ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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04 トリニティ生の日常

 多くの生徒が行き交うトリニティ・スクエア。学年の区別なく、それぞれが思い思いに昼休みを過ごしている中、通りかかった三人組に注目が集まる。

 

 一年生ながら既に白地のティーパーティー制服を瀟洒に着こなし、ただならぬ風格を漂わせている少女達。ティーパーティーの傘下組織で士官候補生を務め、パテル・フィリウス・サンクトゥスの三大派閥で一年生の代表と見られている彼女達は、気品のある笑顔で談笑しながらどこかへ向かっていた。

 

「本日も素敵ね……マイハさま」

 

「アイカさま……私と同い年とは思えないくらい、トリニティらしい気位を感じますね」

 

「マアサさま……お可愛らしい……」

 

 そんな三人の姿は同じ一年生にとって憧れの的であり、二年後には手を取り合いこのトリニティを引っ張っていく存在になるだろう、と想像する生徒も少なくなかった。

 

 ◇◇

 

 なんか最近、三人でいるとすごい視線を感じる。なんと言うか、憧れ……みたいな?そんな熱い視線。僕らも普通の一年生なんだけどね、一応。

 

「次の休日は久々にゆっくりできそうです、どこかに出掛けませんか?」

 

 夏休み前の試験も大体終わって、そのお疲れ様会?的なことをしたいなと考えていたところだ。もちろん断る理由はないし、どこがいいかと考えてみる。

 

「マアサさんはこのところずっと書類に追われていましたものね……駅前のショッピングモールは如何でしょうか?」

 

「わたしもさんせい~」

 

 アクセサリとか色々買いたいな、と思っていたのでファッション店もいくつか入ってるショッピングモールにした。僕にとっては過去二度に渡って不良生徒に絡まれた曰く付きの場所だけど、マイハやマアサと行動するようになって、さすがにあちらから因縁付けられることはなくなった。

 

「では決まり、ですね」

 

 次の休日がとても楽しみだ。

 

 

 

 

 そんなわけで数日経って迎えた休日、昼に集合してまずはショッピングモール近くのカフェで昼食。お腹を満たした後はいよいよお買い物タイムだ。

 

「アクセサリを見ていきませんか?」

 

「うん、いいね~」

 

「私はあまり興味ありませんが、二人が行くなら」

 

「マアサちゃんに似合うの見繕おうか~?」

 

「……ええ、お願いします」

 

「ふふ、さて……ここですわね」

 

 二人のやり取りに思わず笑みがこぼれる。いいね、青春って感じで。すごく素敵だ。

 

 7年前、目覚めた時に決心したことを思い出す。……うん、僕は、青色の春をこのキヴォトスで満喫できている。そう心から思えた。

 

 

 

 どれがいいかな、とアクセサリを見ていると、見覚えのある人影があった。

 

「あら、阿慈谷先輩?」

 

 そう、阿慈谷ヒフミ。モモフレンズが大好きな、普通…普通?の少女だ。

 

「あはは……久しぶりですね、アイカさん」

 

「知り合いなんですか?」

 

「はい、あたくしの士官候補生としての任務で一緒になりまして。あれから一ヶ月ほど、ですかしらね」

 

「そうなんだ~」

 

「あはは……あれ、アイカさんの鞄についてるのってもしかして……」

 

 そう言ってヒフミは目線をアデリーさんのバッジに向けた。

 

「ええ、アングリーアデリーさんです。ファンですの」

 

「モモフレンズのファンだったんですか……!?言ってくれれば良かったのに……!」

 

「あの時はその……任務でそれどころではなかったので」

 

 カイザーぶっ飛ばすことしか考えてなくて完全に忘れてたよ。まあアデリーさん以外はそれほど熱心なファンって訳ではないのだけど。

 

「ペロロ様!ペロロ様はどうですか……!?」

 

 そう言ってヒフミは近くのアクセサリから迷いなくペロロのモノを手に取って見せてくる。

 

「何ですか?このクスリでもやってそうなアヒもごもご」

 

「マアサちゃん、ああいうのを好きな人もいるんだよ~?」

 

 ペロロに関して忌憚のない意見を述べようとしたマアサがマイハに手で口を塞がれる。いやマイハも「ああいうの」呼ばわりってまあまあ容赦ないな。

 

「あ、あたくしはアデリーさん以外はそれほど興味があるわけではないので……好きな方は好きなのではないでしょうか」

 

「あはは……」

 

 当たり障りが無さすぎる回答。まあヒフミは後々エデン条約編でメインを張る以上、今後も関わるかもしれないので慎重に言葉を選んでおく。

 

 

 

 そうして何だかんだヒフミも交えての四人でショッピングを楽しんだ後、解散する。色違いでデザインがお揃いのシュシュを買ったりもした。

 

「では皆さん……もし機会があれば、また」

 

「ええ、その時はお願い致しますわ」

 

「またね、ヒフミ先輩~」

 

「さよなら」

 

 それぞれ帰路に着く三人を見送って、僕は一人で寮ではなく駅の方へ向かった。行き先は……。

 

〈まもなく、1番乗り場に16:43発、D.U.地区行き快速が参ります。黄色い線の内側まで下がってお待ちください〉

 

 

 

 

 電車に揺られること数十分。D.U.地区、シャーレ最寄りの駅に到着した。軽く駅の軽食コーナーで夕食を取ったら、目的地に一直線だ。

 

「先生、いらっしゃいますか?」

 

 数週間前に来たっきりだったけど、今日は初めて当番として呼ばれる日だった。お出かけしたいから無理そうだと言ったら、別に用事が終わってからでも大丈夫だと言われたのでお言葉に甘えさせてもらった。

 

「"アイカかな?うん、よく来てくれたね。"」

 

「それで、シャーレの当番とのことですが……あたくしは一体何をすればよろしいのでしょうか」

 

「"数日前からD.U.地区とトリニティ自治区の境界付近で暴れてる不良生徒がいるってヴァルキューレから報告があって。集団の規模が大きくてヴァルキューレだけじゃ対処できないからシャーレに何とかしてほしいって報告があったんだ。"」

 

「確かに何だか騒がしい方々がいたような気もしますが……それを静かにさせれば良いのですか?」

 

 これがゲームの通常任務ってことなのかな?

 

「"まあ、そうだね。アイカの他にも何人かシャーレの部員を呼んでるから協力して解決してね。"」

 

「現場へはどのように?今日は愛銃を積んでいるトラックは寮に置いてきてしまっていて……」

 

 そう、今日はマイハ、マアサと一緒だし大丈夫かと思ってポンポン砲は寮に置いてきている。だからこそ電車で普通にシャーレまで来たわけだが。

 

「"現場にはシャーレのヘリで行くから心配ないよ。ただ愛銃はどうしたものか……。"」

 

「……あ、そういえば。問題の場所はトリニティ自治区に近い場所ですのよね?」

 

 そう、つまりはポンポン砲のある寮に比較的近いということで。

 

「"そうだね。……もしかして。"」

 

「はい、トリニティ総合学園の寮の近くで一旦あたくしだけ下ろしていただければ。後はトラックで向かいますので」

 

「"分かった。それじゃ、よろしく頼むね。"」

 

 そうして、他の生徒が揃うまで待ってから、全員でヘリに乗り込んだ。

 

 

 

 ちなみに、他のメンバーはというと。

 

「ねぇ、まだ着かないの?」

 

「まだ5分しか経ってないよ、セリカ」

 

「先生、仕事はどのくらい残ってますか?これが終わったら私も手伝うので、早く済ませてしまいましょうね」

 

「それなら私はお二人の為に夜食を作りましょうか?」

 

「その制服はティーパーティーですか?凄いですね!」

 

「ええ、その……ありがとうございます」

 

 黒見セリカ、砂狼シロコ、早瀬ユウカ、守月スズミの前衛組に愛清フウカと僕で後衛という組み合わせだ。確か僕以外は全員攻撃属性が爆発だったと思うので……対軽装備の編成ってことか。となると僕のポンポン砲も爆発攻撃ってことになるのかな?まあ違和感はないけど。

 そんな風にゲーム的なことを考えていると、先生が声を掛けた。

 

「"アイカ、この辺りがトリニティ寮だよ。"」

 

「はい、先生。武器を取ってきますわね」

 

 そうして空中静止したヘリコプターの梯子から地上に降りて、寮の駐車場へ行き、ロイアルティー号を出庫して予め知らされていた合流地点に向かう。

 

 

 

 もうすっかり日が落ちているというのにガヤガヤ騒がしい声が聞こえてくる。うるさいし先に片付けてしまおうかと思い始めたところでローター音がして見上げると、シャーレのロゴの入ったヘリが降下体制に入っていた。

 

「わざわざ取りに行く武器って何かと思ったらこれ……え、これが使ってる銃なの?」

 

「銃っていうか砲じゃない……?」

 

「ティーパーティーの一年生にポンポン砲を操る凄い生徒がいる、という噂は聞いていましたが……実際に見るのは初めてです」

 

「ええ、銃といいますか、正確には対空機関砲に分類されますが……れっきとしたあたくしの愛銃ですわ」

 

 まあこの反応は予想はしてたけどね。

 

「"よし、遅くなる前に済ませよう。"」

 

「はい!」

 

 それじゃ、任務開始と行こうか。

 

 

 

 

 

「私たちの勝率はかなり高い、自信を持って行こう」

 

 ユウカのその声を合図に、上空で待機している先生を除いた全員で騒がしい不良生徒の方へと向かう。

 

「おうおうなんだよてめぇら!ここはドスドスヘルメット団の縄張りだぞ!邪魔するやつはドスドスしてやる!!」

 

 ドスドスするってなんだよ。後方でも聞こえるような不良の叫び声に呆れつつポンポン砲に給弾ベルトをセットする。

 

 さて、前衛4人が応戦中。相手は数だけはいる、その数ざっと100人前後……でも、ただそれだけだ。練度や統制で言えばこちらが圧倒的に優位にある。そうやって戦況を分析しつつ連射する準備を整えた。

 

〈先生、射撃準備が完了しましたわ〉

 

〈"アイカ、やっちゃって。"〉

 

「対空砲員、総員厳戒態勢!……まあ、あたくしだけですが」

 

 クランクを回して敵の集まっているところへ対空砲弾を叩き込む。14発連続、1発でも並の生徒ならダウンするところをやったら当然。

 

「すごっ……」

 

「相手はほぼ全滅ですね」

 

 立っているのは爆心地から離れた十数人。もはや趨勢は決したも同然だが。

 

「こんな攻撃でも逃げやしねぇ!ドスドスヘルメット団は退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」

 

 そんなどっかの聖帝みたいなことを言い出したところに40mm2ポンド砲弾をもう一斉射ぶちこんでおく。

 

「ぐほあっ!?」

 

「よ、容赦ねぇ……がくっ」

 

〈"と、とりあえずこれでおしまいだね。近くに待機してもらってるヴァルキューレに後は任せようか。"〉

 

「はーい」

 

 そして、僕ら6人を集めて、低空にいるヘリから指示を出していた先生が降りてきた。

 

「"皆、お疲れ様。大きな怪我とかはない?"」

 

「はい、大丈夫です」

 

「問題ないわ」

 

「"良かった。それじゃ任務は終わりだね。トリニティの近くだけどスズミとアイカはどうするの?"」

 

「私はこのまま帰ります。アイカさんは?」

 

「あたくしもこのトラックで寮まで戻りますわ。皆さまお疲れ様でした」

 

「"そっか。またね"」

 

 ヘリに乗り込む先生達を見送った後、スズミと二人になって。

 

「えっと、守月先輩も寮、ですの?……乗ります?」

 

「そうですね……では、お願いしてもいいですか?」

 

「はい、大丈夫ですわ」

 

 そうして、スズミと二人でロイアルティー号に揺られて寮に戻り、今日一日を終えることとなった。

 




2章は少し短めですがここまでです。短いながら色々と重要な出会いがあったりします。
次話である3章01は区切りのためまた一日お休みとさせていただきます。
……と思いましたが。本編お休みは変わりませんが、オリキャラ三人組についてのまとめを投稿しようかと思います。それに合わせて過去話後書きのキャラ紹介を簡略化しますのでご了承ください。
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