ティーパーティーの田舎令嬢   作:サンタクララ

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15 懐かしき夏の日々

 まずは持ち帰ってきた荷物を家に入れて整理する。当然お土産も用意していて、トリニティの生徒の間で人気の紅茶やお菓子、そして高級文房具などを買ってきている。

 

「あれ、そういえばアイカ、その服は?入学式の時に着てた制服とは別のものみたいだけど」

 

 母が僕の白いセーラーワンピースを見て言う。入学してしばらくに着ていたターコイズブルーの襟のセーラー服は、寮のクローゼットに仕舞ってある。

 

「これはね、トリニティのティーパーティーの制服っちゃん。あたし、なんか知らんけど優秀らしくて、ティーパーティーの傘下組織に入ったとよ。そこで士官候補生って役職も貰ったし」

 

 まあ、実際のところはナギサが僕たちのことを縛るために支配下に置いたって形だったわけだけどね。それでも、マイハやマアサと出会って友達になれたし、結果的には良かったと思ってる。

 

「おお、それはすごいじゃないか!ティーパーティーって確かトリニティの生徒会だよな、一人娘がこんなに出世してくれるなんて嬉しい限りだ」

 

「あ、忘れとったけどこれ、お土産。あっちで人気の紅茶とかお菓子。それとね、万年筆と文鎮にペンケースとか色々……あっちの老舗で買ってきた文房具、お父さんとお母さんにあげるけん、使ってね」

 

「そんな気を遣わなくていいんだぞ、アイカが無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいし。でも、ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 

 そうしてお土産のお茶菓子を食べながら、この4ヶ月の間にトリニティで体験したことを話す。

 

 入学早々不良に絡まれたけど、持っていった予備の猟銃で返り討ちにしたこと。

 トリニティのトップであるティーパーティーホスト・桐藤ナギサ直々の面接を受けて合格し、ティーパーティーへ入会したこと。その時に拳銃と一緒に支給されたのがこの制服であること。

 また出掛けたときにチンピラに絡まれたけど、ポンポン砲で全員蹴散らしたこと。

 連邦生徒会長によって創設されたシャーレに先生と呼ばれる大人が着任したこと。そしてナギサの指示で、ある先輩と一緒に陰ながら先生の支援をしたこと。

 

 先生と実際に対面して、その仕事を手伝ったり。トリニティの治安維持部署・正義実現委員会の委員長と訓練するはめになったことや、シスターフッドの長と話す機会を得たり。そして、トリニティでできた友人とお出掛けを楽しんだこと。

 

 先生とティーパーティーの会談に同席したり、友達と一緒に水着を買いに行ったりしたこと。それから2~3週間くらいの間、ナギサが作った補習授業部の騒動に巻き込まれていたことも。

 

 ……この何ヵ月か、本当にいろんなことがあった。それを聞き終えて、父は。

 

「そうかそうか、色々と大変だったんだなぁ……。実を言うと、アイカが戻ってきたから収穫とかを手伝ってほしいと思って、今日の午後にでも始めようと思ってたんだけど……」

 

「だけど?」

 

「今日明日くらいは休んでてもいいよ」

 

 正直に言うと、かなり助かる。この前までずっとあんまり心が休まらなかったから、実家に戻ってくるってなって完全に気が抜けちゃっていて。すぐには仕事をする気にはなれない。

 

 

 

 

 それから、大体トリニティでの出来事を話し終えたところで、両親は仕事……つまりは収穫作業に戻っていった。

 休んでいていいということだったし、自分の部屋に戻って久々に部屋のピアノを弾いていると、ふと思い出した。

 

「そういえば、リマーカブルどうなったちゃろ」

 

 専用の操作端末を持って外に出て、湖の方へ行くと、そこには。

 

「敵……じゃなかった、味方の空母を発見!」

 

 堂々と湖に浮かぶ、元漁船の空母がいた。タブレットで操作して波止場に横付けするように指示を出すと、ゆっくりとぶつからないように動いて、停泊した。

 

「うふふ、いい感じ。中に入って……」

 

 試験運転と行こうか。まずは航空機のパネルを開いて、搭載している爆弾を演習用に換装するよう命令を出す。続いて、近くの空き地を爆撃地点を指定して全機の換装が済んだら10機が発艦するように指令。艦橋のマストについている船体俯瞰カメラからの映像を見ると、エレベーターが稼働してソードフィッシュを甲板に上げて、発艦させている様子が見える。

 

「うんうん、素晴らしい!造船工学部の人たち、本当にいい仕事しとうね」

 

 機体の方に取り付けられたカメラからの映像。20機全部の映像は煩わしいので、5機ごとに1機の計4機だけカメラが付いている。

 最初に発艦した先導機は他の機が合流するまで上空で旋回しており、チラチラと空母が映る。

 そして5機が発艦を終えると編隊を組み、爆撃地点へ向かう。

 

 一旦船外に出て、次の部隊が発艦するのをスマホで撮影する。撮れた映像を見返すと、無加工でも映画などのシーンに使えそうなクオリティだった。いやー、本当に素晴らしい。

 コントローラーの方を見るといつの間にか目標地点近くに到着していて、『まもなく爆撃開始』という表示が出て分かりやすい。

 

 10機が爆撃を終えたことを確認したら、爆撃地点にしていた空き地に行って演習弾を回収、母艦の格納庫に戻して空母で湖内を何周か航行し、試験運転は終わりにした。

 

 

 

 

 

 

 そうしてゲームをしたり、ピアノを弾いたり、空母で遊んだりしているうちに二日間はすぐに過ぎて、仕事を手伝い始める。髪がそのままだと邪魔なので、ツインテールにしてまとめた後三つ編みにした。服装も汚れていいようにサロペットを着て、麦わら帽子を被って日差しを防ぐ。

 その姿を鏡で見ると、なんと言うか……ガチの田舎娘って感じだ。これを見てトリニティのティーパーティーですなんて言っても半分以上は信じないだろうね。

 

「アイカはブドウの収穫をしてくれ、商品にできるのとそうじゃないのは大丈夫だよな?」

 

「うん、わかっとうよ」

 

 中学一年生の時から跡継ぎとして本格的に選果作業なども教えられて、しっかり頭に入っている。4ヶ月ほど実家を離れていたけど、畑に入れば自然と頭に浮かぶし、体も憶えている。とても懐かしい感覚だ。

 

「これは……サビ*1があるけんダメやね、こっちは粒が不揃い……これは……うん、艶があって良さげ」

 

 そんな感じでブドウ一房一房にハサミを入れて籠に分ける。縁が赤い籠はワケあり、青い籠は贈答用の良果を入れていく。

 

「これもキズが……こっちは全体的に粒が小さい……」

 

 当然と言えば当然だけど、青い籠は中々埋まらない一方で赤い籠はどんどん増える。ただ、数が少なくて品質が良い分、青い籠に分けたものはかなり高値で売れる。まず一房1万円は下らないし、大粒で瑞々しい、一際甘い果実だけを厳選したブドウはトリニティ総合学園になんと一房100万円で競り落とされたという実績もある。多分ティーパーティーが来賓用に購入したものだろうね。

 

 ちなみにうちではブドウの他にもイチゴやカキ、ミカンを栽培していて、去年からはメロンの生産も始めている。

 採れた果物の多くはトリニティの中心街のフルーツショップや飲食店に卸されて提供されており、あっちのお店で実家のイチゴを見た時は誇らしくて嬉しくて、決して安くないのに買ってしまった。もちろんとても美味しかったけど、何より実家で食べなれた味ですごく安心した。

 

 

 

 

 そんなこんなで初日の農作業を終えて、夜。夕食も食べ終えて自分の部屋で寝転がっているとモモトークの通知が来た。

 

「相手は……マイハ?どうしたっちゃろ」

 

 見てみると、どうやら「そろそろ海に行こうと思ってるの>∀< アイカちゃんの都合のいい日を教えてほしいな^-^」とのこと。

 そういや、実家に戻ってからはすっかり忘れてたよ、海に行こうって言ってたこと。一応あの時買った水着含む海用品は実家に全部持ち帰ってはいたけど……。

 

「明日の朝にでも相談しよっかねぇ……」

 

 両親に行って大丈夫か、いつが良いか明日聞くと返信して、マイハから「了解ー^^」と返ってきたのを見て寝ることにした。

 

*1
果実で茶色くくすんだ見目の悪い部分。果物によって原因は異なるが、ブドウの場合は主に花冠が灰色カビ病に感染したことが原因。これを減らすために、結実後に花冠を処理する。




どうでもいい報告ですが……本命はミカナギサの復刻かセイアの新規実装なので天井分石貯めしていて、今のガチャをそれぞれ10連だけお試し感覚で引いたらなんかヒヨリが出ました。いぇい。
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