ソードアート・オンライン ~双角の鬼人~   作:句読仮名丸

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もうこんくらいの長さデフォでいいかな?




第4話 何でも1人で背負うな

 攻略懐疑から一夜明け、オレたちは迷宮区を歩いていた。

 

「うぅ……頭がじんじんする」

「ペインアブソーバーは機能してるんだよな?」

「愛の鞭には関係ないのだよ」

「……愛……?」

「アスナ、気にしなくていいから。つか気にしないでくれ」

 

 隊列の1番後ろを歩きながら、昨日の折檻の跡を擦るオレに呆れた顔を向けてくるミコトとキリト。

アスナから疑問の声が出たが、気にしない。

 

「あーほら、もうそろそろボス部屋なんだし、最終確認でもするぞ」

「ああ。基本は2人ペア。俺とアスナ、ナギとミコトで、一体ずつ取り巻きのコボルトに対処する。一通り終わったら、リポップのタイミングまで待機、でいいよな?」

「昨日の確認通りだね、リョーカイ」

「……分かったわ」

 

 そうして確認を終え、1団はボス部屋の扉前までやってきた。

先頭を歩いていたディアベルは振り返り、シンプルに激励した。

 

「皆、俺から言うのはたった1つだ……勝とうぜ!」

 

その言葉に皆は緊張しながらも頷いた。

 

「いくぞ!」

 

 ぎいーっと音をたてながら扉はゆっくりと開き、中のフロアが見えてくる。

オレはそれを真っ直ぐ見ながら、右隣にいる相棒に声をかけた。

 

「……いくぞ」

「うん」

 

 コツン、と拳を軽く合わせる。

この1ヶ月、何となく始めた戦う前のルーティン。

それにより、オレたちの脳内は切り替わり、研ぎ澄まされていく。

 

 フロア最奥の玉座に座っていた巨影が飛び上がり、中央に着地した。

 

『ブォォォォァァァ!!!』

 

 《イルファング・ザ・コボルトロード》、第1層のフロアボス。

右手に片手斧、左手には左手には盾を持った犬頭の王が雄叫びをあげる。

その傍、コボルトロードの脇に鎧を来た小さいモンスター、《ルインコボルト・センチネル》が現れる。

 

 

「攻撃、開始!!」

 

 

 ディアベルの号令を合図に、オレたちはモンスターへと駆け出した。

 

『キィ"ィ"ァァ!』

「フッ!スイッチ!」

「やぁっ!はっ!」

 

 奇声を上げながら棍棒を振り抜いたコボルトの一撃を弾き、入れ替わったミコトが、《ダブルムーン》の2連撃で仕留める。

 

「っ!スイッチ!」

「1匹目!」

 

 視線を少しキリト達の方に移すと、そちらも順調に倒しているようだった。

 

「オレらも、負けてられないな」

「うん!どんどんいこう!」

 

 次々とリポップしていく取り巻き共を倒し続ける。

ボスの方は、ディアベル率いるA、B、C隊が引き付けてくれているから、こちらも取り巻きに集中できる。

ディアベルの指示も的確だ。全体を見通して指示を出している。

想定よりも早く、4本あったボスのHPバーは残り1本となっていた。

 

『ブォォォォォォォ!!!』

 

 突如ボスが叫んだかと思うと、持っていた斧と盾を投げ捨てる。残りHPバーが1本になると、攻撃パターンが変わり、腰にかけた湾刀(タルワール)を使う。βテストの時もそうだった。

 

「下がれ!俺が出る!」

 

 そこで、ディアベルがパーティの先頭に立った。

ここは全員で包囲するのがセオリーなのだが、なんでだ?

コボルトロードが腰の剣を抜く。

出てきたのは、湾刀よりも刀身に反りがない剣……野太刀(のだち)だった。

 

 それを見たオレとキリトは、思わず息を飲んだ。

 

(βテストの時と違う!)

「駄目だ!全力で、後ろに跳べ!」

 

 キリトが叫ぶが、時は既に遅かった。

ボスはディアベルの真上に跳び、天井をその巨躯からは想像出来ないスピードで飛び回った。

そして、その手の野太刀が赤く光を帯びる。

カタナソードスキル《浮舟》がディアベルの体を切り裂いた。

 

「ぐあぁぁっ!」

「ディアベルはん!」

 

 そして浮き上がった体に、ボスはもう一撃加えて、ディアベルの体は、オレたちのすぐ後ろの壁まで投げ出された。

 

「ディアベル!」

 

 慌ててキリトが駆け寄るが、その手は空を切る事になった。

ポーションを取り出した直後、ディアベルのHPは0になり、ガラスが割れるようにアバターは砕け散った。

 

「っ………!」

 

 昨日まで話していたリーダーの死に絶句する。

 

 ……恐らく、ディアベルは元βテスターだったんだろう。

最後に1人で前に出たのは、ラストアタックボーナス──LA──を取りに行ったんだろう。

それを、昨日の会議で言わなかったのは、彼の欲が出たからかもしれない。

キリトも気付いたのだろうが、それを咎める気はなかった。

あいつは、誰も勇気が出ずに言い出せないでいた攻略を推し進めてくれた。オレたちがやれなかったことを、やったくれた。

それが自分の利益のためであったとしても、行動には敬意を払う。

 

(……後は任せろ)

 

 リーダーが死に、攻略メンバーにも戦意が失われようとしていた。

キリトはオレの横に立ち、真っ直ぐボスを見ている。

どうやら、オレと気持ちは同じようだ。

ミコトとアスナも、それに続いて横並びになる。

 

「ボスを叩く……でいいんだよね?」

「ああ、手順はセンチネルと同じだ」

「野太刀はリーチが長いから気をつけろ」

「分かった」

「スゥー……行くぞ!」

 

 キリトの掛け声で、オレたちはボスに向かって走った。

 

 最初に振り上げられたボスの攻撃を、キリトがソードスキルで上に弾く。

仰け反ったボスに、アスナが追撃を仕掛ける。

 

「! アスナ!」

「っ!」

 

 無理な体勢から、ボスは体を捻って起こし、アスナへと剣を振り下ろす。

オレの声を辛うじて聞いたアスナは横に避ける。

しかし、剣の先がケープに当たったらしく、耐久値を失った布はポリゴンとなって消え去り、アスナの姿が現れる。

 

 ───ハーフアップにした栗色の長髪をたなびかせ、アスナは剣を煌めかせた。

 

「せやあぁぁぁ!」

 

 技は脇腹にクリーンヒットし、ボスの体が吹き飛ばされた。

初めて見るアスナの素顔に、少し呆然としつつも、吹っ飛ばされたボスへと追撃する。

 

「ミコト!」

「うん!」

 

 突進してくるボスの一撃をミコトがいなし、空いた腹を横に薙ぐ。

そこにミコトの剣が光り、《リーバー》で顔面を貫く。

続けざまにボスの土手っ腹に蹴りを入れ、1度後退する。

 連携という点なら、オレとミコトに並ぶ者はいまい。掛け声がなくとも、最短で入れ替えが可能な程に、オレたちはお互いに息が揃っている。

また、オレたちは互いに利き手が逆だ。両方向から迫る攻撃は防げまい。

 

 体勢を立て直したらしい他のパーティも、戦線に戻ってきた。

そのうちの1人の巨漢、エギルさんが駆け寄ってきた。

 

「俺たちが時間を稼ぐ!そのうちにお前らは回復しろ!」

「っああ!ありがとう!」

「礼には及ばんさ!」

 

 エギルさん達のパーティがボスを引き付けてくれている内に、ポーションを飲んで息を整える。

 

「ナギ、ミコト、アスナ。最後の攻撃、一緒に頼めるか?」

「分かった」

「「もちろん!」」

 

 まず、ミコトとアスナがダッシュで距離を詰めた。

 

「せやぁぁ!」

「はあぁぁぁ!」

 

 アスナの突きとミコトの斬撃により怯んだボスが、右肩からソードスキルを放つ。

受けようとしたミコトが上に構えるが、ボスはフェイントをかけて下側からの切り上げとなる。

《幻月》……同モーションからの上下どちらかの攻撃の完全2択を迫られるカタナソードスキル。

 

「ミコトっ!」

 

 アスナが叫ぶが、この超近距離では避けられない。

オレも少し距離があり、割り込むことができない。

どうする……と思った矢先、

 

「ふっ!」

 

 刃が当たる直前、ミコトは跳び跳ねて前宙し、体を上下反転させる。

そして空中で逆さまになった時、丁度頭スレスレにあった刀身に手を添わせ、一気に押し上げてボスの頭上に飛んだ。

 ……何を言ってるか分からねーと思うが、オレも何をしてるのかよく分からなかった。

 

 そのアクロバティックな動きで完全に優位を取ったミコトは、上段から渾身の一撃を見舞う。

 

「やあぁぁぁ!」

 

 それにより、ボスのHPが残り僅かまでになった。

その隙を逃さず、オレとキリトは攻撃に出る。

 

「おぉぉぉ!」

「はぁっ!」

 

 連撃により上空に浮いたコボルトロードに、最後の剣戟を炸裂させる。

 

「「はあああああぁぁぁぁ!!!」」

 

 キリトの片手剣二連撃技《バーチカル・アーク》と、オレの曲刀単発技《デヴォート》が、コボルトロードにX字を刻み、その命を確実に散らせた。

 

 HPがなくなったコボルトロードは、最期に咆哮をあげ、ガラス片となって砕け散った。

 

 かくして、SAOの第1層は攻略されたのであった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ボスが倒されて暫し、緊張が途切れず沈黙が流れたが、リザルトが目の前に表示されると、皆は一様に理解した。

 

 勝ったのだと。

 

 周りが歓声をあげる中、後ろからミコトの弾んだ声が聞こえてきた。

 

「やったねナギ!お疲れ様!」

「ああ、ミコトもおつかれ。……それはともかくな」

 

 拳をぶつけた後、そのままミコトの手を引っ張り体を寄せる。

 

「な〜んで最後あんな危ないことした?1個タイミングミスってたら首飛んでたかもしれないんだぞ?練習の時は無茶するなって何度も言ったよな?」

「あ、アレはそうしてないと死んでたかもだし……実際上手くいったんだし、結果オーライじゃん?」

「……ま、今日は許してやるか。よく頑張ったな、ミコト」

「えへへ〜」

 

 だらしなく笑うミコトの頭を撫でたあと、キリトとアスナの方に向かった。そこにはエギルさんもいた。

 

「おつかれ、アスナ。エギルさんも」

「ええ、お疲れ様」

「おお、あんたのカタナ捌きも見事だったぜ。Congratulation、この勝利はアンタらのものだ」

 

 労いの言葉をかけて暮れたエギルさんに軽く会釈して、疲れた様子のキリトに話しかけた。

 

「キリトもおつかれさん」

「ああ、ありがとうな、協力してくれて」

「何言ってんだ、パーティだろ?力を合わせんのは当然だよ」

「……それもそうだな」

 

 手を差し伸べてキリトを起き上がらせて、ハイタッチをする。

隣を見るとミコトがアスナとキスするんじゃないかってくらい顔を近づけて、目をキラキラさせていた。アスナが女の子なのは分かってたけど、まさかあんな美少女だとはオレも思わなかった。

 

「ナギの方にはボーナスはいったか?」

「ん?えーとどれどれ……あるな。《ヒエンノコロモ》ってのが。もしかしてDLA(ダブルラストアタック)だったのか?」

「みたいだな。俺のところにもあった。《コート・オブ・ミッドナイト》って装備が……」

 

 

「なんでや!!」

 

 

 キリトの言葉に被って、キバオウが声を発した。

次いで、責めるようにこう言った。

 

「なんで……なんでディアベルはんを見殺しにしたんや……」

「見殺しって……」

「そうやろが!自分らはボスが使う攻撃、知っとったやないか!それを会議ん時に伝えてれば、ディアベルはんが死ぬこともなかったやんや!」

 

 目尻に涙を浮かべながら、オレとキリトを睨むキバオウ。

周囲のプレイヤーも、疑いの視線を向ける。

 

「そうだよ、こいつらきっと、元βテスターだ!だから攻略本にも載ってない情報を知ってたんだ!それで美味しいとこだけ、掠め取るつもりだったんだ!」

「ちょっと!そんな言い方……!」

 

 キバオウの横にいたプレイヤーの言いがかりに、ミコトが反論しようとするが、それは途中で遮られた。

 

「───アッハハハハハハハ!」

 

 心底愉快そうに、小馬鹿にしたような、()()()()()()笑い声を、キリトはあげた。

 

「……元βテスター?俺をあんな素人連中と一緒にしないでくれないか?」

「……キリト?」

 

 困惑した様子のオレをキリトは一瞥し、誰にも聞こえないような音量で囁いた。

 

(……ゴメン)

 

 そう言うとキリトは視線を外し、再びキバオウ達に向き直った。

 

「SAOのβテストに当選した殆どは、レベリングの方法も知らない初心者ばかりだったよ。アンタらの方がまだマシに見えるくらいにな」

「な、なんやと!?」

「俺はそいつらが低層で遊んでる中で、誰にも到達できてない層まで行った。ボスのカタナスキルを知ってたのは、それを使うモンスターと散々戦ってきたからだ。……他にも色々知ってるぜ?そんな攻略本なんか、目じゃないくらいにな」

 

 ……このアホが。

今コイツが言ったこと。そのほぼ全てがオレも知るところのものだった。終盤一緒に行動してたんだから当然だ。

だからコイツは、オレや他の元βテスターへ向くはずのヘイトを、全て一身に受けようとしているのだ。

自分が悪の元βテスターとなる事で。

 

「そんなん……そんなんβテスターどころやない。ほぼほぼチートやないか!」

「そうだそうだ!チーターだ、チーター!」

「βのチーター……ビーターだ!」

 

 口々に撒き散らされる非難の声を前に、キリトは口元を歪めた。

 

「ビーター、か……いいなそれ。そうだ、俺はビーターだ。これからは元テスター如きと同じにしないでくれ」

 

 キリトはメニューをタップし、ストレージアイテムを具現化させる。

襟から裾まで真っ黒なコート《コート・オブ・ミッドナイト》を装備し、キリトは不敵に笑って2層へと続く階段へ歩いていった。

 

「……ナギ、何も言わなくて良かったの?」

 

 不安そうに聞いてくるミコトに、オレはキリトの方を見ながら答える。

 

「……この場でオレもビーターを名乗れば、アイツの覚悟が無駄になる」

「でも……!」

「分かってる、だから……!」

 

 そう言ってオレはダッシュでキリトまで走り、1層と2層の間にある階段まで追いついた。

今なら、誰にも何も見られないし聞かれないだろう。

キリトはこちらを見ようともしないで、俯きがちに聞いた。

 

「……なんだ、まだ何か文句があるのか?」

「ああ、世紀の大馬鹿者に特大の文句がな」

 

 オレはキリトの側まで行き、その顔面を思いっきり殴った。

 

「ぶっ!?」

「ほい、これで黙ってあんな事したのは許してやる」

「な、何だよ……アレは俺が勝手にやった事だろ……お前には関係ない!」

「……やっぱ前言撤回、もう一言言わせろ」

 

 今度はコートの胸ぐらを掴みあげ、声を張って怒鳴った。

 

「何が!お前には関係ないだ!何がゴメンだ!1人で勝手に背負って、勝手に申し訳なくなってんじゃねえ!」

「なっ……」

「オレさっき言ったよな!?パーティは力を合わせて当然だって!何より……()()だろ!なら頼れ!お前が背負ったもんの、半分くらいは持ってやるんだから!」

「………」

 

 驚いた顔を浮かべるキリトを見て、その手をコートから離した。

何も言ってこないので、1度ため息をついた。

 

「ハァ……まぁもうなっちまったもんは仕方ねえし、お前のした事を無駄にしたくねえから、何も言わねえけど」

「……ごめん、ナギ」

「謝んじゃねえアホ。反省してんなら、今度はもっと頼れ。オレじゃなくとも、ミコトもアスナも、きっと協力してくれるぞ?」

「もっちろん!」

「……いたのか、お前ら……」

「貴方が怒鳴り始めたあたりからね」

「全部じゃん」

 

 下の階段に、ミコト達がいつの間にかいた。

 

「まさか、キリトがこんなに馬鹿だとは思わなかったよ」

「そうね、仲間に頼るなんて、誰にでもできることよ?」

「キリトもアスナには言われたくないと思うぞ?」

「なっ!?き、昨日までのは、お腹空いてたから、本意じゃないのよ!」

「アレ腹ぺこで不機嫌だっただけなの!?」

「悪い!?」

 

 オレが茶化した事で一気に漫才の空気になり、キリトが思わず吹き出した。

それを見て、思わずオレたちも笑った。

キリトは落ち着くと、先程とは変わって迷い無い目でこちらを向いた。

 

「ありがとう、皆。次からはちゃんと頼るよ、パーティメンバーにも、友達にも」

「当たり前だ、それじゃあ2層のアクティベートは任せたぞ?」

「ああ、任せろ」

「あ、キリト。エギルさんから伝言ね。『また機会があれば一緒に攻略しよう』だってさ」

「! 分かった。宜しく言っておいてくれ。あと、謝罪も」

「それは自分で行きなさいよ」

 

 アスナの言葉にキリトは苦笑する。

そうして、オレたちはここで分かれ、パーティも一時解散となった。




~アスナの素顔〜

ミコ「……ふむ」
アス「な、何?前話に引き続き。何か付いてる?」
ミコ「……美少女過ぎない?」
アス「へっ!?」
ミコ「ナギ的に判定は?」
ナギ「紛うことなき美少女だろ。キリトは?」
キリ「お、俺?い、いやー、整ってる、とは思うぞ?」
ミコ「駄目だねーキリト。その褒め方20点。もっと気持ち込めないと。ほら、目元とかすっごいクリクリしてるよ?」
アス「も、もう!私じゃなくても、ミコトだって可愛いじゃない!」
ナギ「それはそう。全対比から耳の形に至るまで、全てが可愛いのがミコトだ。他にも座ってる時とか……」
キリアス「「バカップル……」」
ミコ「わたしはもう少し自重するよ?」
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