ソードアート・オンライン ~双角の鬼人~   作:句読仮名丸

6 / 23
オリジナル設定が多数登場します。
ご留意ください


第5話 試し斬り御免

 第1層の攻略が終わり、しばらく経った。

あの後、またキバオウ達と一悶着あったり。キリトとフレンド登録し忘れていたのを思い出して、せっかく良い感じに別れたのにまた会いに行ったり。

アスナにオレとミコトの関係を教えて、面白いくらい驚いたりと、色々あった。

 

 第1層攻略後は、それなりに順調に攻略は進んだ。

キリトやアスナとは、たまに狩りやクエストにいったり、ボス戦ではまた即席でパーティを組んだりした。

 

 その際、何人かのプレイヤーがキリトに突っかかったのに反発したせいで、ビーターのお仲間だとか何だの言われたが、さして気にしていない。

どうせミコトとのコンビだし、キリトに向くヘイトが少しでも減るなら、汚名でも被ってやろう。キリトは申し訳なさそうにしていたけど。

 

 そして、デスゲーム開始から3ヶ月が経った。

 2023年 2月中旬

 アインクラッド第10層 主街区 ジャホウ村

基本的に西洋風な設定のSAOには珍しく、建物や街道が日本建築的な階層である。

瓦屋根の木造家屋や石畳など、初めて見た時は懐かしさを感じたものだ。

 

 そんな街中の内、鍛冶屋が立ち並ぶ通りにて……

 

「……んふふふふふふ」

 

 オレ──ナギは、満面の笑みを浮かべて歩いていた。

その姿にドン引きするミコトにも気付かないで、何をそんなに夢中になっているのかと言うと。

 

 その理由は、その手に持たれた、1本の剣。

腕程の長さに、軽く反りが入った細身の刀身。

片刃の部分は薄く波線が走っている。

柄には赤い細布が巻かれており、銀色に反射する刃とのコントラストが美しい。

 

 ───そう、紛うことなき『刀』である。

 

 SAOが始まって以降、カタナスキルを目的にオレたちは、曲刀を延々と使っていた。

それはもうすっごく。他のスキルの取得も最低限にして、曲刀スキルを強化しまくった。

その努力がようやっと実を結び、直近の9層のボス戦後、遂にオレとミコトに、カタナスキルが解放されたのだ。

それだけでも狂喜乱舞した上に、10層に行ってみればこの和風な景観である。

 期待するだろう、してしまうだろう。

 

 そしてその後日、つまり今日、オレたちは刀を手に入れたのだ。

 

「はあ……やっぱ良いなあ、刀」

「ナギ、そろそろこっちに戻ってきて。視線が痛いから」

「とは言ってもなあ。この感動を抑える事なんてできようか……いやできまい」

「反語やめい」

 

 ジト目を向けてくるミコトの腰にも、刀が提げられている。

柄巻の色は紺色で、オレと色違いだ。

オレは、第1層のLA(ラストアタックボーナス)で手に入れた《ヒエンノコロモ》という、柄巻と同じ臙脂(えんじ)色の羽織を着ており、ミコトもそれと同系統の《ハナダノコロモ》──第3層でアスナとキメたLAボーナス──を着ている。

 その出で立ちは、正に江戸時代の侍のようである。

 

「いやぁ、ここまで本当に長かった。βテストの時とタイミングが違ったから、条件が変わってるんじゃないかって最近冷や冷やしてたわ」

「だねー。にしてもエラく高性能だったよね、この刀。しかも店主さんが勝手に譲ってくれたやつだし」

「何かしらのイベントだったんだろうな。初めてあの店に訪れた、カタナスキルを持っているプレイヤーに発生するとかの」

「それじゃあラッキーだったね」

 

 あれは驚いた。一先ず1番大きな店で探そうと言って扉を開けたら、急に店主が呼び止めてこの刀を渡してきたんだから。

見てみると性能は店に置いているもののどれよりも高く、あと20層くらいは使い続けられそうなくらいだ。

一応、後でこの情報を公開しておこうか。 

 ちなみに、オレの刀の銘が《小烏丸(コガラスマル)》で、ミコトの刀が《鵜丸(ウマル)》である。どちらも鳥の名前が付いている。

やっと刀を鞘に納めると、ミコトが聞いてきた。

 

「明日だっけ?ボス戦」

「ああ、そのためにも、今から迷宮潜って肩慣らしすんぞ!」

「ラジャー!」

 

 そう言って、オレたちは迷宮区へと走る。

さあ、モンスター共。手に入れたこの刀の錆にしてくれよう。 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「それで、刀の使い心地はどうだったんだ?」

 

 後日、10層のボス戦に参加したオレたちは、迷宮区を歩いていた。

その道中、キリトからこう問われた。

 

「ああ、とんでもなかったぞ。このボス戦じゃ無双できそうなくらいにな」

「その様子だと、期待して良さそうだな」

「でも、スキルレベルはいいの?手に入れたばかりなんでしょ」

「そこは問題ないよアスナ、曲刀からの引継ぎだから」

 

 そう答えるミコトだが、尚もアスナは不安そうにしている。

 

「その使い慣れてる曲刀から、いきなり刀にしたら動きに支障が出るんじゃない?」

「それこそ問題ない。オレは曲刀からして刀を意識して使ってたし、ミコトはミコトだからな」

「ああ、なら大丈夫そうね」

「待ってアスナ、何でその説明で納得してるの?明らかにおかしくなかった?ねえ」

「「「だってミコトだし」」」

「不本意!」

 

 変態アクロバティックを1層以降も連発している奴が叫ぶが無視無視。集中しゅーちゅー。

今回のボス戦メンバーは割と少なめ。1層の3分の2程度だ。取り巻きが居ないって情報だし、油断しなければ勝てるだろう。普段邪魔してくるキバオウらも居ないし、存分に腕を振るわせてもらう。

 

 そうこうしている内に、ボス部屋前までたどり着いた。

いつもの扉は金属製っぽい重々しい物なのだが、今回は襖だった。ここまで和の雰囲気出してくるか。

 

「よし、やるぞ」

「うん、目にもの見せてやろ」

 

 いつもの拳を突き合わせるルーティンをし、襖を勢いよく開ける。

しばらく部屋は暗かったが、全員が入ったところで襖がピシャリと閉められ、フロアの両脇に並べられた灯篭に火が灯されていく。

そして、姿が見えた。

 

『……グルルルルル……』

 

 赤黒い鎧。伊達政宗よろしく三日月を鋭くしたような兜。右手には太刀が、左手には何やら白い蛇が巻かれている。

双眸を爛々と紅く輝かせながら、第10層ボス《カガチ・ザ・サムライロード》は低く唸った。

 

「全員散開!刀は正面から受けないで!」

 

 アスナの号令により、ボス含め全員が動いた。

オレとミコトは前に出て、ボスへと攻撃を仕掛ける。

最初に振斬撃を、受けることなく横にズラす。そこで少し崩れてくれれば良かったんだが、ボスはお構い無しに2連撃を繰り出した。

 

「うおっ!?」

「あっぶな!?」

 

 すんでのところで斬撃を回避し、1度ボスから距離を取る。

シュルシュルと蛇舌を出しながら息を吐くボス。人間ぽいのは見た目だけらしい。

タンクが引き付けてくれてる間に、作戦を練ろうと思ったのだが

 

「! 全員、柱の影に隠れろ!」

「!?」

 

 ボスの左腕に巻かれていた蛇が解かれ、鞭のように上に放たれた。

白蛇は螺旋を描きながら周囲のタンクを蹴散らし、ボスの腕に戻った。

その様子を見て、ミコトに話しかけた。

 

「……ミコト、いけそうか?」

「刀の方は多分。蛇がちょっとキツイ」

「OK、蛇はオレがどうにかする」

「分かった。アスナ!キリト!2人で1回アイツの刀抑えられる!?」

「「分かった(わ)!」」

「さっすがー!」

 

 4人は一斉に柱から飛び出すと、言った通り、まずキリトとアスナが2人がかりで刀を受け止める。

 

「2人ならいけるみたいだな!」

「ミコト!スイッチ!」

「あいよ!」

 

 2人の後ろから飛んだミコトが、カタナ3連撃ソードスキル《帚木(ははきぎ)》により、ボスを仰け反らせることに成功する。そこにキリトとアスナも追撃を入れ、HPを大きく減らした。

するとボスは、1度左手を溜める動作をした。

 

「蛇来るよ!一旦退避!」

「どうするんだ?タンクまだ回復してないぞ!」

「そこは……何とかするんだよね!?」

「心配すんな!」

 

 ミコトの確認に、ボスの真正面に待機していたオレは大きく頷いた。

3人は柱に隠れ、それ以外の面子もボスの眼中に無し。

ボスのタゲはオレ1人に向いている。

 

(オレの予想通りなら……)

 

 左腕の白蛇が解かれる。そしてその左手は、真っ直ぐオレに向けられた。

そしてそれは、多少うねったり螺旋を描いたりしながらも、ほぼ一直線だ。

 

 読みはオレの当たりだ。標的が1人なら、そこへ最短距離で飛んでくる。さっきよりも動きは単純になる。

左下に構えた小烏丸が、青く輝く。

 

「───はああっ!!」

 

 衝突の瞬間。

白蛇の上下の牙は、オレの剣の間を通り過ぎた。

横薙ぎの一閃、カタナ単発ソードスキル《白波(しらなみ)》。

蛇の体はその速さが仇となり、オレが剣を振り抜く頃には真横に一刀両断されていた。

 

『……ジュラアアァァアア!!?』

 

 ボスが苦悶の咆哮をあげて膝を着いた。

どうやら蛇を破壊すると、スタンするらしい。嬉しい誤算だ。

 

「ナイスナギ!」

「おう、何とかなったろ?」

「「何危ないことしてるんだ(してるの)!?」」

 

 キリトとアスナはオコだった。

ミコトのように素直に賞賛してくれれば良いものを……あの感じだと終わったら説教コースだな。

スタンが終わるまで一通りタコ殴りにし、残りHPバーは1本。

そこでボスは起き上がろうとしたため、全員退った。

すると、ボスが蛇を失った左手を虚空に向けると、そこにもう1本刀が現れた。

 

「二刀流!?ズルいオレもしたい!」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!ボスのソードスキル来るぞ!」

 

 居合の姿勢を取ったボスの刀が青く光り、そこから十字に空を切り裂いた。

すると斬撃は滞留し、こちらに迫ってきた。

大抵は柱に隠れ、ミコトやキリトは跳んで回避した。

その攻撃に対し、オレは声をあげて抗議した。

 

「飛ぶ斬撃とか、どんだけ羨ましいことすれば気が済むんだよ!スキルレベル高い自慢かお前ぇ!?」

「そんだけムカつくなら、あの猛攻止めさせられないか!?」

「今行ったらサイコロステーキになっちゃうよ!」

 

 蛇が破壊された事にご立腹なのか、ボスはやたらめったら斬撃を飛ばしている。もう柱も半分以上切り飛ばされていた。

ボスはやっと攻撃をやめると、オレたちはようやく動き出した。

 

 先程のタイミングで全開したタンクが、刀1本の時よりも数段激しくなった猛攻を耐え凌ぐ。

隙を見て、脇や足にダメージを加える。偶に飛んでくる斬撃も、1本くらいならタンクで防げた。

が、ある程度ダメージを与えると、また暴れ斬撃モードに入った。

もうほとんど残っていない柱に隠れ、様子を見る。

 

「ナギ、LAキメるよ」

「お、ミコトからなんて珍しいな」

「私もナギほどじゃないけど、新武器でテンション上がってるからね」

「ハハッ!んじゃ一気にいくか!」

「うん!」

 

 斬撃の嵐が止む一瞬前、オレとミコトはボスに向かってダッシュした。

ボスはオレたちを捉え、両手の刀をクロスさせて、こちらに突進してくる。

 

 直接攻撃でくるか───そう思い、オレたちは刀を下段に構える。

すると、ボスが間合いの半歩前で刀を振りかぶり、斬撃を飛ばす。

直接攻撃はフェイント。しかも迫る斬撃は避けにくい‪‪✕‬の字。この距離ならば、予測していなければ確実に当たる。

 

「危ない!」

 

 アスナの叫びに、オレは内心ほくそ笑む。

何を心配している。こんなもの───

 

 

「「───読めてんだよっ!!」」

 

 

 予測してるに決まってんだろ!

 

 ボスが刀を振る直前に真横へステップしていたオレたちは、もう一度ジャンプして斬撃の間をくぐり抜ける。

オレとミコトの左右の位置が入れ替わり、2人の刀身が再び蒼い光を纏う。

 

「「ぜやあああ!!」」

 

 二筋の《白波》はボスの鎧を容易に切り裂き、分断されたボスは眩い光と共に消滅した。

 

 リザルト画面が出たのを確認して、ミコトとハイタッチをする。

 

「ちゃんと合わせてくれてありがとな」

「まあね、ナギの考えてることですから」

 

 ムフーとドヤ顔するミコトの頭を撫でていると、後ろに何やら不穏な空気が差した。

 

「ナ〜ギ〜……」

「ミコト〜……」

「すぅ───……お2人とも、いい笑顔ですね」

 

「「……もっと自分を大切にしろ(しなさい)!!!」」

 

 とびきりの雷がフロアに木霊したのは、言うまでもなかった。




今日は後書き小話はお休みです。

 第10層、カタナスキルの出現タイミング、カガチさんの
挙動、オリジナルソードスキル……
一気にオリジナル設定ぶち込みました。楽しんで頂けたら幸いです。

 それと、別に狙ってる訳ではありませんが、感想や評価も頂けたら、私は大変嬉しくなって筆が速くなります。
別に何かを狙ってる訳ではございません。

次回は、キリト曇らせ回のアレです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。