ソードアート・オンライン ~双角の鬼人~   作:句読仮名丸

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どんどん文が長くな〜るよ〜


第7話 聖夜と親友

 

 ……俺が、俺の思い上がりが、君達を殺した。

 

 何てことのない、唯のコル稼ぎだった。

ササマルの案で、ケイタがギルドホームの買取交渉に行っている間に、インテリアの費用を稼ごうと、迷宮区に潜ったのだ。

順調に進んだ。この2ヶ月鍛えた成果を発揮し、20層以降だったのにも関わらず、皆危なげなくコルを集めた。

十分に金も集まり、そろそろ帰ろうかという時だった。

奥の壁際に、大きな宝箱を見つけたのだ。

 

 皆は集まってそれを覗き込み、シーフ職のダッカーは意気揚々とトラップを解除しようとした。

明らかに罠だ。危険過ぎる。

俺はそれを制止したが、大丈夫だと言って聞かなかった。

 

 ダッカーが宝箱の蓋を勢いよく開ける。

その瞬間、耳障りな警報音が鳴り、部屋が赤く染まった。

そこはモンスターが大量にポップする部屋であり、更に悪いことに、転移結晶無効化エリアだった。

部屋の左右の隠し扉から、ゴーレムのようなモンスターが無数に飛び込んでくる。

 

 最初に死んだのはダッカー。それに続きテツオ、ササマルと、モンスターの前に消滅する。

俺は死に物狂いでモンスターを斬ってまわる。

いかんせん、数が多すぎた。そのせいで、あっという間にモンスターに囲まれたサチに気付くのが遅れた。

 

 気付いた時には、もう遅かった。

 

「キリトっ!」

「サチっ!」

 

 必死に手を伸ばしたサチの背後に、鉤爪を振り上げたモンスターがいた。

 

───やめろ、やめてくれ。

 

 そう心の中で叫ぶが、何もかも、無意味だった。

モンスターの凶爪は無慈悲にサチの背中を抉り、そのHPを散らせた。

 

 消滅の瞬間、サチは悲しそうにこちらへ振り向き、その唇が小さく動いた。

その内容を俺は知ることなく、サチの体は青いガラス片となって消滅した。

 

 その後のことは、よく覚えていない。

いつの間にか、11層でケイタの元へ歩いていた。

ケイタに会い、全てを伝えた。

 

「───ビーターのお前が、僕たちに関わる資格なんて無かったんだ!」

 

 その言葉に、俺は何も言えなかった。只々、俯くことしか出来なかった。

ケイタは外周の柵に足を乗せ、そのまま自殺した。

それを、俺は止められなかった。止める事など、出来なかった。

 

「ケイタっ!」

 

 そこに、ナギが来た。

きっとギルドホーム購入の祝いに来てくれていたのだろう。

ナギはケイタが消えた先を、少し見つめていたが、暫くして俺に顔を向けた。

 

「何が……あった……?」

 

 答えられなかった。

何よりも……ナギの、あいつの顔を、見れなかった。

怖かったんだ。ナギに、責められるのが。

 

 俺は月夜の黒猫団の雰囲気に憧れていた。友達のような、和気藹々とした雰囲気が好きだった。

だから、自分のレベルを隠した。少しでも皆と近くにいれるよう、ビーターだとバレないように。

俺が、自分のレベルを正直に明かしていれば、ダッカーやテツオは宝箱を開けずに済んだかもしれないのに。

みんなも……サチも死なずに済んだかもしれないのに。

 

 そうだ、俺の我儘が、思い上がりが、彼等を殺した。

 

 それをナギが知れば、きっと責めるだろう。

責めない訳がない。助けられた命だったんだ。俺の一存で彼等を死に追いやった。

結局俺は、何も言えないまま、逃げるようにその場を去った。自分の弱さが、つくづく嫌になった。

 

 それから半年、やり場のない怒りをぶつける様に、モンスターを倒し続けた。

その間、ナギにもミコトにも、会わないようにした。あわせる顔がなかった。

 

 そして、現在クリスマスイブ。

期間限定イベントクエストとして、圏外の森にモンスターが出現するという情報を得た。

名を《背教者ニコラス》。

噂によると、このモンスターはプレイヤーの蘇生アイテムをドロップするという。

 

 この世界で、1度死んだプレイヤーの復活は有り得ない。

そう思っても、縋らずにはいれなかった。

ソロで挑めば、恐らく俺は死ぬだろう。

……それでもいい。

 

 ニコラスを倒せば、サチの命は戻り、最期の言葉を聞けるかもしれない。

どう罵られようと、俺はそれを受け入れなくてはならないんだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 2023年 12月24日

主街区の中心の広場には、巨大なクリスマスツリーが設置されている。クリスマス限定の特別仕様だそうだ。去年はこんなもの無かったのに。

 

 その広場のベンチに、オレとミコトは座っていた。

 

「……なんか、クリスマスデートだっていうのに、盛り上がらないね」

「……ごめん」

「ナギが謝ることじゃないよ。わたしもそんな盛り上がる気にならないし、お相子だよ」

 

 そう言うミコトに、オレは申し訳なくなる。

結局、あれ以来キリトとは一度も会っていない。

フレンドリストからも名前が消えており、位置を追うことも出来なかった。

 半年もの間、ミコトにはかなり迷惑をかけたというのに、クリスマスまでこの体たらくでは彼氏失格も免れないかもしれない。

ため息をつこうとしたオレの背後に、1人の小柄な人影がベンチの背もたれに腰掛けた。

 

「よう、お2人サン。クリスマスデートカ?お熱いことだネェ」

「……何だアルゴか」

「あ、久しぶり!アルゴ」

「おう久しぶり、ミーちゃん。何だとはヒドイ言い様だナ、ナー坊。彼女との時間を邪魔されてご立腹カ?」

「うっせ。んで何の用だよ」

 

 特徴的な声で喋る女の名前はアルゴ。

《鼠》のアルゴと呼ばれており、前線にいる者ならば必ず一度は世話になる凄腕情報屋だ。

1層で配布されたガイドブックを作ったのも彼女だ。

オレの問いに、アルゴは口を開いた。

 

「コレは、情報屋としてじゃなくて友人としてなんだガナ……今日の深夜、圏外のあるもみの木の下に、《背教者ニコラス》ってイベントボスが出現するンダ」

「何で友人としてそんな情報渡すんだよ」

「まあ話は最後まで聞けヨ。……このボス、プレイヤーの蘇生アイテムをドロップするって噂なんだヨ」

「っ!?」

 

 その言葉に思わず耳を疑う。

プレイヤーの蘇生なんて、可能なのか?この世界で。

というか、そのアイテムは……。

 

「おかげで、どこの有力ギルドも血眼になって探してル。……んで本題だガ、そのボスに1人で行く気になってる、特大の大馬鹿な友達がいてナ」

「それって……」

 

 ミコトが言うよりも早く、オレはアルゴに詰め寄った。

 

「そのボスっ、どこで出るんだ!?」

「35層、迷いの森ダ」

「ミコト」

「わたしも行く。一言言ってやりたいしね」

「頼んだゾ。キー坊の奴、死にそうな顔してたからナ」

「ああ、一発ぶん殴ってやるよ。行くぞ!」

「うん!」

 

 オレたちは、急いで35層へと駆け出した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 俺は、吹雪く森の中を走っていた。

森の中で一際目立つ木に向かって、一直線に走っていく。

そこで、何者かが転移する気配がしたので、一度立ち止まった。

 

「……よお」

「……つけてたのか、クライン」

 

 それは鎧のを着た、野武士面の男。俺が1層で見捨てたクラインだった。

それに加え、彼が率いるギルド《風林火山》のメンバーもいる。

 

「まあな。蘇生アイテム狙いだろ?」

「……ああ」

「ガセネタかもしれねえんだぞ?そんなのに命かけてんじゃねえよ」

「……」

「俺たちと組め!ソロで挑むとか無茶な事を……」

「黙れよ」

 

 俺の言葉に、一瞬クラインがたじろいだ。

 

「アイテムはドロップさせた奴のもんで恨みっこなし!それでいいだろ!?」

「ダメなんだよ、それじゃ……意味無いんだよ」

 

 そう、駄目なんだよ。

コレは、俺の責任、俺の贖罪だ。

誰にも……友達(ナギ)にさえも、邪魔される訳にはいかないんだよ。

 

 俺が背中の剣に手をかけたその時、クライン達の背後で転移の光が上った。

現れたのは、同じタイプの鎧を着た集団だった。

 

「なっ!?聖竜連合!?」

「お前もつけられてたな。クライン」

 

 ギルド《聖竜連合》。今やSAO最大のギルドだ。

攻略組だが、レアアイテムの強奪や効率の良い狩場の独占など、あまり良い噂は聞かない。

蘇生アイテムを欲しがるのも、無理はない話だ。

 

「……ええい!クソッタレが!行け、キリト!こいつらは俺らで食い止める!」

「クライン……?」

「行くんだ!誰もお前の邪魔なんかさせねえよ!」

 

 その言葉に、俺は少し戸惑ったが、少しの逡巡の末走り出した。

そして、目的のもみの木までたどり着いた。

ここにボスが出現するのは、日付を回った直後。

まさに今だ。

 

 クリスマスになると同時に、エリア全域に鐘の音が響き渡る。

そして、木を中心にシャンシャンと鈴の音も鳴った。

それを聞いていると、ふと、空に二条の白い筋が走った。

その線が通った空から、巨体が振ってくる。

 

 巨体は俺の目の前に着地し、雪を巻き上げた。

白いモヤが晴れるとそこには、5m程の巨人が立っていた。

 

『ギギッ、ギギギガガガガ……』

 

 赤と白の上着。頭には同色の三角帽子。顔には灰色の髭。

異様に長い腕には、右に片手斧、左には大きな頭陀袋をぶら下げている。

頭上には、《Nicholas the renegade》という文字。

それを見て、俺は呟いた。

 

「……うるせえよ」

 

 ニコラスが右手の斧を振り上げると同時、俺は斬りかかった。

 

「……うああああ──────!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ⋯⋯どれくらい経っただろうか。

俺は、雪の上に臥していた。

……そうか、負けたのか。

ゆっくり顔を動かすと、先程俺の剣で木に叩きつけられたボスが起き上がっていた。

HPバーは、残り1本。

 

 ボスは、残りHPが半分になった時、攻撃パターンを変えた。左手の袋からアイテムを取り出し、ランダムな効果をこちらに付与してきた。

それが今回、運悪く麻痺だった。

 

 ボスがこちらに、笑みを浮かべならがら歩いてくる。

……死ぬんだな、俺は。

当然の報いだろう。我儘でギルドの皆を殺し、それに自分勝手に贖罪だとか言って無謀なことをした。

当然だ。何もかも。起きるべき事が起こっただけだ。

 

 ニコラスが斧を振りかぶり、俺を完全に殺そうとする。

それに俺は目を瞑り、受け入れようとした。

これが……俺への罰なんだな。

 

 

「───ふざけんじゃ、ねえっ!!」

 

 

 その言葉に、俺は閉じていた両目を見開いた。

そこに立っていたのは、臙脂色の羽織を来て、少し灰色が混じったような黒髪をした……俺が、ずっと目を逸らしてしてやつだった。

 

「ヒール!」

 

ニコラスの一撃を弾き飛ばすと、俺に消痺結晶を使い麻痺を治した。

俺はゆっくりと起き上がり、目の前に立つそいつを……ナギを見た。

 

「……何で、来たんだ……」

「あ?んなもん、クソバカぼっち溜め込み野郎をぶん殴るために決まってんだろ。あ、ミコトと髭武士たちはまだあっちで聖竜連合の足止めだぞ」

「そうじゃない!コレは俺の責任なんだ!俺が1人でやらないといけないことなんだよ!」

「……責任だとか1人でだとか……どこまで自分を追い込めば気が済むんだお前は!!」

「お前に……お前に何が分かるんだよ!!」

 

 思わず苛立ちを込めてそう怒鳴った。

するとナギはそれを上回る剣幕で怒鳴り返した。

 

「分かんねえよ何にも!!お前が何もかも言ってくれねえから、オレは何にもできないんだよ!!」

「お前に言う必要なんか……!」

「ああっ!!?」

 

『ギギ……ガガアアァァ───!!!』

 

 

「「うるせえっっ!!!」」

 

 

 いつの間にか迫っていたニコラスの攻撃を、俺たちは揃って弾き返した。

 

「ちいっ!説教は後だ!とっととこのサンタぶっ倒すぞ!」

「やめろ!お前の協力は……」

「蘇らせるんだろ!?四の五の言ってる場合か!」

 

 ナギは、誰を、とは言わなかった。

分かっているんだ。俺の考えてる事など。

俺は腹を決め、ナギに情報を話した。

 

「……基本は斧。たまに袋からアイテムを取り出してデバフを与える」

「効果は?」

「今の所、攻撃力ダウン、鈍足、麻痺の3つ」

「じゃあ極力喰らわない方がいいか──って、アレか?」

「ああ、来るぞ……って、ええ!?」

 

 袋に手を入れたボスを見て、俺が注意を促すと同時に、ナギはニコラスの左手目掛けて突っ込んだ。

 

「シィッ!」

 

そしてナギはボスの左手を切り裂き、その手を袋から手放させた。

 

「これでデバフはねえな。よしいくぞ!」

「あ、ああ!」

 

 特殊攻撃が袋以外にないこのボスは、アインクラッドのフロアボスよりも幾分か易しい。せいぜい20階層後半程度。

1人でも倒すことはできる。しかし、それが2人であったならば……その速さは、比べるべくもないだろう。

 

「「はああああああ!!!」」

 

 オレとナギの攻撃が決まり、あっという間にニコラスは倒れた。

肩で息をしながら、俺はリザルト画面を確認した。

蘇生アイテムは……どうやら、ナギの方にドロップしたらしい。

俺はナギの方を見やると、その効果を確認しているようだった。

 

「……?」

 

 すると、急にナギは目を見開き、次いで怒りに震えるように歯を食いしばった。

 

「……クソッ!!」

 

 そう呪詛を吐いて、地面の雪を殴ったナギは、俺に蘇生アイテムであろう丸い結晶を投げ渡した。

俺は恐る恐るその効果を確認した。

その効果は……

 

「……死亡後10秒以内、だと……ふざけてんのか!!」

 

 ……ナギの言葉通りだ。

この蘇生アイテムは、対象プレイヤーのHP全損後、10秒以内ではないと使えない。

……そうだよな、そんな美味い話、ある筈がないよな……

 

 半ば自嘲気味に笑う。

俺は、何やってるんだ。

……もうい

 

「───キリト!」

 

 全て、諦めようとした、諦めたかった俺の胸ぐらを、ナギは掴んだ。

それに顔を下に向けたまま、俺はナギを突き放そうとする。

 

「……ナギ、もういいんだよ。俺は……」

「いい訳があるかよ!何も良くねえだろうがよ!また勝手に決めたのか?また1人で全部背負い込む気か!?」

「お節介なんだよ!俺がお前に何か言う必要なんてあるのか!?」

「ある!」

「なんで……!」

「1層で言ったろ!()()なら頼れって、お前の背負ってるもん半分くらいは持ってやるって、言ったじゃねえか!!」

「……!!」

 

 その言葉に、俺はハッとしてナギから手を離した。

 

 ……そうだ。あの時も、ナギは俺を殴って怒鳴った。

あの時も、独りになろうとした俺を引き止めてくれた。

俯いていた顔をゆっくりと上げてみる。

 

 その顔は、見慣れた顔だった。

俺と同じように、線の細い女の子みたいな顔。

それが今、どこか泣きそうで、不安そうで、けれども俺から目を離さずに、こちらを見ていた。

 

「……ようやく、目を見せてくれたな」

 

 ……そうか、あの時も、ナギはこの目で俺を見てくれていたんだ。

嬉しそうに目を細めたナギは、そっと俺から手を離した。

 

 すると、目の前に文字が浮かび上がり、ピコンピコンと通知してきた。

その文字は《Gift Box 》《from Sachi》

 

「サチ……?」

「タイマー式の録音結晶?なんで今……」

 

 俺はそれを呼び出し、起動させた。

正八面体の結晶が淡く光り、そこからサチの声が聞こえてきた。

 

『メリークリスマス、キリト。これを聞いている時、私は多分死んでいると思います』

 

 そこから聞こえたサチのメッセージを俺は黙って聞いた。

 

『私ね、本当ははじまりの街から出たくなかった。でも、そんな気持ちで戦ってても、きっといつか死んじゃうよね。それは私の問題。他の誰のせいでもない。

キリトは、あの夜からずっと私に、毎晩絶対死なないって言ってくれたよね。だからもし私が死んだら、キリトはきっとすごく自分を責めると思う。だから、これを録音することにしました。

 

それと……わざとじゃないんだけど、私、君の本当の実力、知ってたんだ。キリトが本当のレベルを隠して、私達と一緒に戦ってくれる理由は、考えたけど結局分からなかった。でもね、キリトがすっごく強いって分かって、嬉しかった。すごく安心ししたの。

 

だから……もし私が死んでも、キリトは頑張って生きて。生きてこの世界を最後まで生き抜いて。生き抜いて、この世界が生まれた意味を、私みたいな弱虫がここに来ちゃった意味を……そして、君と私が出会った意味を、見つけてください。それが私の願いです。

 

大丈夫。キリトならできるよ。強いし、ナギさんやミコトさんもいる。君、結構自分のこと隠しそうなタイプだから、ちゃんと彼等を頼ってね?いつかまた君が潰れちゃいそうになった時、君が頼れる人を……もしくは、君が心の底から守りたいって思える人を、どうか見つけてください。

 

……時間余っちゃったね。それじゃあ、折角クリスマスだし、歌を歌おうと思います』

 

 そう言ってサチは、『赤鼻のトナカイ』を歌った。

それを聴きながら、俺は自分の頬に熱い物が流れていることに気が付いた。

そして、歌が終わった。

 

『じゃあね、キリト。君と会えて、一緒にいられて、ホントに良かった。

───ありがとう、さようなら』

 

 その言葉を最後に、結晶は役目を終え、光を失った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 静かに涙を流すキリトを、オレは静かに見つめていた。

正直、この音声をオレが聞いても良いものかとも思ったが、この場を離れる気にはならなかった。

 

 キリトは、ずっと自分を責めていた。

今分かったことだが、こいつは自分のレベルを隠してたらしい。そのせいで黒猫団が死んだと、悔いていたんだろう。

キリトは優しい。優し過ぎる程に。だからこそ、他人を守れなかった自分を許せなかった。

 

 けど……

 

「……ナギ」

「……なんだよ」

 

 袖で目を拭き、キリトがこちらを向いた。

 

「───()()()()()

 

 1層の時は、第一声は「ごめん」だった。

今度は、間違えていない。

キリトの目には、もう一点の曇りもなかった。

 

「……おう。おかえり、()()

 

 口角が上がるのを感じながら、オレは頷いた。

これからも、親友として。

仕方ないから、こいつの荷物、半分くらいは持ってやろうかな。

 

 オレたちは並んで、この世界を歩き出した。

 

 

「……にしても、親友か」

「い、嫌かよ?」

「何でそこで不安がるんだよ。もっと堂々としてろ、親友なんだろ?」

「初めて親友とか小っ恥ずかしいこと言ったから慣れねえんだよ!あとお前はもっと嬉しがれ!俺の親友第1号だぞ!名誉あることだぞ!」

「ああ、嬉しいよ」

「……素直に言われると反応に困るんですが……」

「赤くなるなよ、気持ち悪いぞ?」

「よーし、そういや一発殴ってなかったな。この半年分の言いたい事があんだけで済ませられると思ってんのか?剣抜けやキリト!半年分の鬱憤、ここで晴らしてやるわ!」

「望む所だな。レベル置いてかれても知らねーぞ、だったか?今はどっちがだろうな?」

「ムッコロス!!」

 

 その後、遅れてやって来たミコトと顎髭武士(クラインて言うらしい)に、2人してこっぴどく怒られた。




~キリト回復後、クラインと~

クラ「いや〜、にしてもキリトが元気になってホント良かったぜ!ありがとなナギ!」
ナギ「おう、当然のことをしたまでだ。ところでクライン、お前も刀使ってんだな。相当大変だったろ?」
クラ「まあな。やはり日本男児たるもの、剣がある世界で刀は外せねえよなぁ」
ナギ「分かる、分かるぞ。フォルムも型も、どの剣よりも美しいからな、刀は」
クラ「おお!話が分かるじゃねえか!……ところでよ、ナギ。お前ミコトさんとはどういう……」
ナギ「彼女だけど?」
クラ「はあっ!?おめえ俺を裏切ったな!?同志だと思ったのに!」
ナギ「ああっ!?お前こそミコトに色目使ったんかゴラァっ!」


ミコ「……すごい、一瞬にして修羅場になった」
キリ「何やってるんだあいつらは……」
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