷宮区までの道は、一本道の渓谷だ。シンプルな道故、迷う事はないが、逃げ道も同様に少ない。

 

「……くっ……!」

 

 段々とミコトとアスナから距離が離れる。底上げしたと言っても、地のステータスの差は埋められない。

 

 モタモタしてはいられない。安全マージンが十分取れている55層で、騎士団の実力者が殺された。モンスターに遅れを取る事は無いとすると、残る選択肢は1つ。

 プレイヤーによる襲撃、PKだ。

 《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》は壊滅した。なら別のレッドギルドか、はたまた個人的なPKか。

 どちらにせよ、急がなくてはならない。PKするような奴が悠長に待ってくれるわけが無い。

 

(クソッ! 死ぬんじゃねえぞキリト……!)

 

 そう心の中で毒づいた時だった。

 索敵スキルに反応があった。それもモンスターではなく、プレイヤーの。

 

「2人とも止まれっ!!」

「っ!?」

「アスナ!」

 

 俺が叫ぶのと同時、渓谷の影から太い刃が顔を出した。

 かなりのスピードが出ていた事と、焦りもあったのだろう。アスナは止まるのが一瞬遅れた。

 凶刃がアスナの顔に触れる直前、並走していたミコトが刃を弾いた。

 

 その黒鉄の刃には、見覚えがあった。

 

 

「───なんだ《閃光》。らしくねえじゃねえか。なぁに焦ってんだ?」

 

 

 肉切り包丁のような極厚の呪剣《友切り包丁(メイト・チョッパー)》を片手でペンのように回しながら、そいつは影から出てきた。

 

 壊滅したはずのレッドギルド。《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》頭目、PoH。

 

「……アスナ、先行って」

「っ!……分かったわ」

「おいおい、シカトか? 寂しいじゃね──」

 

 PoHが言い終わるのを待たず、オレの刀が肉薄する。

 

「アスナ!行けっ!」

「うん!」

 

 アスナが先に行くのを見てから、オレはもう一度PoHを見た。黒ポンチョの影から見える口は薄く笑っている。

 鍔迫り合いしていると、またも索敵スキルに反応があった。

 《笑う棺桶》の残党……3人か。

 

「ミコト!」

「大丈夫!ナギはそいつに集中して!」

 

 不安はあるが、ミコトの言う通りにするしかない。PoHをフリーにしておくのは悪手過ぎる。

 

「ハハッ、恋人はいいのか?《赤の鬼人》」

「そっちこそ、弟分(2P)はお留守番かよ」

「ああ、アイツはお前にご執心だから、なっ!」

 

 腹への蹴りを後ろに飛んで避ける。

 

「《黒の剣士》は今頃どうしてっかなぁ。ククッ……」

「やっぱりテメェの差し金かよ……。お前だってキリトにご執心じゃねえか」

「そうか?俺はお前にも用があるんだぜ?《赤の鬼人》」

「オレに?」

 

 PoHは口の端を大きく歪ませる。

 その表情が、ここにはいないアイツ(2P)に重なる。

 

 大きく描かれた円弧から、声が響く。 人の心に、魂に、直接響くような、この男(PoH)特有の声音だ。

 

 

「《赤の鬼人》、お前は()()()()だ。 俺と一緒に来ねえか?」

 

 

 ───どんだけ馬鹿げた言葉でも、脳裏に焼き付いて離れない、最悪な声だ。




~久しぶり~

ナギ「久しぶり」
ミコ「ん、おひさ」
アス「どうしたの2人とも」
ナギ「なんか4ヶ月くらい会ってなかった気がしないか?」
キリ「確かに、そんな気が……?」
ミコ「ん、全ては作者の豆腐メンタルのせい」
アス「ミコトはその喋り方どうしたの?」
ミコ「ん、なんか勝手にこうなる」
ナギ「なんかミコトの頭に犬耳が見える気がする」
キリ「俺にはアサルトライフルが見えるな」

ナギ「それで、久しぶりの投稿なんだが、何する?」
キリ「決まってないのかよ」
アス「こんな行き当たりばったりだから、投稿が遅れるの
よ……」
ミコ「ん、作者は反省すべき」
ナギ「ん〜……じゃあミコトもこんなんだし、アレ決めるか」
アス「アレ?」
キリ「何を決めるんだ?」


ナギ「声」


 ということで、まずアンケート取ります

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 またも月単位空く可能性ありますが、何卒、お付き合い下さい。
 アリシゼーション編まで、何年かかるかなぁ……
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