タイムリープしたことあるけど質問ある?   作:5円

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僕だけがいない街見てたら書きたくなったんご。


第1話

 

 「タイムリープしたことあるけど質問ある?」

 

 子供の頃、よく見ていたアニメの主人公が言っていた言葉だ。その主人公は、ある日突然タイムリープができる能力を手に入れて、過去にあった数々の事件を未然に防いできた。

 主人公は、事件を解決していくうちに、心身共に疲弊していったが、辞めることはなかった。自分の力で助かる人がいるのなら、できるだけ助けてあげたかったらしい。

 主人公は最後、ある事件を解決するのに大きな怪我を負ってタイムリープする力を失うのだが、助けたヒロインが負い目を感じて、自分を責めているのに気付くと、彼はこう言ったのだ。

 

 「俺は君を悲しませるために行動したんじゃない、君の笑顔が見たくてやったんだ。力を失うよりも君を失う方が怖い、だから良いんだよ。それと、遠い昔に君と会ったら言いたいことがあったんだ。非日常を望みながらも、非日常を信じない君へ、『タイムリープしたことあるけど質問ある?』ってね」

 

 この言葉を聞いて泣きながら笑う彼女を見て、俺は主人公に憧れた。

 タイムリープしたら、あの事件を解決したい。学校の好きなあの子が危機的状況の時に、助けて感謝されたい。轢かれそうになっている子供を助けて、表彰されてみたい。

 このような、俗物的な考えが大半だったが、中心にはやっぱり人を助けたいという気持ちがあった。

 だから、困っているお婆ちゃんがいたら助けてあげたし、迷子になっている子供がいたら親を探してあげた。

 

 だけど、高校を卒業すると自分が主人公じゃないことには気付いたし、都合の良い能力なんか自分の身にないことも諦めがついた。

 なんとなく、大学に行った後はなりたい職業なんかもなく、アルバイトで日々の金を稼ぐ色のない日常になってしまっていた。

 俺はこれから一体何になれるのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 「1270円になります。……はい、きっかり1270円受け取りまして、こちらレシートとなります。ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております」

 

 「成瀬君、今日はもう上がっていいよ。後はやっておくから」

 

 「あ、はい!ありがとうございます店長。先上がらせてもらいます」

 

 アルバイトから帰った俺は、帰る途中のスーパーで、割引されていた惣菜品を買って帰路についた。今日は天ぷらが安かった、やったぜ。

 

 

 

 

 「あ!成瀬先輩!帰る途中ですか?奇遇ですね!」

 「あぁ…そうだな」

 

 このやかましい女はバイトの後輩である高宮皐月、見ての通りやかましい奴である。

 

 「先輩手に持ってるの夕飯っすか?揚げもんだけだと体に悪いっすよ」

 「うるせぇよ、余計なお世話だ」

 「先輩が体壊したら私のシフト増えるんすから、頼みますよ?」

 「お前の為かよ!」

 「あっ!先輩もしかして、心配されてると思いました?やだなぁ、私が心配心するのは自分の身だけっすよ」

 「うるせぇ、知ってるよ」

 「えっ、先輩私のこと知ってるんすか?もしかして先輩私のこと好きなんすか……?」

 「だぁぁぁ!もぉ、ちっげーよ!うぜぇな!夜も遅いんだから早く帰れ!」

 「はっはっは!わかりましたよ、でも体に気をつけて欲しいのは本当っすよ」

 「えっ、それってなんで……」

 「それでは先輩また今度!」

 

 言うだけ言って、帰っていたうざい奴だったが、どうやら本当に俺の身を案じてくれていたらしい。親とも疎遠になった今、同世代の友達も禄にいない俺にとって、あいつは結構ありがたい存在なのかもしれない。

 

 「けど、あいつといると疲れるから自分から話しかけないでおこ……」

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってニュースをつけながら買ってきた飯を食べていると、誘拐犯が逃走中であるというニュースが耳に入ってきた。

 

 「これまで8人もの子供を誘拐ねぇ……」

 

 誘拐犯が逃げたという地域がこの辺りであり、もう26歳であるにも関わらず、なんだが怖くなってきた俺は戸締まりを確認して早めに床に就いた。

 

 

 

 

 

 次の日、シフトも無かった為、昼まで惰眠を貪り、起きてからは最近買ったゲームに熱中していたところ、店長から電話が入った。

 

 「成瀬君、高宮君のこと知らないか?」

 「高宮がどうしたんですか?」

 「いやぁ、数時間経っても店にやって来ないし、電話を掛けても繋がらないんだ」

 「家にかけてみたらどうですか?」

 「かけてみたんだが、そっちも繋がらないんだ。あの子一人暮らしだから動向を知っている人もいないし、近所の人に聞いても知らないらしいんだ」

 「そうですか……僕も昨日帰り道に会ってからは知らないですね」

 「そうか……あの子真面目だから連絡なしで休むことなんてこれまで無かったんだけどねぇ…」

 「こちらからも連絡してみましょうか?」

 「あぁ、よろしく頼むよ」

 「分かりました、何かあったら連絡します」

 

 そう言って俺は、店長との会話を打ち切り、高宮に電話かけてみた。だが……

 

 「ちっ、出ねぇか」

 

 高宮は電話に出ることはなく、何も手がかりはないまま時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 数時間経って、空が暗くなって来た頃、俺は昨日のニュースを思い出していた。

 

 「そういえば誘拐犯がこの辺りを逃走中とか言ってたな……まさか誘拐されたか?」

 

 俺は不安になって高宮と別れた道までやってきた。

 

 「確かあいつはこっちに行った筈だ」

 

 俺は昨日の記憶を辿り、高宮が走っていった周辺を探し回った。だが、高宮の正確な家なんか俺は知らないし、店長も近所の人は知らないって言っていた。無駄足だったかと思い始めたところ、それが見つかった。

 

 「これは……昨日高宮が付けていた手袋?なんでこんなものが道端に落ちてんだ?」

 

 その上、1つ気になることがあった。

 

 「なんで片方しかないんだ…?」

 

 手袋を片方だけ無くすなんてあるだろうか?家で外したなら分かるが、外で片方だけ外すタイミングがあるだろうか?これは、彼女が残した手がかりなのではないか?

 俺は、これが彼女の捜索に関わる何か重大な物のような気がして、交番に急いだ。

 その途中、何人かとぶつかったが、急いでいたので許してほしい。

 

 

 

 

 交番に着いて、手袋を渡しながら事情を説明しようとすると警官から手錠がかかった。

 

 「え?」

 「21時18分、成瀬優、高宮皐月の誘拐及び殺害の疑いで逮捕する」

 「は?俺が逮捕?いやそんなことより殺害ってなんだよ!高宮は死んだのか!?」

 「しらばっくれるな!お前の部屋から高宮皐月の遺体が見つかったのだ。言い逃れはできないぞ」

 「何言ってんだ!俺はやってねぇ!それに殺害ってなんで俺が高宮を……」

 「凶器も見つかり、お前の指紋も付着していた。それでもまだ、お前はやってないというのか?」

 「やってない!俺は、俺は!……

 

 そこで、俺は不思議なものを見た。一匹の蝶が空を羽ばたいているのである。その蝶から目が離せなくなり、俺は……

 

 

 

 

 「……い、……んぱい!…先輩!」

 「はっ!?」

 「どうしたんですか先輩いきなりぼうっとして、お客さん来なさすぎて居眠りでもしてたんですか?いけないんだぁ……」

 「…高宮?」

 「他の誰に見えるんですか?寝ぼけてるんなら顔洗ってきたらどうすか?」

 「……あぁ、そうだな」

 「もう、しっかりして下さいよ」

 「…あぁ、悪い。それと、今日何日だ……?」

 「今日ですか?12月17日ですけど…いきなりどうしたんすか?」

 「…あぁ、録りたい番組があっただけだ」

 「あぁ、そうすか。じゃあ、早く洗って帰って来てくださいね」

 「…あぁ、分かった」

 

 一体、これはなんだ。さっきの蝶は?誘拐は?高宮の死は?夢か?なんで俺の部屋に高宮が?一体いつ?誰が?何のために?

 わからない……わからないが、取り敢えず分かることは……

 

 「タイム、リープ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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