ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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04 調査

 いつも通り訓練を終えて、休憩の時間。マイハが作ってきたシフォンケーキを紅茶と一緒に食べながら情報共有をする。

 

「先生が言ってた補習授業部のメンバー、阿慈谷ヒフミ先輩、浦和ハナコ先輩、白洲アズサ先輩、下江コハルちゃんの四人みたいだよ~」

 

「ヒフミ先輩も補習授業部だったんですか」

 

 マアサは驚いた様子だった。この前会った時の印象はモモフレンズに熱中しているだけの普通のトリニティ生って感じだったし、こういう措置が必要なほど成績が悪そうには思えなかったんだろう。

 

「そうみたいだね~。それじゃ、その四人の交遊関係について確認していくね」

 

 と言っても、僕は前世知識で大体知ってるし本当に何も知らないのはマアサだけだと思うけど。

 

「まずはヒフミ先輩、補習授業部に入る前は帰宅部だけど結構色んな組織にお友達がいるみたい。ナギサ様のお気に入りの友人って声も聞くね」

 

 モモフレンズ仲間の友人だったりするのだろうか?でも結構コミュ力ある方に見えるしモモフレンズ関係ない友達もいるのかもしれない。

 

「次はハナコ先輩だね。特に派閥に所属してるわけではないけど、時々シスターフッドの人たちと話してるのを見るらしいよ」

 

 派閥争いなどの謀略に嫌気が差していたハナコが、聖堂で行われる授業に水着で現れるなどの奇行をしながらもシスターフッドと懇意にしている意図……一体なんだろうね。

 

 秘密主義的でトリニティの政治にあまり関与したがらない組織の特性から?あるいは懺悔を聞いたり、お祈りをしたり、ボランティアをしたりという活動に惹かれたから?

 

「次はアズサ先輩だけど……中途半端な時期に転入してきたってこともあってあんまり交遊関係はないみたい」

 

 まあそうだよね。アズサ自身もそこまで口数が多いタイプではないし。

 

「最後にコハルちゃんだね。この子は他の三人と違って帰宅部じゃなくて正義実現委員会の所属で、一番話が聞きやすいと思うかな」

 

「ふむ、そうですわね……誰の周囲からあたるのがよろしいでしょうか」

 

「シスターフッドのハナコ先輩か、正義実現委員会のコハルか……のどちらかが目的地としては分かりやすいでしょうか」

 

 僕としてはどこからでもいいけど……マイハはどうなのかなと思って見ると、残ったシフォンケーキを全部自分の皿に持っていって食べていた。

 

「もぐ……もぐ……あ、どこからがいいかだよね~。とりあえず、わたしは正実でコハルちゃんについて聞いてみるのがいいと思う~」

 

 ちゃんと飲み込んでから喋る辺り、やっぱりマイハもお嬢様なんだなぁと考えて、それから。

 

「あたくしはそれで大丈夫ですわ。マアサさんはいかが?」

 

「私もいいですよ」

 

「よし、それじゃ片付けたら正実の部室にしゅっぱーつ!」

 

 皿や茶器をしっかり片付けたら、早速正義実現委員会の部室がある棟へと足を運んだ。

 

 

 

 

「コハルについて、ですか?」

 

 そしてやってきた正実。そこには副委員長のハスミと静山マシロ、その他何名かの部員たちがいた。

 

「はい、補習授業部について調べたらコハルちゃんが入っていると聞いたので~」

 

「そうですね……」

 

 ハスミは少し考え込んで、話し始めた。

 

「確かにコハルはお世辞にも成績が良いとは言えませんが、やればできる子だと信じています。彼女は憧れていた正義実現委員会としての活動に気を取られがちであまり勉強できていなかったのかもしれませんが、しっかり集中して勉強に打ち込める環境であればすぐに合格して復帰できると思います」

 

 ハスミはコハルのことを信頼しているようだ、というのはその口ぶりから見て取れた。

 

「コハルさんのこと、信じていらっしゃいますのね?」

 

「はい、正実での活動においてもコハルは……戦闘面で見ると一年生としても強いというわけではありませんでした。後方支援も重要な役割なので、その辺りは気にしていませんが」

 

「要するによわモゴモゴ」

 

「マアサちゃん?話の途中だよ~?」

 

 いつぞやみたく口を手で塞がれるマアサ。まあ今のは静かにさせて正解だろう。一瞬「?」という表情を浮かべるハスミだが、気にせず続けた。

 

「ただ、コハルには揺るぎない正義があります。弱いものいじめを許さず、そういった場面に出会ったら助けるという、『正義実現委員会』という名を冠するこの組織において見失うべきでない本質が。そういう意味では、私はコハルを信じていますし、とても期待しています」

 

「私もハスミ先輩と同じく、コハルさんは正義実現委員会に必要な人材だと思います。頑張って勉強して、なるべく早く委員会に復帰してくれるといいですね」

 

 マシロもハスミに同意する。これを伝えたらコハルは喜ぶだろうか、それとも頑張らないとと気合いを入れ直すだろうか。そう考えているとマイハが口を開く。

 

「はい、わたしたちもできる範囲で補習授業部のお手伝いをしようと思ってて~。早く戻ってこれるようサポートしたいと思います~」

 

「そうでしたか、是非コハル達のことをお願いしますね」

 

「はい、承知しましたわ」

 

 そうして正義実現委員会での話を終えようとしていると、マアサが一言。

 

「そう言えば、ツルギ委員長はどこに?」

 

「ツルギですか?イチカたちと任務に出ていますよ。もし話がしたいのであれば、しばらく待っていただければ戻ってくると思いますが……」

 

「いえ、少し気になっただけなので。私達は他のところで補習授業部メンバーの調査を続けます」

 

「そうですか、ではお気をつけて」

 

 今度こそ話を終えて、その建物を後にしてから2分くらい後。奇声と共に高速移動する人影と、その後から困った顔で歩いて正実の部室に向かう仲正イチカと正実部員の姿が見えて間一髪だったなと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 次にやってきたのはシスターフッドの本拠地である大聖堂。

 

「ハナコさんについて、ですか?」

 

 出迎えたのは若葉ヒナタ。シスターフッド内ではその腕力を生かして重い荷物の運搬などを担当している。現在も梱包で保護された銅像らしきものを運んでいる最中だった。

 

「はい、あたくし達は補習授業部という部活について調べておりまして。そこに編入された一人として浦和先輩の名前が挙がっておりましたの。彼女はシスターフッドと交流があると聞いて訪ねました」

 

「補習授業部、ですか……。一年生の時のハナコさんの成績だと考えられないことですね……」

 

「何かご存知なのですか?」

 

 そう聞くと、ヒナタは深呼吸して語り始めた。

 

「各派閥やティーパーティーから勧誘されるほど頭脳明晰で優秀だった彼女ですが、ある日を境に礼拝堂の授業に水着で現れるなどの奇行が目立つようになり、二年生に上がってからは成績も落ちていると聞きました」

 

「ふむふむ……」

 

 隣のマイハを見ると静かに、しかしひたすら素早くメモ帳に書き込んでいた。あんな速度で書いてて字が全然乱れてないのすごいな。

 

「……きっと何か悩みがあるのだと思います。でも私はそういった話を聞いて力になることは得意ではなくて、どうすることもできず……」

 

「そういった経緯がありましたのね……。補習授業部で、何か答えを得ることができるといいのですが」

 

「そう、ですね……」

 

 ハナコについての調査はそのくらいにして、そろそろ次に行こうかと考える。

 

 

 

 

 シスターフッドでアズサについて聞いたところ、思った通りとある情報が入っていた。

 

「マイハに任せるんですか?」

 

「ええ、今回の相手は多人数でいきなり接触されると恐怖感を覚えるかもしれませんので。あたくし達はティーパーティーの傘下組織という立場ですからなおさらですわ」

 

 そう、アズサについては彼女がいじめから助けたというある生徒に聞き込みをするつもりだ。何しろ転校してきたばかりで交遊関係が少ないもので、確実と言える相手はこれくらいだった。

 

「二人とも~ちゃんと話聞けたよ~」

 

 そうこうしているうちにマイハが戻ってきて。

 

 

 ◇◇

 

 

『一人を大勢でよってたかって……気に入らないな』

 

『転校生?何よ、その子の仲間?』

 

『いや、名前も知らない』

 

『じゃあ何のつもり?』

 

『ただ……卑怯な行動を見逃せなかっただけだ。これ以上何かするつもりなら、実力行使に出させてもらう』

 

『正実でもないくせに生意気な……!ちっ、後で覚えてなさいよ!』

 

 

『あ、あの……!ありが……』

 

『あ、用事があるから急がないと。じゃあね』

 

『は、はい……』

 

 

 ◇◇

 

 

「……ってことがあったみたい。それでその後アズサ先輩に注意された人が正実に歪曲して伝えて、出動した正実の部隊と弾薬庫に立て籠りながら3時間にわたる戦闘を繰り広げてたんだって~」

 

 悪い人じゃないのはわかったけど、すごい人だね~と締めるマイハ。まあ正実相手にそんな大立ち回りするのはヤバいよね。

 

「さて、ラストは阿慈谷ヒフミ先輩ですわね……」

 

 アズサとは逆に交遊関係が広いからどうしたものか……。

 

 

 

 

「んー?ヒフミちゃんのこと聞きたいのー?おけまるー」

 

「あの子さ、モモフレンズ愛やばたにえんだよね☆もうクラスの外でもペロロラブで通じちゃうし☆」

 

 そうして結局、ヒフミと同じクラスの生徒に聞くことにした。というかお嬢様学校のトリニティにもこんなガチガチのギャル系いたんだ。

 

「うんうん、それで補習授業部っていうクラスに入れられたみたいなんですけど、ヒフミ先輩の成績ってどんな感じなんですか~?」

 

「えーマジ、補習授業部ー?ヒフミちゃん、小テストとかそんな点数悪くなかったけどなー」

 

 まあ一次試験でも一人だけ普通に合格してたし、そこそこはできたんだろうね。

 

「あー、あれじゃね☆テストブッチしてたじゃん、それで0点扱いとか?」

 

「マジヤバだよねー。たしか後で聞いたらペロロライブ行ってたんだっけ、ウケるーいやウケねー」

 

「アタシらでもテスト放置でアイドルのライブは無理ぴ☆そこまで命掛けられんわマジでぇ☆」

 

 なんかギャル会話聞いてたらちょっと頭痛くなってきた。マアサは興味なさげにゲームの攻略本読み出したし。

 

「命掛けてるっつったらヒフミちゃんさ、確かブラックマーケットとか行こうとしてなかったー?」

 

「ペロログッズ買いにだっけ、でもマジでは行かんっしょ☆だってあそこ学園から行っちゃダメって言われてるし、危ないよ☆」

 

「だよねー」

 

 校則律儀に守ってたりライブよりテスト優先だったり、言動がギャルだけどやっぱりトリニティに通うだけあって根はお嬢様なのか……?

 

「なるほど……情報提供感謝致しますわ」

 

「別にいいよー」

 

「アタシらめっちゃ暇だし☆」

 

 これで四人についての情報が出揃った。ギャル二人に別れを告げて、近所の喫茶店に集まることにした。

 

 

 

 

「むーーん……」

 

 マイハは自分のメモを見返しながらひたすら考え込んでいた。僕は大体知ってるので適当にスイーツと紅茶を頼み、マアサは別のゲームの攻略本を見ている。

 

「……やっぱり。……そっか」

 

 マイハは少し悲しげに納得した様子だった。

 

「何か分かりましたの?」

 

「うん……あの補習授業部。ナギサ様が怪しいと思う人を寄せ集めて、閉じ込めようとしてるんじゃないかな……って思うの。急に成績が落ちて奇行に走る才媛とか。中途半端な時期、しかも大事な条約の直前に来た転校生とか。ブラックマーケットに出入りしてるって噂がある生徒とか。……それだけ聞くと怪しさ満点だもんね」

 

「そうなんですか?」

 

 だいぶ正解に近いな。聞き込みで得た情報だけで自力でここまで辿り着くのは中々すごい。多分僕だと前世知識がなかったら無理だっただろうね。

 

「あくまでわたしの予測だけどね、それに閉じ込めて何をするつもりなのかは分からないよ。……でも、あの四人にとって良くないことをしようとしてる可能性が高いんじゃないかな」

 

「それが仮に真であるとしたら、何のためにナギサ様はそのようなことを……?」

 

 マアサが質問すると、マイハは普段見せないような厳しい表情を崩さず言う。

 

「エデン条約がもうすぐ調印式でしょ?だから、邪魔な生徒は一ヶ所に固めて監視しておこうってことじゃないかなって。わたしはヒフミ先輩しか直接会ってないけど、話を聞いてる限りじゃそんなことをするような人たちじゃないと思うんだけどな~」

 

 マイハの推察通り、補習授業部の四人はエデン条約の妨害をしようというつもりはないだろう。ナギサの疑心の暴走の結果というわけだ。

 

「確かに、それなら普通に成績の悪い生徒を個別指導すれば済むものを、わざわざ補習授業部という枠組みを引っ張り出してきたのも腑に落ちますね」

 

「どうしましょうか、この調査結果は……」

 

 補習授業部の面々にバラす?しかし、それは混乱を生むだけに終わりそうな気もする。

 

「うーん……今はまだこの三人だけに留めておこっか~」

 

「そうですか、別に私は何でも良いですが」

 

「今これを誰かに言ったところで、逆に怪しまれるだけでしょうからね……あたくしもその意見に賛成ですわ」

 

 そうして訓練後の午後の時間を費やした補習授業部についての調査は、ある一つの結論に達したのだった。

 




ここら辺からしばらくシリアスな感じが続きます。
それにしても、人当たりが良くてハナコほどではないにせよ賢いマイハは話を動かす上で便利すぎる。
この子(あとマアサも)、実は1章の前半部書いてる時は影も形も無かったのでそのまま行ってたら話を作るのに結構苦戦してたかもしれませんね……。
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