騒がしいお茶会の翌日、寮を出て校内へ向かう。夏休み前の試験も終わったし、授業はほとんどないのでティーパーティー傘下組織の訓練のための登校だ。
「アイカちゃんおはよう~」
「おはようございます、アイカ」
「ええ、お二人ともごきげんよう」
正門に入って少ししたところでマアサとマイハと合流して、雑談しながら演習場へ向かう……と、そこにスーツケースを提げた大人が近づいてきた。
「"アイカ、おはよう。"」
「あら、先生。もしかしてこれから補習授業部へ?」
「"そうだね、そっちの二人は……。"」
先生はそう言ってマアサとマイハを眺める。そう言えば結局まだ会ってなかったんだっけ。
「へー、この人が先生なんですか~」
「思ったより普通ですね」
二人は物珍しそうに先生の姿を見ている。ロボットや動物っぽくない、僕ら生徒に近い感じの大人は学校地区ではあまり見ない存在だからだろうか。
「お二人はあたくしと同じくティーパーティーに所属していて、士官候補生……簡単に言うと一年生のまとめ役を務めておりますの」
「"そうなんだ、すごいね。"」
「わたしは土御門マイハです~よろしくね、先生~」
「私は炎谷マアサ、よろしくお願いします」
「"よろしく。それじゃあ、私は補習授業部の方に行ってくるね。"」
そう言って早足で駆けていく先生を見送ったら、二人は何か気になる様子で僕を見ていた。
「アイカちゃん、補習授業部って何~?」
「そうですね、私も気になりました」
やっぱりそこか。昨日の会談に同席してなかったし、補習授業部自体そこまで広く伝わってないみたいだしね。
「そうですわね……。昨日、先生とナギサ様、ミカ様の会話で聞いたことですが、成績が悪くて落第しそうな生徒が四人いるから先生が面倒を見て成績を改善させてほしいという趣旨の部のようですの」
「そうなんだ~。でもそんな部活動、入学説明にあったかな~?」
「私も記憶にないですね」
やっぱりマイハは鋭いな、これが常設されている訳じゃないってことに気づくとは。
「何でも、必要に応じて臨時に創設されるもので、今回はシャーレの権限も利用しているとか」
「ふーん……それの発案は?」
マイハの語尾を伸ばす癖が無くなり、少し声色も変わる。どうやらかなりシリアスな様子だ。
「そうですわね……シャーレの先生への協力を考えたのはミカ様、だったと思われます」
「じゃあ、補習授業部自体は……ナギサ様、かな?」
今までの話だけでそこまでたどり着くか、恐ろしいな。
「……おそらくは」
「やっぱり」
マイハは合点が行ったようだけど、その後すぐに悲しげな表情をした。そこで僕ら二人で話を進めているのを聞いていただけだったマアサが口を挟む。
「二人とも、一体何の話を?」
「マアサちゃん、アイカちゃん。その補習授業部って部活動……裏に何かあると思う」
はい、確実にありますね。
「ナギサ様に直接聞いた方がいいですか?」
そうマアサが聞くと、マイハは首を横に振る。
「うーん、やめた方がいいと思う。……アイカちゃん、その補習授業部のメンバー4人って誰か分かるかな?」
「先生なら名簿を持っているのでご存じかと」
本当はちゃんと全員知ってるけど、今ここで言うとどこで知ったんだという話になるので間に先生を挟ませてもらう。
「じゃあ、その4人の名前が確認できたら、まずは知人とかを当たろっか。補習授業部……ナギサ様がどんなことを考えてるのか確かめないと」
補習授業部に関与していくつもりってことか。うーん、僕は正直あんまり原作改変するような事態は控えたいんだけど……でも、ナギサが疑心のあまり暴走しつつあるのを放っておくわけにも行かないし……。
「あたくしも、フィリウス派としてナギサ様が何をしようとしているのか知る必要がありそうですわね」
「私はどちらでもいいですが……二人がやる気ならついて行くくらいはしますよ」
「じゃ、決まりだね~」
そうして、三人で独自に補習授業部について探ることになった。
◇
そして、訓練の方はというと……ずっとポンポン砲を撃つだけというのもどうかと思って、前衛で戦う練習もしている。
「くっ、また避けられっ……にぎゃっ?!」
ショットガンを撃ったが大方外れて、その装填中に銃弾が頭に命中する。そこそこ痛い。
「隙が大きすぎますよ」
お相手はマアサ。相変わらず動きが機敏で、中々当てられずジリ貧になっていく。
「なら、これでっ……!」
「おっと……一発当たると中々痛いですね」
それでも狙いを澄ましてなんとか命中させる。あちらは戦後直後のボルトアクションライフルでこちらは18世紀の前装銃だから、やっぱり不利な上にマアサ自身も強いので全然勝てないけど、まあツルギを相手にするよりかはマシだろう。
「ほら、もう一発、ですわっ!」
「ぐうっ、効きますねこれは……でも、ここからですよ」
「なっ……」
すばしっこく動き回るマアサに対して軌道を予測して散弾をばらまく。かなり当たったはずだけど、相手のダメージはそれほど大きくなく、逆に次弾装填の隙を狙って銃弾を撃ち込まれた。
「まだ、まだ……!」
ショットガンの真価はゼロ距離射撃にある。ふらついたところを何とか耐えて装填し直し、マアサがトドメに距離を詰めてきたところを狙って。
「これで終わりで……っ!?」
「せめて道連れですわ……!」
至近距離で最後の一発を撃って終わりにしようとしたマアサに、思いっきり散弾をぶちまける。それが効いたのか確認する前に.303弾が頭に命中し、僕はそのまま気を失った。
◇
「アイカちゃん、ようやくマアサちゃんに引き分けられたんだね~」
「ようやくとは何ですのよ、全く……」
結果はマアサが散弾をモロに食らったことで倒れ、僕も言わずもがな気絶したので引き分けだった。
「これまで私に勝ててなかったじゃないですか」
「それはまあ、そうですけれど……」
マイハの焼いたミルクビスケットを食べながらうつ向く。面と向かって言われるとちょっと心にクる。
「そういえば、二人は夏休みどうするの~?」
「いきなりですわね……?!」
夏休み、ねえ……。とりあえず何週間かは実家に帰って手伝いとかする予定だけど、それ以外は特に決まってないな。
「私は別にこれと言って予定はないですね。このグループで何かしたいのであれば行きますが」
「あたくしは実家に帰るつもりですわね。さすがに夏休み全部実家というわけではないですから、この三人で集まりたいのならスケジュールの調整はしますわよ」
「ふうん、わたしはせっかく夏だし海に行きたいな~って思って。アイカちゃんとマアサちゃんともできれば行きたい~!」
なるほど、確かに海行きたいね。でも水着はどうしたものか、ぶっちゃけ学校指定の水着くらいしか持ってないんだよね。
「水着、買いに行きましょうか?」
「わざわざ買いに行くものなんですか?スクール水着で別にいいと思いますが」
マアサ無頓着過ぎない?せっかくのチャンスなのにかわいい水着欲しくないの……?
「もう、マアサちゃんってば~。わたしが選んであげるから一緒に行こうよ~」
「そこまで言うなら、お好きにどうぞ」
そうして、三人で水着を買いに行くことが決まった。マイハもマアサも美少女だし、その水着姿か…楽しみ。