あと初のオリ主がいない回。皆を活躍させたいけど、配分がムズい……
初の感想貰いました!ありがとうございます!
《Mikoto side》
この世界で2回目の年越しも終え、現在2月23日。
わたしはある用事があって、35層の《迷いの森》の中を歩いていた。
「ふーん、ここでナギと仲直りしたんだねー」
「ああ、あの時は本当に色々と助かったよ」
「うちの旦那に感謝しなね?」
「はいはい」
隣を歩いているのは、いつもの顔ではなく、キリトの顔だった。
まあ、もはやこの顔も見慣れたんだけどね。
クリスマス、半年間喧嘩していた男共は、やーっと仲直りした、クリスマスに仲直りとかカップルかよ。わたしの立場奪うつもりか、ええ?
そんでキリトを引き連れたナギは言ったのだ。
『あ、こいつ今日からオレたちと行動させようと思うけど、いい?』
『は?』
『ん?いいよー。またこんな事なったら面倒だしねー』
『あんがとさん。んじゃキリト。帰るか』
『待て待て待て待て!!』
とやかく言うキリトを無理矢理宿に連れ込み(変な意味じゃないよ)事実上パーティを組ませた。
わたしとしても、もうあんなナギ見るの御免だからね。
ま、組んで暫くは、キリトがわたし達に気遣いっぱなしで、1回怒ったりもしたけど。
だいたい、キリトは別(隣)の部屋なんだし、特に行動制限してるわけじゃないし、何よりキリトが近くにいるからとわたし達が気にする訳なかろうて。
そんなこんなで、3人パーティを組み、第50層のボス戦も大活躍しましたよっと。
それからも一緒に行動して、現在に至る、という訳。
「あんまり気を抜くなよ。向こうは手段を選ばないからな」
「分かってるよ〜。こう見えても索敵スキルはナギより高いんだよ?」
「……前々から思ってたんだが、ミコトのビルド、段々俺に近付いてないか?」
「スピードアタッカーだし仕方ないでしょ。……このネタ、ナギがジェラるかな?」
「やめろよ?ただでさえお前と2人ってだけで怨念の篭もった目で見てきたんだからな?」
「あれはナギが悪いから」
現在わたしがキリトと2人なのは、別に浮気とかそういうのじゃなく……依頼があったからだ。
最前線の転移門広場、そこで《シルバーフラグス》というギルドの人が、必死に呼びかけているのを見た。
聞くと、彼のギルドは
『この世界でのPKは、本当の殺人を意味する』……怖い顔でそう言ったキリトの言葉を、わたしも理解している。
わたし達はその依頼を受け、タイタンズハンドの討伐に向かっている、ということだ。
その過程で、タイタンズハンドが2つグループがあることを掴み、2-1に分かれることにした。
最初キリトが1つの方に行こうとしたのだが、
『まあ待てキリト。ここは公平にジャンケンでいこう。心配するな、結果なんて決まってるからな』
結果、ナギ、往生際の悪い3回戦の末、敗北。
なーんであんなことしたのかな?え?最近50層でもキリトに良いところ取られて悔しかった?運命が導いてくれると思った?馬鹿なの??
と、言う訳でして、
話を戻すと、わたし達が今35層にいるのは、タイタンズハンドのメンバーの1人がこの層にいるという情報を掴んだからだ。
そうして探していると、わたしの索敵スキルに反応があった。
それと、プレイヤーの感知も。
「キリト!走るよ!」
「え?わ、分かった!」
今は夜、元々モンスターがポップしやすいこの場所は、夜になると更に危険度を増す。
わたしが感知したプレイヤーの数は1人だけ。最前線で通用する実力でなければ危険だ。
見えてきたのは、三体の大きな猿《ドランクエイプ》。この森じゃ最強クラスのモンスターだ。
それに囲まれているのは、茶髪をツインテールにした小柄な女の子だ。
「!」
キリトはスピードを上げ、猿人共に急接近した。
三体の猿人は、女の子に棍棒を振り下ろそうとした寸前で、キリトに一撃で葬られた。
目尻に涙を浮かべた少女は、わたし達を見た後、側に落ちていた水色の羽を見て呟いた。
「……ピナ……わたしを、1人にしないでよ……ピナッ!!」
羽を抱えて涙を流す姿に耐えられず、わたしは少女に駆け寄った。
「……それは?」
「……ピナです。私の、大切な……」
「君は、ビーストテイマーなのか?」
「ごめんね、あなたの友達を助けてあげられなくて」
「いいえ……私が馬鹿だったんです。1人で森を抜けれるなんて、油断してたから……」
「……ん、その羽……」
少女の手にある羽を見て、わたしはある事を思い出した。
「ねえ、その羽根、アイテム名とかってある?」
「え……」
その羽をタップすると、《ピナの心》という名前が表示された。それを見て、少女はまた泣き出しそうになる。
キリトは、少女を慰めるように言った。
「泣かないで。心アイテムが残っていれば、まだまだ蘇生の可能性がある」
「うん、47層にある《思い出の丘》って所に、使い魔の蘇生アイテムの《プネウマの花》があるんだって」
その言葉に、少女は一瞬笑顔を浮かべたが、またすぐ曇らせてしまった。
「47層……わたし1人じゃ……」
「わたし達で取ってこれればいいんだけど……使い魔の主人が行かないと、花が咲かないらしいんだよね……」
「いえ、情報だけでもありがたいです。今から頑張ってレベル上げすれば……」
「──蘇生できるのは死んでから3日までだ」
キリトの言葉に、少女が息を飲む。
使い魔の心アイテムは、3日を経つと形見というアイテムに変わる。そうなると、もう蘇生は叶わない。
絶望したような表情の少女を見て、わたしは励ますように言った。
「大丈夫だよ。3日もあるんだから。キリト、余ってる装備とかアクセサリーある?」
「ああ、使ってないのが色々。ミコトは?」
「わたしもあるよ。多分2人の合わせれば、8レベくらいは底上げできるかな」
「ま、待ってください!なんで、そこまでしてくれるんですか?」
わたしとキリトが装備を渡した事に、少女は驚いてそう聞いた。
「え? わたしは可愛い女の子が困ってるのを見過ごせないだけだよ?」
「そんな理由かよ……」
「シャラップ。そう言うキリトはどうなのさ、なんかいつもよりやる気じゃない?」
この子を見つけた時も急にスピード上げたし、何か理由でもあったのかな?
するとキリトは、バツが悪そうに頬をかいた。
「……笑わないって約束するなら、言う」
「笑いません」
(コクリ)
真剣な表情で応えた少女と、黙って頷いたわたしを見て、キリトは渋々答えた。
「……君が、妹に似てたから……」
……………
「……フッ、ウフフフ、アハハハ!」
「……ブフッw」
「なっ!?笑わないって言っただろ!?特にミコト!」
「す、すみません……アハハッ」
「ブッ……ごめんごめん、まさかそういう理由だとは思わなくて……アッハハッ!」
キリトがジト目で睨んでくるが、気にしない気にしない。
「あの、こんなんじゃ全然足りないと思いますけど……」
「いいよいいよ。わたし達の目的とも少し被ってるから。ね?キリト」
「うん、気にしないでくれ」
少女は少し首を傾げたが、すぐに直って自己紹介してくれた。
「わたし、シリカっていいます」
「俺はキリト」
「わたしはミコト。よろしくね、シリカちゃん」
「はいっ!よろしくお願いします!」
◇◇◇
わたし達は森を抜け、主街区《ミーシェ》に来ていた。
「あ、シリカちゃん!」
歩いていると、2人の男性プレイヤーがシリカに走り寄ってきた。
パーティへの誘いらしかったのだが、シリカは困ったような表情を浮かべた後、わたしとキリトの腕を掴んだ。
「お誘いはありがたいですけど、しばらくこの人達とパーティを組むことにしたので」
男2人はまずわたしの方を見て頬を緩ませ、次にキリトの方を見て表情を一気に硬化させた。
フッ、可愛いって辛いぜ。
キリトは心の中でキメ顔をするわたしを引きずりながら、その場を離れた。
「人気者なんだな」
「……いえ、マスコット扱いされてるだけですよ、きっと……。竜使いなんて持て囃されて、それで調子に乗って……ピナを……」
「はいはい!暗い顔しない!」
顔に影が差したシリカを、手を叩いて空気をリセットする。
それでもどこか暗いままのシリカの頭に手を置いて、キリトは優しい声で言った。
「心配ないよ、必ず間に合うから」
「……はい!」
その言葉に、シリカは元気を取り戻したようだった。
にしても……出会って間も無い女の子に頭ポンポンとか……キリト貴様、その顔でなければ死んでいたぞ?
キリトのムーブに戦慄した私であった。
「そういえば、キリトさんとミコトさんのホームって、どこにあるんですか?」
「50層だけど……面倒だし、俺もここに泊まろうかな」
「そうだね、まだ連絡も来ないし、そうしよっか」
「そうですか! ここ、チーズケーキが美味しいんですよ!」
わたし達が談笑していると、横から声がかかった。今度は女性のものだ。
「あらぁ?シリカじゃない。森から脱出できたんだぁ、良かったわねぇ」
槍を持った赤髪の女性は、笑顔を浮かべながらシリカに話しかけた。
それにシリカは、目を反らすように顔を下に向けた。
「どうしたの?」
「いえ……」
「あれぇ?あのトカゲどうしたの?まさか……」
「ピナは死にました。けど、絶対に生き返らせます!」
愉快そうに笑う女に、わたしは眉間にシワが寄るのを感じた。
「へーえ、じゃあ《思い出の丘》に行く気なんだ。でも、アンタのレベルで攻略できるの?」
「できるさ、そんなに高い難易度じゃないしな」
「そうだよ。わたし達もいるし、全く問題じゃない」
嫌味ったらしく言う女に、キリトはシリカの前に出て言った。それに続き、わたしも反論する。
女は怪訝そうな表情を浮かべるが、すぐに口元を緩めた。
「何、アンタらもその子に庇護心感じちゃったの?見た感じ、そんなに強くなさそうだけど」
「少なくともあなたよりかは強いんじゃないかな?その片目見えてんの?戦闘の邪魔じゃない?」
「なっ……」
「さっ、行こ。キリト、シリカちゃん」
女の笑顔を崩して満足したわたしは、2人を引き連れて宿に入っていった。
「……何で、あんな意地悪言うのかな……」
「シリカは、MMOはSAOが初めて?」
「はい」
「どんなオンラインゲームでも、現実と人格が変わるプレイヤーは多いんだ。中には、進んで悪人になる奴もいる。俺たちのカーソルは緑色だろ?」
「犯罪をすると、カーソルはオレンジ色に変わる。その中でも罪の重いもの……プレイヤーキル、つまり殺人を犯すと、そいつはレッドプレイヤーって呼ばれるの」
「殺人って……」
シリカの考えてることはごもっともだ。
この世界だと、普通のゲームと、PKの意味合いが全く変わってくる。
「今までのゲームだと、悪人気取りで楽しむことも出来たよ。けど、このゲームは訳が違う」
「……このゲームは遊びじゃないんだ」
キリトのコップが強く握り締められる。
キリトは、この世界での死というものを、痛いほどよく知っている。
だからこそ、悪戯に命を奪うことを許せないのだ。
俯いてしまったキリトを見て、シリカがテーブルから身を乗り出してキリトの手を掴んだ。
「き、キリトさんもミコトさんも良い人です!わたしを助けてくれたもん!」
「……俺が慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」
そう笑顔で言ったキリトの手を、シリカは慌てて離した。その顔は真っ赤だった。
「あっ、あれぇ!?チーズケーキまだかなぁっ!?すみませぇん!デザート貰えますかぁっ!?」
「ど、どうしたんだ?」
「キリト……お前も罪な男よな……」
「どういうことだ!?」
はー……こいつはこういう感じか。なんか新しい側面を知った気分だ。こんな事する奴なんて思ってもいなかった。
なっがーいため息をついたわたしに、慌てていたシリカが視線を向けた。
「どうしたの?シリカちゃん」
「あ、いえ、その……お2人は、どういう関係なのかな、って」
「どうって……ただのパーティメンバーだぞ?」
「そうだね、ただの友達だね」
「えっと……恋人、とかでは……」
「なっ!?シリカ!それはダメだ!場合によっては俺の首が飛ぶ!」
「えっ?ええっ!?」
シリカの口から飛び出たワードにより、キリトがさっきのシリカよりも慌てて弁明する。
わたしはそれを笑いながら、シリカに説明した。
「アハハー、そんな慌てる?シリカ、わたしはもうお相手いるから、心配しないで大丈夫だよー」
「な、何の心配ですか!?」
「おいミコト!この事絶対アイツに言うんじゃないぞ!」
「あ、グループメッセ来た。『今日こっちに泊まることにしたけど、ミコトに変な気起こしたら斬り落とす』だって」
「斬り落とすって、何をですか?」
「シリカは知らなくていい!それよりアイツは何の心配してるんだ!」
小話休載、代わりに少し関係性の掘り下げをば。
キリトとナギの関係は前話の通り、晴れて親友となりました。ユージオとは少し関係が違いますけどね。
ユージオが「隣で戦い、切磋琢磨する友」なら、ナギは「背中を蹴飛ばしてくれる、ライバル的な友」って感じです。
ちなみにナギとキリトがデュエルすると、6割くらいでキリトが勝ちます。ナギが1対1向きじゃないってのもありますけどね。
キリトとミコトですが、キリトの方はクリスマス以降常日頃イチャイチャを至近距離で浴びているので、もはやミコトを正常に異性として見れていません。というか変な目で見たらナギが来ます。
ミコトの方は、面倒臭い性格の男友達って感じで見てます。キリトと一緒だと、基本ツッコミのナギがボケられるので、キリトの存在はありがたいと思っています。
それはそれとして沢山弄るけどね。
シリカ回が終わったらアスナ回じゃあ!