ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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02 トリニティの戦略兵器

 先生と直接の初対面を果たした数日後、ミレニアムサイエンススクールへ出向いたという情報がSNS上で出回っていた。中には一緒に写真を撮ったという生徒の投稿もある。

 

「『シャーレの先生がいたから一緒に記念写真! #ミレニアム #ようこそ #先生』ですか、ふふ」

 

 ミレニアム…ということはパヴァーヌ1章か。前世のゲームの知識で大体何が起こるかは分かってるけど……。

 

「ただ、あたくしがあちらに行って何ができるかというと……」

 

 僕の立場はティーパーティーの傘下組織に属するというだけの、ただのトリニティの一年生。ミレニアムに行ってもやれることはないし、それに何よりパヴァーヌ編の主役であるゲーム開発部が自分達で解決すべき問題だ。

 

「まあ、不干渉ということで。あたくしはエデン条約に向けて何かやれることを探す方が有意義でしょう」

 

 先生とゲーム開発部を信じて任せることにしよう。会ったこともないのにどの立場から言ってるんだという気がしないでもしないけど。

 

 

 

 

 そして、エデン条約に向けてやれること……と言えば!

 

「きひひひひひっっっ!!」

 

「耐久性おかしくないですかっ……!?」

 

「ポンポン砲の直撃を受けてピンピンしてる方なんて初めて見ましたわ……」

 

「当たってるはずなのに、全然効いてない~」

 

 そう、正義実現委員会委員長(トリニティの戦略兵器)との稽古ですね!

 

 ……いやそうはならんでしょ。

 

 

 

 

 

 最初から説明しよう。あれはいつも通り傘下組織の訓練の後、休憩も兼ねてのティータイムの最中のことだった。

 

「マイハさんの手作りクッキー、とても美味しいですわね。甘さ控えめでバターのまろやかさがよく楽しめて、本当に何枚でも食べられそうですわ」

 

「うふふ、ありがとう~。わたしが結構よく食べちゃう方だから、カロリーとかも考えてるよ~」

 

「もぐもぐ……私も感想とか言った方が良いですか?」

 

「気を遣わなくていいよ~。それにマアサちゃん、気の利いたコメントとか苦手でしょ~」

 

「よく分かってますね。今も美味しいとしか言葉が思い付きません」

 

 そんな、お茶菓子と会話を楽しむ穏やかな時間は突如終わりを告げた。演習場併設の休憩室の扉がバァンと開けられ、思わずビクッとなって扉の方を見ると。

 

「ふっふっふっふ……頼もオォォ」

 

「……失礼します」

 

 トリニティで知らぬ者はいない、黒のセーラー服──正義実現委員会。その長とナンバー2、ツルギとハスミだ。

 

「え、えっと……どのようなご用件で?」

 

 なんかやらかしたかな…いやでもここで演習してただけだし、正実にお世話になるようなをことした覚えはない。しかもトップ2人が直に出張るような事態なんて。

 

「ティーパーティーの士官候補生と正義実現委員会で手合わせを、と委員長……ツルギが提案したところ、ティーパーティーのホストから許可が下りましたので」

 

 え、聞いてないんだけどそんなの。本人の了承とか得なくていいの?それともまさか僕だけ知らされてなかったりとかしないよね。二人はどうなんだろう。

 

「……???」

 

「ふふふ~、どうしようそんなの聞いてないよ」

 

 マアサは正実の二人に顔を向けつつクッキーの最後の一枚を取ろうとした体勢のまま頭にクエスチョンマークを浮かべて固まっており、マイハも知らなかった様子で。

 

「うひひひひひ……」

 

「……ツルギもお三方と手合わせをするのが楽しみだそうです」

 

 どうするよ、拒否権とかなさそうだしやるしかないのかなぁ……。そう思って他の二人と顔を見合わせるけど、結局付き合う以外に選択肢は思い浮かばなかった。

 

 

 

 

「そろそろ、3分……ですよね!?」

 

 そうして演習場に戻ってきて、手合わせの内容はというと。

 

『最初の3分間はツルギが三人からの攻撃をひたすら回避しながら耐えるだけだが、それまでにツルギを倒せなかった場合反撃を開始する』

 

 いや頭おかしいでしょこれ。しかもこちらの使用武器……具体的には僕のポンポン砲を把握した上でのルールである。3分間40mm2ポンド砲弾の掃射に回避だけで耐えるつもりだという宣言に等しい。もちろん、マアサとマイハも参戦するし常人なら3分どころか1分保つかも怪しい。

 

「……3分、ですね」

 

 演習場の端で見ていたハスミが時計を見ながら呟く。ツルギも既に3分経過したことは把握していたようで、一旦立ち止まり狙いを定めるかのようにこちらに目を向けた。

 

「タイムアップゥゥゥゥ……」

 

 そう唸ったかと思ったら、二丁のショットガンを構え直して前衛二人に迫った。

 

「うわあっっ?!」

 

 あっという間に間合いを詰められ、まずはマアサが至近距離から散弾を叩き込まれてダウン。ポンポン砲を撃ち尽くして給弾ベルトを装填する間にマイハもやられており、もはややけくそで撃ち込むけど抵抗虚しく僕もショットガンの餌食となった。

 

 

 

「……はっ!?」

 

 目が覚める。休憩室のベッドから起き上がると、正実の二人がいた。マイハとマアサも隣のベッドで寝かせられていたようで程なくして起きてきた。

 

「いひひひひひひひひ……」

 

「……一年生にしては中々やる、三人のうち一人は正義実現委員会に是非とも欲しかった、と」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

 なんか3分間ひたすら翻弄された挙げ句瞬殺された気がするんだけど中々やるって評価なんだ…よく分からない。

 

「くははははは……」

 

「……次も是非お願いしたい、と。私も同意見です」

 

「はい……。えっと、前向きに検討致しますわ……」

 

 そうして、よく分からないまま正義実現委員会との稽古は終わった。なんだったんだろうアレ……。

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

「訓練、ですか?」

 

 ナギサはある二人の客をもてなしていた。トリニティ内どころか外部でもその名を聞くことがある、正義実現委員会のトップとその右腕。彼女達の用件は、ティーパーティー傘下組織の士官候補生と手合わせがしたい、とのこと。

 

「ああ、やっぱり気になる。それに、本当にそこまで疑うような生徒なのかってことも」

 

「……」

 

 ナギサは思案した。士官候補生の人事で既に正義実現委員会、というかツルギには大きな借りがある。それにこれから補習授業部でやろうとしていることを考えると、少しでも借りは返しておいた方がいいだろう。

 

「……分かりました、お好きなようにどうぞ。初回は後で私の方から話を通しておきますが、その後以降は本人の了承を得るようにしてくださいね」

 

「感謝する」

 

 ……なお、ほんの少し意趣返しというか、すぐ翌日に士官候補生達の元を訪れたせいでナギサの連絡が間に合わなかったのは別の話だ。

 




ここまでナギサの回想で一言二言の台詞だったツルギですが、喋り方はこんな感じでいいんですかね……?
戦闘中、あるいはその前後。あるいは青春とか少女漫画とか、そういう憧れてるものに触れた時などの昂っている状況でなければ割と普通に話すようですし。
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