先生が着任して1週間が経った頃、僕はティーパーティーに招待された。確かティーパーティーって一般の生徒は中々招待されないものだった気がするけど……やっぱりティーパーティーのメンバーは特別ということだろうか?
◇
そして茶会の当日。最初だししっかりしないと、とめかし込んで会場である面接の時の部屋に向かった。そこには聖園ミカとナギサ、そして面識もなければゲームで見た記憶もないが、同じくティーパーティー制服の生徒が2名いた。
片方は群青色の肩まで伸ばした髪の左側をサイドアップにしてまとめており、眼鏡を掛けている。トリニティ生らしく目立つ白い翼を持っているが、多くの生徒が二つ以下*1なのに対して、大きいものが一対にそのすぐ下に少し小さめの翼が一対の四枚羽だ。彼女はなにか本を読んでおり、その知的な雰囲気から参考書か、あるいは一昔前の小説かと思ったけど……表紙をよく見たらゲームの攻略本だった。
もう片方は椅子に座っていても分かるくらいあからさまに背が大きく、ウェーブのかかったライトブラウンの髪をボブヘアにカットしていて、にこやかな表情でこちらに手を振っている。翼は僕や青髪の子よりもふわふわした感じのものが一対。
「あの、申し訳ありません……時間に遅れてしまいましたか?」
用意されている椅子は5つだけ。今現在療養中ということになっているセイアの分は無いのが自然だとして、他の4席が埋まっているのだから自分が最後で間違いないだろう。そこから遅刻したのだろうかと考えて、準備に時間を掛けすぎたと後悔する。
「いえ、まだ時間に余裕はありますよ。ただ、もう招待したメンバーは揃ったので始めましょうか」
「は、はい。お気遣い感謝いたします」
遅刻ではないらしいのでとりあえずホッとして席に座る。自分の席は左に眼鏡の生徒、右に茶髪ボブの生徒がいて、対面にはナギサという配置である。
「では、一年生のお三方。そろそろ入学から2ヶ月が経ちますが、トリニティでの生活には慣れましたか?」
ナギサが紅茶を一口した後、早速切り出した。というか右の人も1年だったのか。デカいから2年か3年だと思ってた。で、その右の人が口を開く。
「はい~楽しいですよ~、皆さんも良くしてくれますし~」
なんと言うか、すっごいほわほわしてる。まるで彼女の髪質みたいにゆるふわだ。
「それは良かったです。そちらは?」
「あたくしですの?ええ、田舎の方から来たので少し戸惑うこともありますが、だいぶ慣れてきましたわ。学びや気づきが多くとても充実した毎日を送っています」
「そんなに堅苦しくしなくてもいいのに~。ナギちゃんみたいな子は一人で十分だよ?」
「えっと……」
「ミカさん」
「はいはい」
急にミカに話しかけられて言葉に詰まっていると、彼女がナギサに制止されて僕は苦笑を浮かべる他なかった。
「次は私ですか。そうですね……あ、このロールケーキいいですか?」
青髪の彼女はいつの間にか攻略本をどこかにしまったと思ったらロールケーキを勝手に食べ始めた。え、マナーとか大丈夫なのかなそれ?
「ええ、構いませ……答える前から食べていませんか?」
「もぐ……もぐ……ああ、すみません。美味しそうでしたので。実際美味しかったですし」
なんかトリニティのトップ二人を前にしてすごいマイペースというか……どっしりしているというか……。さっきナギサが言っていた通りなら、こっちも多分1年なんだろうけどそうは思えない。
「それは……私が用意したものですので、褒めてもらうのは嬉しいのですが」
「それで学校生活に慣れたか、ですか?はい、慣れましたよ。これで良いです?」
彼女はそれだけ言うとロールケーキをまた頬張った。き、肝が据わってる……。ナギサはというと、何か言いたげなのを飲み込んだ様子だった。
「……ええ、はい」
「あはは、ナギちゃん完全にペース持ってかれてる☆新入りちゃんやるね」
「……ミカさん」
「はいはい」
「……それで、本日皆さんをお呼びしたのは一年生のティーパーティーメンバーの中でも特に見込みがあると判断し、ティーパーティー傘下組織において士官候補生として1年生の代表を務めていただこうと思ったからです」
「士官候補生……」
「1年生の代表……」
ティーパーティーの傘下組織と言うのは、身も蓋もない言い方をすれば私兵部隊である。トリニティで一定の武力を持つ集団としては正義実現委員会やシスターフッド、後はトリニティ自警団が挙げられるが、ある程度はティーパーティーにより動員可能な正実以外の二組織はティーパーティーとは独立した指揮系統を持っており、ティーパーティーが自由に動員可能な兵力として傘下組織は存在する。
その中で一定の評価を得られれば、もしティーパーティーホストの地位を目指す際に他の生徒よりも有利に働くだろう。つまり、士官候補生というのは将来のティーパーティーホスト候補でもあるというわけだ。もちろん一年生時のハナコが持ち掛けられていたように、特に優秀な場合は派閥外から登用されることもあるが。
「いかがでしょうか」
「あたくしは……それが決定であれば、異論は御座いませんわ」
「わたしも~精一杯がんばります~」
「私は別に何でも構いませんよ」
「それでは、これからお願い致しますね」
はい、と言おうとしたらミカがナギサの肩を軽くつついたのでその出方を伺う。
「……ねえ、ナギちゃん。何か忘れてない?」
「何かとは?……ああ、すみません。自己紹介をするのでしたね。私は桐藤ナギサ、フィリウス派首長でご存じの通りティーパーティーのホストを務めています。ただ、本来のホストはサンクトゥス派首長の百合園セイアさんなのですが……彼女は去年から長らく体調が優れず、本日も茶会には来れていません」
「そういうこと。で、私は聖園ミカ!パテル派のトップ……ってことになってるけど正直政治とかよく分からないんだよね、その辺りは大体ナギちゃんに任せてるし」
トップ二人が紹介を終えて新入生のターンが回ってきた。自分が最初に言おうか迷っていると、右の子が手を上げて口を開いた。
「はいはい~わたし、
マイハ、というのか。……やっぱり聞いたことないな。自分の存在と同じく、未実装なのか原作には存在しないのかは分からないけど。
「次は……あたくしが行きましょう。
「ん、私は
僕が言い終わってすぐ続けたかと思うとこれである。マアサか……マイハと同じく、原作にいた覚えがない。ただいろんな意味で大物になりそうだな、この子。
「うんうん、それじゃ皆よろしく☆」
そうしてトリニティを担う、もしくは担うことになるであろう人々の茶会はお開きとなった。
◇◇
ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサは自らの執務室にて険しい顔で書類を見つめていた。その書類には三名のトリニティ生についての情報がまとめてあり、その名前は。
「炎谷マアサ、祗園アイカ、土御門マイハ……」
先程の茶会で顔を会わせた一年生たち。彼女たちはパテル、フィリウス、サンクトゥスの各派閥の有望株であり──ナギサが一年生の中でも特に警戒している生徒でもある。
マアサは一見知的な雰囲気から想像もつかない武力の持ち主であり、比較的小柄な体格を最大限に活かして縦横無尽に駆け巡る戦闘スタイルで、本格的な訓練を受けていない一年生ながら既に正義実現委員会の一般部員に優位を取れるほどだった。アイカと並んで正実が欲しがっていた人材である。
マイハは身長が高いながらも威圧感を感じさせない柔和な物腰で親しみやすい性格だが、見た目よりもずっと頭の切れる少女である。1年生時点の浦和ハナコ程ではないものの、学力試験でほぼ満点に近い成績を叩き出している。その分戦闘はそこまでといった様子だが、仮に敵に回すとなると相応に苦戦することになるだろう。
『……これは大きな貸しになるぞ』
正義実現委員会の委員長、剣先ツルギの言葉を思い出す。例年ならあの三人全員をティーパーティーの傘下に入れるなんてことはしなかっただろう。少なくとも、本人の希望次第ではあるが、アイカとマアサのどちらかは正実へ推薦していた。
……しかし、今年は。
『エデン条約、か。私たち正義実現委員会はあくまでトリニティの治安維持機構だ。確かにゲヘナ学園をよく思わない部員も少なくはないが、治安の改善に繋がりそうな条約の邪魔立てをするつもりはない。……それについては信じておいて欲しかったのだけど、ね』
エデン条約の成功のためには手段を選んではいられない。何と言われようとも、他の組織に渡った時に不穏分子となりそうな生徒は手元に置いて監視しておきたかった。
「……調印式の日は刻々と迫っています。改めて気を引き締めなければ」
依然として“トリニティの裏切り者”が誰なのかは分からない。調印式の前までには見つけなければいけないというのに。
◇◇
一方その頃。
「"アビドス……高校は……どこ……。"」
シャーレの先生は街のど真ん中で道に迷って遭難してしまっていた。
新キャラ二人登場です。ただ、少なくとも現段階で練っているプロットではこれ以降オリキャラを追加する予定はないですね。あと士官候補生は独自設定です、原作には出ません。
下記はマアサのプロフィールとなります、冗長になるのでマイハはまた次回ということで。
名前 マアサ
フルネーム 炎谷マアサ(ぬくたにマアサ)
武器種 SR(リー・エンフィールド No.5 Mk1“ジャングル・カービン”)
学園 トリニティ総合学園1年生
部活 ティーパーティー
年齢 15歳
誕生日 4月4日
身長 154cm
趣味 ゲーム
基本情報
トリニティ総合学園の生徒会である「ティーパーティー」に属し、その中でもパテル派の一員。
一見知的で落ち着いた少女に見えるが、その言動はかなり自由気ままで、真面目に取り合おうとした人物を意図せず翻弄する。
パテル分派期待の新人と目されているものの計略はあまり趣味ではなく、めんどくさくなると暴力で解決しようとし出す。
各派閥で同じような立場のアイカ、マイハとは友人同士であり、休みにはよく三人で出掛けるらしい。