現在、アリウスと通じてティーパーティーホストに対する襲撃及びエデン条約の破壊工作の罪で拘束されているミカ。彼女に対する聴聞会の前日の昼下がり。先生を呼んで主にエデン条約の顛末と後始末について会談を行うということだったので、先生の案内役として同席することになった。
「ナギサ様、お連れ致しましたわ」
「ご苦労様です、アイカさん。そしてお越し下さりありがとうございます、先生。しばらくぶりのトリニティ訪問となりますね」
SRTのことで色々あってRABBIT小隊の面倒を見てたみたいだしね。そして会談の場はいつものベランダではなく同じ棟の別の部屋で、ナギサの他にシスターフッドの長であるサクラコと救護騎士団長にしてヨハネ分派の首長であるミネもいる。
「"こんにちは、ナギサ。それに皆も"」
「またお会いしましたね、先生。先日はお世話になりました」
「……はじめまして。救護騎士団の団長を務めております、蒼森ミネと申します」
三人を見て、先生はなんとも言えない微妙な表情で続ける。
「"うん、よろしく。……なんだか、不思議な組み合わせだね。"」
「ふふ……不思議というか、ナギサさんを困らせる組み合わせと言いますか」
まあのらりくらりと躱すサクラコに、政治なんかより救護にひたすら邁進するミネ。二人はナギサにとってあまり得意な相手とは言えないだろう。
「私はホストを困らせるつもりはありません。信念と誇りを掲げる尊き騎士団の一員として、道を誤った者を正すのみです。例えそれが、正義実現委員会やティーパーティーの生徒だとしても」
そう言いながらミネは一瞬こちらに視線をやり、思わずビクッとする。お願いだから救護パンチは勘弁してほしい、体は何ともないとしても痛みは感じるのだ。
「……そのお言葉が既に、ナギサさんを困らせているように見えますが」
サクラコは困惑した表情でミネの発言を聞いて、そう言葉を絞り出した。
「さ、さて雑談はそこまでにしましょうか。先生をお呼び立てした理由は、この間のエデン条約以降の顛末と事件の後始末について話し合うため……でしたが」
そこまで言いかけて、ナギサはチラッとサクラコとミネを見やり、眉尻を下げて浮かない表情で続ける。
「シスターフッドと救護騎士団のリーダーも出席すると言って聞かず……このような形となってしまいました」
「……シスターフッドも変わりましたので。今後はこういった席には積極的に参加していくつもりです」
「私は『騎士団』団長としての責務を果たすべくここにいるだけです」
ちなみにこの二人は出席が決まるまでにナギサと一時間くらいの問答があったんだけど……まあ、言わぬが吉というやつだろう。
「"えっと……つまり、二人はティーパーティーを牽制するために……?"」
そう先生が問いかけると、二人は首を横に振って。
「いえ、純粋に先生とどのようなことをお話になるのか興味があるだけです」
「私は、そのような政治的なことはよく分かりません」
ふとナギサを見るけど、変わらず何と言えばいいのか迷っているような、そんな表情で。まあ、僕も二人の考えが分かる訳じゃないけど……言葉通り受け取るのは安易だろうね。
「エデン条約の騒動はどうにか収まりましたが、事件の事後処理と状況分析は依然として終わっておりません。そして私たちもこの事件と無関係ではありません……分析の一部はシスターフッドが担当しておりますので。この席は、そういった情報の共有及び事後処理について話し合うためのものだと思っていただければ」
「そういうことです」
「"なるほど……。"」
うーん、空気が重い。先生連れてきた時点でさっさと退室しとけばよかったかな……。
そんな今さら遅いことを考えていると、ミネがなぜティーパーティーではなく彼女たちがいるのかについての説明を始めた。
エデン条約と前後して、パテル分派のトップであるミカがサンクトゥス派の首長であるセイアに対する襲撃を指示、一歩間違えば死亡していたという事件を起こしてトリニティの刑務所へと収監されるという前代未聞の事態。これにより、セイアは一年近くもの間意識を失ったままで……結果的にはアリウスによって利用された形であるものの、それでミカの罪状が完全に消えるわけではない。
そして残る一人、フィリウス派閥のトップにして現在のティーパーティーホストであるナギサもティーパーティーの権限を利用し、超法規的組織であるシャーレまで巻き込んで無辜の生徒を退学に追い込もうとした。ナギサが補習授業部のメンバーたちに直接謝罪してまるく収まったとはいえ、その過程がなかったことになるわけではない。ミネはそこまで説明して、それから。
「……それに、アイカさん。あなた達士官候補生という役職の本当の目的についても、既に聞いたと思います」
「え、ええ……はい」
「自由に動かれると困るような生徒を、一ヶ所に押し固めて抑圧する……その点だけ見れば、補習授業部に対する扱いとほとんど変わらないでしょう」
なんかナギサがかわいそうになってきたので、フォローはしておくことにする。
「ただその、それについてはナギサ様から直接謝罪をされましたし……この役職に就いたことで得た学びも多いですので。それに調印式の時はナギサ様もあたくし達のことを信用して、もし混乱が起きた時のことを任せると言ってくださいましたから……あたくしは気にしておりませんわ」
「……そこまで本人が言うなら、これ以上の追及は無粋というものでしょうか。とにかくそういった事情で、現在のティーパーティーは正常に機能しておらず不安定であり、外部の助けが必要だと私は判断しました」
「……丁寧にご説明ありがとうございます、ミネ団長」
そう答えたナギサの方はというと、反論しようにも結局のところ自分とミカが招いてしまった状況でなにも言えないといった感じで。ミネがナギサに応えて一礼するが、それは礼儀以上のものでなく。先生はなんとも居心地悪そうにしていた。
「ミネ団長はトリニティでも最も古い歴史を誇る部活である救護騎士団のリーダーにして、ヨハネ分派の首長。本来ならティーパーティーに参加する権利を有しております……今までは救護活動を遂行するために、それを断っておりましたが」
「過去の話です」
「さて、そろそろ本題に入りましょうか……この事件を紐解くと、全てアリウス分校に集約されます」
ナギサは気合いを入れ直して顔を引き締めると、今回の会談、その本来の目的であるエデン条約の事件についての状況分析へと移った。
エデン条約会談場の襲撃、その実行犯であり黒幕だったのがアリウス分校。万魔殿のマコトも、ミカも彼らの手のひらで踊らされただけとも言えるだろう。……尤も。
「ただ、マコト議長は元々トリニティの一分派であったアリウスが自分達を攻撃したのだから、自分はむしろ被害者でありトリニティに全ての責任があると主張しております」
何百年も前に追放されてずっとそのままなんだからアリウスがトリニティの一部なんて論が通るわけないじゃん……。まあどうせ、ゲヘナでも全然支持どころか知られてすらない万魔殿の言うことだし気にしなくてもいいっちゃいいけども。
「そのため、焼けてしまった髪の毛を切るための美容室費用も私たちに請求する──と訳の分からないことを」
あ、あのアフロか。くく、あれ思い出したらちょっと笑えてきちゃった。
「ぷふっ……万魔殿は美容室の費用すら他人に出させようとするほど困窮しておりますの?」
「……まあ、これは置いておくとしましょうか」
まあ関係ないしね、そしてサクラコの言葉によって本題に戻る。
「……アリウスが背後で糸を引いていたのなら、いくつかの疑問が残ります。まず一つは、なぜアリウス分校はエデン条約を妨害したのか」
すぐに思い至る要因としては……エデン条約にはトリニティとゲヘナの重要人物が多数集まる。それはつまり、自分達を追放したトリニティと元より相容れなかったゲヘナという憎悪の対象たちを一気に混乱に陥れる絶好の機会だったわけで。
「さらに、セイアさんによると……エデン条約という『契約』を利用して不可解な兵力を手に入れていたそうです」
「はい、ユスティナ聖徒会の姿をした幽霊のような存在。それらがそのままトリニティやゲヘナへ侵攻していたら、両学園は為す術なく崩壊の一途を辿ったでしょう」
ユスティナ聖徒会は、シスターフッドの前身にあたる組織。サクラコは目を閉じて、何か思案している様子で話を聞いていた。
「一体、あれはなんだったのですか?」
「それについてはいくつかの仮説がありますが……それを裏付ける証拠は発見できていません」
そうナギサが答えると、ミネはサクラコの方に向き直って。
「聖徒会はシスターフッドの前身にあたる集団。サクラコさん、この部分について我々に何か隠していることはありませんか?」
「……いいえ、残念ながら」
「シスターフッドは元来秘密が多い集団です。情報の統制や秘匿、歪曲に長けています」
そこまで言ってミネは、一歩踏み込んでサクラコとの幅を詰める。
「学園の中に、シスターフッドに対して不審を抱いている生徒がたくさんいることはご存じでしょうか?」
そしてサクラコもまた、一歩近づいて答える。
「……例えば、あなたのように?」
「あ、あの……あたくしも立場上、色々な情報に接する機会も多いですが……シスターフッドが何か企んでいたとか、そういったことはないと思われます」
一触即発の空気、とりあえず間に入って仲裁する。なんで一年生の僕がこの役割やらなきゃいけないんだろうね。
「……アイカさん。そうですね、失礼しました」
「……長である私ですら把握していない秘密が、シスターフッドには数多く存在します。全てを知っているわけではないのです」
「はぁ……申し訳ありません、アイカさん」
本来自分がやるべきことを僕にやらせた負い目か、そもそもこの場に参加させたことに対してか、ナギサは謝罪した。
「いえ、大丈夫ですわ」
「それと、トリニティの防衛システムを無力化させたあの巡航ミサイル……そちらの分析はどうなっていますか?」
「調査を進めておりますが、今のところ出所も構造も不明です……辛うじて分かっているのは、キヴォトスに存在する技術ではないことぐらいでしょうか」
CIWSも迎撃ミサイルも動作しないなんて地味にヤバイよねあれ。電磁パルスでも発しながら飛んでたのかな。
「……アリウス分校は、未知の力を最低二つは確保しているということですね」
「そうですわね……ただ、そうなるとある疑問が生じますわ」
「……と、いうと?」
あ、やべ。独り言だったのに聞かれちゃってたよ。まあいいや、続けよう。
「え?は、はい……アリウス分校は、何百年もキヴォトスのどこかにあるという自治区にずっと籠ったままでしたのよね。そして、元アリウス生である白洲アズサ先輩の様子……特に初期の学習進度などを見るに、学校としての体裁すら為していなかったようです」
そうして、自分が前世で知っていた情報のうち話せそうなものを吟味しながら言葉を続ける。
「そんな彼女たちがエデン条約を利用した『契約』を考え付いたり、あるいはキヴォトスにない技術を用意したり。アリウス分校の生徒だけで……もっと言えば、『子供』だけでできることなのでしょうか?」
「"……!"」
先生は何かピンと来たらしい。僕は先生に問いかける。
「先生も、何かエデン条約の時に違和感を感じたのではありませんか?」
「"うん、もしかしたら……アリウス分校すらもただ操られていただけなのかもしれない。その背後に、糸を引いている『大人』がいる。"」
今のところその大人が何なのかまでは分からないけど、と先生は締めた。そう……10年前に起きたアリウスの内戦を終結させて支配し、徹底した偏向教育でトリニティへの憎悪を増幅させ、殺しを厭わない集団へとアリウスを作り替えた存在がいる。
「なるほど……確かにそれは、あり得ない話ではないでしょう。ただ……これは二つ目の疑問ですが、アリウス分校が、そのアリウスを支配している存在が何を計画しているのか……」
そうサクラコが言うと、ナギサが後を続ける。
「……これについては、私たちは何も分かっていません。アリウスの自治区の場所も、不明です」
「しかし、エデン条約に関わる一連の事件をきっかけにいくつか糸口を得ることができました」
エデン条約の時にアリウス生たちは古聖堂の地下にあるカタコンベ*1から潜入しており、これまでアリウスの生徒が使ったルートは全てカタコンベと関連していることが調査で分かっている。あの巡航ミサイルもトリニティの遺跡から発射されていたという。
しかし、トリニティ自治区にある地下遺跡は数十とも数百とも言われており、そこから繋がるカタコンベは未だにその全容が明らかにされていない地下迷宮。セイアによるとアリウスの自治区は理解しがたい『とある力』によって保護されており、自力でカタコンベから入ってアリウス自治区へ辿り着くのは難しいだろうという。
「かつてアリウス所属だったアズサさんの話によると、任務の度にカタコンベの出口が記録された地図を渡されていたとのことです。地図の経路は毎回変わり、さらに暗号化まで施されているため……『裏切り者である自分は、もうアリウスに戻る正しい道を知らない』と仰っていました」
入る度に構造が変わるとか不思議のダンジョンかな?そうしてナギサが説明していると、ミネが途中に割り入って言う。
「待ってください、白洲アズサさんを取り調べしたのですか?」
「えっ?」
何か逆鱗に触れたようで、ミネはナギサへと踏み込んで捲し立てる。
「彼女にアリウスの情報を吐かせたのですか?自分がいた自治区から裏切り者の烙印を押され、戻れる場所のない中でそれでも私たちのために頑張ってくれたというのに。やっと心の平穏を取り戻したであろう彼女に、私たちの事情に巻き込んでアリウスの情報を問い詰めるなんて……なんて残酷な……!」
「お、落ち着いてくださいまし、蒼森様。これについては尋問などをしたわけではなく、あくまで本人の口から語っていただいたことで……」
事情聴取をした本人である僕の方から暴走し始めたミネを制止するが、ミネはナギサに迫り詰めたままで。
「あの少女が果たしてそのような気持ちになるでしょうか!ティーパーティーの権力を利用して、か弱い少女に無体を働いたに違いありません……!!」
「えっ、ええっ!?」
してないしてない。いよいよ掴みかかろうという勢いになってどうしようかと思ったところでサクラコが間に入る。
「落ち着いてください、ミネ団長。そのような事実はありません。そんなことをしようものなら、補習授業部の顧問である先生が黙っていないはずですよ」
「……それは確かに、そうですね」
「ナギサさんが血も涙もないような残酷の方なのは確かですが、今回は違います。アズサさんは無礼な待遇を受けてはおりませんよ」
おーおー……えれェ言われ様だぜ……フッフッフ……!まあ、そんな冗談は置いておいて、持っているティーカップを小刻みに震わせているナギサのフォローをする。
「ま、まぁまぁ……その、ナギサ様もあの時はセイア様が倒れて、次はご自身かミカ様が狙われると思っていらして……精神的にとても追い詰められていたが故かと思われますので……普段はそのようなことはないかと」
「アイカさん……ありがとうございます。しかし、ヒフミさん……ハナコさん、コハルさん、アズサさん……補習授業部の方々は、本来負うよりもずっと大きなものを背負い続けてきました。その中には私の行動によるものが含まれていることも、また事実です」
そうしてナギサは一呼吸置いてさらに続ける。
「それに関しては私もまた負うべき責、そして後悔があります。そのため、エデン条約以降……彼女たちがこういった場になるべく関与せずに済むよう努めております。こういった泥試合は私たちの役目であり、あの子たちが経験しなくて良いことなのですから」
「"ナギサ……。"」
……という割に僕はなんで同席させられてるんだろうね。別に気にしてないけども。
「……そうですね、ナギサ様。ご無礼をお許し下さい」
「それは、私も同感です。気持ちとしては、ハナコさんに役目を渡したいと思っていますが……彼女と交わした契約は終わっていますし、彼女にこれ以上負わせてはいけないと思っています」
まあ、ハナコは元々トリニティの権力争いとかそういうのが嫌になって、ああやってわざとテストで手を抜いたりはっちゃけたりして離れようとしてたわけだしね。
「私たちだけで残った問題を解決すること……それが我々にできる最低限の礼儀なのでしょう」
そこまで言ってから、サクラコは先生に顔を向き合わせる。
「ですが、先生は私たちと最後まで行動を共にしてくれると……そう、信じていますよ」
「"うん、もちろん。"」
「……ありがとうございます、先生」
そして、ミネの言葉によって話は再び本題へと戻ることになる。
「それにしても、カタコンベは全体図さえ判明していない巨大な迷路……毎回変わる入口を探すとは、確かに難問ですね」
「発想を逆転しましょう……通路を把握している人に聞くのはどうでしょうか」
発想を逆転させるのよ、サクラコ君。逆に考えるんだ……ダメだな、暇なせいでどうでもいいことばっかり頭に浮かぶ。
「通路を把握している人、ですか」
「襲撃を主導したアリウススクワッドのリーダー、錠前サオリ。彼女なら確実に通路を熟知しているはずです」
とは言っても、前世のゲームの記憶だとアリウススクワッドも自治区の中からじゃないと正しい経路は把握できないみたいだけどね。
「なるほど、襲撃を指揮していた彼女なら」
「……ですが、彼女たちの消息は依然として判明しておりません。既に自治区に逃げている可能性が高いのではないでしょうか?」
「スクワッド以外にも一人、通路を熟知している生徒がいるのではありませんか?」
サクラコがそう言うと、ミネは押し黙ってナギサの方を見る。
「ええと……?それはどなたの事でしょうか……」
「聖園ミカさんです」
「……っ!?」
幼馴染の名前を出されて、明らかに狼狽えるナギサだが、サクラコとミネは冷静に続ける。
彼女は長い間アリウスと通じており、位置を知らないというのは不自然であり。それにミカはアリウス生徒に補給品を手渡した記録が残っている。クーデターを起こすために、アリウスの支援を得るために。
「ですが、ミカさんは……」
そう言いかけて、自分でも擁護には無理があると悟ったのか言葉を止める。
「……これまでのミカ様の行動とそれに対する評判は、芳しいものとは言えません。ナギサ様はよくご存知だと思いますが……彼女はティーパーティーに所属していることを盾に、多くの過失や問題を誤魔化してきました」
過失や問題の誤魔化し、ねぇ。そういえば、夏休み前のある日……マアサがミカの執務室に行った時、彼女の秘書官が机の上に置いてそのままだったらしい裏帳簿を見つけてちょっとした騒ぎになってたな。最終的に証拠不十分で有耶無耶になってたけど。
というか裏帳簿って念入りに管理するものじゃないの?そこら辺の適当さがミカらしいっちゃらしいが。
「今現在、学園で発生しているミカ様に対しての糾弾と騒動──こういった世論もまた、彼女のこれまでの振る舞いと無関係とは言えません」
まあそれでも、ミカに危害を加えようとしたり私物燃やしたりするのは論外だけどね。それはミネも分かっているだろうけど。
「……ミカさんが、嘘をついたということですか。アリウス自治区を隠すようなことを……一体、なぜ……」
「……ナギサ様がミカ様を想う気持ちは、よく理解しております。その上で、不躾なお話ではございますが──彼女の一番の理解者は誰かという議論になれば、幼馴染であるナギサ様になるのではないでしょうか」
変わらず浮かない表情のナギサに、ミネは問う。
「ナギサ様から見て、ミカ様はまだ私たちに隠していることがあるように感じますか?」
ナギサはしばらく思案して、そして自分はミカを信じると伝えた。確かにミカは善良な生徒とは言えないが……それでも。信じられなかったせいで捻れてしまった今回の教訓から、彼女はミカを信じることにしたという。
「他の方々にも信じていただけるよう……貴女方に、学園全体に信じていただけるように。明日の聴聞会でミカさんの弁護をします。例えそれで私が糾弾されることになったとしても……」
「……いえ、私は仮説を口にしただけで他意はありませんよ。誤解を招いてしまったようで、申し訳ございません」
「……失礼致しました、非礼をお詫び申し上げます」
それを聞いていた先生は色々何か聞きたいことがあるようすで、ナギサに声をかける。
「"えっと、その……。"」
ただその前に、まずはミネとサクラコとの話を終わらせる必要があると思ったのか、ナギサはひとまず。
「……そうですね、そろそろお開きといたしましょうか。本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました」
「……いえ、お会いできてよかったです。それに私もこの事態……ミカ様への非難に関しては、とても遺憾に思っています。自分なりの方策を探してみることにいたします、それでは」
「はい──それでは私も、大聖堂に戻ります」
「ええ、お気をつけて」
そして、長いこと続いた会談は一段落ついた。
ナギサのスーパー胃痛タイム。もう禊は終えたはずなんですけどね……?