そうしてさらに二日間、放課後スイーツ部と共に農作業を進めた。彼女たちに任せられているのは初日と変わらず運搬などの単純作業だが、それでも効率は目に見えて上がっていた。
「さて、皆。今日一日は休みということにするから、中心の方に一回戻ってまた明日の昼くらいに来てくれるかな?」
「はーい」
そう、今日は作業無しで休日。慣れている僕や両親はともかく、今まで農業に縁もゆかりもなかったであろうトリニティ生のアルバイトたちには、連日働かせるのは辛いだろうということで親が元々そう計画していたらしい。
一旦帰るという放課後スイーツ部の四人を見送った後、父が僕に言う。
「さて、アイカも出るんだろ?友達と海に」
「うん、準備済ませとうよ。そろそろ行こっかな」
そうして、昨日のうちにボストンバッグにまとめておいた荷物を手に取る。中には水着や着替え、タオルに財布の他に懐中電灯や非常用充電パックなどもしもの時の備えもある。あと、お弁当と採れたての果物に無糖紅茶も入れた、小さめのクーラーボックスも。
ちなみに、目的地である無為ヶ浜への交通手段は、というと……。
「うふふ、やっぱこれがよかよ」
リマーカブル号である。もちろん航空隊もいつでも発艦準備ができるように整備してある。
「砂浜だとロイアルティー号は入れんけんね、仕方なか」
ロイアルティー号は置いてくるという判断。当然トラックとセットであるポンポン砲も使えないので、その代わりにというか、一度家に持ち帰ってきたブラウン・ベス銃をまた外に持ってきた。
いやー、あれ元はただの予備だったのに、使ううちに結構馴染んできたんだよね。最初に銃撃戦になったときもあれで敵を撃退したし、もうポンポン砲と同じくらいの相棒だよ。
◇
1時間くらい船に揺られて、ようやく無為ヶ浜の波止場に到着。タブレットと荷物、銃は先に船外に出しておいて、沖合いで待機するように指示を出した。
集合場所の最寄り駅前に行くと、私服姿のマイハとマアサも待っていた。マイハは青白のストライプ柄ワンピースで、マアサは白い薄手のブラウスに黒いキュロットパンツというシンプルな格好だった。
「あれ、アイカちゃんどこから来たの~?」
「いつものトラックですか?でも、駐車場は反対側だった気が……」
そう、普通ならここに来る手段は二人が用いたと思われる鉄道か、自家用車の二択。そのどちらでもないとすれば一体何があると言うんだ、という話になる。
「船ですわ。ロイアルティー号は砂浜での動きに不安が残るので置いてきましたの」
「船って言うと、もしかしてあそこにあるの~?」
そう言ってマイハが指さした先には、先程の指示通り沖合いに浮かんでいるリマーカブル号の姿がある。
「艦影からして、空母に見えますが……」
「はい、ミレニアムの造船工学部に漁船から改造していただきましたのよ」
「うわ~さすがミレニアム、すごい魔改造だね~」
若干引いてる二人。まあ、うん……その気持ちは分かる。あれ元は普通の漁船なんですよとか言われたら、何も知らなければ僕だって何言ってんだこいつってなるだろうし、ね。
「ま、それは置いておいて。早く水着に着替えましょうか」
そう言って歩き出すマアサに頷いて、浜辺にある更衣室へと向かった。……覗きは禁止ですよ?
◇
着替え終えて三人で集まる。この前試着した時と水着自体は変わらないけど……。
「あら、マアサさんは髪を結んだんですのね」
「それを言ったら、アイカの方も結んだままじゃないですか」
マアサは動きやすいようにだろうか、髪を結んでショートツインテールにしており、なんかいよいよもって子供っぽい感じになっていた。僕の方も、実は朝に手癖で三つ編みツインテールにしたのをそのまま出掛けてきたもので。でも、いつものストレートだと邪魔になるしいいかと思って結んだままだ。
「さてと、じゃあまずは何しよっか~?」
そうマイハが言った瞬間、遠くの方から何か聞こえてきた。
「……へへ…!!きひゃひゃひゃひゃひゃひゃーーーー!!!」
うーん、この奇声には聞き覚えがあるぞ。しかもろくな思い出がない。
「………場所移そっか。なるべく遠めで」
マイハが顔をひきつらせながら言うのを見て、僕もマアサも首を縦にブンブン振って移動した。
「さてと、じゃあまずは何しよっか~?」
先程のことを記憶から抹消したかのように言い直すマイハ。
いやー、絶対アレってツルギだよね。ってことは真夏のウィッシュリストと被ったのか……。どうしよ、イベント通りなら絶対この後チンピラに絡まれるよねこれ。
「そうですわね……とりあえず、泳ぎます?」
「せっかく水着で来たわけだもんね~マアサちゃんはどう~?」
「私は……」
マアサがそう言いかけて、止める。その原因については……見れば分かるだろう。
「きひゃひゃひゃひゃひゃ!!!海!海だぁ!!くははははは!!!」
「な、なに!?怖いっ!?」
「お、お化け!?お化けよ!!みんな逃げて!!!」
こっちから距離取ったのに来ないでくれるかなぁ!?……ただまあ、それにしてもお化け扱いはちょっとかわいそうな気がしなくもない。でもそれはそれ、これはこれということで……。麦わら帽子を少し前に倒して顔を隠して、二人に声をかける。
「マイハさん、深く帽子を被ってくださいまし。マアサさんもゴーグルを着けて。可能な限り他人を装いましょう」
とりあえず同行しているであろうアズサとヒフミ、マシロに先生が彼女を落ち着けるまではそうしてやり過ごすことにする。幸いにも、ツルギは走り回るのに夢中でこちらに気付かなかったようで、しばらくしたらビーチには静寂が戻ってきた。
「……難は去ったようですね。で、泳ぐんでしたっけ。海に入りましょう」
「そ、そうですわね……」
「ははは……」
マイハも眉をハの字にして苦笑いを浮かべる。せっかくの休みで海に来たわけだし、これ以上何事もないといいんだけど……。
そしてまずは浮き輪を膨らませ、それから海へと入る。三人でただ波に揺られたり、ちょっと泳いでみたり。
「それにしても、マアサさんは泳ぎがお上手なんですのね」
前世ではともかく今世では人並み程度には泳げる僕に、あまり経験がないらしく不得手なマイハ。そして、かなり自在に泳げてゴーグルを着けて潜水までして見せたのがマアサ。
「習い事がプールだったので、泳ぐのには慣れているんです。海での経験はあまりないのですが」
「すごいね~、わたしは見ての通り全然で~」
それにしても浮き輪にハマってプカプカ浮いてるマアサ、マジで高校生に見えないな……。割と深めのところなのに平気で立ってるマイハと比べるとなおさらだ。
「さて、そろそろ上がりま──」
そう言って浜辺の方へ移動するマアサだが、突如として浮き輪が破裂する。この前水着と一緒に買ったばかりだから、劣化で自然と割れたわけじゃないだろう。
「おうおうそこの三人組、誰の許可で泳いでんだ、おおん?」
砂浜から声がして、見ると銃口からまだ煙が僅かに出ているスナイパーライフルを構え、グラサンを掛けた派手な水着の不良集団がいた。ああ、やっぱりそう来たか。
「昨日からここはあたしらのもんだ!ショバ代も払わねぇボンビーには帰って貰おうかぁ?ぎゃははははは!!」
誰がボンビーですか、僕ら仮にもトリニティのティーパーティー所属なんだけど?なんか頭に来たからマアサとマイハを制して、浜に上がってタブレットを取り出してタップして起動、操作してそれから先程のスケバンのところへ。
「ああん?なんだぁ?」
「ショバ代、でしたか?ええ、では貴女方に一万ドルを支払わせていただきますわ」
上空からレシプロエンジンの心地いい音を聞いたら、後ろに跳んで距離を取って吐き捨てる。
「ただし現金ではなく一万ドル分の爆弾で、ですが!」
「は、何を言って、うぼぁっ!?」
僕の言葉に一瞬呆然としていたスケバンは、数秒後にソードフィッシュ航空隊から投下された手榴弾の直撃を食らって気絶した。
「空襲!?いや、なんで砂浜で空爆されるんだよ!?」
「あ、あの飛行機だ!撃ち落とせ!」
そう言って不良たちは航空隊に銃撃するが、ラジコン飛行機とはいえ人間よりもずっと早く動く。それに……。
「おい、なんだよ……!翼に当てたのに落ちねぇ……!?」
ソードフィッシュは布張りの主翼を持つ。いくら銃弾で撃ち抜いたところでただ穴が開くだけだ。落としたいなら機体部分、それも動力部にダメージを与えなければいけないが、練度に劣る彼女たちがそんなことできるはずもなく。
「航空隊、全機帰投確認。損傷の少ない機を中心に第二次攻撃隊の発艦準備。……まだやります?」
暗に投降を促すが、スケバンの一人は鼻で笑って答える。
「フンッ、あの飛行機が来る前にお前を倒しゃいいだけだろ!さっき他の連中に負けたばっかだから汚名挽回しないとだしなぁ!!」
汚名返上か名誉挽回じゃないのかと思っていたら先制攻撃、サブマシンガンの弾が当たる。ちょっと痛い。
「そうですか……その選択、後悔しますわよ?」
相手はそこら辺のスケバン10人、対してこちらは支援爆撃が来るまで堪えればいいだけだし、いつの間にかマイハとマアサの二人も陸に上がって銃を構えている。まあ、楽勝だろう。
「何を、ぐぅっ」
まずは姿勢を低くして突っ込み、目の前のスケバンのみぞおちにゼロ距離で散弾を撃ち込む。
「……浮き輪代、高く付きますよ」
そう言ってマアサはまずストックで殴り、ふらついたところに一発、二発。それで相手は膝から崩れた。マイハも岩場に身を隠しながらヘッドショットを決め、既に1人仕留めた。スケバンサイドの数的有利はどんどん崩れていき、そして。
「マアサさん、避けて!」
「はい」
「おん?げっまた飛行、ぶべっ!?」
到着した第二次攻撃隊の爆撃、それで残りのスケバンは一掃された。
「ふぅ……全く、騒がしい連中ですね」
「それにわたしたちのこと、貧乏なんて言ってたけど失礼しちゃうよね~」
そうして、ふと砂浜を見渡すと何か更衣室よりデカい黄色の建物があるのが見えた。あれ、さっきあんなのあったかな?
「なんでしょう、あの……マイハさん?」
マアサたちの方を見ると、二人して砂浜に座り込んでいた。しかもマイハは銃のスコープを望遠鏡代わりにして例の建物について調べている様子だった。
「あれ、多分ものすごく大きい砂のお城だね~。あとなんでか知らないけど、アズサ先輩とマシロちゃんが中にいるみたい~」
「私の知る砂の城って、もっと可愛らしいサイズのものだった気がするのですが……」
うん……一般的に砂の城と言われて、三階建ての建物くらいのサイズがあるアレを想像するのは無理な話だろう。というか海に入るまでは影も形もなかったのに短時間でどうやって作ったんだ。
「そうですわね……そっとしておきましょう。下手に触りに行って崩したら上から狙撃されますわ」
「ははは、そうだね~……あっ」
そう言って静観を決め込もうとした瞬間、引き続きスコープで覗いていたマイハが呟いた。
「どうしたんです?」
「さっきわたしたちが撃退したスケバンがあっちに向かって……あ、交戦するみたい~」
そういえばさっき、汚名返上だか名誉挽回だか言ってたし……一回あっちで喧嘩売って負けて、こっちなら勝てそうだからとカツアゲしようとしたらまた負けて、今度はあっちにお礼参りしに行ったのか……懲りないな。
「……放っておきましょう。あちらには剣先委員長がいるのですし、返り討ちにされて終わりですわ」
「そうだね~、じゃ改めて次はどうしよっか~?」
そうしてしばらく考えて、それからマアサの発言。
「日焼け止めでも塗ります?ほら、パラソルとシートも持ってきましたし」
バッグから組立式のビーチパラソルとレジャーシートを取り出して設置し、日焼け止めジェルも手に持って準備万端な様子のマアサ。
「さあ、早くしましょう」
……え、マジ?まさかの塗り合いっことかそう言う感じですか?僕、ほぼ忘れかけてたけど一応前世では男なんだけど……。日焼け止めの塗り合いっこなんて女の子同士でキャッキャウフフの空間に入り込んでいいのか……?
ついにやってきました、水着回!そしてまさかの、真夏のウィッシュリストをやってるところにダブってしまったようです。アイカたちの命運や如何に。
下記は水着アイカの概要です。アイカを摘まみたいという先生方のためにSPからSTに移動しています。
名前 アイカ
フルネーム 祇園アイカ(ぎおんアイカ)
レアリティ ★3
役割 STRIKER
ポジション FRONT
クラス アタッカー
武器種 SG(ブラウン・ベス)
遮蔽物 -
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 特殊装甲
学園 トリニティ総合学園1年生
部活 ティーパーティー
年齢 15歳
誕生日 7月10日
身長 161cm
趣味 ピアノ、手芸
基本情報:
トリニティ総合学園所属、せっかくの夏休みだからと海へやってきた、ティーパーティーの一員。
友人の発案で共に水着に着替えて海へ遊びに来た。
それだけなのに度々トラブルに巻き込まれているものの、せっかく楽しんでいるところを邪魔させまいと奮闘している。
EXスキル(コスト4) 第710中隊、出動!
「航空隊発艦!攻撃開始ですわ!」
円形範囲内の敵に対して、攻撃力の402~780%分のダメージ
ノーマルスキル Tally-ho!!
40秒毎に、扇形範囲内の敵に対して攻撃力の178~330%分のダメージ
パッシブスキル 五感を研ぎ澄まして
会心ダメージ率を14~26.6%増加
サブスキル 友人と過ごす思い出
攻撃力を15.1~28.7%増加/同じ部隊にマアサかマイハがいる場合は、18.1~34.4%増加
固有武器:
ファーマーズ・プライド
詳細:
アイカが携行している狩猟用ショットガン。
元々は実家で使っていた猟銃の予備だったが、今回のようにポンポン砲を使えない状況下で幾度となくアイカと障害を乗り越えてきた、もう一人の相棒とも言える存在。